BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ94


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:弁護士、ディプログラミング、そして統一教会の解散請求 
ケース3:日本基督教団(UCCJ)との協力

06/14/2025 Patricia Duval

世俗的な左派系反カルト弁護士は、ディプログラマーとして活動する基督教牧師たちと協力していた。

パトリシア・デュバル

7本の記事の3本目

日本基督教団の教会。

山口広弁護士は、反統一教会ネットワーク「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」の主要な創設者であり、1987年5月の設立時に事務局長に任命された。

彼の経歴から見て取れることは、急進的な左翼的志向(共産党に近い社会党系の一派)への忠誠心があること、統一教会への献金に対する批判を長年続けていること、そしてそのために消費者問題関連の機関にも長年関与してきたことである。

また、彼は早い段階から、「救出」と称して脱会説得を行う牧師たちと連絡を取り、協力関係を築いていた。

1987年5月から7月に発行された保守系の月刊誌『ゼンボウ』に掲載された記事によれば、「霊感商法」批判の仕組みの出発点は、1986年に設立された「統一協会対策委員会」であり、この委員会は1981年に社会党の支援を受けて設立された「社会文化法律センター」内に置かれていた。

1987年2月「霊感商法被害救済担当弁護士連絡会(被害弁連)」の発足に際して記者会見を行った弁護士3人(山口広、伊藤和夫、東澤靖)のうち、山口広と東澤靖の2名は、社会文化法律センターのメンバーでもあった。

被害弁連は東京に拠点を置く地域組織であったが、その後、1987年5月に発足した「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」に包含され、全国的組織となった。

1987年1月31日付の社会文化法律センターの機関紙『センターニュース』において、弁護士・山口広は次のように呼びかけた。

「言うまでもなく、『霊感商法』とは、統一協会が組織ぐるみで経済活動と称し、壺、多宝塔を『霊』を引き合いに、数百万円で売りつけるというもので、そこで得た金は、統一協会や勝共連合の国家秘密法制定[即ち、スパイ防止法]制定の策動の資金に流れている。(※勝共連合は、文鮮明師によって1968年に創設された団体である。『国家秘密法』とは、スパイ防止法に反対する人々がこの法案に対して用いた呼称。)これらの被害の実情や資金の流れは、『朝日ジャーナル』や『朝日新聞』などで再三報道されている通りである。さて、この度霊感商法問題に取り組んできた社文の会員も参加し、『霊感商法被害救済弁護連絡会』(仮称)が結成されることになったので、この場を借りて、会員の皆さんの参加を呼び掛ける次第である。」

山口広弁護士。スクリーンショット。

これと並行して1986年、弁護士らによる「統一協会対策委員会」の設立を受けて、すでに統一教会信者の「救出」に関与していた日本基督教団(UCCJ)の牧師たちが、10月2日・3日に「統一原理問題全国連絡会」を結成した。その数年後、弁護士と牧師たちは協力関係を公然と発表した。

「統一原理問題全国連絡会」(UCCJ牧師を含む)は、1991年10月21日と22日に、ある教会の会議室で2日間の集会を行った。その会合で、日本基督教団・西尾教会の杉本誠牧師は、「青春を返せ訴訟」こそが統一教会に対抗する最も効果的な手段であると述べた。

「青春を返せ訴訟」とは、弁護士ネットワークが統一教会を壊滅させることを目的に起こした、一連の訴訟を指す(これは彼ら自身が明言している)。これらの訴訟では、統一教会に入信し、牧師たちが「救出」と称する暴力的なディプログラミングによって信仰を放棄させられた若者たちが、監禁から解放されるために教会を訴え、損害賠償を請求した。

最初の「青春を返せ訴訟」は札幌で起こされ、原告は1986年から1992年にかけて脱会させられた若者20名だった。20名の原告は、統一教会による「違法な布教活動」により金銭的損害と精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた。

これは札幌地方裁判所で行われた最初の「青春を返せ訴訟」である。裁判記録によると、原告20人のうち16人が実際に強制的脱会説得を受けていた。彼らはアパートやホテルに拉致・監禁され、特別に用意された部屋で脱会説得を受けたのちに教会を離れていた。

札幌地方裁判所は、原告側勝訴の判決を下した。同裁判所は、統一教会の活動、特に献金勧誘について、「社会通念に照らして見た場合」、「不当な目的」に基づくと認定した。その理由として、原告らは被告団体の教義における救いを求めるよう、組織的かつ計画的に教育されたと指摘した。

つまり、裁判所は、布教活動そのものや信仰への改宗が「社会通念」を脅かし、「不当な目的」に該当すると判断したのである。

この判決は、献金を求めた統一教会信者の「宗教または信条の自由」を露骨に侵害するものであったが、札幌高等裁判所によって維持された。その後最高裁判所は上告を棄却したため、札幌高裁の判決は確定された。

札幌地方裁判所と札幌高等裁判所(出典:X)

この後、同じく札幌地方裁判所で、さらに2件の「青春を返せ訴訟」が続き、いずれも同様の判決が下された。

 ・一件目は原告63名、そのうち40名が元信者で、残り23名は元信者の親族であった。
 ・二件目は原告40名、そのうち16名が元信者で、残り24名は元信者の親族や友人であった。

これらの訴訟はすべて、ディプログラミングによって発生した原告たちを基盤として成り立っていたことが明らかである。

この3件の札幌での「青春を返せ訴訟」は、政府が教会の宗教法人解散を請求するにあたり根拠とした、32件の裁判の一部であった。加えて、長年にわたって提起され、判決が下された5件の裁判も含まれていた。一部の「青春を返せ訴訟」は和解に至っているにも関わらず、それらも解散請求の理由に含まれていた。

以上のことから、1991年に日本基督教団の教会で行われた会合で、牧師たちが「青春を返せ訴訟」は、統一教会に対抗する最も効果的な手段であると主張した背景が理解できる。

1991年10月21日と22日に行われたこの会合では、全国弁連から山口広弁護士が講演者として招かれた。彼は、このディプログラミングを受けた若者たちの訴訟における、中心的な弁護士であった。彼は以下のようにコメントした。

「この訴訟は、ジャブのように統一教会に効いている。」

1991年11月16日付『教団新報』(日本基督教団の機関紙)に掲載された記事によれば、会合の参加者たちは、統一教会の「破壊」を目標に、今後も「青春を返せ訴訟」を中心に、「救出」活動を着実に継続し取り組むという方針で一致したという。彼らの目的がこれ以上ないほど明確に示されたものであった。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%ef%bc%9a%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e3%80%81%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e7%b5%b1%e4%b8%80-3/?_gl=1*wj2qbu*_up*MQ..*_ga*MTA3NjQ5Nzg0Ni4xNzU1MzI4ODE2*_ga_BXXPYMB88D*czE3NTUzMjg4MTYkbzEkZzAkdDE3NTUzMjg4MTYkajYwJGwwJGgw&gclid=Cj0KCQjw2IDFBhDCARIsABDKOJ49u-pGHeSh_Wz_q5hxg1bHljb1w0Xh7ZigCQdgilzWY4_H7GLVPpoaAk2LEALw_wcB&gbraid=0AAAAAC6C3PemuDzvge2tV2aQdk9kxEk0n

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ93


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:弁護士、ディプログラミング、そして統一教会の解散請求 
ケース2:小出医師の監禁事例

06/13/2025 Patricia Duval

統一教会からの「脱会」のため、医師が拉致監禁される。

パトリシア・デュバル

7本の記事の2本目

小出氏が拉致された当時、勤務していた一心病院(出典:X)

最初の記事で取り上げたケースに続いて、別の人身保護請求が提出されたケースとして、統一教会信者である小出浩久(こいで・ひろひさ)氏(当時30歳の医師)が、約2年間にわたり拉致監禁された。

1992年6月13日、小出氏は東京の一心病院で医師として働いており、1日平均35人の外来患者を診察し、約15人の入院患者を受け持っていた。その夜8時ごろ、母親からの要請で埼玉県蕨市の実家に帰宅した。

すると突然、親戚約20人が家に押しかけ、小出氏を奥の部屋に座らせて取り囲んだ。父親はこう言った。「浩久。統一教会という犯罪組織に加わって活動することは、親、兄弟はじめ親戚として絶対に許せない。心おきなく周りに邪魔されずに話し合う場所を別に用意してある。そこでじっくり話し合おう。」その後、彼は監禁され、「ディプログラミング(脱会説得)」を約2年間受けさせられることになった。

監禁から1週間ほど後、全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)所属の弁護士・平田広志(ひらた・ひろし)氏が、ディプログラマーである宮村氏とともに監禁部屋を訪れた。弁護士は、ドアノブにチェーンロックがかかり、窓も完全に固定されて開けられないという、明らかに違法な監禁状態を目の当たりにしたにもかかわらず、「これは違法とはみなされません。」と家族を安心させ、監禁を続けるよう励ました。小出氏は、弁護士も共犯であることを悟り、絶望した。

それから約2週間後の7月12日深夜、彼は叩き起こされ、移動を命じられた。その日、東京高等裁判所が一心病院によって提出された人身保護請求を認め、召喚状がマンションの郵便受けに届けられたのだった。それを知ったディプログラマーたちは、裁判所の召喚を無視するため、監禁場所を変更することを決定。新潟県の別のアパートへと、深夜のうちに彼を移送した。1年半後、小出氏が監禁から逃れるため偽装脱会を試みた際、両親は彼にその召喚状を見せた。

