世界の諸問題と統一運動シリーズ07


地球の温暖化問題に焦点を当てた鮮鶴平和賞

 人類が直面する大きな課題の一つが地球環境問題ですが、その中でも深刻なのが地球温暖化であると言われています。今回はこの問題に関する信頼できる最新のデータを紹介したうえで、統一運動がどのように取り組んでいるかを紹介します。

<地球の温暖化と海面上昇は「疑う余地がない」>

 地球の平均気温は1880年から2012年の期間に0.85 ℃上昇しており、長期的に上昇傾向にあることは「疑う余地が無い」と評価されています。地球温暖化は、人間の産業活動に伴って排出された温室効果ガスが主因となって引き起こされているとする説が主流です。『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)によって発行されたIPCC第5次評価報告書(2014年)は、人間の影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性は「95%以上」であるとしています。

 地球温暖化によって引き起こされる代表的な環境問題の一つが海面の上昇です。温度が高くなれば、海水は熱膨張によって体積を増し、また大陸氷床が融解することによって海面が上昇します。IPCC第5次評価報告書によれば、今世紀末の世界平均気温は、現在よりも0.3~4.8℃の範囲で上昇し、平均海面水位は0.26~0.82mの範囲で上昇する可能性が高いとされています。海面の上昇により、ツバルやキリバスなどの太平洋上の島国は水没の危機に瀕しています。

<気候変動枠組条約の取り組みと課題>

 地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約が「気候変動枠組条約」で、1992年に作成され1994年に発効しています。この条約に基づく交渉の代表的なものが毎年開かれている「締約国会議」(COP)です。その中で有名なのが1997年に京都で開かれたCOP3で、このときに温室効果ガスの削減目標を定める「京都議定書」が採択されました。

 京都議定書が、先進国に拘束力を持つ排出削減義務を負わせたことは、温暖化対策の第一歩として非常に大きな意義があったと言えます。しかし京都議定書は、中国などの新興国に義務を課さなかったこと、米国が最終的に批准しなかったこと、目標設定の公平性が確保できなかったこと、などの課題を残しました。

 京都議定書の採択から20年が経ったいま、世界経済の牽引役は先進国から新興国に代わり、国際政治の構造も様変わりしたため、新しい仕組みが必要とされています。2015年12月にパリで開かれた「COP21」では、「パリ協定」が採択されました。これは、発展途上国も含む世界の196の国と地域すべてが温暖化対策に取り組む初めての国際的な枠組みであるという点で評価できますが、以下のような課題も指摘されています:①各国の合意を優先し、京都議定書のように温室効果ガスの削減目標の達成を義務づけなかった。②従って、温暖化対策が実施されるかどうかは各国の取り組み次第である。

 気候変動に対する国際的な取り組みが今のままでは、実質的解決は困難であると指摘されており、解決を妨げている最大の問題は、国家エゴと経済至上主義だと言われています。アメリカのトランプ政権は2017年6月1日、国内の化石燃料産業を振興させるために、パリ協定からの脱退を表明しました。

<地球環境問題に取り組んだ人物を表彰した鮮鶴平和賞>

 こうした人間による地球環境破壊に対して、文鮮明総裁は以下のように語っています。
「自然を破壊するのは人間の利己心です。…地球の環境が破壊されたのは、人より少しでも大きく、早く成功しようとする人間の貪欲さのためです。…自然は神様の創造物であり、人類のためにくださった贈り物です。自然を大切にして愛することは、神様を愛することと同じです。神様がつくられたすべての存在を愛の対象として感じなければなりません」(『平和を愛する世界人として』p.315)

アノテ・トン

韓鶴子総裁から鮮鶴平和賞のメダルを授与されるアノテ・トン氏

 こうした文総裁の遺志を受け継ぎ、韓鶴子総裁は世界平和の実現に貢献した個人または団体の功績を表彰する「鮮鶴平和賞」を創設し、その第1回受賞者に地球環境問題に貢献した人物を選ぶように提言しました。2015年8月28日に韓国ソウル市内のホテルで行われた「鮮鶴平和賞」第1回授賞式では、受賞者の一人に南太平洋の島嶼国キリバスの大統領として気候変動に伴う危機を国際社会に訴えてきたアノテ・トン氏が選ばれました。

 彼は低平な太平洋の小島嶼国家が海面上昇によって直面している危機について積極的に伝え、国際社会がこの問題に積極的に取り組むように導いてきました。国連を含む主要な国際機関に対して、国際社会がこの問題の解決に着手するための包括的な諮問機関を創設するよう呼びかける上で、アノテ・トン氏は重要な役割を果たしました。

 鮮鶴平和賞の授賞式でトン氏は、「もし全世界が、和解と共存と協力を促進する文鮮明・韓鶴子総裁ご夫妻のビジョンを受け入れれば、より良い平和な世界になることでしょう」と述べた上で、「気候変動はさまざまな程度で私たち全員に影響を与えますが、我が国民はこの世界的な災難の最前線に立っているのです」と、水没の危機に瀕している自国の現状を訴えました。今後もUPFをはじめとする統一運動は、地球環境問題に継続的に取り組んでいきます。

カテゴリー: 世界の諸問題と統一運動シリーズ

書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』158


 櫻井義秀氏と中西尋子氏の共著である『統一教会:日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)の書評の第158回目である。

「第Ⅲ部 韓国に渡った女性信者 第八章 韓国社会と統一教会」の続き

 中西氏は、第8章の「三 韓国農村の結婚難と統一教会」と題する節のなかに「8 布教戦略としての韓日祝福」という項をもうけ、韓日祝福が統一教会の布教戦略においてどのように位置づけられているのかを簡単に分析し、それを次に続く章への前置きとして整理している。ここで述べられている内容は、第8章のまとめにあたる。したがって、特に新しいことを述べているわけではないが、彼女の論理展開を再確認するために引用し、批判内容も整理しておくことにする。
「第八章以降での問題点は、統一教会の信仰は特異な宗教実践によって獲得されるものであるにもかかわらず、信者が信仰を持ち続けていられるのはなぜかである。第八章は九章、一〇章の前置きにあたる。」(p.446)

