Moonism寄稿シリーズ04:2019年10-11月号


 私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップする「Moonism寄稿シリーズ」の第4回目です。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。今回は、2019年10-11月号に寄稿した文章です。

第4講:宗教間の和解による世界平和実現をめざすUPF

 2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロは世界に大きな衝撃を与えました。その背後に、米国に反感を持つイスラム教の過激組織があると指摘されると、キリスト教を中心とする西洋社会とイスラム世界の対立が先鋭化し、世界は今もテロに怯えています。今回はこの事件の背景を分析すると同時に、文鮮明師の主導してきた宗教間の和解による平和実現の道を紹介します。

<ハンチントンの「文明の衝突」>
 9.11同時多発テロが起きたとき、多くの知識人がサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」という言葉を思い出しました。そしてこの事件を境に、世界平和に対する考え方が大きく転換したのです。

 冷戦時代には世界平和の問題といえば「民主主義」対「共産主義」というイデオロギーの問題でした。しかし、1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊し、1991年12月25日にソビエト連邦が崩壊することによって冷戦時代は終焉し、「新世界秩序」の出現が期待されました。東西冷戦終了後しばらくは、フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』(1992年)で主張したような「21世紀の世界は、民主主義と市場経済がグローバルに定着するだろう」というアメリカ的世界像がもてはやされました。

 しかし、これに対して大きな「ノー」を突き付けた人物がハンチントンでした。1996年に出版された彼の著書『文明の衝突』の中心的な主張は、21世紀の世界は、民主主義によって一つの世界が生まれるのではなく、数多くの文明の違いに起因する、分断された世界になるというものでした。すなわち、ポスト冷戦時代には、異なる文化を持つ国家同士が対立を深めていくだろうと言ったのです。9.11同時多発テロは、この「文明の衝突」の予言が成就したと考えられました。

<キリスト教とイスラム教の「宗教の衝突」>
 ハンチントンは『文明の衝突』の中で、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、イスラム、アフリカ、ヒンドゥー、仏教、中国、日本の9つの文明圏に世界を分割していますが、このように文明圏を分けている中心的な要素はまさに宗教です。したがって、文明の衝突とはすなわち「宗教の衝突」を意味するわけです。

 世界の主要宗教の人口分布を見ると、総人口の33%がキリスト教徒であり、20%がイスラム教徒であるとされています。したがって、キリスト教とイスラム教が対立するようになれば、全世界の人口の半分以上が争いに巻き込まれることになるのです。このように21世紀の平和に対する脅威として、文明の衝突、宗教間の対立が大きくクローズアップされるようになりました。

文明の衝突が示す9つの文明圏

<「ムジャヒディン」からタリバン、そして9.11へ>
 冷戦時代末期の1988年に公開された映画に、シルベスター・スタローン主演の「ランボー3:怒りのアフガン」という作品があります。この映画の背景には、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻し、1988年に撤退を決定したという歴史的事実があります。映画の内容は、米国の兵士ランボーと「ムジャヒディン」と呼ばれるイスラム教の民兵が協力してソ連軍の部隊と戦うというもので、キリスト教徒とイスラム教徒が協力して、無神論者の悪者であるソ連を倒したという構図になっているのです。ラストのテロップには、「この映画をすべてのアフガン戦士たちに捧げる」という言葉が流れます。

 実際にアメリカはソ連に対抗するために、CIAを通じてこのようなゲリラ組織に武器や装備を提供していたということですから、映画そのものはフィクションとはいえ、当時のアフガン情勢を反映していると言えます。しかし、皮肉にもそのムジャヒディンは後にタリバンなどの武装勢力となり、アメリカに反旗を翻すようになります。そしてそれがイラク戦争、9.11同時多発テロ、「イスラム国」を自称するISILの出現など、今日のアメリカを悩ます中東情勢へとつながっていくのです。「昨日の敵は今日の友」という言葉がありますが、ムジャヒディンに関してはまさにその逆になってしまったのです。

 冷戦終了後、欧米流のグローバリゼーションが政治、経済、軍事、文化など全ての分野で世界を圧倒的に主導してきました。共に血を流したにもかかわらず、冷戦終結の恩恵を受けることができずに取り残されてしまったイスラム世界には、こうした欧米化の波に対する反発や抵抗があり、それがテロリズムの動機となっているのです。テロ自体は許せませんが、私たちはその背景にある宗教間の対立に目を向ける必要があります。

<文鮮明師の宗教和合運動>
 文鮮明師は生涯をかけて宗教間の和解と調和のために働いてこられましたが、その成果物の一つが、世界の主要な宗教の経典の言葉を、テーマごとにまとめた『世界経典』です。それにより、世界の諸宗教の教えの約七割は同じことを言っており、残りの三割が各宗教の特徴を表す言葉であることが明らかになりました。大部分同じことを言っているにも関わらず、なぜお互いに争うのかを各宗教が内省する機会を提供したのです。

 もう一つが、2003年以来、ユダヤ教、キリスト教、イスラムの聖職者らが参加し、イスラエル、パレスチナ自治区、ヨルダン、レバノンなどで継続的に開催されている「中東平和イニシアチブ」です。中東三大宗教の和解の儀式として始まったこの運動は、いまやシリア問題やパレスチナ問題など、具体的な問題に対する解決策を討議するフォーラムに発展しています。

2003年10月22日、中東平和イニシアチブの一環としてエルサレムの旧市街で平和行進を行う平和大使ら(筆者撮影)

2003年10月22日、中東平和イニシアチブの一環としてエルサレムの旧市街で平和行進を行う平和大使ら(筆者撮影)