10月中旬、小出氏は「脱会したふり」をする決心をした。彼にとって話し合いは無意味であると感じていたからだ。それからの4カ月間、本心を押し殺し、牧師、他の元信者、そして両親の言葉に素直に従って話し、行動した。10月末、ディプログラマーが東京からやって来た際には、彼の言うことすべてにうなずいて応じた。

ディプログラマーは、彼にすべきことを指示した。まず、統一教会を脱会する旨の書面を作成すること。その後、知っている信者の名前、所属教会、住所などを記入するシートを渡され、これはまるで「忠誠心を試すテスト」のようであった。さらに、統一教会および勤務していた病院に対して辞表を書くよう命じられ、それは1月に送付された。

しかしながら、「本当に脱会したかどうか」が試される段階があった。なぜなら、ディプログラマーたちは「偽装脱会」を警戒していたからである。彼はその後6カ月間にわたり、統一教会を批判するためにメディアのインタビューや放送への出演を求められた。さらに、福音派教会での「リハビリ」期間を経る必要があり、これが「ディプログラミング」または「救出」の最終段階とされた。

ディプログラマーの松永堡智(やすとも)牧師。出典:X

9月28日の夕方、彼は松永牧師(ディプログラマー)の福音派教会へ連れて行かれた。その日から彼は、監禁場所からこの教会に通い、「リハビリ」を受けなければならなかった。監禁から解放されたがまだ自由に外出することは許されていない者へ、特別な「リハビリホーム」や宿泊施設も用意されていた。彼は両親と一緒の時のみ、外出が許された。

この教会では、毎日正午になると、元信者たちが集まり、松永牧師とともに昼食を取っていた。雑談の後には、壁に貼られた監禁中の信者リストを見ながら、その日のスケジュールと役割を決めていた。「監禁」という言葉の代わりに「保護」という表現が使われていた。「リハビリ」の一環として、監禁現場を訪問し、監禁されている信者に対して教義を否定する説得活動に加わることが義務付けられていた。

つまり彼は、監禁されている他の信者の脱会説得に参加することによって、すなわち、他の背教者たちとともに彼らを訪ね、統一教会を批判することで、自らが「真にリハビリを終えた」と証明しなければならなかったのである。

10月23日、彼と両親は、全国弁連の弁護士である山口広(やまぐち・ひろし)氏と紀藤正樹(きとう・まさき)氏と、全国弁連の事務所で面会した。ディプログラマーは、小出氏が統一教会から「脱会したことを証明する」ために、教会に対して損害賠償請求を行うよう、彼ら(弁護士)に紹介した。

全国弁連所属の弁護士、紀藤正樹氏(出典:X)

当時、彼には他に選択肢がなく、全国弁連の弁護士2名とともに請求を提起せざるを得なかったが、後に強制状態から解放されると、それを正式に撤回した。

1994年5月、彼は脱出の機会を見つけ、逃亡した。その後、すぐ病院に戻って勤務することはせず、再び拉致監禁されるリスクがあったため、その体験を記した本の執筆に時間を費やした。彼の著書『人さらいからの脱出』は1996年11月2日に出版され、その本が彼を再び拉致監禁されることから守る盾となった。

拉致監禁された多くの人々は、彼のように幸運ではなく、信仰を完全に棄て、脱会を証明するために教会を訴えて損害賠償を請求するしかなかった。そうしなければ、年齢に関係なく、再び監禁されるという脅威に常に晒されなければならなかったからである。

したがって全国弁連は、統一教会信者に対する違法な監禁について明らかに承知しており、強制的な脱会プロセスの一環としてそれを積極的に支援していた。

それは、教会の背教者を獲得し、いわゆる「被害者」を捏造し、最終的には教会を攻撃させるという、彼らの公然たる戦略の一つであった。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%ef%bc%9a%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e3%80%81%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e7%b5%b1%e4%b8%80-2/?_gl=1*9on66a*_up*MQ..*_ga*MTA3NjQ5Nzg0Ni4xNzU1MzI4ODE2*_ga_BXXPYMB88D*czE3NTUzMjg4MTYkbzEkZzAkdDE3NTUzMjg4MTYkajYwJGwwJGgw&gclid=Cj0KCQjw2IDFBhDCARIsABDKOJ49u-pGHeSh_Wz_q5hxg1bHljb1w0Xh7ZigCQdgilzWY4_H7GLVPpoaAk2LEALw_wcB&gbraid=0AAAAAC6C3PemuDzvge2tV2aQdk9kxEk0n

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ92


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:弁護士、ディプログラミング、そして統一教会の解散請求

06/11/2025 Patricia Duval

ケース1:信者の拉致監禁
解散請求の根拠となった多くの民事訴訟は、再び監禁されないために教会を訴えるよう強いられた、ディプログラミングの被害者たちによって起こされたものである。

パトリシア・デュバル

7本の記事の1本目

紀藤正樹弁護士(左)と山口広弁護士(右)。いずれも「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)の主要メンバー。スクリーンショットより。

1987年2月、急進的な左派政治思想に基づく弁護士たちのグループが、統一教会(現在の「世界平和統一家庭連合」。以下、理解の便宜上「統一教会」または「教会」と表記)の日本からの排除を目的として弁護士ネットワークを立ち上げた。

この団体は、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(以下、「全国弁連」、「ネットワーク」、または「弁護士ネットワーク」)と名乗り、第二次世界大戦後のアジアにおける霊性への脅威とされた無神論的共産主義に反対していた統一教会に対抗するために設立された。

これらの弁護士たちは共産党および社会党に所属しており、教会が「霊感商法」(教会の信仰は人を引き込むためのまやかしであり、宗教的献金は単なる営利活動であると非難するために作られた用語)を通じて得た資金が、共産主義との闘いに使われていたと主張した。より具体的には、当時日本国内に蔓延していたソ連のスパイから国を守るため、国会で成立を目指していたスパイ防止法の支援に使われていたというのである。

このネットワークは、統一教会への積極的な攻撃を開始し、暴力的な「ディプログラミング」(いわゆる「洗脳」からの強制脱会)を設立当初から支援してきた。これは、脱会に「成功」した元信者によって、損害賠償請求訴訟を起こさせるようにするためであった。この戦略は、彼らがプロテスタント牧師たちが属する団体と連携し、公然と掲げてきた戦略である。

過去40年以上にわたり、日本統一教会の信者約4300人が、「プロの脱会屋」(そのほとんどが牧師)の指導のもと、家族によって拉致監禁され、教会の教えに反する思想の強制的な刷り込み(具体的には、聖書に従っていないことに対する激しい非難)を受けながら、強制的に信仰を棄てさせられてきた。それにもかかわらず、政府機関は一切介入しなかった。

弁護士ネットワークは数十年にわたり、このような棄教の手法を利用し助長してきた。成人した子どもの信仰に反対する親を、脱会屋に紹介し、最終的に信仰を棄てた元信者に対しては、教会を相手取って民事訴訟を起こすよう要求してきたのである。彼らは、自らの脱会を証明し、監禁と強制的な説得から解放されるために訴訟を起こさざるを得なかった。

このような「組織的」な民事訴訟の結果、いくつかの不法行為判決が下された。民事裁判所は、献金が脱会させられた信者たちの「自由意思」を侵害して行われたと認定した。その理由は、これらの元信者たちが脱会説得を受けた後に、自分たちが「操作されていた」ことに気づいたと主張したからである。

全国弁連の弁護士たちは、こうして蓄積してきた不法行為判決を根拠に、政府に教会の解散請求を起こすよう圧力をかけ、今年3月25日、東京地裁がその請求を認めた。

教会側から、脱会説得への関与を問われた際、全国弁連の弁護士たちは「信者の監禁や拉致については知らなかった」として、その正当性を主張してきた。彼らは繰り返し、親に対して、「説得」のために子を教会から離れさせるよう牧師を紹介しただけであり、身体的拘束や強制を伴うとは知らなかったと主張してきた。

しかしながら、このような否定は以下に示す事実によって明確に反証されている。

 ・第一に、監禁された信者によって提出された、極めて明快な人身保護請求事件において、全国弁連の弁護士を含む200人の反統一教会弁護士がこれに反対し、これを全国弁連の中心弁護士が率いていたこと。
 ・第二に、別の人身保護請求事件では、全国弁連の主要弁護士の一人が、監禁・脱会説得されている信者を訪ね、親に「違法ではない」と伝えて監禁継続を促していたこと。
 ・第三に、全国弁連が信者の「救出」に従事していた牧師たちと、統一教会の破壊を目的とする協定を結んでいたこと、そして親のために「脱会マニュアル」を作成・配布していたこと。
 ・第四に、全国弁連の幹部や一部の脱会牧師たちが裁判で証言していること。
 ・第五に、全国弁連が、何も不満を訴えていなかった統一教会信者の親にまで直接介入し、「救出」を言い訳に脱会屋の介入を教示していたこと。

最初の人身保護請求事件では、統一教会に敵対する200人以上の弁護士が、信者の解放に反対して法廷で争った。その信者は家族によって監禁され、教会から離れるよう強制的な説得を受けていた。弁護士たちは、親が「緊急事態」に対処していたのだと主張した。

信者である吉村正氏(当時28歳)は、1987年8月27日、京都で家族により手錠をかけられ、小型飛行機を使って北海道に移送され、拉致された。

吉村氏はその後、脱会屋が説得のために準備していたアパートの一室に監禁された。その部屋の玄関と窓には鉄格子が取り付けられていた。

テッド・パトリック。ディプログラミングという違法行為を発明したアメリカの反カルト活動家。Xより。

1987年9月17日、統一教会信者が札幌地方裁判所に対し、吉村正氏の解放を求めて人身保護請求を行った。

同年10月13日、地裁で予備調査が行われた。吉村氏を拘束していたのは父親と脱会屋であり、両者に代理人として2名の弁護士がついた。そのうち1名は全国弁連の中心人物、郷路征記弁護士であり、80代になったいまでも活発である。