 中西氏が担当している本書の第9章は韓国に嫁いで暮らす日本人の統一教会女性信者に対するインタビューと参与観察に基づいて記述されており、第10章は統一教会発行の祝福家庭向け新聞『本郷人』(韓国在住の日本人祝福家庭夫人に向けて発行されているもの)の内容に基づいて書かれている。こうした内容をいきなり記述しても読者によく分からないので、事前の解説という意味で、韓国における統一教会と社会の関係、日本との違い、韓日祝福が成立する社会的背景などを説明したのが第8章という位置づけなのであろう。常識的には、7000人もの日本人女性が信仰を動機として韓国人と結婚するというのは驚くべきことなので、それが成立する背景から説明しようというのは理解できる。しかし、中西氏の研究において韓国在住の日本人女性信者に関する情報は直接見聞きした生の情報であるのに対して、日本の統一教会に関する知識は間接的な歪んだ情報に基づいているという欠陥があることは既に指摘してきたとおりである。

 「統一教会の信仰は特異な宗教実践によって獲得されるものである」という表現自体が、「普通な韓国統一教会」と「異常な日本統一教会」というステレオタイプ的な枠組みに基づいている。中西氏の頭の中にある日本統一教会のイメージは、櫻井氏から提供された大量の文献と、櫻井氏自身の記述によって作り出されたものであろう。しかし、それに偏りや歪みがあることはこれまで繰り返し指摘してきた通りである。

 中西氏は統一教会の信仰が「特異な宗教実践によって獲得された」であると断じた上で、問題は「信者が信仰を保ち続けていられるのはなぜかである」(p.446)と言っている。この書き方には、「普通の人であれば統一教会を脱会して当然であるにもかかわらず、現役信者として信じている奇特な人々がいる。どうして信じ続けることができるのか、その理由を解明しなければならない。」というニュアンスが込められている。普通の宗教団体に対しては、このような書き方はしないであろう。「現役信者として信仰を保ち続けている者たちがいる一方で、脱会する信者がいるのはなぜかが問題となる。」と書くのが普通である。現存する宗教団体に現役信者がいるのは「当たり前」である。その中で、信仰を続けられなくなる人が出てくるのであって、その事情を分析することを通して、人が信仰を棄てる理由について考察するのが通常のアプローチであろう。しかしここでは、辞めるのが当たり前であるのに、統一教会のような宗教をどうして信じることができるのか、というバイアスがかかった表現になってしまっているのである。

 中西氏は、韓国における統一教会のあり方と日本におけるあり方の違いを強調する。韓国においては統一教会は宗教であると同時に事業体であり、異端や似而非宗教とされながらもある程度受け入れられ、一定の勢力を持った名の知れた宗教団体となっているというのである。しかし、この分析が事実に反することはこのシリーズの148回から150回にかけてすでに説明したとおりである。中西氏の日韓の比較分析の不備の多くは、彼女が日本の統一教会に直接触れたことがなく、無知である上に、歪んだ情報に基づいて比較していることに起因している。

 こうした歪められた日韓の比較の上で、中西氏は渡韓した日本人の信仰生活を以下のように分析する。
「この点では、韓国は日本人信者にとって暮らしやすい、日本であれば、信仰を持っていることを周囲に明かせず、隠れキリシタンのごとく信仰を続けなければならない。もしわかったら白い目で見られるかもしれない。これはストレスになる。韓国であれば、日本にいたときのように隠す必要はない・・・。渡韓してしまえば、親の反対からも逃れられる。韓国ではストレスを感じないで暮らせる。」(p.446)

 これは渡韓した日本人女性信者へのインタビューに基づいた知見であると思われ、ある程度の実感に基づいた日韓の比較であるとは言えるのかもしれない。しかし、これはあくまでも相対的な比較である上に、個人差が大きいため、過度に一般化することはできないであろう。そもそも日本における統一教会信者がすべて信仰を持っていることを周囲に明かせず、隠れキリシタンのごとくに信仰を続けているという描写自体が、非常に極端なものである。周囲に対して堂々と統一教会信者であることを公言し、なお周囲の社会と協調して生活している信者は多数いるのであり、統一教会の信仰を持つことによって完全に社会と断絶すると考えるのは誤りである。
「しかも韓国は教祖の国であり、統一教会が生まれた国である。そこで韓国人の配偶者と家庭を築いて暮らせるのであるから、信者としてはいい環境である。」(p.446-7)

 この部分には、統一教会信者の内面的価値に対する理解が見られ、この種の批判的研究においてこうしたことが述べられるのはある意味で驚くべきことであり、評価に値する。韓日祝福に対する批判的な文献の中には、韓国にお嫁に行った日本人女性は苦労ばかりで不幸な生活をしているという決めつけが多い。2010年に発売された「週刊ポスト」(6月4日号)に掲載された記事などはその典型であるが、実際に日本人女性信者インタビューした中西氏は、彼女たちがある意味で韓国は日本よりも暮らしやすいと感じていることを正直に報告しているのである。一方で信仰以外の言葉、文化、経済といった面での苦労があるので、日本と韓国でどちらが幸せかという単純な比較はできない。しかし、信仰の内面的な価値に基づけば韓国での生活は幸せなものであり、その価値観を強く内面化している人にとってはかけがえのないものであるという理解は重要である。
「実態としては、韓日祝福で嫁いだ日本人女性は農村花嫁にほかならない。それを彼女達に納得させているのは、祝福の意味づけである。」(p.447)
「韓国の農村に男性の結婚難がなければ、そして日韓の歴史的関係に植民地の支配-被支配の関係がなかったならば韓日祝福は成り立っておらず、七〇〇〇人もの日本人女性信者が結婚して渡韓することはなかった。結婚したいという韓国人男性と、教えを内面化することによって韓国に贖罪せねばと思う日本人女性とが夫婦となって韓日家庭を築いている。この点で韓日祝福は韓国社会の社会構造的な歪みの上に日韓の歴史的関係を結び合わせたところに展開された布教戦略であるといえる。」(p.447)

