BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ30


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

背教者は信頼できるか? 2. 偽の背教者

11/15/2023 MASSIMO INTROVIGNEA

自分はある宗教や運動の元メンバーで、その秘密の内情に通じていると主張する人の中には、単に嘘をついているだけの人もいる

マッシモ・イントロヴィニエ

5本の記事の2本目 1本目を読む

「マリア・モンクの恐怖の暴露」
悪名高い『マリア・モンクの恐怖の暴露』

サウスカロライナ州のバプテスト説教者オリバー・ボイス・グリーン(1915-1976)が設立したキリスト教保守派宣教団体「ゴスペル・アワー」が発行した冊子は、何十万人もの英語圏のプロテスタント教徒らが、少なくとも1冊は手にし、あるいは購入してきた。彼の4ページの冊子は読みやすく、彼によると20万人が彼の教派のキリスト教に改宗したという。

グリーンの最も有名なパンフレットの1つは、「あなたたちは真理を知るべきだ。真理はあなたたちを自由にする」とか、「私がクリスチャンになってから経験したことを地球上のすべてのエホバの証人に証言できればよいのに」など異なるタイトルで出されているが、オリー・ベル・ポラード(1909-1984)という人物の署名記事が掲載されている。それは、興味本位でグリーンの伝道集会の一つに参加したあるエホバの証人からの脱会に関する劇的な物語を語ったものだ。彼は、その集会が開かれていたテントがサイクロンに襲われた後にも、不屈の福音伝道者が説教を続けた決意に感銘を受けている。

ポラードはまた、地獄の炎について語ったグリーンの激烈な説教に感銘を受けると同時に少し恐れを抱いた。エホバの証人は真のプロテスタントの信仰から外れており、最終的には地獄に落ちるであろうことを悟るようになったのである。ポラードは次のように報告している。「私は、エホバの証人の教えは誤りであり、人間を自由にする真理ではないと確信した。私は真理を求めていたのである。福音伝道師は真理を語っており、聖書によってそれを証明していると確信した。」

オリバー・ボイス・グリーン
オリバー・ボイス・グリーン Credits

この記事には1つだけ問題がある。ポラードがエホバの証人であったことはないという事実だ。善意に解釈すれば、おそらく、エホバの証人の出版物にある程度の関心を持っていた程度のことはあったのであろう。しかし、それは洗礼を受けることや、組織のメンバーであったことと同じではない。彼にはそのような事実はなかったのである。

偽りの証言を広めたのは、なにもグリーン氏ばかりではない。伝道集会の説教者(およびジャーナリスト)たちは背教者の話にあまりに熱中するため、ふと立ち止まってそれが真実かどうかを必ずしも確認するわけではない。これは新しいことではなく、19世紀にはすでにメディアスキャンダルを引き起こしていた。

レベッカ・リード(1813?1860)は19歳でプロテスタントからカトリックに改宗した本物の背教者で、マサチューセッツ州チャールズタウンのウルスラ会修道院で修練者として数か月間過ごした。その後、彼女は『修道院での6か月』を著し、その中で自分は意思に反して拘束され、拷問を受けカトリック教徒になるよう説得されたと主張した(実際には、彼女は修道院に入る前に既に改宗していた)。彼女の話は非常に扇動的だったので、1834 年に暴徒がその修道院を襲撃し、焼き払った。修道女たちはなんとか逃げ出したが、暴徒は修道院の近くの墓と亡くなった修道者の遺体を冒涜した。

レベッカ・リード「修道院での6か月」から
レベッカ・リード「修道院での6か月」から

リードから多大な影響を受けたマリア・モンク(1816?1849)は、1836年に著書『マリア・モンクの恐怖の暴露』、または『修道院での修道女の生活の隠された秘密が暴露された』を出版した。モンクは、自分は修道女になるためにモントリオールの修道院に強制的に連れてこられたと語った。そこでは修道女たちが日常的に司祭たちにレイプされ、妊娠した場合には、その子供たちは中絶させられたり、出生後に殺害されたりしたと彼女は主張した。幸運なことに、彼女は幼い子供を連れて逃亡し、プロテスタントの反カトリック活動家になったと語った。またしても、モンクのベストセラーを読んだ暴徒らはカナダの修道院を襲撃した。ところが実際には、彼女は修道院の修道女でも修練者でもなかった。彼女が逃げ出した唯一の施設は精神病院であった。そのことが判明するまで、暴徒らによる襲撃が続いたのだ。

マリア・モンク
マリア・モンク。「マリア・モンクの恐怖の暴露」より

ここで興味深いのは、リードやモンクの記事を、衆目の尊敬を集めるプロテスタントの宗教家や主要メディアまでが信じたことだ。カトリック教徒は彼らを非難したが、彼らはモルモン教徒による誘拐や性的虐待に関するセンセーショナルな記事を書いた女性(男性であることはごく稀だった)による似たような、そして等しく虚偽の証言を信じる傾向にあったのである。モルモン教徒の物語は非常に広く信じられていたため、アーサー・コナン・ドイル卿(1859-1930)は1877年に、『緋色の研究』のためにシャーロック・ホームズのキャラクターを創作した。この物語の主人公である少女は、誘拐されてユタ州のモルモン教徒の長老と強制的に結婚させられたのであるが、これは同時代の背教者の記事をもとにしていたのである。

メディアは偽りの背教者に騙され続け、でっち上げが発覚すると謝罪し、そして再び騙されてきた。20世紀にはアルベルト・リベラ(1935-1997)が背教したカトリック司祭として有名になったが、彼はプロテスタントの活動家となって、司祭たちが修道女をレイプし、妊娠した子供たちを殺すという恐ろしい話を語った。こうした話の一部はマリア・モンクの本を元にそのまま書いたものだ。1990年に私がなんとかインタビューすることができたプロテスタントの出版者ジャック・チック(1924-2016)は、リベラの本を漫画にして広く流通させた。彼らの名誉のために言っておくが、福音派記者らはリベラがカトリックの司祭であったことはなく、リベラがイエズス会士として奉仕していたと主張していた時期には、彼は詐欺とクレジットカード盗難の罪により刑務所で過ごしていたことを証明した。

チックコミック
チックコミックで「イエズス会の黒ミサ」に出席するアルベルト・リベラ

私自身も、プロの背教者であるウィリアム・シュノーベレンの暴露に関与した。彼は最初にモルモン教徒に、自分が末日聖徒の信仰に改宗した元ローマ・カトリック司祭であると信じ込ませた(彼はそうではなかった)。その後、彼は自分がかつて高位のモルモン教徒であり、モルモン教徒が寺院で悪魔を崇拝していることを発見したと主張することによって、保守的なプロテスタントの巡回区で人気を博した。その後、彼は福音派内のあらゆる流行に乗じて、自分はさまざまな信仰から背教したと主張した。彼は、元フリーメーソン、元魔女、元悪魔崇拝者であると主張し、さらには吸血鬼小説が人気になったときには元吸血鬼であるとさえ主張した。 彼はこれら主張のいずれについても信頼できる証拠を提示しなかった。

偽りの背教者である元悪魔崇拝者たちは、悪魔崇拝に関する話を渇望しているメディアを悩ませてきた。1992年にマイク・ウォーンケのような最も有名な人物が実際には悪魔崇拝者であったことはなく、虚偽の話だったことが暴露されたときにはスキャンダルが勃発した。

エホバの証人は頻繁に、反カルトのプロパガンダの標的となっており、彼らの組織からも偽の背教者が出現したのは驚くべきことではない。私がジャック・チックにインタビューしたとき、彼はメリッサ・ゴードンという女性と連絡を取り合っていると主張した。彼の主張によれば、彼女は福音派のキリスト教に改宗する前に、当時ブルックリンにあったエホバの証人の本部で軍隊式の訓練を受けたのだという。実際、チックはコミックの中でメリッサ・ゴードンを描いたものの、実物のメリッサ・ゴードンを生み出すことはできなかった。おそらく彼女は彼の豊かな想像力の産物に過ぎなかったのであろう。

メリッサ・ゴードン
反エホバの証人のチックコミック『ウォーゲーム』の「メリッサ・ゴードン」

ゴードン・ユージン・ダガー博士(1930~2014年)が2014年に亡くなったとき、死亡記事は、彼をジョージア州の有力な足専門医として称賛した。この分野における彼の資格を疑う理由はないが、妻ベラ(旧姓ポインデクスター、1930-2019)の協力を得て彼が執筆し(ゴーストライターによる著作であれば別だが)、1985年に出版した「エホバの証人:ものみの塔に気をつけて!」と題する背教の物語には疑いの余地がある。出版元である有名な福音派企業のベイカー出版グループは、医師とその妻を「元エホバの証人」として宣伝した。しかし、後にこの問題を研究した学者たちは、彼らはエホバの証人の「周辺部」にいて、いくつかの集会には出席したが、洗礼は受けていなかったと結論づけた。