<世俗化と根本主義に二極化される世界を癒す>
 西洋の近代化は、宗教の社会的影響力が低下していった「世俗化」のプロセスによって特徴づけられます。これはイスラム世界から見れば「文明の堕落」にほかならず、この世俗化の波がイスラム世界に浸透してくることに対する反発が「イスラム根本主義」です。今日の世界は、極度に世俗化された社会と、かたくなに宗教的価値を守ろうとする根本主義とに二極化されつつあります。この溝を埋め、分断を癒すには政治家と宗教者の双方の努力とネットワークづくりが必要です。UPFが世界的に展開している二大プロジェクトである「世界平和議員連合(IAPP)」と「平和と開発のための宗教者協議会(IAPD)」は、宗教間の和解と協力を推進すると同時に、宗教的な知恵が平和構築に貢献しうる政治システムの確立を目指しています。

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Moonism寄稿シリーズ03:2019年8-9月号


 前々回から、私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップし始めました。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第3回の今回は、2019年8-9月号に寄稿した文章です。

第3講:日本の発展とアジアの平和のための日韓トンネル

 少子化による人口減少の問題を抱えた日本が今後も持続的な経済発展をしていくためには、アジアとの連結が不可欠です。今回はそのための画期的なプロジェクトである日韓トンネルの意義について紹介します。

<日本の抱える課題:人口減少とアジア外交>
 日本の人口を長いスパンで見れば、江戸時代には約3000万人で一定していたのが明治期から一挙に生産性が高まって急上昇し、2010年の約1億2800万人をピークにそれ以降は減少期に入り、2053年には1億人を切ると言われています。さらに現在の日本のGDPは世界第3位ですが、2050年には8位に落ちると予想されています。要するに、これからの日本は一国だけの努力では衰退するしかないという状況なのです。

 一方、今後の世界の経済の中心となっていくのはアジアであるとされ、日本の経済発展にとってはアジア地域から対日投資を呼び込むことが不可欠となります。北東アジアの主要な構成国である日本、韓国、中国は、三カ国の人口総計が約15億3千万人(世界の20%強)、GDP総計が世界全体の22%、貿易額でも世界の20%を占めており、世界の成長センターであるアジアの中でも中核となる国々です。しかし、これら三カ国に北朝鮮を加えた北東アジア地域は、冷戦終焉後もイデオロギー的な対立に加えて複雑な「歴史問題」を抱えており、地域協力や共同体形成が最も遅れた地域になっています。イギリスとヨーロッパがユーロトンネルで結ばれ、EUが統一経済圏を形成している状況に比べれば、玄界灘と38度線によって分断された東アジアは、信頼性の高い効率的な域内輸送システムを欠いており、それが交易拡大の大きな制約となっています。

<日本の課題を解決する日韓トンネルプロジェクト>
 こうした問題を一気に解決する画期的なプロジェクトが、日韓海底トンネルの建設です。これからの日本の経済発展には、アジアの成長のダイナミズムを取り込んでいくことが肝要であり、そのためには東アジアとの円滑な関係が欠かせません。現在、日本と韓国の間では経済的な相互補完の関係が強まりつつありますが、その物流ルートは海運と航空輸送に頼らざるを得ませんでした。そこに陸運が加わることにより、日韓の経済交流が加速されると同時に、九州北部と韓国南部が一つの経済圏に発展していくことになります。さらに将来、中国の民主化が進み、日韓中の経済交流が拡大する時代を迎えれば、日韓トンネルはさらに大きな北東アジア経済圏を形成するための動脈となることでしょう。

 2011年1月に韓国交通研究院は日韓トンネルの建設は経済性に乏しいとする試算結果を発表していますが、これは南北分断という韓半島の現状を固定的にとらえて分析した結果にすぎません。将来、韓半島の平和的統一が実現すれば、半島北部の社会資本整備事業や鉱物資源、観光資源の開発が活性化し、ヒト、モノ、カネの流れが加速することが予想されます。さらにその流れが中国やロシアにまで連結されるとき、日韓トンネル建設事業は十分に採算の取れるものになると考えられます。

日韓トンネル標準断面図

日韓トンネル標準断面図


日韓トンネル建設のルート。唐津から壱岐、対馬、巨済島を経て釜山に至る。

日韓トンネル建設のルート。唐津から壱岐、対馬、巨済島を経て釜山に至る。

<日韓トンネルをアジアハイウェイ計画の一部に>
 パンアメリカン・ハイウェイやヨーロッパ・ハイウェイのような国際道路網をアジアにも構築しようというアイデアは、1950年代半ば頃から国連を中心に検討がなされ、1959年に国連アジア極東経済委員(ECAFE)総会でアジアハイウェイ計画が採択されました。その後、アジアハイウェイは国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の管轄となり、現在は日本を含むアジアの32カ国が同プロジェクトに参加しており、総延長約14万2千キロ国際道路網が形成されています。しかし、日本と韓国を結ぶルートに関しては、釜山と九州北部の間をフェリーで結ぶことになっています。この部分をトンネルに変えることが、国際的な環境造成の第一歩となります。

 日韓トンネルは、日韓両国の政府と国民が一致協力して取り組まなければ実現困難なプロジェクトです。そのためには、両国民の間に横たわる相互不信と敵対感情を克服しなければなりません。それは「近くて遠い国」と言われる両国の関係を「近くて近い国」に変えるための未来志向の事業なのです。それは単に両国の経済交流を拡大させるだけでなく、長期的な視点に立てば、北東アジアに広域経済圏を構築し、同地域に平和と安定をもたらす「平和のトンネル」となるでしょう。現在の日韓関係は「戦後最悪」とも言われていますが、こうした現状を打開するためにも、未来志向のプロジェクトが必要なのです。