1987年10月26日、郷路弁護士と彼の同僚である全国弁連の弁護士は、人身保護請求に対する反論書を提出し、吉村正氏の監禁は、人身保護法第1条の定める「不法な拘束」にはあたらないと主張した。

弁護士らの主張は以下のとおりである:
父親が吉村氏を「拘束」しているのは、親の子に対する正当な監護権に基づくものであり、これは必要性(緊急事態)に類する法理の下で、「条理」によって正当化される。

「条理」とは、社会において妥当または正当と考えられる事柄を反映した社会通念と説明できる。つまり、弁護士らは吉村氏が拘束されていたこと自体は認めた上で、それを28歳の成人男性に対する親の「正当な監護権」と「社会通念」によって合法化しようとした。その目的は、吉村氏が統一教会に改宗したという「緊急事態」への対処であるという。

この2人の弁護士による反論書には、他に198人の弁護士が拘束者側(すなわち親と脱会屋)を代理していることが明記されており、明らかに裁判所への圧力を意図したものであった。

人身保護請求に関する最初の審問は、1987年10月28日に札幌地方裁判所で開かれた。吉村正氏は裁判長に対して、拘束されていることを伝え、仮放免を求めたが、裁判所はこれを認めなかった。その後、1987年11月10日、吉村氏は脱出に成功し、11月12日には人身保護請求が取り下げられた。

この事件は、教会に反対する弁護士らの訴えによってつくられた偏見によって、司法および警察がディプログラミングに対し何ら対応しなかった典型的な事例である。

人身保護請求は1987年9月17日に提出された。人身保護法第12条第4項によれば、請求のあった日から一週間以内に審問日が設定されなければならない。しかし札幌地裁はこの期限内に審問を開かず、10月13日に「予備調査」を行ったのみで、その場で調査が行われることすらなかった。実際に最初の審問が開かれたのは10月28日であったが、その際の仮放免も裁判所は却下した。

札幌地方裁判所が所在する建物。

吉村氏の監禁が、何らの法的根拠も手続きもなく行われたことは明白であった。それにも関わらず、裁判所は仮放免を命じなかった。代わりに、裁判所は必要以上の審理に踏み込み、不要な手続きを重ねることで、拘束者側が吉村氏に対して「説得」を続けられる時間をさらに与えた。その間、吉村氏は監禁施設内で信仰を放棄するよう日々圧力をかけられていた。裁判所が選任した弁護士までもが、吉村氏に対し人身保護請求を取り下げるよう助言した。

日本法における人身保護手続きでは、「身体の自由を拘束されているか」、およびその拘束が、「法律上正当な手続きによるものか」だけを審査すれば足りる。他の余計な事項を調べる必要はない。しかし札幌地裁は、拘束者側のその巨大な弁護士団に影響され、手続を引き延ばす対応を行った。

拘束者側の弁護士たちは、全国弁連の中心人物の指導のもと、加害者(拘束者)を擁護するために意図的に200人の弁護士団を編成し、裁判所に圧力をかけ、吉村氏の継続的な監禁とディプログラミングを図ったのである。人権を守るべき法律専門家たちが、一人の不幸な信者を違法な監禁から解放することに反対したのである。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%ef%bc%9a%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e3%80%81%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e7%b5%b1%e4%b8%80/?_gl=1*18qmjsv*_up*MQ..*_gs*MQ..*_ga*MjE0MjQ0MzU2NS4xNzU1MzI3NzM5*_ga_BXXPYMB88D*czE3NTUzMjc3MzgkbzEkZzEkdDE3NTUzMjc3NDQkajU0JGwwJGgw&gclid=Cj0KCQjw2IDFBhDCARIsABDKOJ49u-pGHeSh_Wz_q5hxg1bHljb1w0Xh7ZigCQdgilzWY4_H7GLVPpoaAk2LEALw_wcB&gbraid=0AAAAAC6C3PemuDzvge2tV2aQdk9kxEk0n

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ91


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本における統一教会事件:反カルト主義者の鈴木エイト氏は言葉の遊びによって救われた

06/03/2025 Massimo Introvigne

裁判所は、安倍晋三氏がビデオメッセージの報酬として5000万円を密かに受け取ったと彼が主張した際に、証拠がないことを認識していた。にもかかわらず、それは名誉毀損には当たらないと宣言した。

マッシモ・イントロヴィニエ

鈴木エイト氏。Xより。

受賞歴のある日本人ジャーナリストの福田ますみ氏が2023年に報じた信頼できる意見によると、日本では「民事訴訟では『カルトだと負け』という裁判所の枠組みみたいなものがある」「他の事件では認められないような請求も、相手がカルト宗教だと安易に認められてしまう」という。これは福田ますみ氏の発言ではない。彼女は、反カルト団体である「全国霊感商法対策弁護士連絡会」のメンバーであった伊藤芳朗弁護士の言葉を引用したのだ。

現在の日本の風潮では、統一教会(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれているが、依然として古い名前で呼ばれることが多い)とその関連組織に関しては、この暗黙のルールがほぼ明文化されたものになってしまっている。

2025年5月14日、東京地方裁判所(3月25日に統一教会の解散を第一審で宣告した裁判所と同じ)は、一見単純な事件について判決を下した。教会の激しい反対者である反カルトジャーナリストの鈴木エイト氏は、2022年に暗殺された安倍晋三元首相が、統一教会と関係のあるNGOである天宙平和連合(UPF)のイベントにビデオメッセージを送った見返りに、5000万円(約34万3000米ドル)を受け取ったと繰り返し主張していた。安倍氏はこの支払いを納税申告書に記入していなかったため、この政治家とUPFは脱税の共犯者であり、日本の政治資金規正法にも違反しているという疑惑が浮上した。

鈴木氏には、これが事実であるという証拠はなかった。彼は、ドナルド・トランプ大統領が、同様のビデオメッセージのためにUPFから受け取った金銭を米国政府倫理局に報告していたことを知っていた。彼は、安倍氏にはトランプ大統領が受け取った金額の半額が支払われたに違いないと推論した。ちなみに、トランプ大統領がこれらの支払いを収入の一部として正式に報告していたという事実は、それらに違法性や秘密性はなかったことを意味する。

鈴木氏の推論は証拠にはならない。安倍氏がUPFにビデオを送った理由は様々考えられる。例えば、イデオロギー的な共感や、選挙で自民党内の彼の派閥が得た支援への感謝などであり、必ずしも金銭のやり取りを伴うわけではない。要するに、鈴木氏は証明できない主張をしたのだ。さらに彼は、安倍氏に支払われたとされる金銭は統一教会の「被害者」からのものだったと主張し、事態をさらに悪化させた。もちろん、鈴木氏にはこれを証明する証拠もなかった。

鈴木氏の最初の抗弁は、原告であるUPFジャパンは「総会および財務報告の期限に不備があったため」当事者能力を有していないというものだった。この主張は棄却され、裁判所はUPFジャパンを民事訴訟法第29条にいう法人でない社団に当たると認定した。

裁判所は、UPFジャパンを「国際NGOであるUPFの日本支部である」と定義した。しかし、矛盾したことに、鈴木氏の発言には証拠はないものの、それらは統一教会または(国際的な組織としての)UPFのいずれかに言及しているのであり、UPFジャパンの名誉を傷つけるものではないと裁判所は判断したのである。

鈴木氏による反カルト講演会のポスター。「統一教会の多摩市進出NO! 鈴木エイトが語る統一教会との格闘、22年」

裁判所は、UPFジャパンが安倍氏のビデオメッセージ配信を手配したと鈴木氏が主張しているソーシャルメディア投稿、記事、そして鈴木氏が執筆した書籍の一部を認めた。これらの証拠を無視するために、裁判所は鈴木氏の複数の発言を一括して検討することはできず、個別に分離して検討する必要があると言わざるを得なかった。5000万円が支払われたという発言は、ビデオメッセージをUPFジャパンと結び付ける発言とは別個に行われた。裁判所は、鈴木氏はUPFジャパンが安倍氏に秘密裏に支払いを行ったとは非難していないと結論付けた。彼は統一教会または国際的なUPFを非難したのであり、これらはUPFジャパンとは異なる組織だというのである。

裁判所が主張した二つ目の論拠は、鈴木氏が、当該支払いが脱税、贈賄、あるいは政治資金規正法違反に該当すると明確に述べていないというものである。したがって、当該発言は必ずしも名誉毀損に当たるものではないと裁判所は述べている。

この判決は、日本の裁判所ではなんであろうと「統一教会と関係があれば負ける」という原則の悪質な例である。裁判所は、鈴木氏が自らの主張を証明できたとは述べていない。彼にはできなかったのだ。裁判所は、ジャーナリストの鈴木氏が安倍氏への(架空の)支払いが違法であると明確に述べておらず、たとえそう述べていたとしても、UPFジャパンではなく、統一教会または国際的な組織としてのUPFを中傷しているのだと論じたのである。

裁判所は鈴木氏を救済するために、さまざまな言葉遊びを駆使した。しかしそれも、鈴木氏の複数の発言を全体として論理的に検討していれば成功しなかっただろう。なぜなら、いくつかの供述にはUPFジャパンへの言及が明確にあり、支払いがなされたという時点での同組織の法的代表者の名前まで挙げられていたからだ。裁判所は、鈴木氏の発言を人為的に分離することによってのみ、彼がUPFジャパンの名誉を棄損していないと結論付けることができたのである。