 この分析は、歴史に「もし」という発想を持ち込んでいる点でナンセンスである。歴史上のある出来事がなかったら現在の事態はなかっただろうというようなことは無限に言えるのであり、その分析自体に意味はない。過去の歴史機的な出来事の積み重ねとして現在があるのであり、そのただ一つでも欠けたら現在はないからである。これは私が第153回で「もし韓国統一教会に7000名の日本の女性信者とマッチングすることが可能なくらいに十分な数の男性信者がいたならば、これらの女性信者は配偶者に恵まれない韓国の農村の男性に嫁いだのではなく、信仰を動機として結婚する韓国の男性信者のところに嫁いでいたであろう」と反論したように、そのような布教戦略が実行されなかった歴史の「もし」を仮定しようと思えば、いくらでもできるからである。

 さて、韓国人と結婚した統一教会の女性信者の中に、韓国に対する贖罪意識があるというのはおそらく事実であろう。特に韓国人の夫や韓国での生活に不満や苦労があるときに、自分を納得させるためにそうした過去の歴史に思いをはせることはあるかもしれない。しかし、結婚そのものの動機や目的を単にネガティブに「贖罪のため」と思って結婚する日本人女性がどれだけいるのかは疑わしい。それよりも、祝福に対する理想や、韓国に嫁ぐことに対する宗教的な意義づけというポジティブな部分が大きいと思われる。その部分を理解しないと、韓日祝福の意義づけが悲壮なものに歪められてしまうことになる。中西氏の分析は、意図しているかどうかは不明だが、結果としてそのような悲壮な色付けを韓日祝福に対して施している点は批判されるべきである。

カテゴリー: 書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』

世界の諸問題と統一運動シリーズ06


北朝鮮の核ミサイル問題と世界平和議員連合

 北朝鮮による核・ミサイル開発の脅威は、日本と世界がいま最も関心を寄せている問題の一つです。この問題を解決するためには日米韓の一致と協力が不可欠ですが、それを促進するための世界平和議員連合の活動を紹介します。

<甚大な犠牲を伴うハードランディング>

 北朝鮮の核・ミサイル開発による脅威を取り除く方法は、ハードランディングとソフトランディングの二つに大別することができます。ハードランディングとは軍事攻撃を意味しますが、米国と北朝鮮が戦争状態になれば米国が勝利し、金正恩政権が崩壊することは確実です。しかし、1994年の第一次核危機のとき、板門店で南北会談に臨んだ北朝鮮代表が「戦争になったらソウルは火の海になる」と発言したように、周辺国が受ける被害を避けることはできません。最も大きな被害を受けるのは韓国ですが、国土のほぼ全域がノドンミサイルの射程に入っている日本も攻撃を受ける可能性があります。

<ソフトランディングの道を開いた米朝首脳会談>

 一方、ソフトランディングとは話し合いにより北朝鮮から非核化の合意を取り付けるという意味ですが、その実現に向けて行われた画期的な出来事が、2018年6月12日にシンガポールで行われたトランプ大統領と金正恩委員長の米朝首脳会談でした。この会談の成果に関しては、共同声明にCVID(完全で検証可能で不可逆的な廃棄)という文言が入っていないことを理由に、「中身のない壮大な政治ショーに過ぎず、評価できない」とする立場と、「米朝首脳が会談したことに歴史的な意味がある。米国の意図は、米朝のパイプを築くことにより、いまほど中国に頼らずに北朝鮮問題に対処できるようにすることだ。」と、一定の評価をする立場があります。ハードランディングのもたらす被害の大きさを思えば、平和裏に北朝鮮の非核化を促すソフトランディングの可能性に道を開いたという意味で、昨年の米朝首脳会談は評価すべきであると思われます。

<事実上決裂した第2回米朝首脳会談>

 ところが今年の2月27-28日にベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談は、共同声明を発表することもできずに、事実上決裂してしまいました。この結果に対しては、「完全な非核化」の定義を明確にせず、先送りにしてきた弊害が露呈したのであり、事前の準備が整っていないトップ外交は稚拙であるという批判的な評価と、米国が安易な妥協や合意を避けた点は評価できるという肯定的な評価があります。

 交渉の事実上の決裂によって最も大きな打撃を受けたのは北朝鮮でしょう。金正恩委員長は今回の首脳会談に体制の命運をかけていたので、結果に苦悩していると思われます。派手な前宣伝をしてハノイ入りしたにもかかわらず、成果なしに帰国するのは深刻な打撃であり、金正恩委員長の最高指導者としての威信に傷が付く可能性もあります。さらに、このまま経済制裁が続けば外貨収入が先細り、経済再建は進みません。北朝鮮は交渉戦略の練り直しを迫られています。

<北朝鮮の非核化に対する懸念材料>

 そもそも現在の国際情勢に対する北朝鮮の理解は、「米国主導の国際社会が金正恩体制を圧迫している。自衛のための強力な国防力がなければ、我が国は帝国主義者たちの侵略の犠牲になってしまう。核兵器は抑止力を高めるのに不可欠だ」というものでした。北朝鮮には米国に対する歴史的な不信感があるため、生き残りの「カード」である核を簡単に放棄するとは考えられません。したがって、第2回米朝会談の事実上の決裂は、本当の意味での非核化の意思が北朝鮮にはないことを明らかにしたとも言えます。

 今後、米国は北朝鮮に非核化を促す最大のテコである経済制裁を維持しながら、北朝鮮の譲歩を待つ戦略を継続するでしょう。しかし、トップ会談は不調に終わったのですから、今後の実務協議が進展する可能性も低いと言えます。一方、窮地に陥った北朝鮮が中国に助けを求める可能性は大と言えます。中国にとって北朝鮮は資本主義社会との緩衝地帯という価値があります。中国は南シナ海で権益を拡大する一方で、北朝鮮の問題は米国とその同盟国の関心を中国からそらすうえで有益なのです。さらに、北朝鮮問題を外交カードの一つとして使うことで米国との交渉を有利に進めたいという思惑もあります。

 このように中国にとって北朝鮮は厄介であると同時に必要な存在なのですが、少なくとも中国は米朝が接近することを喜びません。北朝鮮はそのことも承知です。北朝鮮が中国にもすり寄って米中を対立させ、その狭間で「漁夫の利」を得ようとしている可能性は否定できません。

<問題解決のカギは日米韓の結束>

 今後、北朝鮮が韓国の文在寅大統領に助けを求める可能性も大と言えます。第2回米朝会談の事実上の決裂は、南北関係の進展に前のめりで取り組む文在寅大統領にとっては打撃となりました。米朝関係の改善を前提に南北経済協力を本格化させようとしていた目算が狂ったと言えます。