 1994年にドーバー海峡の海底トンネルが完成し、ユーロスターでロンドンとパリが結ばれて、今年でちょうど25年になりました。ドーバー海峡トンネルができたのは、イギリスとフランスが仲が良かったからだという人がいますが、実は1986年に海峡トンネルの建設が決定したときには、両国には根強い反対がありました。それを抑えてこのプロジェクトを実現したのが、サッチャー首相とミッテラン大統領のリーダーシップでした。そしていまや、ドーバー海峡トンネルは両国を結ぶ大動脈となっており、これを不要だという人はいません。つまり、イギリスとフランスの関係が良かったからトンネルができたのではなくて、トンネルを創ったから、両国の距離が近くなり、一体化が進んだのです。

国際ハイウェイプロジェクト概念図

国際ハイウェイプロジェクト概念図

<日韓トンネル建設を提唱した文鮮明総裁>
 1981年11月、ソウルで開かれた「第10回国際科学統一会議」(ICUS)において、文鮮明総裁は日本と韓国を結ぶ海底トンネルの建設を提言しました。それを機に日本において日韓トンネル建設に向けた調査活動が始まり、1982年には国際ハイウェイ建設事業団(2009年には一般財団法人国際ハイウェイ財団に改組)が設立され、各候補地域のボーリング調査に着手しました。翌年5月には「日韓トンネル研究会」が発足し、韓国や日本のトンネルや土木専門家による地形や地質等の調査・研究活動を積極的にサポートするようになりました。

 日本の平和大使運動は、2010年より日韓トンネル推進運動を積極的に支援し、全国各地の平和大使たちが「日韓トンネル推進都道府県民会議」の結成に貢献してきました。そうした土台の上に、2017年11月28日、「日韓トンネル推進全国会議」が結成され、同プロジェクトを日本の政策として、また日韓国際プロジェクトとして押し上げていくための諸活動が本格的に指導しました。

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Moonism寄稿シリーズ02:2019年6-7月号


 前回から、私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップし始めました。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第2回の今回は、2019年6-7月号に寄稿した文章です。

第2講:性モラルの崩壊から青少年を救う純潔運動

 現代社会の最も深刻な問題の一つに青少年の性モラルの崩壊があります。今回はこの問題を根本的に解決するための「純潔運動」について解説します。

<米国の「性革命」から始まった性モラルの崩壊>
 今日世界的な現象となっている性モラルの崩壊の震源地となった出来事が、1960~70年代にかけて米国で起きた「性革命」でした。1950年代までの米国はキリスト教文化が支配しており、結婚は神の祝福とみなされ、若い男女には結婚するまで純潔を守ることが美徳であると教えられてきました。しかし、「性革命」によって婚前交渉や婚外交渉を容認する「フリーセックス」の文化が広がり、伝統的価値観は衰退しました。

 その結果、米国では1960~90年の30年間で、①未婚の十代の出産率がほぼ3倍、②十代の自殺率が3倍以上、③非嫡出子が5倍以上、④片親家庭の全家庭に占める割合が3倍以上、⑤犯罪が4倍以上に増加するという事態に陥りました。現在でも米国人の出産の40%がシングルマザーによるものであり、そのための社会保障費が財政を圧迫しています。また、非行化する青少年の圧倒的多数は崩壊家庭または父親不在の家庭出身であり、片親家庭の占める割合が30%に達すると社会は崩壊し始め、犯罪が急増すると言われています。性モラルの崩壊は、社会全体の崩壊を引き起こす重大問題なのです。

<コンドーム教育の限界と自己抑制教育の登場>
 望まない妊娠と性感染症の増加に対して米国で長年にわたって取られてきた対策が、若者たちに避妊の知識を教え、コンドームを配布するという方法でした。性をタブー視せず、正確で科学的な情報を提供することを謳った「包括的性教育」と呼ばれるアプローチは、価値観や倫理観といった本質的課題を棚上げにしたリベラルな性教育であり、「包括的」とは名ばかりで、実際には「コンドーム教育」と言っていい内容でした。

 性感染症のリスクから身を守るためにコンドームの使用を奨励することを「セーフセックス」と言いますが、実際にはコンドーム使用によっては望まない妊娠や性感染症を完全に防ぐことはできないばかりか、逆に10代の若者たちの性行動を活発にしたことが批判されるようになりました。

 これに対して、結婚するまでは純潔を守ることを若者たちに教えるべきだという「ノーセックス」の立場を主張して登場したのが、「自己抑制教育」や「純潔教育」と呼ばれるアプローチです。米国では1990年代から福音主義のキリスト教団体が活動母体となって自己抑制教育が熱心に行われるようになりました。従来のコンドーム教育によってもシングルマザーの増加を防げなかったことが認識され、1996年の「福祉改革法」によって自己抑制教育プログラムに対する政府の財政支援が行われるようになりました。

<純潔運動を主導した統一運動>
 統一運動は、こうした1990年代の純潔運動において主導的な役割を果たしました。Pure Love Alliance(PLA)は95年に米国ニューヨークで発足し、性風俗産業への反対や過激な性教育の弊害を訴えるとともに、それに代わる「純潔と家庭」を重視した人格教育プログラムを提唱しました。97年6月から8月には「ピュア・ラブ」を訴える全米26カ都市ツアーを実施し、数多くのマスコミで報道されました。

 韓国でも、社会団体・韓国青少年純潔運動本部(97年発足)が推進する純潔運動が全国を席巻しました。婚前婚後の純潔と貞節を誓う「純潔誓約式」が学校行事として小中高等学校で行われ、全国各地の教育機関や父兄たちの支持を受け、マスコミにも大きく取り上げられました。98年4月に始まり、夏休みまでのわずか3か月という短い間に、韓国の90%以上の小中高等学校の児童生徒が純潔を誓ったというのですから、その影響力の大きさが分かります。