東京地方裁判所。

言葉遊びを払拭してしまえば、事実は明白だ。鈴木氏は統一教会と国際的な組織であるUPFに加え、UPFジャパンをも中傷しようとしていた。彼は自身の出版物において、これらの様々な組織を区別することなく扱っている。彼にとって、これらはすべて、罪のない「被害者」を食い物にする邪悪な「カルト」の一部なのだ。

意見表明は表現の自由によって保護されているが、証拠もなしに具体的な違法行為を主張することは、名誉毀損に当たる。鈴木氏は、「UPF」と「統一教会」が安倍首相に5000万円を支払ったと述べている。彼の発言や文章の全体的な文脈から、彼はUPFジャパンを安倍首相のビデオ撮影を手配した団体と特定していたことが分かる。支払いは記録に残されていなかったため、秘密裏に違法に行われた可能性がある。つまり鈴木氏はUPFジャパンを、犯してもいない犯罪で非難したのである。

「通常の」裁判所であれば、鈴木氏による名誉毀損を認定したであろう。しかし、「通常の」判断をすれば、日本の裁判所は「統一教会と関係があれば負ける」という暗黙の、そしておそらくいまや明文化されたルールに違反することになってしまう。これは法律の問題ではなく、政治の問題であり、日本における統一教会およびその関連組織を壊滅させるためのキャンペーンの一貫なのである。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e7%b5%b1%e4%b8%80%e6%95%99%e4%bc%9a%e4%ba%8b%e4%bb%b6%ef%bc%9a%e5%8f%8d%e3%82%ab%e3%83%ab%e3%83%88%e4%b8%bb%e7%be%a9%e8%80%85%e3%81%ae%e9%88%b4/?_gl=1*1tls5b0*_up*MQ..*_ga*MzIzNDc0Njc3LjE3NTUzMDczNjc.*_ga_BXXPYMB88D*czE3NTUzMDczNjYkbzEkZzEkdDE3NTUzMDgwNTEkajYwJGwwJGgw

カテゴリー: BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ

BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ90


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:統一教会の解散・デュバル報告書5.宗教または信条の自由

05/02/2025 Patricia Duval

東京地方裁判所は、その決定が信教の自由に関する国際原則および憲法上の原則に違反していないと主張した。しかし、それは誤りだった。

パトリシア・デュバル

5本の記事の5本目

解散命令後の記者会見で記者団の質問に答える日本の家庭連合の田中富広会長と法務局の近藤徳茂氏。スクリーンショット。

この教会にとって、今回の「予定された処刑」から逃れる道は残されていませんでした。数千人規模で信者が強制的に脱会させられた後、献金に関してますます厳しい条件が課され、要件を充たすことは殆ど不可能となっています。かつて裁判所は家庭連合が関わる事件では常に差別的な判断を下してきましたが、「自由意思を侵害していないこと」といった極めて曖昧な基準が導入されたことで、裁判所は差別的な判決を下す以外になくなりました。

この「自由意思」という概念は、2022年12月16日に施行された不当な献金勧誘に関する新法にも組み込まれています。教会がどれだけ法令遵守に努めたとしても、裁判所は20年~40年前の献金に悪意の意図があったと認定し、そのため将来的にも不法行為の再発が避けられないと結論づけました。

教会の信者たちは、まさに処刑に向け壁際に追い込められた状態なのです。実際に狙われたのは、教義の普及活動すなわち伝道そのものであり、これは明らかに信教の自由の侵害です。裁判所はこう認定しています。

「献金勧誘等行為は、利害関係参加人の教理を伝道する過程の一環として、利害関係参加人の信者を獲得し、利害関係参加人のために献金等をさせることを目的として行われており、上記の献金勧誘等行為の内容が利害関係参加人の教理と密接に関連し、上記の献金勧誘等行為自体がその教理の実践とされていた」

この認定は、信者たちが信仰に基づいて献金勧誘を行い、宗教法人を維持するために活動していたことを示しています。これはまさに、信仰を表明し、宗教を実践する自由の核心にあたる行為です。この判断が単に法人格の問題ではないことは、裁判所自身も認めており、将来の献金勧誘が再び不法行為とされる可能性が高いこと、そして新たな「組織」も同様に解散の対象になるとしています。

裁判所は、信者個人が信仰を実践する自由は妨げられないとする立場で判決を締めくくっていますが、これは、信教の自由には共同体としての実践と宗教法人設立の自由も含まれるという国際人権法の理解に反しています。

2024年8月4日、福岡で宗教の自由を求めて行進する統一教会/家庭連合のメンバー。

特に、共同体として宗教を実践する権利は、国際人権基準における結社の自由と密接に関係しています(欧州人権裁判所「ハサン&チャウシュ対ブルガリア事件」(2000年10月26日)および後続判例)。

「宗教共同体の組織が問題となる場合、欧州人権条約第9条(信教の自由)は、第11条(結社の自由)とあわせて解釈されなければならない。すなわち、信者が宗教共同体として平穏に活動することを国家が妨害しないよう保障されるべきである。宗教的多元主義は民主主義社会の本質であり、それを支えるためには、宗教共同体の自律的存在が不可欠である。」

さらに、欧州人権裁判所はこうも述べています。

「これは単に組織の問題にとどまらず、すべての信者にとっての信教の自由の実質的な享受に関わる問題である。もし宗教組織としての活動が保護されなければ、個人の信教の自由のあらゆる側面が脆弱になる。」

国連自由権規約人権委員会も同様の立場をとっており、「マラコフスキーおよびピクル 対ベラルーシ事件」(1207/03)などで同趣旨の判断を下しています。

これに真っ向から矛盾しているのが、2025年3月3日に下された日本の最高裁判決です。

「宗教法人に対する解散命令は、法人格を喪失させるに過ぎず、信者の宗教活動を禁止・制限するものではない(1996年1月30日最高裁判決参照)」

日本の最高裁判所は、宗教法人格の存否が、信者個々の信教の自由の実質的享受に直接関わるとする国際人権基準に明白に反する判断を下しました。

自由権規約第18条3項のもとで、信仰の表明に対する制限が正当とされるのは、法律に明確に定められ、かつ公共の安全・秩序などの保護に必要であり、国際人権法の判例法において追求される目的に照らして相応な場合に限られます。

本件における解散決定は、法に明確に定められておらず、条約が定める保護利益にも当たらず、必要性・相当性の要件を満たしていません。したがって、地裁の決定と、それを導いた最高裁の判断は、日本における統一教会の信者全体に対する信教の自由または信念の自由を侵害しています。

日本の最高裁判所。

日本には、国際人権義務を軽視してきた長い歴史がありますが、この判決はその典型的な例です。本判決は、日本政府が「統一教会をあらゆる手段で宗教的風景から消し去る」という政治目的の一環として下されたものです。

現在も「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、新たな「被害者」を募って新法を用いた財産差し押さえ訴訟を推進しています。政府は2023年1月には、公立学校において統一教会信者の子どもたちに対して、親の信仰に反発させ、将来信者にならないよう仕向ける再教育プログラムを開始しました。

これは、単なる解散命令にとどまらず、宗教浄化というべき国家的取り組みであり、解散はその氷山の一角に過ぎないのです。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

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カテゴリー: BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ

BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ89


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:統一教会の解散・デュバル報告書
4.2009年のコンプライアンス宣言

05/01/2025 Patricia Duval

皮肉なことに、解散は、裁判所が非難していた献金勧誘の方法がほぼ消滅した後に宣告された。

パトリシア・デュバル

5本の記事の4本目

2009年以前のいわゆる「霊感商法」:統一教会の日本人信者(教会自体ではなく)が、幸運をもたらすと主張して法外な値段で販売していたと非難された品物。

2007年から2008年の間に4人の信者が刑事有罪判決を受けたことを受けて、統一教会は信者に対して具体的な指導を行いました(この指導は「宣言」と呼ばれてはいますが、本来の意味の「宣言」とは異なる曖昧な意味の「宣言」です)。

東京地方裁判所は2025年3月25日の決定において、この指導について次のように述べています:

「上記のように刑事事件が続く状況において、平成21年にコンプライアンス宣言を出しており、それまでの民事判決において不法行為の成否の判断に当たって繰り返し指摘されてきた要素に加え、上記の刑事事件で問題となっていた特定商取引法違反(威迫・困惑)に言及しつつ、教会指導者に対し、信者の法令遵守の指導監督を求める公文を発出するなどした。また、利害関係参加人は、その後も、同宣言の延長線上にあり、同宣言を拡充する趣旨の公文等を逐次発出するなどしており」

つまり、2009年の「コンプライアンス宣言」は、一つの文書というよりも、教会による一連の指導の総称でした。裁判所も、教会が実際にこの宣言を基盤とした法令遵守政策全体を展開し、法令順守を徹底させようとしていたことを認めています。

裁判所は以下の2点を認めました。

 ・教会は、民間取引に関する法令遵守について、信者の私的活動を管理するよう職員全体に向けた指導を広く行っていたこと。
 ・教会はまた、献金の勧誘に関しても、過去の不法行為訴訟で争点となった「自由意思の侵害」が再発しないよう、職員に対して具体的な指導を行っていたこと。

