(訳者注:米国心理学会は、学会として法廷助言書を提出した後、シンガー博士等が反発し、学会を告訴する恐れなどが生じたため、法廷助言書から「米国心理学会」の名称を取り下げました。案の定、法廷での発言権を失ったシンガー博士は、米国心理学会を相手取り、名誉棄損、詐欺、陰謀教唆などで訴えました。しかし、彼女の主張は、ここで紹介するように、一九九四年六月カリフォルニア州の上級裁判所で、「原告(シンガー博士)は、訴訟原因の勝訴可能性について十分な証拠を提出していない。特に原告は、被告(米国心理学会)が第三者に虚偽の陳述をしたとの事実を証明できていない」として敗訴しています。)
カリフォルニア州上級裁判所
アラメダ郡
一九九四年六月十七日提出
アラメダ郡上級裁判所書記(署名)
マーガレット・シンガー:原告
対
米国心理学会:被告
判件番号:730012ー8
本件は一九九四年六月十日、本法廷第八十一部においてジェームズ・ラムデン裁判長のもとで審理された。本法廷は記録および被告側から提出された書類(米国心理学会の法廷助言書)を検討し、法廷における弁護人の弁論を検討した結果、以下のように判決する。
本件は名誉毀損、詐欺、陰謀教唆などの容疑にかかわるものだが、明らかに問題とされているのは、学術および専門分野での公共の討論に対し、憲法修正第一条が適用されるかどうか、という点である。本件の論争者たちは、心理学のある理論について長期にわたる論争の、その相対立する双方である、といえる。
原告が訴えた「スピーチ」の内容は、本件以前の訴訟、つまり被告の名前が不正手段をもって文書に加えられた容疑に関する訴訟の中で出てきたものだ。この「スピーチ」はその内容が法的文書の中の陳述として出されたものであるかどうかにかかわりなく、明らかに公的問題に対するコメントとして憲法で保護されている。本法廷には、民法典四七b項の特権を法的手続きによって検討する必要性がない。
原告は訴訟原因の勝訴可能性について十分な証拠を提出していない。特に、原告は、被告が第三者に虚偽の陳述をしたとの事実を証明できていない。
このため民法典四二五・一六に基づき、被告に対する訴訟原因のすべてを却下されたいとの被告側特別申し立てを受け入れることとする。しかし弁護費用に関しては別の申し立てを行うように。
一九九四年六月十七日
上級裁判所判事
ジェームズ・ラムデン