<アメリカにおける論争と開発途上国への浸透>
 しかし、米国ではその後「包括的性教育」を推進する米国性情報・教育評議会(SIECUS)に代表されるリベラルな圧力団体が、自己抑制教育への政府支援を阻止しようと批判キャンペーンを開始しました。彼らは長い間、政府から多額の資金を受けてきましたが、自己抑制教育プログラムにも政府支援が行われるようになり、資金が目減りしたためにそれを取り戻そうとして、「結婚するまで性交渉を持たないよう教えるプログラムは科学的根拠がなく、効果は実証されていない」「自己抑制教育は偏った思想が生み出した非科学的産物だ」という主張を繰り返したのです。米国ではこの戦いは宗教、イデオロギー、政治的信条などがからんだ終わりなき論争の様相を呈しています。

孝情人格教育プログラムのテキスト“Four Family Love”

孝情人格教育プログラムのテキスト“Four Family Love”


ロバート・キッテルYSP会長

人格教育を紹介するロバート・キッテルYSP世界会長

 現在、統一運動の純潔教育は「孝情人格教育プログラム」の中に受け継がれ、“Four Family Loves”というテキストブックにその内容がまとめられています。孝情人格教育プログラムは青少年に単に純潔の美徳を説くだけでなく、そもそも何のために純潔を守らなければならないのかを教えています。結婚するまで純潔を守る目的は、良き人格を形成するためであり、真の家庭をつくるためであることをはっきりと教えているのです。家庭の中で形成される四大愛について教えることがその本質になります。こうした純潔教育では価値観の教育が必要であり、その背後には宗教があります。孝情人格教育プログラムは結婚の価値に対する超宗教的なアプローチをとっており、あらゆる宗教的伝統に共通する家庭の価値を教えています。さらに、結婚と家庭が社会にもたらす恩恵について、実証的なデータに基づいて解説しています。

 このプログラムは現在、アジアやアフリカなどの開発途上国に浸透しています。2017年6月にバンコクで行われた世界平和青年学生連合(YSP)の大会では、それまで21年間にわたってタイの学校で実施されてきた純潔教育が高く評価されました。また、2018年1月にセネガルで行われたUPF主催のワールドサミット・アフリカでは人格教育が紹介され、アフリカ各国の政府関係者およびNGOとの間に約80件の了解覚書(MOU)が締結されました。西アフリカの島国サントメ・プリンシペのエバリスト・カルバリョ大統領は孝情人格教育の内容に感銘を受け、2019年3月から教育省とYSPの共催で、教師を対象とする人格教育プログラムセミナーが始まりました。純潔運動が望まない妊娠や性感染症から青少年を救うことは、これらの国々での実績によって証明されていくことでしょう。

カテゴリー: Moonism寄稿シリーズ

Moonism寄稿シリーズ01:2019年4-5月号


 今回から、私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をシリーズでアップしようと思います。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第一回の今回は、2019年4-5月号に寄稿した文章です。

第1講:国連の課題と超宗教議会設立の提案

 筆者はUPFの日本事務総長として、日頃から全国各地を回って「平和大使セミナー」の講師を務め、平和大使の皆様にUPFのビジョンと活動について解説しています。今回よりシリーズで、文鮮明師ご夫妻が進めるUPFを中心とした平和運動と、その背景にある平和思想についてテーマごとに解説していきたいと思います。

<国連の限界は安保理常任理事国の国益至上主義>
 UPFは現在の世界が直面している問題の一つとして、宗教・民族対立の激化を挙げ、その具体的な解決策として、「平和国連」のモデルを形成するというゴールを掲げています。第1回の今回は、現在の国連システムが抱えている課題を分析し、その解決策として文鮮明師が提唱した「国連超宗教議会」の設立について解説します。

 国連の第一の目的は、「国際の平和及び安全を維持すること」(国連憲章第1条)にありますが、現在の国連は必ずしもこの目的を果たせていません。国連の最大の課題の一つが、安保理常任理事国の国益至上主義です。安保理の勧告には強制力があり、無視すれば非軍事的制裁の後に、軍事行動が発動され得る強力なものになっています。現在の安保理は事実上、米英仏ロ中の常任理事国5か国が牛耳っており、非民主的な構成であるにもかかわらず、その決定は非常に重要なものになっているのです。

 安保理常任理事国の国益至上主義を最も端的に表しているのが、拒否権です。国連創設以来、最も多くの拒否権を発動してきたのはソ連とその後継者であるロシアで、その大半は1966年以前の冷戦時代初期に発動されています。冷戦期には、アメリカとソ連がたびたび拒否権を行使し、国際政治の停滞と冷戦長期化の一因となったという批判があります。冷戦終結後は、アメリカによるパレスチナ問題関連決議でのイスラエル擁護のための行使が目立ちました。これゆえ、大国の利己主義を通すためだけの規定が拒否権であるとの批判もあるくらいです。

<国連の課題は宗教的価値観の軽視>
 国連のもう一つの課題は、宗教的価値観の軽視にあります。世界の諸宗教の信者数をすべて合わせると、実に地球上の人口の約85%の人々が何らかの宗教を信じていることになります。宗教の影響力は非常に大きいものがあり、人々の宗教的忠誠心はときとして国家に対する忠誠心を上回ることもあります。基本的に宗教は平和を志向するものではありますが、その影響力は負の力として作用することもあり、宗教が紛争の原因となることもあります。冷戦時代には世界平和の問題といえばイデオロギーの問題であり、東西の対立、米ソの対立が中心的なテーマでしたが、冷戦後の世界において世界の平和を脅かしているのはむしろ宗教・民族間の争いです。9.11の同時多発テロや、「イスラム国」の出現により、宗教的対立を動機としたテロの問題が平和を脅かす深刻な問題として認識されるようになりました。こうした事態に、既存の国連システムがはうまく対応できていません。それは宗教的価値観を反映する機能が欠如しているという、国連の持つ構造的な課題に起因しています。