 韓国の文在寅大統領は、金正恩委員長との南北首脳会談を行うことによって、米朝首脳会談を実現させる上での「仲介」の役割を果たしたという意味では、一定の評価をすることができます。しかし、北朝鮮との対話に体重をかけすぎてしまえば、対話と圧力の両方を用いて北朝鮮との交渉を進めようとする日米との間に亀裂が生じてしまいます。特に、最近は日韓関係が非常に厳しくなっている点が大きな懸念材料です。

 日本、米国、韓国が分裂してしまえば、それこそ北朝鮮の思うつぼになってしまいます。北朝鮮に核を放棄させるためには、この三カ国が一体となって圧力をかける必要があります。逆にこの三カ国に隙間や亀裂が生じるときには、北朝鮮による「かけひき」が功を奏するようになるのです。

<日米韓の結束に尽力する統一運動>

 統一運動はこれまで一貫して日本、米国、韓国の一致と協力のために尽力してきましたが、北朝鮮による核・ミサイル危機に対応する上で重要な働きをしているのが、世界平和議員連合です。2016年2月に韓国ソウルで天宙平和連合主催の国際指導者会議が開催された際に、世界60カ国から現職国会議員150名を含む350名の指導者たちが参加するなか、韓国国会議員会館で世界平和議員連合の創設が提案されました。その後、2016年の間に世界の8カ所で国際指導者会議が行われ、リージョンごとの議員連合が創設されました。そして2017年2月に韓国ソウルで世界平和議員連合の第1回総会が行われ、世界の13地域の代表が、世界平和議員連合のリージョン共同議長に任命され、韓鶴子総裁から任命牌を受け取りました。

日米有識者懇談会

2017年5月、都内のホテルで行われた日米議員有識者懇談会

 日本、米国、韓国の三カ国は、世界平和議員連合の模範的活動の一つとして、国会議員同士の交流を促進しています。2017年5月には米国より現職・元職の国会議員ならびに安全保障問題の専門家が来日し、日本の国会議員ならびに有識者と、北朝鮮の核問題について討議するシンポジウムを開催しました。2017年7月には韓国と日本の現職国会議員が米国ワシントンDCを訪問し、アメリカの国会議員とこの問題について討議しました。同年11月には韓国ソウルの国会議事堂において同様の会合が行われました。2018年にも、2月と8月に日韓議員懇談会を韓国ソウルで開催するなど、定期的に議員交流の場を設定してきました。

 日本、米国、韓国の三カ国が、政府間外交だけでなく、国会議員のレベルでも頻繁に会合を重ね、北朝鮮問題に対するお互いの考え方を確認し合うことは、この三カ国の関係に隙間や亀裂が生じることを防ぎ、北朝鮮に対する抑止力を維持する上で非常に有効であると言えます。世界平和議員連合は、こうした「議員外交」を促進する世界的ネットワークとして今後ますます発展していくことでしょう。

カテゴリー: 世界の諸問題と統一運動シリーズ

書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』157


 櫻井義秀氏と中西尋子氏の共著である『統一教会:日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)の書評の第157回目である。

「第Ⅲ部 韓国に渡った女性信者 第八章 韓国社会と統一教会」の続き

 中西氏は、第8章の「三 韓国農村の結婚難と統一教会」と題する節のなかに「7 統計資料に見る在韓日本人女性の数」という項をもうけ、公的な資料に基づいて韓国で暮らしている日本人女性信者の実数に迫ろうと試みている。これは韓日祝福で結婚し、韓国に暮らす日本人女性信者の数が7000名であると言われているのが「誇張された数字ではないことを確認するため」(p.439)だという。こうした数字を誇張することの意味は不明なのだが、7000名もの日本人女性信者が祝福結婚によって韓国に移住しているのはある意味で驚くべきことなので、事実を確認したいというのであれば理解できる。彼女の手法は学問的に手堅いものであり、参照している統計資料も信頼に値するものだ。

 中西氏が参照した統計資料は、韓国の国勢調査の結果と、日本の外務省による『海外在留邦人数調査統計』である。韓国の統計庁が5年ごとに行っている国勢調査によると、在留外国人の数としては中国人、朝鮮族の中国人に次いで日本人は三番目に多いのであるが、日本人の特徴は男女比に表れており、2000年のデータで男性5715人に対して女性7683人となっていて、女性の方が2000名近くも多いということだ。日本以外の国では中国が男女ほぼ同じであるのを除けば、他のすべての国において男性の数が女性の数を上回っている。これらの国々で男性の数が多いのは、単身で企業の駐在員や労働者として韓国に暮らしている男性が多いためと推察されるが、日本だけが女性が男性の約1.3倍いるのである。

 これを地域別に分析するとさらに顕著な傾向が出てくる。ソウル、釜山、済州島では男性が多く、これは日本企業の駐在員などが男性であるためと思われるが、他の地域(すなわち韓国の田舎)では女性が男性を上回っているのである。特に全羅南道と全羅北道では女性の数が男性の約20倍になっている。このことから、在韓日本人は男性が都市部に集中して住んでいるのに対して、女性が地方に集中していることが分かるという。その地方に住む日本人女性の大半が、韓国人と結婚した統一教会の女性信徒ではないかという分析である。

 中西氏は在韓日本人女性の年齢分布も同時に分析している。2000年のデータによれば、20~24歳までは大きな差はないが、25~29歳、30~34歳、35~39歳では女性の数が男性の2倍から3倍になっているという。この年齢層の女性は、統一教会の祝福を受けて韓国にお嫁に来た日本人女性の年齢と一致するというわけである。中西氏が『宗教と社会』第10号(2004年)に寄稿した「『地上天国』建設のための結婚ーある新宗教教団における集団結婚式参加者への聞き取り調査からー」という論文では、「聞き取りをした日本人女性たちの生年は、1956年から1978年である」(p.55)と明かされているが、この生年であれば2000年には22歳から44歳となり、実際の統一教会の日本人女性信者の年齢とほぼ一致すると言ってよいだろう。これらのデータに基いて、中西氏は合同結婚式で韓国人男性と結婚し、渡韓した日本人女性信者が7000人いることはほぼ裏付けられると結論している。