後者については、献金者に対して十分な情報提供を行い、必要な書面に署名させるなど、教会を守るための措置が含まれていました。教会の是正部門が効果的に機能していたことは、裁判所の以下の認定からも明らかです。「32件の民事判決における169名の原告のうち、コンプライアンス宣言の翌年である平成22年以降の献金の支払等について損害賠償を請求し、不法行為が成立すると判断がされたのは、2件の原告3名である(判決番号31・被害者番号166、判決番号32・被害者番号168及び169。判決番号32の被害者番号167については、判決書〔甲E32〕によれば、違法であると認定された献金勧誘等行為に基づく献金の支払等は、いずれも平成21年までに行われている。)。このうち、献金の支払等の開始時期が平成22年以降であるとされるのは、1件の原告1名である(判決番号31・被害者番号166)。また、上記2件の原告3名につき、認容額のうち平成22年以降に献金の支払等がされたと認定されたものに係る額は、合計1761万1600円であり、判決において違法であると認定された献金勧誘等行為に基づく献金の支払等のうち、最も遅い時期の支払等は平成26年のものである。」

この時期は、脱会説得(ディプログラミング)も終息していた時期と一致します。にもかかわらず、裁判所はこの事実を無視し、すべてを単に「コンプライアンス宣言」の効果に帰しただけでした。

さらに裁判所は次のようにも認定しました。

「訴訟提起に基づく和解件数についても、同様の減少傾向がみられる。」

裁判外の和解――すなわち、献金に関して損害賠償を請求する旨の通知書を送付した元信者の件数については、裁判所は次のように述べました。

「減少が続き、平成31年以降は、1桁台の人数となっている(平成31年〔令和元年〕及び令和2年がそれぞれ7名、令和3年及び令和4年がそれぞれ3名)」

継続的に行われたメディアによる敵対的報道や、弁護士ネットワークによる訴訟奨励にもかかわらず、このような減少が起きたことは極めて注目に値すると言えます。

これらの数値からすれば、コンプライアンス宣言が尊重されてきたことは明白だったはずです。それにもかかわらず、裁判所はこの成果の意義を軽視し、これらの事実のみでは不十分であり、教会は不法行為の再発防止のために「根本的措置」を講じていないと述べました。具体的には、教会が献金に関する通知を受け取った際に十分な調査を行っていなかったこと、および勧誘に関与した信者を除名していなかったことを非難しました。しかし、このような批判は、裁判所自身が示した数値に照らしても極めて的外れです。

献金に関連する不当な行為が発生した場合には、教会は適切かつ効果的に対処していたことは明らかであり、再犯者がいなかったため、除名がなされなかったことは当然の帰結と見るべきでしょう。しかし裁判所は、教会の善意の努力を認めることなく、不法行為は「悪質な性質のものである」と断定し、次のように結論づけました。

「民事判決において認められたのと同種・同様の不法行為が認められる蓋然性は高い」

解散命令後の記者会見に臨む日本の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長。

このシリーズの冒頭で述べたように、裁判所は、献金の勧誘が信者自身の善意に基づく行為であったという事実を無視しました。文科省は、献金の使途に関する資料を提出しており、それによれば、献金は教会の施設維持、世界的教育・宣教活動、人道支援に使われていたことは明らかです。個人の私利私欲や文鮮明師個人への送金には一切使われていません。

これらの事実は解散申立ての中に含まれており、裁判所が無視できるはずのないものでした。しかし裁判所は、自由意思の侵害や不当な影響に基づくとする偏った不法行為判決を根拠とし、これらの行為には悪意の意図があったと認定し、将来にわたって同様の被害が再発する可能性があると結論づけました。しかし、裁判所が一方で「信者は不当な影響下にあるため強固な信仰を持っている」と認定しながら、他方で「献金勧誘には悪意の意図があった」とすることは論理的に矛盾しています。

本来、裁判所は信者が善意で行動したと認定すべきでした。にもかかわらず、裁判所は、民事裁判所が「社会的規範」に基づいて偏った判決を下したのと同様に、悪意を推認しました。さらに、裁判所は上記の数字に基づく現在の被害を証明できなかったため、「未だ顕在化していない被害が存在する」とする曖昧な推測に踏み込みました。

裁判所はこう述べています。

「上記の民事判決、訴訟上の和解及び裁判外の示談において主張されたもの以外に、違法な献金勧誘等行為による顕在化していない被害が存在することは否定されないというべきである」

この「否定できない」という表現により、裁判所は立証責任を転倒させ、「他の顕在化していない被害がある可能性」を被告が否定していないかのように示唆しています。しかし、証明責任はあくまで原告側にあるべきです。

さらに裁判所はこう続けます。

「周囲の信者等との人間関係等といった心理的な障壁・・・から、違法な献金勧誘等行為により被害を受けた者の全てが弁護士に依頼をするなどして解決を求めるとは考え難い」

そして、こうした「被害申告をしていない被害者」を考慮に入れた上で、「被害は縮小傾向にあるものの・・・なお看過できない程度の規模の被害が生じているということができる。」と結論づけました。これは、偏見と純粋な憶測に過ぎず、法の適正手続および公正な裁判を受ける権利を根本から侵害するものです。

この理解は、西洋の裁判所ではすでに非科学的で法的価値のないものと判断されている「マインド・コントロール理論」に基づいています。

この理論に基づいて、解散命令の根拠となった32件の民事判決では、献金者の自由意思の侵害が認定され、統一教会に不法行為責任が課されました。

教会が、献金時点で信者が確固たる信仰を持っていたことを示す証拠を提出したにもかかわらず、裁判所は、献金者は「不当な影響下」にあったとして、返金と損害賠償を命じました。

全国霊感商法対策弁護士連絡会のリーダーの一人、紀藤正樹弁護士。スクリーンショット。

また、これらの事案の多くが20~40年前の古い出来事であるにもかかわらず、弁護側が主張した時効(3年)の抗弁は認められませんでした。判決は、献金者が自らの被害者であると認識していなかったため、時効の起算点は、彼らが反統一教会の弁護士らと接触し“目覚めた”時点であるとし、それ以前の請求も有効と判断しました。

これは、明白な偏見と差別的な法の適用です。

こうした「不当な影響」という主張は、2023年12月30日に成立した被害者救済法の背後にも存在しています。この法律は、解散申立てを受けた宗教法人の被害者に損害賠償を請求させるための支援制度を整備し、その資産の監視も目的としています。この法律は、当時唯一の解散対象宗教団体であった統一教会のために作られたものでした。

法律の適用に際し、行政は「被害者」の定義に関する指針(ガイドライン)を発表しましたが、それは教会のために特別に設計されたものです。「被害者」とは、損害賠償請求権を有する、あるいは有する可能性がある者と定義されており、当該解散申立ての段階で認定された被害者に限らず、同種の行為の被害者であって、請求時にまだ知られていなかった者も含まれます。

さらに、「まだ損害賠償請求の意思を明確にしていない者」も含まれます。つまり、将来、自分が「被害者」であることに気づかされて登場する可能性のある者まで含めるのです。これは、特に政府から資金提供を受けている「霊感商法対策弁護士」らがロビー活動をとおして世論操作することで実現しました。同様の論理で、裁判所は今回、「将来登場するかもしれない被害者」まで含めて、宗教法人の解散判断の「被害の存在」に加えました。

しかし、日本には、信教の自由に関する国家的中立義務があります。これは日本が国際社会に対して誓約しているものです。にもかかわらず、日本は今、まさにそれと逆のことをしているのです。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ88


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:統一教会の解散・デュバル報告書
3.判決を読む

04/30/2025 Patricia Duval

地方裁判所は民事訴訟だけでなく和解や陳述書にも依拠し、ディプログラミングの問題を無視した。

パトリシア・デュバル

5本の記事の3本目

ワシントンDCで開催された「2025年国際宗教自由サミット」で日本における宗教の自由の危機について論じるパトリシア・デュバル氏

2025年3月25日に東京地方裁判所が統一教会の解散を命じた決定において、裁判所は先ず、「法令に違反」(宗教法人法第81条1項)の解釈について論じています。

裁判所は次のように述べています:「しかし、民法709条が一定の行為を禁止する旨を定めた規定であるとはいえないものの、同条の不法行為を構成する行為は、不法行為法上違法と評価される行為、すなわち、一定の法規範に違反する行為であり、行為者は、同条という法令の規定により損害賠償責任を課せられる。」

民法第709条は次のように定めています:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

つまり、裁判所は、「法令違反」とは「私人間の権利侵害」に等しいものと見なしたのです。しかし、前述のとおり、このような飛躍的な新解釈は、3週間前に最高裁が初めて採用したものであり、統一教会の解散を目的とした、まさに特注の解釈だと言えます。

裁判所は、教会信者の行為が「個人の意思決定の自由を制限し、正常な判断能力が損なわれた状態で献金や物品購入を強いた」と認定しましたが、この認定は、非科学的かつ既に否定された「マインド・コントロール理論」に依拠しています。

さらに裁判所は、「これらの行為は、社会的に相当とされる行為の枠を逸脱するものであり、民法上の違法行為として『法令に違反する行為』に該当する」と付け加えました。

つまり裁判所は、「人の自由意思の侵害」という主張に基づき、「社会的相当性」からの逸脱を認定し、これを「法令違反」と見なしたのです。

しかしこのような解釈は、日本が1979年に批准した国際人権規約(自由権規約、ICCPR)第18条3項に基づく信教の自由の保護義務に違反しています。「宗教又は信念を表明する自由に対する制限は、法律で定められ、かつ、公共の安全、公の秩序、健康又は道徳若しくは他人の基本的権利及び自由を保護するために必要な場合に限る。」

「法律によって定められていること」との要件についていえば、当該法律は、どのような場合に適用されるか予測し可能で、自らの行動を適切に制御できる程度に明確な規定でなければなりません。(人権擁護に関する一般意見第27号:第12条(移動の自由)1999年11月2日:「制限を課すことを認める法律は厳密な基準を用いるべきであり、制限の実施にあたる者に対して無制約な裁量権を与えるものであってはならない。」)