<宗教的価値観が代弁されない既存の国連システム>
 人間は心と体という内外の両面性を持っています。この人間が集まって作るのが国家ですが、人間の共同生活において心に該当するのが宗教であり、体に該当するのが政治です。一人の人間において心と体がバラバラに存在するのではなく、相互補完的な関係にあるのと同じように、本来は一つの国家において宗教と政治は相互補完的な共存関係にあるべきです。ですから伝統的な社会においては、政治と宗教はちょうど心と体のような共存関係にありました。しかし、近代国家においては「政教分離」の原則のもとに、宗教と政治はできるだけ関わらない方が良いということになり、宗教は公的領域における影響力を失って、「私事」の領域に閉じ込められるようになりました。一方で政治は宗教的価値観を失って世俗化し、物質的・経済的利益を追求する傾向が強くなりました。

 このような近代国家が集まって作ったものが国連であるため、現在の国連は基本的に政治家と外交官によって構成されており、宗教的価値観が代弁されるシステムは存在しません。地球上の人口の約85%の人々が何らかの宗教を信じており、その影響力が大きいにもかかわらず、宗教的な知恵や視点が国連の議論に反映される場がないのです。さらに、現在の世界の紛争は宗教的対立に起因するものが多いにもかかわらず、宗教的な視点から和解を促進するシステムも存在しなければ、専門家もいないのです。

<文鮮明師による「国連超宗教議会」設立の提案>
 UPFの創設者である文鮮明師は、こうした国連の課題を解決するため、2000年にニューヨークの国連本部で開催された国際会議「アセンブリ2000」において、「国連超宗教議会」の創設を提唱しました。国家を代表する政治家や外交官によって構成される従来の国連を下院とすれば、一国の利害を超えた地球規模の視点から発想することのできる宗教家や精神世界の指導者たちによって構成される超宗教議会は、国連の上院に当たります。これによって国連は人間の心と体、宗教と政治の両方が代表され、それぞれが相互補完的な役割を果たすことのできる統合された機構となります。そのとき国連は、その創設の理想を体現した、国益を超えて世界平和を目指す新しいグローバル・ガバナンスの組織に生まれ変わることができるのです。これが文鮮明師の提唱する国連改革の概要です。

国連超宗教議会の概念図
アセンブリ2000_1
アセンブリ2000_2

 UPFの国連改革運動の成果の一つとして、国連「世界諸宗教調和週間」(World Interfaith Harmony Week)制定の決議案が、2010年の国連総会で採択されたことが挙げられます。この決議では、毎年二月の第一週が、世界の諸宗教を調和させるための一週間として定められました。

 2017年11月10日から14日にかけて、韓国ソウルにおいてUPFの主催で「超宗教指導者会議」が開催され、世界70カ国から約400名の宗教指導者が参加しました。その中で宗教間の協力と調和を促進する組織である「平和と開発のための宗教者協議会」(IAPD:Interreligious Association for Peace and Development)の創設を提案する決議文が満場一致で採択され、参加した宗教指導者らが決議文にサインしました。その後、IAPDは世界各国で創設され、日本でも2018年12月11日に創設されました。今後はIAPDを通して「国連超宗教議会」設立に向けての運動が展開されていくことでしょう。

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『世界思想』巻頭言シリーズ08:2021年7月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第八回の今回は、2021年7月号の巻頭言です。

UPFの宗教的な理想がSGDsに魂を吹き込む

 2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、日本国内では2017年から社会的な認知度が高まり、いまや一つのブームとなっています。「神の下の人類一家族」という宗教的な理念を掲げる国連NGOであるUPFは、SDGsとどのように向き合うべきでしょうか。

 実は17の目標と169のターゲットからなるSDGsを構成する文言の中に、「宗教」という言葉はたった一度しか出てきません。それも差別を受けないという文脈の中で「宗教に関わりなく」という形で登場するのみです。霊性(Spirituality)という言葉も出てきません。SDGsは全体として物質的で現世的な目標が多く、精神的な豊かさに直接関連するような項目は少ないのです。

 一方で、LGBTへの言及もなく、人口動態に関する目標もありません。その理由は、価値観によって意見が大きく分かれるデリケートな問題を避けたためだと言われており、多くの人々に受け入れられる最大公約数的な目標となっているのです。

 しかし、SDGsが掲げる理想と目標は基本的に良いものであり、決して宗教と相性の悪いものではありません。SDGsはその前身であるミレニアム開発目標(MDGs)に比べて、環境問題に強い関心を示しています。これは地球で人類が安全に活動できる範囲を科学的に表示した「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」という概念が提示されたためであり、人間が環境保護を考慮せず、利益を追求し続ければ、世界が立ち行かなくなることが認識されるようになったためです。「自分たちさえよければいい」では、結果的に自らの首を締めることになるというのは、古来より宗教が説いてきた教えの一つです。

 SDGsの基本理念は「誰一人取り残さない」ですが、これはイエス・キリストの「迷い出た一匹の羊の譬え」を彷彿とさせる、極めて理想主義的なものです。MDGsが2015年までに貧困や飢餓の「半減」を目指すなど、目標の達成に重きを置いていたのに対し、SDGsではそれらの「撲滅」を掲げるなど、多くは2030年までに実現可能かどうかという根拠には基づかず、「あるべき理想の姿」として設定されているのです。