 日本の外務省による海外在留邦人数調査統計によると、永住者と長期滞在者を合わせた在留邦人の数は2007年の時点で23267名であり、そのうち14901名が女性である。男性の数は8366名であるから、女性は男性の1.7倍いることになる。実は1988年の時点では男性2507名に対して女性1999名で、男性の方が多かったのだが、1992年に男女の数は逆転し、それ以降は女性の数の方が多い状態が継続している。1992年は3万双の祝福のあった年だが、祝福を受けてから渡韓するまでには実際には時間差がある場合が多いので、6500双(1988年)の祝福を受けた日本人女性が1989年から1992年にかけて渡韓していったことがこの期間の数の増加に影響していると考えられる。

 韓国に長期滞在する日本人を職業別に分類したデータも存在し、「民間企業関係者」「報道関係者」「自由業関係者」「留学生・研究者・教師」「政府関係者」「その他」に分類される。この「その他」に分類される女性の数が1988年の280名から2007年の6388名に激増しているわけだが、この数は他のどのカテゴリーよりも多い。女性に限って言えば、それに続くのは1655名の留学生、民間企業関係者の113名であり、あとは100名以下である。韓国人男性の妻として在留する日本人女性は「外国人妻」に分類されるが、これが「その他」のカテゴリーに含まれることから、「その他」の大部分が統一教会の女性信者によって構成されるのではないかという分析である。そもそも民間企業関係者として韓国に在留している日本人の数は男性で2750名、女性で113名(2007年)であり、留学生を男女合わせても3000名ほどであるのに、それをはるかに上回る「その他」の女性が6000名以上いるということは、何か特別な理由がない限りは説明がつかないというわけだ。

 この「長期滞在者」のほかに日本国籍を所有する「永住者」に分類される日本人女性が2007年の時点で2717名おり、その中にも韓国人と結婚した統一教会の日本人女性信者が多数いることが推察される。韓国で永住することを選ぶ理由は、やはり婚姻にあると考えるのが普通であろう。永住者の数は、男性186名に対して女性が2717名だから、ここでも女性の方が圧倒的に多い。前述の6388名にこの数を加えれば、7000名という数字はほぼ裏づけられることになる。

 以上の中西氏の分析は韓国の統計庁と日本の外務省が発表している公的なデータに基づいているため、かなり正確なものであると言えるだろう。数の問題とは直接がないが、こうしたデータから、韓国人と結婚した統一教会の日本人女性信者は日本の外務省によって把握されると同時に、韓国の国勢調査でもカウントされていることが分かる。すなわち、彼女たちはきちんと両国政府に認識されたうえで韓国にわたって結婚生活をしているということだ。

 かつてこのブログで、キリスト教のインターネットメディアである「クリスチャントゥデイ」が、2006年1月23日号に「『合同結婚式、6500人の行方を捜して』被害者家族が訴え」というタイトルの記事を掲載し、韓国で統一教会の合同結婚式に参加した後、行方不明になった日本人女性が6500名もいると報ずることにより、祝福を受けた日本人信者の両親の不安を煽っていることを紹介した。私はそこで、「もしこれが本当なら、日本政府が動くべき重大な国際問題であるはずだが、そのような動きはまったくない。実際には、大半の日本人女性は平穏に暮らしており、両親とも連絡を取っているのである。したがって記事の内容は完全なデマゴーグなのだが、こうした記事に不安を煽られて日本の両親は拉致監禁に追い込まれていったのである」と批判したわけだが、中西氏の研究によってこれらの日本人女性は決して行方不明ではなく、日韓両国の政府によって認識されていることが皮肉にも証明されたことになる。「クリスチャントゥデイ」の根拠なきデマゴーグに比べれば、中西氏の調査と分析は良心的であると言えよう。

 統一教会の日本人女性信者は合法的に韓国人と結婚し、きちんとした手続きを経て渡韓し、韓国社会に定着して生活している。また日韓両国の統一教会も、入籍、渡韓に際してはきちんとした法的手続きを行い、さらに渡韓後の生活においても法規を遵守するよう指導している。例えば、国際家庭特別巡回師室編『本郷人の道』には、渡韓した日本人に対して、韓国での生活全般について知っておくべき内容や文化の違い、韓国と日本の統一教会の信仰観の違いなどが詳しく解説されているが、その中には「韓国で勝手な行動をして行方不明になったら、警察から日本大使館に連絡が行き、国際問題になる」「ビザの延長手続きを絶対に忘れないように」「外国人登録を必ずするように」「日本に一時帰国するときは、出入国管理事務所で再入国許可をもらうのを忘れないように」「パスポートの期限切れに注意」などといった基本的で細かい指導がなされている。こうした指導の結果として、統一教会の日本人女性信者はしっかりと日本政府に認識された状態で、韓国における結婚生活を送っているのである。

 蛇足ながら、統一教会の祝福によって韓国人と結婚した日本人は女性だけでなく、男性もいること、そして渡韓して韓国で生活する日本人男性もいることは付け加えておきたい。その中には私の直接の知人も何名か含まれている。しかし、統計資料によって裏付けられるのは、やはり女性の方が圧倒的に多いということである。

カテゴリー: 書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』

世界の諸問題と統一運動シリーズ05


宗教間の和解による世界平和の実現を

 2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起き、世界は大きな衝撃を受けました。その背後に、米国に反感を持つイスラム教の過激組織があると指摘されると、キリスト教を中心とする西洋社会とイスラム世界の対立が先鋭化し、世界は今もテロに怯えています。今回はこの事件の背景を分析すると同時に、文鮮明師の主導してきた宗教間の和解による平和実現の道を紹介します。

<ハンチントンの「文明の衝突」>

 9.11同時多発テロが起きたとき、多くの知識人が、サミュエル・ハンチントンが言った「文明の衝突」という言葉を思い出しました。そしてこの事件を境に、世界平和に対する考え方が大きく転換したのです。第二次世界大戦が終わると世界は「東西冷戦」の時代に突入し、そのころは世界平和の問題といえば「民主主義」対「共産主義」という、イデオロギーの問題でした。しかし、1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊し、1991年12月25日にソビエト連邦が崩壊することによって冷戦時代は終焉し、「新世界秩序」の出現が期待されました。