明らかな作り話や詐欺は言うに及ばず、このような不正確な話は非常に頻繁にあるため、メディアは背教者の記事として提示された報告を最善の注意を払って取り扱う必要がある。しかし、これから分かるように、彼らはそうしないのである。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e8%83%8c%e6%95%99%e8%80%85%e3%81%af%e4%bf%a1%e9%a0%bc%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%8b%ef%bc%9f2-%e5%81%bd%e3%81%ae%e8%83%8c%e6%95%99%e8%80%85/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ29


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

背教者は信頼できるか?  1. 背教の問題

11/08/2023MASSIMO INTROVIGNEA

背教者とは、宗教や宗教運動の元信者であり、彼らが離れた信仰にとって仇敵となった者たちのことである。彼らは何世紀にもわたって存在してきた。

マッシモ・イントロヴィニエ

5本の記事の1本目

「ローマ教会の50年」
女性教区民との淫らな遊びに巻き込まれたカトリックの司祭たち チャールズ・チニキ著『ローマ教会の50年』(ニューヨーク:フレミング・H・レベル、1886年)より

2018年4月、私はタスマニアを訪れ、ホバートにあるMACq 01ホテルに宿泊した。それはユニークな「物語ホテル」で、各部屋にタスマニアの歴史上重要な人物の名前が付けられ、その記念品が展示されている。なんとも奇遇なことに、妻と私は、チャールズ・チニキ(1809-1899)にちなんで名付けられた215号室を割り当てられた。私は背教の概念についていくつかの研究を行ってきたが、チニキは19世紀の最も有名な「職業的背教者」だった。

チニキはケベック州出身のカトリック司祭で、1833 年に叙階され、禁酒運動を行ったことでよく知られていた。しかし、彼は巡回中にしばしば女性信者に対する不適切な行為で告発され、1851年にカナダの司教から少女に対して「犯罪行為」を行ったと非難され、停職処分を受けた。その後、彼は米国に移住して二度とカナダに戻らないことを受け入れるのであれば、赦免され司祭を続けることが許可された。しかし米国では、地元の司教が「チニキ氏の道徳的振る舞いに関する重大な証言」と称するものを受け取るようになり、1858年に彼は再び停職処分を受け、破門された。

ホバートのMACq 01ホテルの写真
ホバートのMACq 01ホテル、215号室に掲示されているチニキの物語。写真提供者: マッシモ・イントロヴィニエ

その後チニキは長老教会に加入し、残りの40年間をローマ・カトリックに対する反対運動に捧げた。彼の主張は以下のようなものであった。彼に対する告発は、彼の禁酒活動を理由に酒類ロビー(それはカトリックの聖職者制度をも支配していた)によってでっち上げられたものだ。教皇と数人の司教は内心では無神論者である。彼らはヨーロッパから大量のカトリック教徒を移民として送り込むことで米国を乗っ取ろうとしている。バチカンがアブラハム・リンカーンの暗殺を命令した(彼はチニキの裁判の一つで代理人を務めていた)。

これらの告発はいずれも証拠によって裏付けられたものではなかったが、チニキは 19 世紀後半の最も有名な国際的スピーカーの一人になった。 彼は大衆を興奮させ、時には演説の終わりにカトリック教会や修道院を攻撃することもあった。1879年6月23日、彼はホバートの市庁舎で講演したが、タスマニアにはかなりの数のカトリック教徒が住んでおり、ほとんどのプロテスタント教徒さえも宗教的平和を大切にしていた。講演には4,000人のタスマニア住民が参加したが、そのほとんどがチニキに敵対的であり、彼の演説は中断された。近くのアングルシー兵舎から派遣された500人の軍隊が秩序を回復し、この派手な背教者に島を去るよう説得するまで、彼は舞台のピアノの後ろに身を隠さなければならなかった。

チニキは通常、歴史家から「背教者」と呼ばれており、彼の物語は、時として混乱を引き起こすこの言葉のさまざまな意味について議論する機会を提供してくれる。これはまた、一部の背教者(もちろん全員ではない)が道徳的不正を告発されて宗教を離れるのだが、メディアが彼らの棄教の最初の理由について議論することはめったにないことを私たちに思い起こさせる、教訓的物語でもある。

チャールズ・チニキの写真
チャールズ・チニキ ローマ教会での50年間から

最も古い意味では、「背教」はある宗教から離脱して別の宗教(または無神論)へ改宗することを意味する。国教を遵守することが義務づけられていた社会・政治制度では、背教は犯罪であり、しばしば死刑に処せられた。西暦3世紀のササン朝帝国では、公式宗教であるゾロアスター教からの背教者は処刑された。ユダヤ人の間では、申命記13章6-16節で背教者の死刑がほのめかされていた。カトリック教会はキリスト教徒のローマ皇帝に背教を犯罪とするよう説得し、ユスティニアヌス帝(482-565)の法典は背教者となって異教の儀式に戻る者の処刑を義務付けた。キリスト教徒に棄教を説得する者も処刑されなければならなかった。イスラム教もまた、背教者を死刑に処しており、一部のイスラム国家では今でもそれが法律の一部となっている。

これらの措置は、宗教を離れた人々のさまざまな立場や態度を全く区別しなかった。 離脱の事実そのものが処罰されたのである。現代の宗教社会学が離脱について研究し始めたとき、「背教者」という言葉の新しい用法が導入された。このより専門的な意味によれば、宗教を離れる人がすべて背教者だということではなく、以前の信仰に激しく敵対し、公に反対の声を上げる人のみを指す言葉になった。チニキは典型的な背教者であったが、学者たちはローマ皇帝の背教者ユリアヌス(331-363)の姿からもその用語のインスピレーションを得た。彼は若い頃は(アリウス派の)キリスト教徒であったが、統治者としては異教を復活させようとし、キリスト教徒を迫害した。

ユリアヌス帝のコインの写真
背教者というあだ名を付けられたユリアヌス帝の肖像が描かれたコイン Credits

よくあることだが、現実は学術的なラベルよりも先に存在する。元信者が以前の宗教の仇敵に変わるという意味での背教者は、棄教を研究している学者が彼らの名前を発見する以前にも、何世紀にもわたって存在していた。背教者の体系的な研究は、新宗教運動の研究と共に始まった。その学者たちは、スチュアート・ライトが1988年に書いたように、「面白い発見」をした。すなわち、「データが不足」しており、背教者の社会学的研究は「驚くほどに乏しい」ということである(「新宗教運動を離れる:問題、理論、および研究」、デビッド・G・ブロムリー編、「信仰からの脱落:宗教的背教の原因と結果」、セージ出版、1988年、144?65 [145])。歴史学者はチニキのような元カトリック教徒の背教者やモルモン教を離れた人々を研究していたが、1970年代以前は社会学的な理論は乏しかった。

背教者の問題にかなり注目していたのが新宗教運動の研究者たちだったのは偶然ではない。いわゆる反カルト運動は、彼らが「カルト」と名付けた運動がなにか悪いことをたくらんでいることを証明するために、背教者を組織的に利用した。反カルト運動は学界では決して成功しなかった。そこでは「カルト」は「本物の」宗教ではなく、洗脳を用いて改宗者を誘惑するという理論を受け入れたのはわずか一握りの学者だけだったが、メディアの間でははるかに成功した。「カルト」として攻撃された宗教に関する背教者の記事はすぐにジャーナリストたちの人気を博した。学者による複雑な説明とは異なり、彼らは白黒をはっきりさせた単純な物語を描き、そこでは英雄(背教者と反カルト活動家)と悪役(カルト指導者、そして時には背教者の信頼性を疑う学者)が明確に識別できた。それらには虐待に関するセンセーショナルな話も含まれており、それが格好の新聞ネタとなった。

社会学的な理論が欠けていたのは事実だが、多くのジャーナリストが知らないうちに、背教者に関する論争はすでに19世紀から20世紀初頭の宗教的少数派に関する議論の重要な特徴となっていた。このテーマについては、このシリーズの2回目の記事で再び取り上げるであろう。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e8%83%8c%e6%95%99%e8%80%85%e3%81%af%e4%bf%a1%e9%a0%bc%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%8b%ef%bc%9f%e3%80%80-1-%e8%83%8c%e6%95%99%e3%81%ae%e5%95%8f%e9%a1%8c/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ28


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

政府が解散請求した宗教法人の資産凍結法案:日本のすべての信仰に対する危機

11/07/2023 BITTER WINTER

提出された法案は、直接的には「被害者」と「損害」についての賛否の分かれるデータに基づいて統一教会を標的にしているが、これは将来に暗い影を落とす不公正な原則を確立することになる