 SDGsの策定には、国連加盟国や国際機関のみならず、NGOやビジネスセクターも参加しました。立場の異なる者同士の間を取り持つ「世界の共通言語」としてのSDGsは、パートナーシップを構築する上では非常に有益なものです。そして公的セクターがこうしたパートナーとして期待しているのが、潤沢な資金力と人材を有するグローバル企業です。

 最近はSDGsにネガティブな影響を及ぼす企業活動は社会的なペナルティを被るリスクが高いので、これを回避するために、自分たちはSGDsに貢献しているとアピールする企業が増えてきました。しかしアリバイ作りのようにそれを行えば、「SDGsウォッシュ」(うわべだけのSGDs)という批判を免れません。

 宗教的な理想は、SGDsに魂を吹き込み、それを実現していく内的原動力になり得ます。そこにこそ「神の下の人類一家族」を目指すUPFの役割があるのではないでしょうか。

カテゴリー: 『世界思想』巻頭言シリーズ

『世界思想』巻頭言シリーズ07:2021年5月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第七回の今回は、2021年5月号の巻頭言です。

国連を舞台とする米中の動向と日本

 UPFは国連経済社会理事会の総合協議資格を持つNGOであるため、国連の動向に対しては関心を持たざるを得ません。最近の国連において最も懸念すべき問題は、中国の影響力の増大と米国の国連離れです。

 もともと国連は、第二次大戦後の世界における平和維持のシステムとして構想されました。それはルーズベルトの米国、チャーチルの英国、蒋介石の中国、スターリンのソ連の四カ国が「世界の警察官」の役割を果たすことによって平和と安全を維持しようという、「四人の警察官構想」として出発しました。そこにヤルタ会談でフランスが加えられ、五カ国が安保理常任理事国となったのです。

 国連発足当時は現在の中華人民共和国ではなく、台湾に政府を移していた中華民国が代表権を持っていました。しかし東西冷戦が深刻化する中で中国代表権問題が激しい対立点となり、ついに1971年の国連総会で中華人民共和国政府に代表権が変更され、台湾追放が採決されました。このとき以来、中華人民共和国は安保理の常任理事国ともなり、世界の大国の一つと位置づけられることとなります。

 中国は長年にわたって組織的な外交攻勢を仕掛け、国際機関の制度を自国に優位な方向へ誘導しようとしてきました。そしていまや、国連組織で影響力を握ることで、中国は国内外における自らの言動について、国際社会の追及を阻止することが可能になったのです。

 例えば、現在15個の国連専門機関のうち、4つで中国人がトップを務めています。複数の機関トップを輩出している国は他にありません。国連経済社会局は事務局長に中国の劉振民氏を迎え、いまや中国の「一帯一路」計画の推進とその宣伝活動を行う部署になったと言われています。中国が香港への政治的弾圧をどんなに強めても、国連人権理事会では中国政府の動きを懸念する文書よりも、称讃する文書の方がより多くの支持を集めるというのが現実なのです。

 国連創設当時は、米国は国連本部の自国への誘致を決定するなど、国連に対して積極的な姿勢を示していました。しかし、米ソ冷戦が顕在化する中で、安保理は機能不全となり、米国の国連離れが始まります。1960年代に独立した旧植民地諸国が国連に加盟すると、ソ連はこれらの開発途上国をまとめて反米の方向に誘導しました。

 こうして国連が米国の国益に反する場所になっていく一方で、国際社会の現実としては、政治、経済、軍事、情報、すべての分野で米国の国力は突出し、別格的存在となっていきます。たとえ米国が国連憲章を無視し、国際法に違反しても、国連にはそれを阻止する力はありません。トランプ政権下では、米国はUNESCO、人権理事会、パリ協定からの脱退を表明し、米国の国連離れが加速しました。

 日本の外交方針は、日米同盟と国連中心主義という二つの原則を表明しています。これは米国と国連の関係がうまくいっていれば矛盾しませんが、米国と国連が離反する場合には、どうしても日米同盟が本音で、国連中心主義は建て前になってしまいます。バイデン政権に対しては、中国に対する厳しい姿勢を維持しつつも、国際協調を重視する政策を期待します。

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『世界思想』巻頭言シリーズ06:2021年2月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第六回の今回は、2021年2月号の巻頭言です。

朝鮮戦争の教訓:日韓は安全保障上の相互依存関係

 昨年は朝鮮戦争勃発70周年に当たる年でした。11月22日にはUPFが主催する第三回希望前進大会がオンラインで世界をつないで行われ、朝鮮半島の自由と民主主義を守った国連軍の参戦勇士たちを顕彰しました。基調講演を行った韓鶴子総裁は、参戦国や支援国で追慕碑や記念碑が設置できなかったところには、それを建てていくことを約束し、「恩を忘れない大韓民国」であることを強調しました。

 日本は国連軍として兵士を派遣した16カ国には含まれていないものの、実際には朝鮮戦争において多大なる貢献をしたという事実は、日韓両国ではほとんど知られていません。日本にとって朝鮮戦争は、「特需」によって経済的復興をもたらしたというイメージで語られることがほとんどです。

 1950年6月25日、突如として北朝鮮軍が南侵してきたとき、韓国を守るために米軍が本国から対応していたのではとても間に合わない状況でした。そこで、日本に駐留していた米軍がまずこれに対応したのです。開戦からわずか一週間後に釜山に空輸された先遣隊は、福岡の板付基地から発進した。

 このときから日本は、米軍にとっての出撃・前進基地、兵站・補給基地、訓練基地としての機能を果たすことになり、日本本土は否応なしに米軍の一大補給基地となりました。直接的な日本の戦争協力でもっとも有名なものは、海上保安庁の機雷掃海部隊による掃海作業です。