「社会的相当性」からの逸脱を理由に、宗教法人の解散によって宗教表現を制限することは、このような法の明確性要件を明らかに欠いています。不明確かつ定義のない「社会規範」の侵害を根拠とすることは許されません。このような措置は、日本が国際社会に対して誓約した人権保障の義務と 整合しません。

次に、裁判所は宗教法人法第81条1項のもう一つの要件、すなわち「著しく公共の福祉を害する」が充足されるかどうかの判断を迫られました。

裁判所は以下のように認定しました。

「上記(ア)の不法行為は、昭和55年頃から令和5年頃までの約43年間にわたり、全国規模で繰り返され、少なくとも、1559名(確定判決140名、訴訟上の和解448名、裁判外の示談971名)の被害者を生じさせた。」

これらの数字については、後述で検討されます。

裁判所は次のように結論づけました:「これらの不法行為により、多数の者に多額の損害を被らせ、親族を含む多数の者の生活の平穏が害されてきた。」そして、「公共の福祉に対する重大な侵害」があったと判断し、宗教法人の解散を命じました。

しかし、「公共の福祉」を理由に信教の自由を制限することには重大な疑義があります。「多数者の生活の平穏」を保護するという名目も同様です。これらはいずれも、前述の国際自由権規約第18条3項に違反しています。信仰を表明する自由に対する制限が正当化され得るのは、あくまで公共の秩序や安全への脅威など、極端な状況に限定されるものであり、「公共の福祉の侵害」や「多数者の生活の平穏」の侵害などは、この基本的人権を制限する正当な理由には含まれません。むしろ、信教の自由の保護とは、支配的多数派から敵意の対象とされ得る宗教的少数派を保護することを意味します。(人権擁護に関する一般意見第22号:第18条[思想・良心・宗教の自由]1993年7月30日)

国連自由権規約人権委員会は、日本に対して繰り返し勧告を行い、「公共の福祉」を市民的自由、特に信教の自由の例外根拠として使用することをやめるよう求めてきました。しかし日本政府は、こうした国際的批判に一貫して耳を貸さず、憲法および様々な法律、特に民法第1条1項(「私権は、公共の福祉に適合しなければならない」)と、宗教法人法第81条1項(前記解散事由)にこの例外規定を残し続けてきました。

東京地方裁判所の外観:

そして東京地方裁判所は、約60万人の信者を擁する大規模な宗教法人の解散を命じるにあたり、これら2つの法的根拠に明示的に依拠しました。そのため、この判決は国際人権法の下で違法と評価されるのです。

裁判所が先に挙げた被害者数(1,559人――確定判決による被害者140人、裁判上の和解による被害者448人、裁判外の和解による被害者971人)という数字は、まず文科省が解散申立ての際提出した、統一教会が敗訴した32件の不法行為民事訴訟に依拠しています。

しかし、裁判所はまず、2007年および2008年に教会信者だった人物に対してなされた4件の刑事事件に言及して議論を始めました。これらは「開運グッズ」を販売していた民間事業者に対するものであり、教会とは無関係の古い事案でした。実際、裁判所はこれらの刑事事件を宗教法人解散の判断根拠としては用いていません。にもかかわらず、これらの訪問販売法違反に基づく4件の刑事有罪判決――教会がかなり以前に中止を指導していた「ストリートセールス(路上販売)」――をあえて最初に持ち出したのは、判決全体に「色付け」をして、教会の印象を最初から悪くするためであったように見受けられます。裁判所は、全国霊感商法対策弁護士連絡会および文科省の主張に沿って、民間事業者による開運商品の販売と、教会による宗教的献金の勧誘を同一視しました。

そして、過去に教会が敗訴した32件の民事不法行為訴訟に依拠しました。そして、統一教会の教義そのものが献金者の「自由意思」を侵害する手段であり、信者は不当な影響を受けたため返金と損害賠償を受けるべきだとする全国弁連の主張を、かつて判決を下した裁判所と同様に、そのまま鵜呑みにしました。それらのかつての判決においては、民事裁判所は、単に「社会通念」あるいは「社会的相当性」といった曖昧な基準に違反しているというだけの理由で不法行為が成立すると判断して、教会に献金の返還および損害賠償を命じました。しかし、こうした判決は、前述のとおり、市民的及び政治的権利に関する国際規約に定められた要件には適合せず、信教の自由および公正な裁判を受ける権利の侵害を構成します。

注目すべき点として、裁判所は、原告の過半数が強制的に脱会させられた上で訴訟に駆り立てられたという事実に一切言及しませんでした。しかし、これは無視できる事実ではなかったはずです。なぜなら、被告側弁護士が主張書面でこの点を展開しており、実際に一件の訴訟では、神戸地方裁判所の審理において「脱会屋」の高澤守牧師が証人尋問を受け、このやり方が通常違法であることを知っている旨証言していたからです。

さらに彼は、「いったん統一教会の信仰を確立した人は、自然に離れることは不可能だと思う」と述べています。彼はこのことをもって、教会信者に対する強制的な手段を正当化しているのです。それにもかかわらず、裁判所はこの重要な側面を完全に無視し、強制下にある信者による不法行為請求は信用できないという弁護側の主張に対して沈黙を保ちました。裁判所はこの主張に回答しなかっただけでなく、言及もしませんでした。しかしこの主張は、裁判所に提出された数字に疑義を差し挟み、教会が与えたとされる損害の実態や、その継続性に新たな観点をもたらし得る、事実に基礎付けられた有効な主張だったのです。

実際、弁護団は、脱会説得の件数と請求件数がほぼ比例していることを示す図表も提出しました。

訴訟とディプログラミングの件数。

上記グラフにおいて、青線は裁判件数を、赤線は拉致監禁脱会強要事件件数を示しています。裁判件数は監禁事件数の増加に比例して増加し、同事件数の減少とともに減少しています。

国連自由権規約人権委員会が2014年8月に日本政府に対しこの強制脱会をやめるよう勧告して以降、強制脱会事件数はゼロになりました。そして日本の裁判所は初めて、12年間にわたる強制脱会に対して実質的な損害賠償を認め、この手法を違法と判断しました。しかしながら、裁判所はこのような客観的な事実に基づく反論を無視し、代わりに1980年代以降に「非常に多くの請求があった」と強調しました。この時期のピークは実際には信仰破壊活動の増加によって生じたものでした。

文科省は解散命令申立て事件で、統一教会が過去40年間で敗訴した32件の民事訴訟事例を提出しました。それらはごく少数であるばかりか、殆どの事件は何十年も前のものであったため、説得力に欠けていました。そこで文科省は、裁判上・裁判外の和解事例を東京地裁に提出し、裁判所はそれらを不法行為認定に用いました。

裁判上の和解については、元信者が献金勧誘行為による損害を訴えて提起した民事訴訟で、裁判上の和解に至った事例が100件あり、そのうち6件は先の32件に含まれていました。日本では、司法は紛争の早期解決のために和解による解決を奨励しており、統一教会が裁判上の和解に応じた殆どのケースは、裁判所の和解勧告に従ったものでした。裁判外の和解については、文科省が提示した請求者数は、献金勧誘が不法行為であると主張して通知書を送付した元信者の件数であり、教会との間で金銭支払いを含む裁判外の合意が成立したものです。

しかし、裁判所がこれらの和解や任意返金までを不法行為の証拠と看做し、不法行為件数に加算したことには、重大な疑義があります。というのも、献金返金の請求があったということは、不法行為が認定されたこととはまったく別であり、これらの事案においていかなる裁判所も不法行為認定をしていないからです。

この点についての詳細な検討は、宗教学者で弁護士でもあり、OSCE(欧州安全保障協力機構)における反人種差別・反宗教差別担当代表を務めたマッシモ・イントロヴィニエ氏による判決批判の論考をご参照ください。

教会がある時点から和解・返金政策を取ったのは、全国弁連が教会を壊滅させる戦略の一環として高額経費と長期間を要する訴訟を組織的に繰り返していたため、これに巻き込まれることを避ける意図がありました。しかし東京地裁は、これらの献金返金件数までを不法行為の証拠とし、さらに、文科省が不透明な手続で取得した陳述書(詳細は筆者の別稿を参照)までを根拠に含めました。

このようにして数値を人工的に膨らませたにもかかわらず、最終的に裁判所の論拠は破綻しました。というのも、裁判所は最終的に、「近年における請求件数は著しく減少し、実質的にゼロになっている」と認定したからです(これは、上記のグラフ――請求件数と脱会説得件数の比較――に明確に示されています)。

この減少は、教会が信者による献金勧誘に対して極めて厳格な監視体制を敷いたこと、そして教会自身を守るために内部対策を講じたことにも起因します。とりわけ、教会は2009年に「コンプライアンス宣言」を採択し、これは今回の判決文でも詳しく検討対象とされています。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ87


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:統一教会の解散・デュバル報告書2.日本の文脈

04/29/2025 Patricia Duval

この裁判所の決定は、政治的な動機を持つ貪欲な弁護士による宗教運動への約40年にわたる嫌がらせの頂点である。

パトリシア・デュバル

5本の記事の2本目

解散命令後の反統一教会弁護士による記者会見。スクリーンショット。

2025年3月25日に東京地方裁判所が統一教会の解散を命じた決定は、もし抗告審で維持されるなら、「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」による長年の活動の集大成となる可能性があります。この団体は、信仰を偽りと見なし、宗教献金を単なる資金集めに過ぎないと主張する反カルト派弁護士によって構成されています。