ビター・ウィンター

国会議事堂
新しい法案が審議される日本の国会 Credits

私たちは、解散請求された宗教法人に対して、解散訴訟の判決を待つことすらせずに、その資産を「保全」または凍結し、それらを管理する管理人の任命を認める新法が日本で可決される可能性について懸念を表明するために、この緊急声明に署名します。この法律は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を標的としており、政府は訴訟を通じてこの団体を日本の宗教法人として解散させようとしています。

私たちは家庭連合を長年知っており、日本における家庭連合の問題についても認識しています。 私たちは家庭連合の日本人会員の一部が、過去に他の信者や一般の人々に対して献金や特定の工芸品の購入を求めるために不当な圧力を加えたとして提訴されたことを承知しています。

私たちはまた、日本の家庭連合が過去の問題を正そうと誠実に努力し、一定の成果を上げたことも承知しています。安倍晋三元首相が暗殺される以前は、2010年代及び2020年代に起きた事象に対する苦情の数は、それ以前の数十年にまでさかのぼった数に比べて大幅に減少していました。

私たちはまた、これに類似した問題は古い宗教にも新しい宗教にも存在することを知っています。ほとんどすべての教会や宗教は、ある国において、または歴史上のある段階において、何らかの形で過度に積極的に金銭的貢献を求めているとして非難されたことがあるのです。

資産凍結法の支持者らは、「被害者」の利益を守るためにそれが必要であり、それがなければ決して返金されないだろうと主張しています。しかし、私たちは、数百件の訴訟がすでに解決済みであることを知っています。メディアで流布されている民間統計にもかかわらず、また一部の主張が数十年前に起こったとされる出来事について述べていることを考慮しなかったとしても、係争中の訴訟の数は比較的限られているのです。またそれは、提案されている措置の範囲と釣り合いがとれません。

この措置は、被害者とされる人々を保護するというよりはむしろ、日本の家庭連合を即座に破綻に追い込み、必要な資源を奪うことによって、解散請求訴訟に対する有効な防御の構築を阻止することを目的としているようです。それはまた、家庭連合は解散しても信教の自由を享受し続け、宗教法人としての非課税の地位を剥奪される「だけである」という主張が嘘であったことも証明しました。実際、資産凍結と管理人の任命を要求したことは、反対派の真意は家庭連合が日本で通常の活動を継続できないようにすることにあったことを示しています。

家庭連合を清算し、その資産を凍結すれば、メディアや一部の弁護士、政治団体に不人気な他の数多くの宗教運動に対しても同様の行動を起こす道を開くことになるでしょう。すでに日本では他の宗教団体を非難し、同様の措置を求める声が聞かれます。

学者たちは、宗教に反対するキャンペーンが、比較的小規模で不人気なグループを標的にして、どのように始まるかを研究してきました。彼らに対する対策はメディアによって支持され、世論によって称えられます(もちろん、これらのグループに関する世論の考えは主に同じメディアによって形成されています)。しかし、これらの措置は前例となり、すぐに他の数多くの宗教に対して適用される原則を確立します。

サム・ブラウンバック大使とカトリーナ・ラントス
元米国際宗教自由大使のサム・ブラウンバック氏と、米国際宗教自由委員会(USCIRF)」委員長を二期務めたカトリーナ・ラントス・スウェット氏(Xより)。彼らは二人ともこの嘆願書にサインした。

私たちはこのプロセスがロシアと中国で進行しているのを目撃してきました。どちらもエホバの証人や「反社会的」とみなされる他の宗教の信者を標的にし始めたのですが、徐々に政権が潜在的反体制派であるとみなしたすべての宗教家へと抑圧を拡大していきました。

私たちは日本とその美しい民主主義をこれらの全体主義的で抑圧的な政権と比較するつもりは決してありません。 しかし、私たちの経験が示しているのは、共産主義も含め、これらの政権で権力を握っているイデオロギーは、しばしば民主主義国家でも作用しているということです。日本の統一教会に対する反対の政治的ルーツの一つに、統一教会の保守的な思想や積極的活動をターゲットにした共産主義運動があったことは、この問題を研究している学者によって認められています。

私たちは、日本の政治家と裁判所に対し、解散請求訴訟が提起されている宗教法人の資産凍結を認める法案を拒否し、これらの措置の危険で広範囲にわたる影響と、それらが人権を尊重する民主主義国家としての日本の国際的イメージに消えることのない汚点を付けることを認め、解散請求を再考するよう求めます。

私たちは日本と国連の民主的な同盟国に対し、理性、宗教または信仰の自由、および人権の代弁者としてその声を届けるよう求めます。

私たちは、日本に存在するすべての教会と宗教に対し、新たな資産凍結法と解散に反対する声を上げるよう呼びかけます。多くのテーマで家庭連合とどれだけ意見が合わなかったとしても、この新法ならびに刑事訴訟ではなく民事訴訟のみで敗訴した宗教団体の解散を許す前例を作ることは、彼らにとっても脅威となることでしょう。

すべての宗教に影響を与える厳しい制限を課すことを最終目的とする運動から助命されることを望んで沈黙を続けることは、ルーテル派牧師で反体制派のマルティン・ニーメラーの有名な詩に描かれている、ナチス時代の平均的で臆病なドイツの聖職者の立場に彼らを置くことになるでしょう。「最初に彼らは社会主義者を連れ去りましたが、私は声を上げませんでした。なぜなら私は社会主義者ではなかったからです。次に彼らは労働組合員を連れ去りましたが、私は声を上げませんでした。なぜなら私は労働組合員ではなかったからです。それから彼らはユダヤ人を連れ去りましたが、私は声を上げませんでした。なぜなら私はユダヤ人ではなかったからです。そして彼らが私を連れ去りに来たとき、私のために声をあげる者は誰一人残っていませんでした。」

2023年10月29日

マルコ・レスピンティ:宗教の自由と人権に関する日刊誌“Bitter Winter”の主任ディレクター

ティエリー・ヴァッレ:CAP-LC(良心の自由のための団体および個人の連携)会長

マッシモ・イントロヴィニエ:CESNUR(新宗教研究センター)の共同創設者兼運営責任者

エリック・ルー:EIFRF(欧州超宗派信教の自由フォーラム)議長

フランシスコ・クルト:フェデキンシエメ(共に信仰)共同創設者

アレッサンドロ・アミカレリ:信仰の自由に関するヨーロッパ連合会長

アーロン・ローズ:FOREF(欧州宗教の自由フォーラム)会長

ハンス・ヌート:宗教または信仰の自由のためのジェラルド・ヌート財団理事長

ウィリー・フォートレ:国境なき人権共同創設者・理事長

サム・ブラウンバック大使:国際宗教自由サミット共同議長

カトリーナ・ラントス・スウェット:国際宗教自由サミット共同議長

ラファエラ・ディ・マルシオ:宗教・信仰・良心の自由研究センター運営責任者

ロシタ・ソリテ:避難民の宗教の自由国際観測所会長

カメリア・マリン:ソテリア・インターナショナル副理事長

イバン・アルホナ・ペラド:生活・文化・社会向上財団会長

アーノスト・リベズニー:ローマ教皇の騎士・淑女・紳士たちの世界大信心会

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%8C%E8%A7%A3%E6%95%A3%E8%AB%8B%E6%B1%82%E3%81%97%E3%81%9F%E5%AE%97%E6%95%99%E6%B3%95%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%B3%87%E7%94%A3%E5%87%8D%E7%B5%90%E6%B3%95%E6%A1%88%EF%BC%9A%E6%97%A5/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ27


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

日本、宗教、そして統一教会の解散: とある対談

11/06/2023 MASSIMO INTROVIGNE

10月1日に東京で開催されたシンポジウムでは、日本と欧米における宗教と「カルト」に対する異なるアプローチという大きな枠組みの中で、この件が議論された。

マッシモ・イントロヴィニエ著

マッシモ・イントロヴィニエ氏と福田ますみ氏
マッシモ・イントロヴィニエ、ジャーナリスト福田ますみ氏と東京で

「ビター・ウィンター」は、2022年7月8日に安倍晋三元首相が暗殺された直後から、現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている統一教会に関する日本の論争を取り上げてきた。安倍氏は山上徹也という男に殺された。山上は統一教会への過剰な献金のせいで母親が2022年に破産したと主張し、安倍氏がこの宗教運動に関連する団体を支援していることを罰するつもりだった。

山上の発言は、2023年10月12日の政府による家庭連合の解散請求、そして現在係争中の裁判へとつながる一連の出来事の引き金となった。

日本の状況を観察する外国人として、私や他の学者たちは、私たちが信教の自由の原則に反する措置だとみなす背景も理解、研究されるべきだと気づいた。特に、1995年にオウム真理教という宗教団体が地下鉄サリン事件を含むいくつかの犯罪を犯して以来、多くの日本人にとって新興宗教運動は、そして時には宗教一般も、(有益な)資源というよりもむしろ問題として認識されている。