 さらにアメリカ軍に従軍して、朝鮮半島で鉄道や港湾の管理、船員、通訳などに従事した日本人の数は数千人と言われており、韓国をよく知っている熟練した日本人専門家たちの援助がなければ、米軍が韓国にとどまることは困難でした。開戦当初は劣勢であった国連軍が巻き返す契機となった仁川上陸作戦の成功にも、旧軍人による作戦立案への協力が奏功したという背景があります。

 こうした戦争協力の中で、現地で戦闘に巻き込まれて命を落とした日本人の数は50名以上にのぼると言われています。平和憲法下にあっては、これらの人々を「戦死」として扱うことができないため「事故死」として処理されましたが、朝鮮戦争で日本人の犠牲者が出たのは紛れもない事実です。

 このことの意味は、もし北朝鮮軍の南進を食い止めることができず、朝鮮半島が完全に赤化されていたらどうなっていたかを想像すれば一層明らかになります。自由韓国は存在せず、「漢江の奇跡」もサムスンも「韓流」もKーPOPもなく、日本は玄界灘をはさんで共産主義国家である朝鮮と対峙しなければならなかったのです。

 朝鮮戦争から得られる教訓は、韓国と日本は安全保障上、相互依存の関係にあるということだ。日本の協力がなければ北朝鮮の侵略から韓国を守ることはできなかったし、韓国が70年間にわたって38度線で北朝鮮と対峙してくれたおかげで、日本の平和と安全が間接的に守られてきたのです。日本があるのは韓国のおかげであり、韓国があるのは日本のおかげです。そして何よりも大切なのは、日本と韓国は自由、民主主義、法の支配という普遍的価値を守るために共産主義勢力と共に戦った同志であるという認識です。

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『世界思想』巻頭言シリーズ05:2020年11月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第五回の今回は、2020年11月号の巻頭言です。

国連「平和の鐘」に込められた人類一家族世界の理想

 9月21日は国際平和デーである。1981年に最初に宣言されたこの日は元々、国連総会開会日に制定されていたが、2002年以降は9月21日に日付が固定され、世界の停戦と非暴力の日として祝われるようになった。

 ニューヨークの国連本部では、毎年この日に先立って国連事務総長が「平和の鐘」を鳴らす特別記念行事が行われる。今年も9月17日に国連本部の日本庭園で式典が開かれ、グテレス国連事務総長とボズクル国連総会議長が「平和の鐘」を打ち鳴らした。グテレス事務総長は「銃を撃つのをやめ、ウイルスという共通の敵と戦わなければならない」と述べ、世界の停戦を改めて訴えた。

 この「平和の鐘」は、1951年に第6回パリ国連総会に出席した元愛媛県宇和島市長の中川千代治氏(日本国連協会理事)が、「国を越え宗教の違いを越えて、平和を願う世界の人々のコインを入れた平和の鐘を造りたい」と当時の国連加盟国に訴え、1954年6月に日本国連協会から国連本部に寄贈されたものである。

 趣旨に賛同した65カ国の代表者からのコインとローマ法王ピオ12世からいただいた金貨9枚を入れて鋳造されたこの鐘の側面には、「世界絶対平和万歳」の文字と、国境の無い世界地図が刻印されている。この地図は「世界は一つ」であるという理想を象徴的に表したものであるという。

 「平和の鐘」運動の提唱者である中川千代治氏は第二次世界大戦に徴集され、ビルマ戦線での激戦の中、連隊は全滅し、本人も足を射抜かれて意識を失い、気が付くとパゴダ(ビルマの仏塔)の中で一人生き残るという体験をした。自分だけが生き残ったという申し訳なさに苦しみ、「二度と戦争をしてはいけない」ということを伝えるのが生き残った自分の使命だという決心に行きついたという。

 国連愛媛新聞に記載された「平和の鐘」運動の提唱文で中川氏は、国連が政治、経済、社会などの目に見える諸問題の解決に取り組むだけでは絶対平和の実現は困難であると主張している。必要とされているのは宗教間の和解であり、「この心を全世界、全宗教に押し広め宗教平和会議を機構として持ちうるようにしたならば偉大な使命を果たすは必定であり、心界の和なくして現界の平和はないと信ずるものである。目に見えることを議する世界機構に目に見えざる世界の協力と組織を加えることが現下の急務である。国連の議事としている宗教平和会議の実現を希望するものである。」と述べている。これは文鮮明総裁の提唱した「国連超宗教議会」のアイデアに極めて近い。

 今年はUPF創設15周年に当たるが、私はその前身であるIIFWPの時代からこの組織の一員として歩んできた。二〇〇〇年にIIFWPの国際会議「アセンブリ2000」がニューヨークの国連本部で開催された際に文鮮明総裁は「国境線撤廃と世界平和」というメッセージを語った。「国境線撤廃」というアイデアは、国家の為政者からは出てこない発想であり、神の下に人類は一つという宗教的な視点からのみ語れる言葉である。コロナ過で国境が強化される今日、もう一度のそのことの意味を噛みしめたい。

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『世界思想』巻頭言シリーズ04:2020年6月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第四回の今回は、2020年6月号の巻頭言です。

「共生・共栄・共義」の理念でコロナ禍を乗り越えよう

 中国の武漢に端を発して全世界に拡散した新型コロナウィルスは、いまなお世界を混乱に陥れており、収束のめどは立っていない。ウイルスとの闘いは長期戦になることが広く認識されるようになる一方で、経済に対する深刻なダメージが懸念されている。

 感染拡大をどのように阻止するかという議論とともに、「アフター・コロナ」の世界がどのようになるのかに関する議論も活発だ。「緊急事態」に名のもとに人権や民主主義が否定されるような事態も発生している。特に、感染者の特定を理由にIT技術を用いた監視体制が敷かれていくことに対しては、ある種の恐怖さえ感じる。