同連絡会は、統一教会が反共運動を展開していた初期の時代から、教会を日本から排除することを明言した極左系の弁護士達によって1987年に設立されました。

文鮮明師は、世界平和の実現には無神論的共産主義の拡大を防ぐことが不可欠であると信じており、そのために「国際勝共連合(勝共連合)」や「南北統一運動国民連合」などの団体を設立し、戦後の共産主義拡大によって脅かされる精神性の回復と、朝鮮半島の統一に向けた努力を続けてきました。

「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、教会との対決姿勢を取り続けており、発足当初から、信者は「洗脳」されているという主張のもとに行われる「強制的脱会説得」(いわゆるディプログラミング)に密接に関わってきました。

静岡における国際勝共連合の初期の活動、1969 年 8 月。出典: tparents.org。

過去40年以上にわたり、日本国内の統一教会信者約4,300人が、家族による拉致・監禁と、専門の“脱会屋”による強制的脱会説得を通じて、棄教するよう圧力をかけられてきました。これらの行為に対して、当局はほとんど何の対応もしてきませんでした。

全国弁連は、こうした信仰破壊活動を数十年にわたり支援し、最終的に信仰を捨てた元信者に対して、統一教会を相手取る民事訴訟を提起するよう促してきました。これは、彼らにとって「棄教」を証明し、「脱会説得」から解放されるための道でもあったのです。こうした一連の不法行為訴訟の組織的提起と、教会を破壊するための画策を、東京地方裁判所は2025年3月25日の決定において承認したのです。この決定は、現在、高等裁判所に抗告されています。

宗教法人法第81条1項によれば、政府は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」ときは、宗教法人に対し解散命令を申し立てることができます。

東京地方裁判所は、犯罪行為が存在しない場合でも、私人間の民事訴訟における判決が「法令違反」に該当し得るかどうか、すなわち宗教法人の解散を認める根拠となるかどうかについて判断を迫られました。

この問題について、最高裁判所は2025年3月3日、解散申立てに先立つ関連訴訟(解散前の手続に関する訴訟)において、肯定的な判断を下しました。東京地裁はこの最高裁の判例をそのまま踏襲し、統一教会の解散を実現するために特別に行われた事実上の判例変更に基づいて判断を下したのです。

しかし、これまでの日本の判例は、この問題に対して一貫して否定的な立場を取ってきました。歴代の日本政府もその解釈を維持しており、1994年と1998年には、全国弁連による統一教会の解散申立ての働きかけを退け、2012年には政府が解散申立てをしなかったことを理由に全国弁連から訴えられましたが、政府が勝訴しています。

ところが、2022年7月に発生した安倍晋三元首相(1954-2022)の暗殺事件が状況を一変させました。犯人である山上徹也は、安倍氏が統一教会の平和構築活動に共感を示していたこと、そして自身の母親(現信者)が20年ほど前に多額の献金をしていたことを動機に、安倍氏を標的としたのです。

教会に対する民事訴訟を積み重ね、解散申立てがなされない事態を断念できなかった全国弁連は、この事件を格好の機会として利用しました。犯人の行為に反カルト運動が影響を与えた可能性が報道されていたにもかかわらず、その関連性については一切調査されず、また、教会に反対する人物による犯行であったという事実も無視されました。それにもかかわらず、弁護士ネットワークは犯人を「被害者」と位置付け、統一教会を攻撃し、この事件の責任は教会にあると主張し、「犯罪的」「反社会的」組織であると決めつけて非難しました。メディアによる激しい非難と世論の圧力によって、安倍政権を支えていた与党勢力は大きな打撃を受け、統一教会はこの事件における“便利なスケープゴート”とされました。

暗殺事件後、首相となっていた岸田文雄氏は、当初は「教会が刑事責任を問われたことは一度もないため、解散申立ては不可能」との見解を表明しました。しかし、メディアをとおして弁護士ネットワークからの圧力が強まる中、岸田首相はわずか24時間以内に態度を一変させ、民事上の不法行為判決のみで解散申立てが可能であるとの見解を示しました。

安倍晋三氏(1954-2022年)の葬儀に臨む岸田文雄首相(当時)。スクリーンショット。

こうして、宗教法人を所管する文部科学省は、2023年10月13日に統一教会に対する解散申立てを行いました。そして東京地方裁判所は、この申立てに対して判断を下すことになったのです。

安倍元首相の暗殺以降、全国弁連は、統一教会およびその信者に対して、より強圧的な措置を次々と求める活動をメディア上で絶えず続けてきました。与党・自民党は、統一教会との関係を断ち切るよう、まさに「喉元に刃を突きつけられる」ような状況に追い込まれました。全国の学者たちは、発言することに萎縮し、教会への共感や関与を疑われることを極度に恐れるようになりました――特に、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件の記憶がトラウマとなっていました。このときは、オウムにかつて理解を示した人物が徹底的に糾弾されたからです。

こうして、弁護士たちによって教会に対するあらゆる支援を封じ込めるための“偏執的(パラノイア的)”な雰囲気が作り出され、教会に共感を示す者は犯罪者扱いされるようになりました。この有害な空気は、現在に至るまで続いています。

こうした状況の中で、2025年3月25日、東京地方裁判所が統一教会の解散を認める判断を下したことは、驚くべきことではありません。以下のようにして、長年にわたる解散運動を肯定したのです:

 ・強制的脱会(ディプログラミング)の成果の収穫:裁判所は、32件の不法行為に関する民事判決に依拠しました。殆どの事案は数十年前の事実に関するものであり、多くは強制的に棄教させられた元信者らが提起した事件でした。さらには、裁判上・裁判外の和解事例まで加えることで、教会が「類例のない膨大な規模の被害を生じさせた」とする認定を補強しました。
 ・近年の被害申告の欠如または減少にもかかわらず、裁判所は、近年における請求の不在または著しい減少を前にして、「声を上げられない潜在的“被害者”が存在するはずだ」とする曖昧かつ架空の理論に依拠し、「被害の継続性」を“合理的推認”で補いました。
 ・裁判所は、教会による法令順守の努力や信者の信仰的動機を無視して、教会による献金の勧誘に「悪意の意図があった」と決めつけ、教義や組織が存続する限り不法行為が今後も続くことは避けられないと推定しました。
 ・裁判所は、犯罪行為や明確な法令違反が一切存在しないにもかかわらず、不明確かつ定義のない規範である「社会的相当性」の逸脱や、「公共の福祉」・「平穏な生活」の侵害といった理由で宗教法人の解散を命じました。これは日本が締結する人権条約の義務に真っ向から違反します。

この裁判所の決定は、さまざまな点で不公正であり、国際人権法違反です。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%ef%bc%9a%e7%b5%b1%e4%b8%80%e6%95%99%e4%bc%9a%e3%81%ae%e8%a7%a3%e6%95%a3%e3%83%bb%e3%83%87%e3%83%a5%e3%83%90%e3%83%ab%e5%a0%b1%e5%91%8a%e6%9b%b8%ef%bc%92%ef%bc%8e%e6%97%a5%e6%9c%ac/?_gl=1*sozbyk*_up*MQ..*_ga*MTY1MjY0OTI4NS4xNzU1MzA1OTE0*_ga_BXXPYMB88D*czE3NTUzMDU5MTQkbzEkZzAkdDE3NTUzMDU5MTQkajYwJGwwJGgw&gclid=CjwKCAjwtfvEBhAmEiwA-DsKjh0cX9X6HxhN6mhQhlmpW1kJihL41vv6TxEnKZoU8Uqw4bEtwNZiUBoCqhgQAvD_BwE&gbraid=0AAAAAC6C3PfE8MKkh6QqHpQEcVOh-dLkc

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ86


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

日本:統一教会の解散・デュバル報告書1.献金の宗教的目的

04/28/2025 Patricia Duval

解散決定は、過度な献金の勧誘をめぐる非難に基づいているが、その宗教的性質は無視されている。

パトリシア・デュバル

5本の記事の1本目

2025年に韓国で行われた家庭連合の天苑宮天一聖殿の入宮式。Facebookより。

以前は統一教会として知られ、このシリーズでは「統一教会」または「教会」と呼称される世界平和統一家庭連合は、日本国内で約60万人の信者を擁する宗教法人であり、日本政府からその解散を求める申立てがなされてきました。2025年3月25日に東京地方裁判所が第一審判決でその要請を認めたことにより、最近世界中のメディアで取り上げられています。

この問題は一貫して金銭的な問題、すなわち献金に関する問題として提示されており、教会が過度な献金を集め、多くの信者を「破綻」させたと非難されています。

このシリーズの目的は、当該裁判所決定を世界的な視点から検討することにあります。第一に政府自身の調査結果に基づく献金の使途を明らかにし、第二に日本の社会的・法的文脈を説明し、第三に裁判所の判断を分析し、第四に信者の信教の自由に対する影響を含めて必要な結論を導くことです。

宗教法人を所管し、今回の解散を申し立てた文部科学省(文科省)は、解散申立書の中で、信者からの献金の目的または使途について次のように述べています:「本件宗教法人は、信者献金を原資とし、布教費、教会維持費、教会運営費、祭典費、海外宣教援助費等の宗教活動支出、固定資産購入等の財務支出、寄付金等の特別支出を支出している。」

統一教会の信者たちは、自らをキリスト教の一派であると主張しており、彼らの信仰は聖書に対する独自の解釈に基づいています。彼らは、イエス・キリストが最初のメシアであり、文鮮明師(1925?2012)が第二のメシアとして現れ、イエスが果たし得なかった使命――すなわち、家族の価値と家族愛の回復――を成し遂げるために来たと信じています。この家族の回復こそが、人類の平和と統一の基盤となると彼らは考えています。