「カルト」が「洗脳」を用いて「被害者」をコントロールするという理論が、欧米では新宗教運動を研究する学者の大多数から、また米国などでは裁判所から、疑似科学的なものとして否定されている事実は、日本では一般には知られていないようだ。欧米で見られた、メディア界に広がっていた「反カルト」論に対する多くの学者による反対運動でさえ、日本では類似したものは見られなかった。日本の学者たちがまだオウム真理教の悲劇に影響されていたからかもしれない。

このような理由から、「ビター・ウィンター」はワシントンを拠点とする国際宗教自由円卓会議の後援を受けて、10月1日に東京で、選定された学者、宗教活動家、記者を対象とした非公開のシンポジウムを開催し、ヨーロッパとアメリカの学者一人ずつ、即ち筆者とウェスタン・ワシントン大学のホリー・フォーク氏が、「カルト」をめぐる世界的な論争について一般的な考察を述べた。

マッシモ・イントロヴィニエ氏の講演
ホリー・フォーク氏による講演

国際宗教自由円卓会議の共同議長であり、米国際宗教自由委員会(USCIRF)の元議長であるナディーン・マエンザ氏と、(国際宗教自由円卓会議とは別組織である)国際宗教自由サミットの共同議長であるカトリーナ・ラントス・スウェット氏が、シンポジウムにビデオメッセージを寄せた。

ナディーン・マエンザ氏によるビデオメッセージ
カトリーナ・ラントス・スウェット氏によるビデオメッセージ

続いて、(自身は家庭連合の会員ではないが)家庭連合の代理人弁護士の一人である中山達樹氏が家庭連合に関する法的問題の説明を行った。

シンポジウムでの中山達樹氏の論説

(社会学部を卒業し)受賞歴のあるジャーナリストの福田ますみ氏は、この事件を調査し始めた当時、特に宗教運動に同情的ではなかった記者としての視点から、家庭連合への反対運動について論じた。そして彼女は、旧統一教会に対する反カルト運動は政治的動機に基づくものであり、しばしば誤った情報に基づいていると結論づけた。

福田ますみの最終論説

シンポジウムは確かに有益だった。欧米の学者たちは、日本人の講演者たちからそれまで知らなかった事件の詳細を学び、おそらく日本の参加者たちは、欧米の学者や宗教的自由の活動家の大多数が、新宗教運動に対する反カルト論に反対している理由をよりよく理解することができたことだろう。

対談は続く。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%80%81%e5%ae%97%e6%95%99%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e7%b5%b1%e4%b8%80%e6%95%99%e4%bc%9a%e3%81%ae%e8%a7%a3%e6%95%a3%ef%bc%9a-%e3%81%a8%e3%81%82%e3%82%8b%e5%af%be%e8%ab%87/

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『世界思想』巻頭言シリーズ13:2023年10月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第13回の今回は、2023年10月号の巻頭言です。

憲法改正に本気で取り組むべき時が来た

 2020年に公開された映画『日本独立』を、私は映画館で一度見たのですが、今年の終戦記念日にレンタルでもう一度見ました。この映画は白洲次郎と吉田茂を軸に、日本国憲法がどのように作られたかを描いています。一国の憲法がこんな拙速なやり方で決められていいのか、というのが私の率直な感想です。

 いわゆる松本委員会による新憲法の草案があまりにも保守的であったためにマッカーサーはこれをよしとせず、連合国総司令部にいたアメリカの軍人たちによって極めて短期間で草案が作られ、それがほぼそのまま受け入れられて現在の日本国憲法になりました。

 マッカーサーが新憲法の制定を急がせた理由は、極東委員会が動き出せば米国が主体となっている日本の占領政策にソ連が口出しをしかねないので、その前に既成事実を作っておく必要があったからです。

 そのため日本国憲法の前文はそれ以前に存在した歴史的に有名な宣言や文書を寄せ集めて切り貼りしたような内容になっており、しかも英文を翻訳したような不自然な日本語になっています。なによりも日本の憲法でありながら日本の歴史、伝統、文化、国柄などに一切言及しておらず、「日本国の顔」が見えない文章になっています。

 『日本独立』の中で、吉田茂が自分の娘に対して「GHQは何の略か知っているか?」と尋ね、「ジェネラル・ヘッドクオーターじゃないの?」と答える娘に、「いや、ゴー・ホーム・クィックリー(早く帰れ)」だと冗談を言うシーンがあります。

 吉田茂としては、占領軍に逆らっても勝ち目はないから、いまはマッカーサーの憲法を受け入れておいて、講和と独立を勝ち取って米軍がいなくなったら、憲法改正はいくらでもできると考えていたのでしょう。まさかその憲法が施行以来76年にわたって一度も改正されないとは、夢にも思わなかったに違いありません。

 憲法が施行された1947年当時と現在では日本の状況は大きく変わっているのですから、憲法も時代に合わせて改正すべきなのは当然の理です。さらに、憲法では戦力を保持しないと言っているのに、実際には自衛隊が存在するなど、憲法と現実の間に大きな矛盾が生じてしまっています。自衛隊の違憲論争に終止符を打つためにも、憲法改正は必要です。

 昨年7月の参院選の結果、自民、公明、維新、国民を合わせた「改憲勢力」が衆参両院で3分の2を超え、憲法改正の数的基盤は整いました。そして大型国政選挙のない「黄金の3年」の間に憲法改正をやろうというのが岸田政権のプランだったのです。

 しかし、安倍元首相暗殺事件によって引き起こされた政局の混乱と岸田内閣の支持率低下により、「黄金の3年」はどこかに吹き飛んでしまい、盛り上がっていた憲法改正の機運もしぼんでしまいました。

 現在の日本国憲法は日本人の手によって自主的に作られたものではなく、さらにこの憲法の是非について日本国民の総意が問われたことは一度もありません。憲法改正は安倍首相の悲願でした。その遺志を受け継ぐためにも、われわれが憲法改正に本気で取り組むべき時が来たと感じます。

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ26


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。昨年7月8日に起きた安倍晋三元首相暗殺事件以降の日本における家庭連合迫害の異常性を、海外の有識者がどのように見ているかを理解していただくうえで大変有益な内容であると思われたので、私の個人ブログでシリーズ化して紹介することにした。

日本:反カルトジャーナリスト鈴木エイト氏が虚偽記載で提訴される

10/28/2023 MASSIMO INTROVIGNE

UPFとディプログラミング被害者の後藤徹氏は、反統一教会キャンペーンで有名な記者に損害賠償を求める。

マッシモ・イントロヴィニエ著

鈴木エイト氏
ジャーナリスト鈴木エイト氏 出典:X(旧ツイッター)

今月、日本で提起された2つの訴訟によって、日本の裁判所の独立性と、不人気なグループであればどんなことでも何のおとがめもなく非難することが許されるのかという2つのことが試されることとなる。民主主義国家は言論の自由を保護しており、その中には気に入らない団体を批判することも含まれる。しかし、厳しい批判と明白な嘘とは明確に一線を画している。

例えば、(筆者を含む)多くの人々がQアノンに対して非常に否定的な意見を持ち、その危険な陰謀論を暴露しているかもしれない。しかし、Qアノンのリーダーも、彼らが他者に対して広めるのと同じ種類の虚偽の告発から守られている。もし私が、Qアノンの活動家が親プーチン派の投稿をすることでロシア大使館から何百万ドルも支払われている、とか、彼らには児童虐待の犯罪歴がある、などと書いたとして、その告発の証拠を何も提示できなければ、私はおそらく彼らに訴えられ、当然のことながら損害賠償を支払わなければならないだろう。Qアノンが社会的に負の役割を果たしているという議論は、激しい批判を正当化するために使うことができるかもしれないが、明らかに虚偽であるQアノンのリーダーについての発言は許されないだろう。これが民主主義の仕組みだ。政権に反対する者や一部の少数派宗教を含む「望ましくない」とレッテルを貼られた集団が、どんなことで非難されても自らを守る術を持たないのは、ロシアや中国のような全体主義体制でのみ起こることである。

鈴木エイト氏は、(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている)統一教会や、その他の「カルト」を攻撃することを零細ビジネスから儲かるビジネスに変えた日本のジャーナリストである。私の個人的見解では、これは不道徳であるが、違法ではない。「カルト」のレッテルを貼られた少数派宗教に対する偏見は、日本社会とメディアに広く浸透して(日本に拠点を置く外国人記者にも及んで)いるため、鈴木氏は賞まで受賞している。

しかし問題は、民主主義国家において、鈴木氏のような人物が、統一教会やその信者、関連する組織に対して虚偽の声明を発表し、統一教会が、日本政府が解散させようとしている「反社会的」組織であるという論拠を盾にして、その嘘から逃れることが許されるべきかどうかということである。日本の裁判所は今、2つの別々の訴訟でこの疑問に答えなければならない。