 アフター・コロナの世界において、中国の権威主義が勝利し、欧米の自由民主主義が敗者になるとすれば、それは最悪のシナリオだ。中国の官製メディアは、欧米諸国で新型コロナウイルスの感染拡大が中国以上に深刻な状況となったことを、共産党独裁体制の正当化に最大限利用している。

 一方の民主主義陣営で危惧されるのは ナショナリズムやポピュリズムの台頭である。欧州ではウイルスの感染拡大を防ぐため、パスポートなしで自由に行き来できるシェンゲン協定国の多くが国境を閉じて管理を強化した。「欧州は一つ」という理念は遠のき、「自国第一主義」すなわち国民国家が復権している。

 感染症を防ぐために人と人との間に「社会的距離」を取ることが要請され、国同士を結ぶ交通手段が寸断されると同時に、相互に入国制限をせざるを得ない。人々は感染を恐れて互いに疑心暗鬼となり、各国政府は自国民の生命と健康を守ることしか考えられなくなる。ある意味でこれほど人と人、国と国との関係性を破壊し、互いに孤立させるものはない。ウイルスは人々の肉体的健康だけでなく、精神的健康をも蝕んでいき、ついには政治や社会のあり方まで極めて自己中心的なものに変えてしまう恐れがある。

 しかし、これほどのパンデミックの状況下では、自国内において感染を防止するだけでは意味をなさず、世界全体がウイルスとの闘いに勝たなければ、自国の安全もまた保障されない。互いに責任を転嫁して非難しあったり、医療資源を奪い合っている場合ではない。ウイルスの危機によって生じた恐怖や怒りを政治的なプロパガンダに利用するような行為は、人類全体にとって破壊的な結果をもたらす。

 UPFインターナショナルは、4月8日に「光の環:コロナウイルスの危機を乗り越える」と題する声明文を発表した。そもそもコロナウイルスの名称は、外観がコロナ(太陽の光冠)に似ていることに由来する。それにちなんで、暗闇の中にあって「光の環」となるべく、共に働こうという趣旨で出されたものである。

 現在の危機を乗り越えていくためには、結束、協力、対話、思いやりの精神が必要である。われは人類一家族の一員である。この危機を特定の国家的、政治的、宗教的、民族的、文化的な分裂を助長するために利用すべきではない。暗闇の中の「光の環」となるべく、UPFのサミット・シリーズで強調された「共生・共栄・共義」の理念によって、この人類的危機を乗り越えていこう。

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『世界思想』巻頭言シリーズ03:2020年4月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第三回の今回は、2020年4月号の巻頭言です。

UPFの平和運動を支える6つの構成要素

 去る2月3日~5日にかけて韓国ソウルで行われたUPF主催の「ワールドサミット2020」は参加者の量と質の両面において過去最高の国際会議となった。この度のサミットの大きな特徴は、今後UPFが世界平和実現のために活動を展開していく6つの構成要素が明確に示され、それぞれが分科会で戦略的行動計画を立てる作業に入ったことである。以下、6つの構成要素について簡単に解説したい。

 世界平和頂上連合(ISCP)は、ワールドサミット2019で韓鶴子総裁が創設を提唱し、このたびのサミットで正式に発足した、国家元首・政府首脳の集まりである。韓総裁は2018年から世界を巡回し、その国の最高指導者が参加する国際会議を何度も開催してきたが、その集大成がISCPの創設である。

 この度のサミットには、カンボジアのフン・セン首相とニジェールのラフィニ首相が現職の政府首脳として参加し、4名の現職副首脳、2名の現職ファーストレディ、2名の現職国会議長、34名の現職閣僚が参加した。さらに32名の元職政府首脳と14名の元職ファーストレディが参加するなど、まさに世界の「頂上」が一堂に会する中でISCPの創設が宣言されたのである。この組織は今後、首脳級の指導者たちがその知恵と経験を集めて世界の諸問題を解決するためのプロジェクトを推進する母体となるであろう。

 世界平和議員連合(IAPP)と平和と開発のための宗教者協議会(IAPD)は、6つの構成要素の中でも先駆けて設立され、実績を積んできた組織である。人間に心と体があるように、平和を構築する運動にも政治家と宗教家の両方が参加しなければならない。そして今回は昨年12月に創設された世界聖職者指導者会議(WCLC)も総会を行った。

 国際平和言論人協会(IMAP)は世界各国の良心的な言論人が集まり、世界平和に貢献するためのネットワークである。文鮮明総裁は、メディアの自由と責任を擁護するために世界言論人協会を設立し、日本の世界日報、米国のワシントン・タイムズ、韓国のセゲイルボなどの言論機関を設立した実績がある。IMAPはそれらを基盤とするUPFの言論部門のプロジェクトとして立ち上げられた。

 国際平和学術協会(IAAP)は、世界平和に貢献する学者たちの集まりである。文総裁はこれまで世界平和教授アカデミー、科学の統一に関する国際会議などの学術部門に力を入れてきたが、IAAPは時勢に流されずに真理と普遍的価値を探求する学者たちによる平和運動を推進する母体となるであろう。

 国際平和経済開発協会(IAED)は、平和と開発のために貢献するビジネス・リーダーたちの集まりである。経済活動の目的は私利の追求にあるのではなく、真の愛による富の公平な分配と人類全体の福祉のためにあるという思想に基づき、経済人による平和のプロジェクトを推進していく組織である。

 世界平和は特定分野の指導者のみによってなされるものではない。これら6つの分野の指導者が力を合わせ、「共生共栄共義」世界実現に向けてUPFは活動を推進していく。

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