献金は教会の宗教団体を維持し、信仰の実践および布教活動(世界的な宣教支援や慈善活動を含む)を可能にするために用いられています。これは世界中のあらゆる宗教団体が行っていることと何ら変わりありません。

宗教または信条を表現・実践する権利には、宗教団体を設立・維持する権利、ならびに献金を募る権利が含まれており(国連総会「宗教または信念に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する宣言」総会決議36/55、1981年11月25日、第6条(b)および(f))、献金の勧誘という行為自体は、それ自体として完全に正当な活動なのです。

文鮮明師と、その妻であり後継者である韓鶴子博士。Xより。

文科省は、解散申立書に添付した証拠資料の中で、以下のような証言も提出しています。

第2節:岡村信男総務局長の証言(甲B6-3)

2001年12月19日、東京地方裁判所において、総務局長・岡村信男氏は、以下の事実について証言しました(証言調書7~8頁):

 1.献金は国内の支出だけでなく、国際ハイウェイプロジェクトや海外宣教活動にも使用されていた。
 2.献金はまずアメリカの世界宣教本部に送金され、そこから海外各地に配分されていた。
 3.資金は、各種セミナー、大会、集会、そして世界中での教会建設に使われた。
 4.貧困国での活動に対しても財政的支援がなされていた。
 5.これらの資金は、文鮮明師個人の利益のために集められたものではなかった。

以上より、日本の信者から集められた献金は、1)個人的な蓄財のために用いられたことはなく、2)むしろ、信仰の拡大と世界中、特に貧困国における人々の支援のために用いられたものである、と結論づけることができます。これはまさに、創設者である文鮮明師の掲げたモットー、「他者のために生きる」と一致するものです。

同じ資料の中で、文科省は、日本で募った献金によって支援された国々のリストも提示しています。

第3節:具体的に支援された国々

統一教会は、全世界194カ国を対象に宣教活動を行っており、日本からの献金はアジア、アフリカ、ヨーロッパ、中南米、その他の国々での宣教活動に使用されてきました。その結果、北米・南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジア・オセアニアにわたり教会の基盤が築かれています。2013年以降は、日本の2世信者による宣教活動も活発化しており、海外宣教のための経済的支援も行われています。2世信者が派遣された国は以下のとおりです:

 ・北・中・南米:中南米8か国
 ・アジア・太平洋:14か国
 ・ヨーロッパ・中東:9か国
 ・アフリカ:10か国

上記すべては、宗教法人の解散手続において文科省が把握した事実に基づいています。

日本法において宗教法人の解散命令を裁判所に求める手続には、訴訟に先立ち、当該宗教法人に対する質問を通じて事案に関する情報を収集する予備的な段階が含まれます。2022年11月から2023年末にかけて、文科省は教団に対して7回にわたり質問書(裁判所の決定では「報告徴収」と表記)を送付し、組織構造、運営状況、宗教活動、訴訟例などについて質問を行いました。文科省は、教団からの報告に基づいて上記のような情報を含む資料を集積し、それを東京地方裁判所への解散申立てに際して提出しました。

しかしながら、裁判所の決定では、献金の使途を説明し得るこれらの情報には一切言及されませんでした。これらの事実や、献金を募る宗教的動機は完全に無視されたということです。その代わりに、裁判所は、過去のいくつかの民事不法行為判決を根拠として、献金の勧誘には「悪意ある意図」があったと認定しました。この点については後段でさらに詳しく検討します。

こうした事実が判決に記載されなかったこと自体が、裁判所が賛否両面の証拠を適正手続に従って公平に検討していないことを示しています。むしろ、裁判所は偏った姿勢を取り、あらかじめ決めていた解散という結論に導くために、それを正当化しうる論拠だけを利用したのです。

ポーランドで開催された家庭連合のイベント。出典:FFWPUミッション・サポート。

実際、2020年時点で、欧州連合および中東地域においてさえも、教会は以下の国々において正式に登録され、活動を行っていました:

オーストリア、チェコ共和国、ハンガリー、ドイツ、ポーランド、スロバキア、スロベニア、スイス、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、エストニア、コソボ、北マケドニア、モルドバ、ルーマニア、ロシア、イスラエル、トルコ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、ベルギー、フランス、オランダ。

このように、日本は、世界中に確立された基盤を持つ教会に対して解散を命じるという点で、国際社会の中でも異質な対応を示しています。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができます。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%ef%bc%9a%e7%b5%b1%e4%b8%80%e6%95%99%e4%bc%9a%e3%81%ae%e8%a7%a3%e6%95%a3%e3%83%bb%e3%83%87%e3%83%a5%e3%83%90%e3%83%ab%e5%a0%b1%e5%91%8a%e6%9b%b8%ef%bc%91%ef%bc%8e%e7%8c%ae%e9%87%91/?_gl=1*skl4ln*_up*MQ..*_gs*MQ..*_ga*MTg0MzQyNTQ1MC4xNzU1MzA1MTAw*_ga_BXXPYMB88D*czE3NTUzMDUxMDAkbzEkZzEkdDE3NTUzMDUxMTAkajUwJGwwJGgw&gclid=CjwKCAjwtfvEBhAmEiwA-DsKjh0cX9X6HxhN6mhQhlmpW1kJihL41vv6TxEnKZoU8Uqw4bEtwNZiUBoCqhgQAvD_BwE&gbraid=0AAAAAC6C3PfE8MKkh6QqHpQEcVOh-dLkc

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ85


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。

中国共産党、日本における統一教会の解散を歓迎

04/26/2025 Massimo Introvigne

党が統制する中国反邪教協会は声明を発表し、「反共産主義」の教会に対する決定を祝福するとともに、海外でも同様の運動が広がることを期待している。

マッシモ・イントロヴィニエ

子供たちに「カルトの悪」について教え込む中国の女性警官。これらの活動は通常、中国反邪教協会と共同で行われている。Weiboより。

中国反邪教協会が、自らを世界最大の反カルト団体であると主張しているのは正当である。すべての大都市とほとんどの小さな町や村にその支部がある。協会の名称は英語では“China Anti-Cult Association”と訳されているが、「邪教」は中世以来、中国語で「異端の教えを広める組織」を指す言葉として使われてきた。この大規模な協会は、中国共産党中央統一戦線工作部を通じて直接統制されている。

4月18日、同協会は、2025年3月25日に東京地方裁判所が下した統一教会(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれる)解散の決定を祝福する声明を発表した。同協会は、これが第一審の判決であることを指摘し、統一教会が控訴したことを遺憾に思うと述べた。

中国共産党が支配する同協会は、統一教会が「反共産主義イデオロギーの道具」であるため、解散を喜ばしく思っている。特に、解散に重要な役割を果たした反カルト団体「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の「世論喚起」活動を称賛している。同連絡会は、宗教団体への寄付に関する新法(実際にはすべての宗教にとって危険である)を「効果的に推進した」として同連絡会の功績を称賛している。中国当局が特に満足しているのは、「初めて法律にマインドコントロールの概念が盛り込まれた」ということであり、これは「邪教」や「カルト」の烙印を押された集団に対する中国による弾圧の要でもある。

2025年3月に中国反邪教協会が統一教会に対して制作したドキュメンタリーより

声明は、この判決を「画期的な出来事」であり「突破口」であり、「日本社会の『脱カルト化』のプロセスを開始する」だろうと述べている。声明は、このプロセスは統一教会という「個別の事例」から、宗教を異なる方法で規制する「制度的なシステム」へと移行すると予測している。

中国共産党が支配するこの団体は、日本の法制度における宗教の捉え方に最終的に革命をもたらすであろう3つの「突破口」を見出している。「第一に、『宗教法人』が民事違反で解散されたのは初めてだ。これまで日本では、『宗教法人』は刑事犯罪でのみ解散されていた」。声明は、これは「宗教活動の『免責』を打破する」方法として重要であると述べている。

「第二に、解散は統一教会の経済的生命線を断ち切ることになる。解散命令により統一教会は法人格を剥奪され、裁判所は資産を清算することになる」と声明は述べている。声明は、これが世界的に、特に「米国」において統一教会に影響を与えることを期待している。

第三に、声明は、統一教会に対する判決は少数派宗教に対するより広範な取り締まりの第一歩に過ぎず、「日本社会にとって大きな前進」となると考えている。「日本政府は宗教法人法を改正し、宗教団体への財政監督を強化し、被害者補償基金を設立する予定だ。また、特別なカルト対策も計画している…裁判所の解散命令は、同様に寄付金で存続している日本の他の少数派宗派の活動を抑制する可能性がある。」

声明は、判決がすべての問題を解決するわけではないと結論づけ、天宙平和連合(UPF)が依然として国際的に活動を続けていることを嘆いている。

しかしながら、共産党系団体である中国反邪教協会は、東京地裁の判決が「他国にとってカルト問題への対処の手本となる」と確信しており、反カルト宣伝が効果的に行われれば「宗教を装った邪悪な勢力は隠れ場所を失う」ことを他国に教えることになると述べている。

要約すれば、中国共産党はその忠実な反カルト機関を通じて以下のように言っている。東京地裁の判決は、中国で宗教に対して用いられているのと同じカテゴリーを適用しており、中国の利益にかなっており、反共産主義組織を壊滅させ、日本における宗教に対するより広範な取り締まりを準備し、他国にも同様の行動を促す可能性がある。我々はずっと前からそれを知っていた。

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