1つ目の訴訟は、統一教会の創設者でもある故文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁とその妻である韓鶴子(ハン・ハクジャ)博士によって設立された、国連の総合協議資格を持つNGOであるUPFによって起こされた。「ビター・ウィンター」が発表した白書に記されているように、UPFは統一教会との関係を一切隠していないものの、統一教会に代わって布教活動を行うことはなく、「平和大使」としてUPFの行事に参加し活動している人々の大半は家庭連合の会員ではない。

暗殺された安倍晋三元首相は、2021年9月に韓国で開催されたUPFのイベントにビデオメッセージを寄せた。鈴木エイト氏は、安倍元首相はこのビデオメッセージに対して5000万円(334,000ドル)を受け取ったと繰り返し述べている。UPFは、安倍元首相に報酬を一切支払っていないと主張している。政治資金規正法違反や脱税をしたこととなるので、亡き安倍元首相をも中傷する発言である。鈴木氏は、UPFと統一教会とのつながりを批判したことでUPFから迫害されていると主張して煙幕を張ろうとしているが、問題はもっと単純だ。UPFがビデオメッセージの報酬として安倍元首相に5000万円を支払ったか、支払わなかったかである。もし鈴木氏が5,000万円を支払ったという証拠がないのであれば、彼は原告であるUPFに損害を与える嘘を広めたことになり、損害賠償を支払わなければならない。UPFが良い組織なのか悪い組織なのか、統一教会とどのようなつながりがあるのかは、訴訟の主題ではない。裁判所が検討すべき唯一の問題は、UPFが安倍首相に5000万円を支払ったという証拠が鈴木氏にあるかどうかである。もしその証拠が存在しないのであれば、裁判所は鈴木氏を嘘つきであり中傷をした者であると断定し、その代償を支払わせるべきである。

2つ目の訴訟は、ディプログラミングという醜悪な犯罪の最も有名な被害者である後藤徹氏によるものだ。ディプログラミングとは、アメリカで生まれ、後に日本に輸出された行為で、「カルト」のレッテルを貼られた団体の成人会員を誘拐して監禁し、信仰を棄てるまで宗教運動に関する否定的な情報や肉体的・精神的暴力を浴びせるというものである。欧米の民主主義諸国は前世紀にディプログラミングを違法としたが、日本では後藤徹氏の事件までは存続していた。彼は誘拐され、隔離され、栄養失調になり、12年5ヶ月という信じられないほど長い期間虐待された。その苦難がようやく終わったとき、彼はまるでナチスの強制収容所の生き残りのようだった。

後藤徹氏
解放後の後藤徹氏。

2014年に高裁は、後藤氏の苦しい体験を詳細に再現し、判決で多額の損害賠償が認められ(2015年に最高裁でも確定し)た。また、そのときに2つの抗弁、一つは、統一教会が「反社会的」組織であるという事実が、その信者を誘拐し、不法に拘束することを正当化するというもの、そしてもうひとつは、最初に何度か試みた後、もはや逃げようとしなかったことから、後藤徹氏がディプログラミングを「自発的に」受けたというものであったが裁判所はこれらを明確に否定した。高裁は、後藤徹氏について、「それまでの経験や、近所にディプログラミングの関係者がいたことから、逃げようとすれば妨害され、逆に監視が厳しくなることを十分認識していた。したがって、この(脱走しようとしなかった)ことは、控訴人(後藤徹氏)の自発的な意思によるものではないと判断する」と述べた。

この事件は最高裁の最終判決によって終結した。これにより、他の宗教的マイノリティの信者も同じ目的で誘拐されていたことはさておき、統一教会信者だけで4千人以上の犠牲者を出していた日本におけるディプログラミングという犯罪行為に終止符が打たれた。

後藤徹氏の事件は、弁護士やジャーナリストが(全員一致ではないにせよ)ディプログラミングを支持していた日本の反カルト運動の評判に傷をつけた。鈴木氏はこのことを熟知していたにも関わらず、後藤氏が自発的にディプログラミングを受けたという古い主張を繰り返した。さらに悪質なことに、鈴木は後藤徹氏のケースを「ひきこもり」と決めつけた。「ひきこもり」とは日本独特の現象で、社会から引きこもり、親や社会保障に経済的に支えられながら、ほとんどの時間を自室で過ごすという、何十万人もの若い男女が陥っている現象である。

後藤徹氏もまた、名誉を著しく傷つけられたとして鈴木氏に対して訴訟を起こしている。明らかに、「ひきこもり」の自発的な隔絶と、他人に誘拐され、監禁され、虐待されることは、まったく異なるものである。今回の訴訟の場合、裁判所が後藤徹氏に実際に何が起こったのかを確認する必要はないはずだ。この調査は、2014年と2015年に高裁と最高裁がすでに行い、後藤氏が自発的にディプログラミングと虐待を受けたという後藤氏の親族やディプログラマーによる弁明を明確に否定した。鈴木氏は、裁判所によってすでに虚偽であることが暴かれているこのとんでもない理論を繰り返したのである。国の最高裁が間違っていたことを証明できない限り、鈴木氏は後藤氏の名誉を毀損したのであり、処罰されるべきである。もう一度言うが、統一教会が良い組織か悪い組織かは、この訴訟には関係ない。

記者会見での自撮り
後藤徹氏(着席、右)と弁護士による記者会見に臨む鈴木エイト氏(左)。出典:X

予想通りだが、後藤徹氏と弁護士による記者会見に登場した際やその後のインタビューで、鈴木氏は自身の言論の自由が侵害されており、これらはスラップ訴訟(公的参加に対する戦略的訴訟、口封じ訴訟)であると主張した。これもまた虚偽の主張である。UPFも後藤徹氏も、鈴木氏が自分たちや家庭連合を批判するのを阻止するよう裁判所に求めてはいない。この訴訟は、UPFがビデオメッセージのために安倍晋三氏に5000万円を支払ったことと、後藤徹氏が自発的にディプログラミングと虐待を受けたという、鈴木氏による2つの具体的な発言に対するものである。

もし鈴木氏がこれらの発言が真実であることを証明できなければ、敗訴し、損害賠償を支払わなければならない。後藤徹氏のケースは日本の最高裁判所の最終決定があり、真実だと証明できる可能性は極めて低い。しかし、正当な理由のない政府による家庭連合解散請求によって作られた風潮の中で、何でもありになり、鈴木氏が嘘をつき、生者と死者の評判を地に落とすことが許されてしまう場合は、この限りではない。しかしこれは、日本の民主主義の友人として、また称賛者として、考えたくない可能性である。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ25


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。昨年7月8日に起きた安倍晋三元首相暗殺事件以降の日本における家庭連合迫害の異常性を、海外の有識者がどのように見ているかを理解していただくうえで大変有益な内容であると思われたので、私の個人ブログでシリーズ化して紹介することにした。

日本統一教会の解散要求:悲劇的な信教の自由の侵害

10/16/2023BITTER WINTER

宗教の自由を擁護する世界の有力者を代表する12のNGOが日本政府の行動に抗議する。

ビター・ウィンター著

韓鶴子
写真: 2019年に名古屋で開催された大会での統一教会/家庭連合の指導者、韓鶴子総裁。フェイスブックより

私たちは今日世界で最も脅かされている人権であると学者たちが指摘する信教の自由へのコミットメントと関心を共有する宗教団体と宗教とは関係ない団体を代表しています。私たちはまた、日本の国、日本の文化、そして血なまぐさい非民主主義政権に悩まされている地域においても活気ある日本の民主主義に対する共感と称賛を共有しています。

私たちは安倍晋三元首相が暗殺された後、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に何らかの責任を負わせ、宗教団体としての解散を請求する動きも含め、日本の動向を大きな関心を持って見守ってきました。

暗殺者は、2002年に自分の母親が過剰な寄付をして破産したために宗教団体である家族連合を憎んでいると主張し、凶悪な犯行の動機として、安倍元首相が家族連合に協力したことを罰するつもりだったと供述しています。暗殺者がなぜ母親の破産から20年も待って安倍元首相を殺したのかなど、犯行のすべては明らかになっていません。犯人の母親の親族が苦情を申し立てた後、家族連合が寄付金を一部返済したという事実は、メディアではほとんど触れられていません。また、暗殺者自身が統一教会の信者ではなかったという事実も、当然のことながら強調されるべきなのですが、されていません。

この犯行の後、家族連合を敵視する弁護士やその他の人々によって、ほぼ政治的な理由から古いキャンペーンが刷新されました。彼らは、反共産主義的なイニシアチブのスポンサーとして何十年も成功を収めてきた家族連合を恨んでいて、数十年前の出来事に言及した真実、半端な真実、そして全くの嘘を織り交ぜて、家族連合は反社会的な組織であり、高額な寄付金とその価値を大きく上回る金額で信者に物を売る「霊感商法」によって資金を調達していて、厳しい教育のために二世信者が苦しんでいる、と主張しました。これに記者会見やマスコミによる前代未聞の誹謗中傷キャンペーンが続きました。