 東西冷戦終了後しばらくは、「21世紀の世界は、民主主義と市場経済がグローバルに定着するだろう」というアメリカ的世界像がもてはやされました。しかし、これに対して大きな「ノー」を突き付けた人物がハンチントンでした。1996年に出版された彼の著書『文明の衝突』の中心的な主張は、21世紀の世界は、民主主義によって一つの世界が生まれるのではなく、数多くの文明の違いに起因する、分断された世界になるというものでした。すなわち、ポスト冷戦時代には、異なる文化を持つ国家同士が対立を深めていくだろうと言ったのです。9.11同時多発テロは、この「文明の衝突」の予言が成就したと考えられました。

<キリスト教とイスラム教の「宗教の衝突」>

 ハンチントンは著書『文明の衝突』の中で、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、イスラム、アフリカ、ヒンドゥー、仏教、中国、日本の9つの文明圏に世界を分割していますが、このように文明圏を分けている中心的な要素はまさに宗教です。したがって、文明の衝突とはすなわち「宗教の衝突」を意味するわけです。
 世界の主要宗教の人口分布を見ると、総人口の33%がキリスト教徒であり、20%がイスラム教徒であるとされています。したがって、キリスト教とイスラム教が対立するようになれば、全世界の人口の半分以上が争いに巻き込まれることになるのです。このように21世紀の平和に対する脅威として、文明の衝突、宗教間の対立が大きくクローズアップされるようになりました。

<「ムジャヒディン」からタリバン、そして9.11へ>
 冷戦時代末期の1988年に公開された映画に、シルベスター・スタローン主演の「ランボー3:怒りのアフガン」という作品があります。この映画の背景には、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻し、1988年に撤退を決定したという歴史的事実があります。映画の内容は、米国の兵士ランボーと「ムジャヒディン」と呼ばれるイスラム教の民兵が協力してソ連軍の部隊と戦うというもので、キリスト教徒とイスラム教徒が協力して、無神論者の悪者であるソ連を倒したという構図になっているのです。ラストのテロップには、「この映画をすべてのアフガン戦士たちに捧げる」という言葉が流れます。

 実際にアメリカはソ連に対抗するために、CIAを通じてこのようなゲリラ組織に武器や装備を提供していたということですから、映画そのものはフィクションとはいえ、当時のアフガン情勢を反映していると言えます。しかし、皮肉にもそのムジャヒディンは後にタリバンなどの武装勢力となり、アメリカに反旗を翻すようになります。そしてそれがイラク戦争、9.11、「イスラム国」の出現など、今日のアメリカを悩ます中東情勢へとつながっていくのです。「昨日の敵は今日の友」という言葉がありますが、ムジャヒディンに関してはまさにその逆になってしまったのです。

 冷戦終了後、欧米流のグローバリゼーションが政治、経済、軍事、文化など全ての分野で世界を圧倒的に主導してきました。共に血を流したにもかかわらず、冷戦終結の恩恵を受けることができずに取り残されてしまったイスラム世界には、こうした欧米化の波に対する反発や抵抗があり、それがテロリズムの動機となっているのです。テロ自体は許せませんが、私たちはその背景にある宗教間の対立に目を向ける必要があります。

<文鮮明師の宗教和合運動>

 文鮮明師は生涯をかけて宗教間の和解と調和のために働いてこられましたが、その成果物の一つが、世界の主要な宗教の経典の言葉を、テーマごとにまとめた『世界経典』です。それにより、世界の諸宗教の教えの約七割は同じことを言っており、残りの三割が各宗教の特徴を表す言葉であることが明らかになりました。大部分同じことを言っているにも関わらず、なぜお互いに争うのかを各宗教が内省する機会を提供したのです。

2003年10月22日、中東平和イニシアチブの一環としてエルサレムの旧市街で平和行進を行う平和大使ら(筆者撮影)

2003年10月22日、中東平和イニシアチブの一環としてエルサレムの旧市街で平和行進を行う平和大使ら(筆者撮影)

 もう一つが、2003年以来、ユダヤ教、キリスト教、イスラムの聖職者らが参加し、イスラエル、パレスチナ自治区、ヨルダン、レバノンなどで継続的に開催されている「中東平和イニシアチブ」です。中東三大宗教の和解の儀式として始まったこの運動は、いまやシリア問題やパレスチナ問題など、具体的な問題に対する解決策を討議するフォーラムに発展しています。宗教間の和解による世界平和の実現は文鮮明師の遺訓であり、今後も統一運動の中心的テーマであり続けるでしょう。

カテゴリー: 世界の諸問題と統一運動シリーズ

書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』156


 櫻井義秀氏と中西尋子氏の共著である『統一教会:日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)の書評の第156回目である。

「第Ⅲ部 韓国に渡った女性信者 第八章 韓国社会と統一教会」の続き

 中西氏は、第8章の「三 韓国農村の結婚難と統一教会」と題する節のなかに「4 祝福に対する意味づけ」という項をもうけ、統一教会の教義からみた韓日祝福の意味を解説している。しばらく彼女の解説をそのまま引用するが、この部分は基本的に大きな間違いはない。
「祝福では同じ国や民族同士の結婚よりも国際結婚に価値が置かれる。その理由は統一教会の目指す理想世界『地上天国』が、国家・民族・宗教が垣根を超えて一つになった世界とされるからである。」(p.433)
「国家・民族・宗教が一つになることは不可能だろうが、国際結婚をすれば、家庭の中で国家・民族・宗教の垣根を超えることは不可能ではないし、子供は生まれながらに垣根を越えている。地上天国実現の第一歩はまず家庭からということで国際結婚が奨励されるのである。さらに国際結婚の中でも不幸な関係にあった国や民族同士の結婚が理想的とされる。」(p.435)
「日本人と韓国人がカップリングされる理由はここにある。日本は朝鮮半島を三六年間にわたって植民地支配したという歴史的関係ゆえに、韓日・日韓カップルは最も理想的なカップルとされる。」(p.435)
「また、これがアダムーエバ関係にもなぞらえて捉えられる。統一教会では韓国をアダム国家、日本をエバ国家と考える。エバは蛇(サタンの隠喩)と不義の関係を持った上にアダムを誘惑し、人類を堕落させた悪女である。植民地支配し民族の尊厳を踏みにじった日本はエバと同じであり、韓国に贖罪しなければならないとされ、日本人女性が韓国に嫁ぎ、夫や夫の家族に尽くしなさいという理屈になる。韓日祝福は韓国社会の構造的な歪みに起因する農村男性の結婚難という現実的な問題と、日韓の不幸な歴史という歴史的事実を結びつけたところに成り立ち、韓日カップルが生み出される。国家・民族・宗教を超えるという理念だけによるのではなく、農村男性の結婚難という現実の社会問題に対処するものとなるだけに、韓国社会で祝福は受け入れられるものになっている。」(p.435)