私たちは信者に対する過剰な献金圧力や、すべての二世信者が同意するわけではない厳格な教育が、多くの宗教団体に存在する問題であることは認めます。しかし、家族連合に関しては、フリージャーナリストによって虚偽であると暴露された内容も含む過激派弁護士や「背教者」となった元信者の話だけに耳を傾け、不公正かつ一方的に報道されていることが分かります。

「霊感商法」とは、家庭連合の信者がかつて行っていた活動を指すために、反対派が作り出したレッテルです。家庭連合は2009年、熱狂的な信者に対して、このような行動を中止するよう勧告し、以後それらの行動を禁止する公式宣言を発表しました。安倍晋三氏が暗殺される前、2009年以降に発生した家庭連合会員による「霊感商法」に対する訴訟は、ほんの一握りまで減少していました。メディアで取り上げられている事件の多くは、15年以上前に起きたとされる事件です。敵対する弁護士たちは違うと言いますが、事実は彼らの主張とは一致せず、いわゆる「霊感商法」を行った日付と、その数年後に始まった訴訟の日付を悪意を持って混同させています。

寄付を募り、子供たちを厳格に保守的な方法で教育することに関しては、家庭連合が他の多くの宗教団体と大きく異なる方法で行動しているという証拠はありません。

家庭連合の解散は、民主主義国家ではなく、中国やロシアでの慣行を彷彿させる措置であり、その罪状とは釣り合わないし、家庭連合の遵法行動とも一致しません。また、特定の弁護士や政治団体、メディアから不人気な他の宗教的少数派に対して同様の行動を許す道を開くことになります。

私たちは日本の当局と裁判所に対し、信教の自由を含む民主主義の原則を約束する国としての日本のイメージを永遠に汚すような措置を進めないよう強く求めます。米国務省の国際信教の自由オフィスの元特使であるスーザン・ジョンソン・クック大使と、国際信教の自由サミットの共同議長であるカトリーナ・ラントス=スウェット博士がReal Clear Politicsの9月の論説で書いたように、解散を迫ることは、「人気のない宗教的少数派が、中傷的なメディア・キャンペーンによって地ならしがされた上で『解体』されるような」全体主義体制と日本を同列に並べることになります。

これは、我々が尊敬し愛するようになった日本ではありません。

2023年10月14日

マルコ・レスピンティ、宗教の自由と人権に関する日刊誌『Bitter Winter』ディレクター・イン・チャージ

ティエリー・ヴァレ、CAP-LC(良心の自由のための団体と個人の連携)会長

マッシモ・イントロヴィニエ、CESNUR(新宗教研究センター)共同設立者兼マネージング・ディレクター

エリック・ルー、EIFRF(宗教の自由のための欧州宗教間フォーラム)議長

フランチェスコ・クルト、Fedinsieme[Faiths Together]共同設立者

アレッサンドロ・アミカレッリ、FOB(欧州信仰自由連合)会長

アーロン・ローズ、FOREF(欧州宗教自由フォーラム)会長

ハンス・ノーズ、信教の自由のためのゲルハルト・ノーズ財団理事

ウィリー・フォートレ、HRWF「国境なき人権」共同創設者兼ディレクター

ラファエラ・ディ・マルツィオ、LIREC(宗教・信仰・良心の自由に関する研究センター)マネージング・ディレクター

ロジータ・ショリテ、ORLIR(難民の宗教的自由の観察機関)会長

カメリア・マリン、ソテリア・インターナショナル副所長

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ24


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。昨年7月8日に起きた安倍晋三元首相暗殺事件以降の日本における家庭連合迫害の異常性を、海外の有識者がどのように見ているかを理解していただくうえで大変有益な内容であると思われたので、私の個人ブログでシリーズ化して紹介することにした。

善行は報われないこともある:日本における世界平和女性連合に対する信じられない迫害

10/12/2023MASSIMO INTROVIGNEA

彼女たちの活動は数々の賞を受賞し、国連の認定も受けました。しかし統一教会との「つながり」を非難され、彼女たちの人生は今、地獄と化しています。

マッシモ・イントロヴィニエ

堀守子会長
堀守子・世界平和女性連合日本会長

『Bitter Winter』は安倍晋三元首相暗殺事件後の日本の動向と、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)にその責任を負わせようとする試みを、非常に懸念してきました。暗殺者はその凶悪な犯行の動機として、安倍首相が家庭連合に協力したことに報いるつもりだったと供述しました。2002年に彼の母親が家庭連合に過剰な献金をして破産したため、彼はその宗教団体を憎んでいたのだというのです。この事件後、主に政治的理由から家庭連合に敵対する弁護士その他の人々によって、古いキャンペーンが再燃しました。彼らは、何十年もの間成功裏に反共産主義活動を後援してきた家庭連合に恨みをもっていたのです。彼らは、家庭連合は、信者に物品を本来の価値を過剰に上回る高額な値段で販売する「霊感商法」や、不適切な圧力による献金によって、自己資金を調達している反社会的な組織であり、教会で生まれた二世信者は虐待され、精神的苦痛を受けていると主張しています。記者会見や前代未聞のメディアによる誹謗中傷キャンペーンが続き、政府が宗教団体としての家庭連合の解散を求める決定を下すまでに至りました。

解散は、適正手続後に、裁判所によって宣言されるべきものです。しかし、すでに日本では、憲法及び国際人権法によって禁止されている差別的行為によって、家庭連合の信者や関連する団体の会員を標的にした魔女狩りが行われています。その格好の例は、国連の経済社会理事会(ECOSOC)において25年以上にわたって総合協議資格を維持してきたNGOである、世界平和女性連合インターナショナル(WFWPI)です。WFWPIが1997年に得た「総合協議資格」は、何千ものNGOに与えられている「特殊諮問資格」とは異なります。総合協議資格は比較的珍しいとされています。この資格は、ECOSOCの規則に従い、「広範な地理的範囲を持つ、かなり大規模で確立された国際NGO」で、「いくつかの分野」において国連の目的に「実質的かつ持続的な貢献」を提供しているNGOに対し、徹底した調査を経て与えられます。

WFWPIが1992年に、当時統一教会と呼ばれていた家庭連合の指導者、韓鶴子博士とその亡き夫である文鮮明師によって設立されたことは間違いありません。このことは決して隠されているわけではなく、同団体のウェブサイトで明確に説明されています。一方、WFWPIの目的は家庭連合のための布教ではなく、慈善事業や教育活動を通じて国際的に女性を支援することにあります。WFWPIの活動に参加する人々は、宗教に属しているか、あるいは無宗教であるかを問いません。

しかし日本では、家庭連合解散の裁判結果を待つまでもなく、WFWPIは民主主義国家では前例のない、信じられない差別的キャンペーンの犠牲になっているのです。『Bitter Winter』はWFWPI・WFWP Japanの堀守子会長にインタビューしました。彼女の主張はすべて文書によって裏付けられています。信じられないように思えるかもしれませんが、彼女が語るストーリーは悲劇的な現実なのです。

日本におけるWFWPIの活動についてもっと教えてください。

ご存知の通り、WFWPIは1992年に設立された国際的NGOです。WFWP Japanはその日本支部です。1994年に、WFWP Japanは海外プロジェクトを開始し、50ヵ国で100以上のプロジェクトを実施してきました。私たちの主な焦点は、開発途上国の貧困に苦しむ地域の女性と子供たちの教育です。私たちの献身的なボランティア活動は、あらゆる宗教や信条を持つ女性達に利益をもたらすプロジェクトを通じて重要な貢献をし、未来への希望を及ぼしてきました。数えきれない程の多くの国連機関や他の国際機関とも緊密に連携し、世界各国での活動に対して高い評価を受けてきました。WFWP Japanのニジェールとセネガルでのプロジェクトは、国連のウェブサイトでNGOの “ベスト・プラクティス “として紹介されました。

ネパールにおける教育支援
WFWP Japanは、2011年よりネパールのエカタ・アカデミーの生徒たちの学費や教材を支援しています。同校はWFWPによって建設され、2007年に開校、2017年以降は独立して運営されています。出典 WFWP Japan

1987年以降、統一教会に反対するキャンペーンを行っている反カルト団体、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、WFWP Japanは家庭連合の「隠れ蓑」に過ぎないと主張しています。これらの主張にどう答えますか?

「隠れ蓑」という言葉には、何か隠されたものや欺瞞があるという意味が込められています。実際には、私たちのすべての出版物は、私たちの創設者が文鮮明師と文鶴子女史であることを認めています。私自身も、自分が家庭連合の信者であることを一切隠していません。WFWP Japanが、資金面・組織運営面双方で、家庭連合から独立した組織であることもまた事実です。私たちは家庭連合のために布教することも、資金集めをすることもしていません。WFWP Japanが援助・支援する女性たちも、ボランティアの人たちも、あらゆる宗教を信仰している人たちがおり、場合によっては無宗教の人もいます。WFWP Japanの会員には、無神論者、キリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒、そして創価学会や真如苑を含むさまざまな教団や宗教の信奉者がいます。また、会員の政治的意見も、保守からリベラルまでさまざまです。

安倍元首相暗殺後、『Bitter Winter』は、実に酷い偏見の例として、あなた方の有名なボランティア奉仕者である宝山晶子さんの話を取り上げました…。

昨年、WFWP Japanのモザンビーク派遣員である宝山晶子さんは、在モザンビーク日本大使館から電話を受け、外務省が彼女の優れた教育活動に対して授与した大臣表彰の取り消しを決定したと知らされました。この事件は、日本共産党の穀田恵二議員が国会の予算委員会で、外務省が「統一教会の関連団体」に賞を与えたとして非難したことから始まったものです。

穀田氏は、モザンビークにあるWFWPの学校が統一教会の教義を教え、生徒たちに布教していると非難しましたが、それは事実ではありません。表彰が取り消されたことは、宝山さんだけでなく、30年にわたってモザンビークの学校とその生徒たちを支援してきたWFWP Japanの会員にとっても衝撃的なものでした。宝山さんによると、日本大使館こそが外務大臣表彰に推薦したのだそうです。彼女は、賞状と受賞の記念品として受け取った風呂敷を返却するよう求められました。

モザンビークにあるWFWPの学校は、数十年にわたる植民地支配と内戦に苦しんでいたこの国の子供たちに、教育と未来への希望をもたらすために設立されました。WFWPは、地域社会の要請を受け、貧困に苦しむ地域に学校を設立することを決定しました。30年が経ち、女子生徒が全体の50%以上を占めるようになりました。私たちの学校は、その高い教育水準が認められ、賞賛を受けています。外務省が表彰を取り消した後も、WFWPは在日モザンビーク大使館から感謝状を受け取りました。明らかに、モザンビークの人々は、日本の一部の政治家や反カルト主義者による誹謗中傷キャンペーンからではなく、直接、私たちの学校について見聞きした真実を知っているのです。

モザンビークの太陽中学高校
宝山晶子氏が働いているモザンビークの太陽中学高校。出典 WFWP-USA。

全国弁連はあなた方の弁論大会も攻撃し、かなりの被害を及ぼしたと聞いていますが…。

私たちは女子留学生日本語弁論大会を行っていることで全国の大学で有名になっています。これは女子留学生の日本語能力を競うコンテストです。今年6月15日、全国弁連はこの弁論大会に抗議する声明を発表し、自治体や大学に対し、WFWP Japanによる公共施設の使用を許可しないよう要請しました。しかし、弁論大会は言語に関するものであり、宗教や家庭連合とは何の関係もありません。

WFWPの会員はこの抗議に?然としました。WFWP Japanは26年前から、大使館や大学、自治体などの協力を得て、このコンテストを開催してきました。日本に来る女子留学生を支援する方法として、広く称賛されてきました。

弁論大会はWFWPの主要プロジェクトの一つであり、女子留学生を支援するだけでなく、日本国民に留学生の視点を通して日本を理解する貴重な機会を提供してきました。私たちは、女子留学生の支援と国際理解促進のために、このプロジェクトを実施していることに誇りを持っています。

全国弁連の抗議と自治体への要請により、WFWP Japanのいくつかの地方支部は特定の公共施設を使用できなくなりました。5つの自治体が弁論大会のために公共施設を使用することを拒否しました。一部の大学関係者は、WFWP弁論大会への参加を留学生に許可しただけで、大学が「家庭連合に協力している」と非難されたと主張しています。

これらはもはや一過性の出来事ではありませんね……。

残念ながらそうですね。WFWP Japanの会員は、現在においても過去においても家庭連合の信者でかった人たちを含め、非常に困難な状況に置かれています。彼女たちの人生は打ち砕かれ、日々さまざまないじめや差別を受けています。高崎市は、「WFWPは住民に恐怖心を与える団体である」として、WFWP Japanの支部に公共施設の使用を許可しないと通告しました。WFWPはボランティア団体として、地元住民にも評価されているプロジェクトを通じて、30年にわたり地域社会に貢献してきたことを考えると、この通告は非常に理不尽でした。

紀藤弁護士
反カルト全国霊感商法対策弁護士連絡会の中心人物、紀藤正樹弁護士(スクリーンショット)

WFWP Japanの多くの地方支部は、それぞれの自治体にボランティア団体として登録しています。これらの自治体の中には、私たちの登録を一方的に取り消したところもあります。

9月には、2つの印刷会社が私たちの資料の印刷をいったんは引き受けたにもかかわらず、その後に拒んできました。そのうちの1社は、「あなた方は統一教会と関係があるから、当社の評判に影響するため印刷できない」と言いました。日本では、私たちが伝えたい話を印刷することもできない上、言葉で伝えることさえも難しい状況にあります。いくつかのホテルは、全国弁連やメディアから攻撃されることを恐れて、私たちに部屋を貸すことを拒否しています。私たちは記者会見を2回開き、自治体に数多くの抗議文を提出し、さまざまな報告書を発表してきました。しかし残念なことに、私たちの主張はメディアで限定的にしか報道されませんでした。このことは、日本のメディアのほとんどが全国弁連のプロパガンダに盲従し、真実の報道を優先していないことを示しています。

私たちの被害はますます深刻になっており、家庭連合の解散プロセスが進めばさらに悪化する以外にないと予想されます。このような状況は、日本の会員だけに影響を及ぼすものではありません。WFWPの海外支援活動によって支えられ、私たちの援助に頼っている2万人以上の受益者の幸福や、場合によっては命さえも危険にさらしているのです。もし私たちが日本で通常の活動を行うことや、支援金を集めることが許されないのであれば、貧困国の何万人もの女性や子供たちを支援しているプロジェクトを中止せざるを得なくなるでしょう。私たちが提供する教育、食料、住居を奪われるなら、彼女たちもまた、日本における全国弁連、日本共産党、及び誹謗中傷キャンペーンの犠牲者となるでしょう。

この迫害にどう対処するつもりですか?

国連公認のNGOとして、WFWPIは過去30年間、女性のために、特に最も貧しく貧困にあえぐ人々のために優れた活動を行なってきたことで、国連でもよく知られています。このような状況から、私たちは国連人権委員会に現状を訴えました。WFWPとその会員、そして私たちから援助を受ける人々に対する迫害と妨害は、宗教的憎悪の行為であり、明らかな人権侵害です。

日本の風潮からも、フェイクニュースを流したメディアがそれを訂正するとは思えません。繰り返しますが、あらゆる宗教の、あるいは無宗教の何千もの女性たちに罪があるというなら、唯一の罪は、世界中の他の女性たちを助けるためにボランティアとして何十年も働いてきたことです。にもかかわらず、彼女たちはこれからも嫌がらせを受け、差別され、いじめられ続けるでしょう。「善行は報われないこともある」という諺がありますが、この諺は文字通りWFWP Japanの会員に当てはまります。善行のために、彼女たちの人生は地獄に変わりつつあります。私は、国際的な支援だけがこの状況を変えることができると信じています。人権と信教の自由を守ることを使命とするすべての人々に対して、この迫害をやめるべきだとする声明を発表していただき、日本政府に伝えて欲しいと訴えたいと思います。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e5%96%84%e8%a1%8c%e3%81%af%e5%a0%b1%e3%82%8f%e3%82%8c%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%93%e3%81%a8%e3%82%82%e3%81%82%e3%82%8b%ef%bc%9a%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e4%b8%96%e7%95%8c/

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憲法改正について11


4.各政党の憲法改正に対する主張はどうなっているか?(続き)

 現在の国政政党がそれぞれ、憲法改正に対してどのような主張をしているかについての説明の続きです。

憲法改正について図⑱

 日本維新の会は、教育無償化など、4項目の憲法改正案を提示しています。①教育の無償化、②地域主権、③憲法裁判所の設置、④9条への自衛隊規定、を柱として憲法改正に賛成しています。

憲法改正について図⑲

 国民民主党は、9条は現実と乖離しているので解決策を提示すべきだと主張し、自衛権の明記を提案しています。4つの柱として、①人権保障のアップデート、②地方自治の発展・強化、③統治のあり方の再構築、④国家目標の設定、を挙げています。

憲法改正について図⑳

 立憲民主党は、憲法を改正しようとまでは言っておらず、憲法について積極的に議論するという意味での「論憲」を掲げています。したがって、具体的な憲法改正案はまとめていません。しかし憲法に関して主張している内容を見る限りでは、どちらかというとリベラルな方向に憲法を改正しようとしているように見えます。