 彼女の解説は、祝福において国際結婚が価値視され、とりわけ韓日カップルが推奨される理由についてはほぼ正確に表現している。統一教会の文献を引用しながらそれを根拠づけている点も評価できる。しかし、韓国の農村男性の結婚難と日韓の不幸な歴史が結び付けられたのは1992年の三万双以降のことであり、それ以前は両者の間には何の関係もなかった。このことについては第153回での述べたので繰り返しになるが、6500双までは韓日祝福を受けた韓国人男性は統一教会の信者だったのであり、日韓の不幸な歴史的関係の清算という意味はそこに込められていたかもしれないが、農村男性の結婚難という現実の社会問題に対処するために韓日のマッチングがなされることはなかった。1992年、1995年の祝福でこうしたことが行われるようになったのは、日本人の女性信者の数に比して韓国人の男性信者の数が少なかったために、結婚目的の非信者の男性にまでその範囲が広げられたということである。

 こうした時系列による違いについては、中西氏も一応説明している。「5 韓日祝福・日韓祝福の始まり」という項において、以下のように説明している。
「祝福に日本人の参加が見られるようになるのは四三〇組(一九六八年)からであり、このとき日本統一教会の初代会長である久保木修己が参加した。韓日や日韓のカップリングは六〇〇〇組(一九八二年)から出始め、六五〇〇組(一九八八年)で本格化した。『祝福の歴史』(http://www.wcsf-j.org/blesshis.htm)によれば、このときの参加者実数は六五一六組であり、韓日カップルが一五二六組、日韓カップルが一〇六〇組生まれた。統一教会では特に六五〇〇組の祝福を『交叉祝福』と呼び、『韓日一体化のための重要な祝福であった』としている(歴史編纂委員会二〇〇〇:四二八)。その後、桜田淳子や山崎浩子が参加した三万組(一九九二年)で韓日・日韓カップルが多数出ており、続く三六万組(一九九五年)でこれまで以上に多くの韓日・日韓カップルが生まれた。祝福対象者を信者でないものにまで広げたのが一九九二年とされ(『本郷人』二〇〇三年八月号)、これによって多くの韓日祝福が生まれることとなった。」(p.436)

 中西氏はここで、韓国における農村男性の結婚難に関する『東亜日報』の記事が出たのが1989年であり、6500双の祝福が行われた1988年の翌年であることから、「統一教会が当時から農村男性の結婚難をどれだけ認識していたかはわからない」(p.436)としながらも、結婚難の社会問題化と韓日祝福の本格化が時期的に重なっていることを強調している。ここに1987年の全国霊感商法対策弁護士連絡会の結成、ソウルオリンピックなどを結び付けて、「軌を一にしている」の一言で中西氏は因果関係を示唆しているが、これはいささか乱暴な論法である。ある出来事がほぼ同時に起きたからと言って、両者の間に即座に因果関係を設定できないのは科学の常識である。そもそも全国霊感商法対策弁護士連絡会の結成は日本における教勢拡大と直接的な因果関係はなく、結成の動機はむしろ政治的なものであった。また、そのことと韓日祝福の間にも何の因果関係もない。ソウルオリンピックは韓国の経済発展の結果としての象徴的な意味はあるかも知れないが、そこにもやはり直接的な因果関係はない。経済的に成長してもオリンピックを誘致できない国もあれば、オリンピックが行われる国が必ずしも高度経済成長をしているとは限らないからである。このように、直接的に因果関係のないことをただ単に時代が近いからといいう理由だけで関連付ける中西氏の論法は、およそ社会学者のものとは思えない。もっと他の本質的な疑問に中西氏は答えようとすべきではなかったのか?

 たとえば、せっかく韓日祝福の歴史を調べたのだから、もっと社会学者らしく祝福の対象者が信者から非信者に拡大された理由についてもっと突っ込んだ調査があってもよさそうなものだが、中西氏はそれはしていない。韓国の統一教会が農村男性の結婚難を伝道の契機として利用しようとしたのが事実であるとするならば、それ以前とそれ以後ではどのような変化があり、なぜそのような決断がなされたのかを追求しない限りは、こうした結婚のあり方がなぜ可能になったのかを解明したことにはならないのである。そこには、①日本の女性の側の動機、②韓国の男性の側の動機、③両者を結び付けようとする教団の動機がそれぞれ存在する。中西氏は①と②に関してはある程度のインタビューを行っているが、③の部分の調査が不十分であるために、①と②を結び付けた要因が何であるのかが明確になっていないのである。

 続いて中西氏は「6 農村部における布教の方法」と題して、韓国の統一教会が具体的にどのような方法で結婚相手の紹介を行っているのかを紹介している。そこに登場するのが図8-2、図8-3として紹介される結婚相談のチラシである。

図8-2

図8-3

 このチラシはどちらも「真の家庭実践運動 ○○委員会」(○○は地名)とあるだけで統一教会とは書いてないという。これが日本で行われたならばただちに「不実表示」という追及を受けそうだが、なぜか中西氏は「これが日本でいうところの『正体を隠した伝道』になるのかどうかは判断しかねる」(p.438)として、判断を曖昧にして追及していない。理由は、たとえチラシに統一教会と書いていなくても、このようなチラシが統一教会によることは農村では知られたことであるからだという。どうせ知っているからはっきり書かなくても正体隠しにならないというのは、説得力のある論理ではない。日本の統一教会の伝道方法に対する厳しい非難と比較すると、どうしてもダブル・スタンダードを感じざるを得ない。