憲法改正について図21

 日本共産党は、憲法のすべての条項を守ると宣言しており、完全な「護憲」の立場です。「自衛隊明記」と「緊急事態条項」は、日本の平和と民主主義にとって危険であると主張しています。ジェンダー平等社会など、憲法の精神を生かした新しい日本をつくることが重要なのであって、憲法改正は必要ないというのが共産党の立場です。

憲法改正について図22

 社会民主党は「護憲平和」「改憲阻止」が党の一丁目一番地であると言っているように、「護憲」の立場をとっています。

憲法改正について図23

 れいわ新選組は、「いま憲法を変える必要はない」と言っています。必要なのは、憲法が守られていない社会状況を変えることであり、自民党の憲法改正案には反対だと言っています。

憲法改正について図24

 国政に参加している政党の改憲に関する立場を一枚の図にして、賛成と反対という軸でマッピングするとこのようになります。改憲に賛成で、具体的な改憲案を持っているのは自民党、日本維新の会、国民民主党です。中間には改憲案はないけど議論しましょうというグループがあり、それが公明党、立憲民主党、NHK党です。改憲に反対しているのが共産党、社民党、れいわ新選組ということになります。これが改憲を巡るいまの政治地図です。そこで自民党は日本維新の会、国民民主党、さらには公明党の協力も取りつけて賛成の方向に持って行こうとしているのです。

憲法改正について図25

 さて、2022年5月23日に「新しい憲法を制定する推進大会」が開催されました。この大会には公明党、日本維新の会、国民民主党の代表が参加し、憲法審査会で議論に参加している各党の代表が挨拶をしました。国民民主党は玉木代表が挨拶をしました。このように昨年5月の時点では、複数の政党が協力して、憲法改正の機運が盛り上がっている雰囲気だったのです。

憲法改正について図26

 この大会で、当時存命であった安倍元首相が以下のように講演をされました。
「憲法審査会でも9条について議論がなされ、コロナ禍を経験し、緊急事態条項の必要性についても国民的な理解が高まってきました。改憲の発議をするために衆参両院で必要な3分の2を形成する状況は整いつつあります。しっかり国会で議論して国民の審判を受けるべきときがやってきました」

 憲法改正は安倍首相の悲願でした。ですからあの事件がなければ、そのまま憲法改正に向かって進んでいた可能性が高いのです。

憲法改正について図27

 そして2022年の夏の参院選で自民党が単独過半数を獲得します。この選挙の結果により、衆参両院で自民、公明、維新、国民を合わせた「改憲勢力」が3分の2を越えることになったのです。これにより、衆参両院で改憲発議に必要な3分の2ラインを突破することができたのです。このように数的基盤は整ったのですが、あの事件によってまったくそのような機運はなくなってしまい、「黄金の三年間」はどこかに吹っ飛んでしまったのです。その意味で、あの事件は憲法改正に対しても大きな影響を与えたと言えます。

結論(私見)

 最後にあくまで私見ということで、結論を述べたいと思います。
・日本の憲法は、日本国民の手により、自主的に制定すべき。
・憲法は時代に合わせてアップデートすべき。
・憲法は「国のかたち」を表す。前文は書き変えるべき。
・平和主義を維持しつつ自衛権を認め、自衛隊を明記すべき。
・緊急事態条項を設けるべき。
・家族の尊重・保護の規定を設けるべき。

憲法改正について図28

 最後に参考文献を紹介します。西修先生の『”ざんねんな”日本国憲法』はこのプレゼンの主要なソースとなっております。西修先生とはかなり立場が違いますが、小林節先生の『白熱講義!憲法改正』も、ある部分においては参考になりました。『池上彰の憲法入門』も読みましたが、これはあまり得るものはなかったというのが私の感想です。

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憲法改正について10


2.憲法学者の中で護憲派が主流である理由

 日本の憲法学者の中に自衛隊が違憲であると言ってみたり、護憲を唱える人が多いのは、憲法学者の中に左翼的な人物が多いからです。これは戦後処理の問題と関わっています。

 GHQは1946年に戦前の日本の政策に貢献した人々の公職追放を行いました。これにより20万人以上の人々が職を追われたわけですが、それでも政界や実業界では有力な人々が復帰しました。その中に松下幸之助や岸信介などが入っていました。

 しかし、さまざまな業界で公職復帰がなされる中で、公職追放された人々がまったく復帰しない二つの重要な分野がありました。それが大学とジャーナリズムです。主要大学の主な教授のうち、戦前、政府に利用価値があったような学者はみな追放され、その空席を埋めたのは主として戦前の日本をひっくり返したいと思っていた人、コミンテルンと直接・間接的に関係があった人たちでした。

 たとえば京都大学の瀧川幸辰や一橋大学の都留重人などは、明らかに左翼的思想の持主であったのですが、彼らは教授、法学部長、総長、学長になっていきました。ですから戦後、大学とジャーナリズムというこの二つの分野は左翼的な人々によって牛耳られてきたと言っても過言でないのです。

 こうした左翼的な学者たちの言うことを聞く弟子たちが、雨後の筍のごとく誕生したばかりの新制大学に送り込まれました。大学教授の多くは終身雇用です。大学教授は学問に殉じた職業なので、他は何もできなくてもよく、学説が自分の人格になってしまいます。学説イコール人格なので、教授が後継者を選ぶ際には、自分と同じ学説の人を選ぶようになります。教授は准教授や助教を選出できます。だから大学の人事は、急激に変わらない上に、同じ学説で統一されてしまうのです。

 国立なら東京大学と京都大学、私立なら早稲田大学などが学閥を作って思想集団になっています。主流の学説を支配しているのが東大学説です。こうした中では、護憲派の学者でなければ法学部で生き残れないという事情があるのです。すると憲法学者は軒並み護憲派というような状況になってしまうのです。

3.日本国憲法は世界で唯一の平和憲法か?

憲法改正について図⑮

 よく「日本国憲法は世界で唯一の平和憲法なのでこれをなんとしても守らなければならない」とか「憲法9条を世界遺産に登録しよう」などという話を聞きますが、憲法第9条は世界的に見ても極めて珍しい平和憲法なのでしょうか? 世界の憲法を比較研究してみれば、こうした主張は「井の中の蛙」的な発言であることが分かります。

 西修氏の調査によれば、189カ国中、161カ国の憲法に何らかの形で平和条項があることが分かりました。そもそも、日本国憲法が放棄することを宣言している「紛争を解決するための手段としての戦争」とは侵略戦争を意味し、その放棄は1928年の「パリ不戦条約」に明記されていたのです。パリ不戦条約は、当事国が国際紛争解決のために戦争に訴えることを非とし、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを宣言するとともに、国際紛争を平和的に解決すべきことを定めています。これは第一次大戦後、世界から戦争をなくすことを意図して作られたものです。

 日本国憲法の9条1項は、1928年のパリ不戦条約と1945年の国連憲章などの国際法規を前提にしてつくられたものです。これらの文言を読み比べてみると、ほぼそっくりそのまま書き写していることが分かります。日本国憲法はこれらの国際法規範を遵守すると言っているにすぎないのであり、9条1項は日本独自のものでも、世界で唯一のものでもありません。

 西修氏の調査によると、成典化憲法をもつ189カ国中、161カ国(85.2%)が何らかの形での平和条項を持っています。例えば、平和政策の推進、国際協和、非同盟、中立、軍縮、国際紛争の平和的解決などの表現がなされています。その意味で「平和を希求する」という意味の文言は世界のほとんどの国の憲法にあることが分かります。

 日本国憲法9条1項と同じ「国際紛争を解決する手段としての戦争放棄」を謳っているのは、アゼルバイジャン、エクアドル、イタリア、ボリビアの憲法です。しかし、これらの国々の憲法には兵役の義務規定があるのです。ですから、平和条項と戦力の不保持は必ずしも同義ではないのです。

4.各政党の憲法改正に対する主張はどうなっているか?

 それでは現在の国政政党はそれぞれ、憲法改正に対してどのような主張をしているのでしょうか?

憲法改正について図⑯

 自由民主党にとって、憲法改正は結党以来の党是となっています。現在自民党は、①自衛隊の明記、②緊急事態対処条項、③参議院の合区の解消、④教育環境の整備、という4つの柱で憲法改正をやろうとしています。

憲法改正について図⑰

 しかし、同じ政権与党であっても公明党は憲法改正に対してそれほど積極的ではありません。公明党の立場は、制定時に想定されなかった理念や課題を踏まえてそれを憲法に書き加えるという意味の「加憲」を検討するというものです。そして現行憲法は戦後民主主義の基盤を築いたと評価しており、9条は堅持すべきだと考えています。ですから同じ政権与党でも、憲法改正に関しては自民党と温度差があるのです。

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