 中西氏は414ページにおいて、「韓国での統一教会は正体を隠して組織的伝道をしているわけでもなく、・・・日本のように特異な宗教実践とはなっていない。」と言い切り、「普通な韓国統一教会」と「異常な日本統一教会」というシンプルな枠組みを作ってしまっているため、いまさら韓国の統一教会が正体隠しをしているとは言えないという事情があるのかもしれない。

 私がこの項で特に印象に残ったのは、「ここ(A郡)では結婚を目的として伝道している。国際結婚をしませんかで伝道。日本人女性と結婚をしませんかで。男性はここにいても結婚できないし、女性も残っていない」(p.439)という女性の言葉である。日本人の女性と韓国人の男性では、祝福に参加する動機の部分が逆になっている。日本人女性は統一教会の信仰を動機として韓国人男性との結婚を受け入れるのに対して、韓国人男性は結婚を動機として統一教会の信仰を受け入れるという、逆の経路になっているのである。これは一種の「バーター」と言えるかもしれない。日本の信者の立場に立てば、韓国人男性の動機は清くないと感じるかもしれない。しかし、どちらから入っても、入り口が問題なのではなく、結果が問題なのであり、双方が欲しいものを手に入れて幸福になればそれでよいのだと考えることも可能である。そんなことを思わされた言葉であった。

カテゴリー: 書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』

世界の諸問題と統一運動シリーズ04


急激に進む少子高齢化と家庭崩壊の危機に対処する

 現在の日本には、国家を根底から崩壊させかねない深刻な危機が進行しています。それは家庭が崩壊し、人と人との絆が希薄になっていく「無縁社会」の出現であり、「家庭が大切である」という価値観そのものの衰退です。それは具体的には、家庭そのものが縮小していく少子高齢化と人口減少の問題として表面化しています。第3回の今回は、日本が直面している家庭の危機を明らかにし、その処方箋を提示していきます。

<2053年には1億人を割る日本の人口>

 現在わが国では、急激に少子高齢化が進むとともに、次世代を生み育てる社会の基礎単位である家庭の崩壊が広く蔓延しています。この問題は日本が直面している最も深刻で本質的な危機と言えるでしょう。

50年後日本の人口はこうなる

 2017年4月10日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した日本の将来推計人口によると、2015年に1億2709万人だった総人口は、2053年に1億人を割り、2065年には8808万人に減少すると予想されています。そして単に人口が減るだけでなく、65歳以上の高齢者が占める割合は、2015年の26.6%から38.4%に上昇するなど、「超高齢社会化」の到来を予想しています。

 政府の子育て支援策が功を奏したのか、一人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は前回推計の1.35(2012年)から1.45(2015年)に上昇しました。これにより人口が1億人を割る予想時期は前回推計よりも5年遅くなったものの、厳しい人口減少と少子高齢化に歯止めがかかっていない現状が、改めて浮き彫りとなりました。そもそも、人口維持に必要な合計特殊出生率は2.07と言われており、多少数字が上向いてもこれに遠く及ばない以上、人口は減り続けるしかないのです。わが国のこの数字は、世界最低水準となっています。

<2040年までに地方自治体の半数が消滅の危機>

「日本創生会議」(元総務相の増田寛也氏が座長を務め、産業界の労使や学識者、元官僚らが立ち上げた民間団体)の「人口問題検討分科会」は、2014年5月に人口減少がもたらす日本の将来像について衝撃的なシナリオを公表しました。それは、2040年までに全国自治体(約1800市区町村)のうちおよそ半数(896)が消滅の危機にあるというものでした。この報告書の内容は『地方消滅』(中公新書)という本の中でも紹介されましたが、地方都市が消滅する原因は、少子化による「自然減」に加えて、若者たちの大都市圏への流出による「社会減」が大きく影響しています。特に若い女性の流出が深刻で、名指しで「消滅可能性都市」とされた自治体では、20歳から39歳の女性が半分以下になると予想されています。この年代の女性が子供を産むわけですが、その絶対数が半分以下に減ってしまえば、どんなに出生率を上げる努力をしても追いつかず、人口が急激に減少して自治体の維持が困難になるとされているのです。

 2014年7月15日に佐賀県唐津市で開催された全国知事会議では「少子化非常事態宣言」が採択されました。会議の冒頭で、山田啓二会長(京都府知事)は、「今、日本は死に至る病にかかっている」と、強い危機感を表明しました。同宣言では、「このままいけば近い将来、地方はその多くが消滅しかねない。少子化対策を『国家的課題』と位置づけて、国と地方が総力を挙げて抜本的に取り組み、日本の未来の姿を変えゆかなければならない」と指摘されました。

<少子高齢化の原因は若者の非婚化・晩婚化>

 それでは少子化の原因はいったいどこにあるのでしょうか。少子化というと、昔は子だくさんだった日本の家庭が少ししか子供を産まなくなったというイメージがありますが、実際には既婚夫婦が産む最終的な子供の平均数は1972年の2.20から2010年の1.96とさほど大きく変化しておらず、日本の夫婦はいまでも平均して約2人の子供を産んでいることになります。少子化が急激に進んでいるのは「若者の結婚離れ」、すなわち若者の非婚化と晩婚化が主な原因です。結婚しなければ子供は生まれませんし、結婚しても晩婚化・晩産化が進んでいるため、もう一人子供を生もうという気力も衰えがちになります。

 50歳までに結婚したことがない人の割合を「生涯未婚率」と言いますが、この数字が2015年の国勢調査で男性の23.4%、女性の14.1%となっています。しかも「生涯未婚率」は急上昇しており、2035年には男性の10人に3人(29.0%)、女性の5人に1人(19.2%)が生涯未婚と推計されています。

<若者たちの意識改革こそ少子高齢化の処方箋>

 若者の「結婚離れ」が急速に進んできた原因は何でしょうか。一つには「生活資金が足りない」などの経済的理由や、若者の不安定な雇用も大きな原因として挙げられます。しかし、内閣府「結婚・家族形成に関する意識調査」(2015年)によれば、20代30代の未婚男女の3人に1人が「結婚しなくてよい」と答えていることに見られるように、より根本的な原因は「結婚願望の欠如」、いつまでも自由で気ままでいたいという「個人中心のライフスタイル」の浸透にあるのです。

 したがって、日本における少子化対策に最も必要とされる処方箋は、若者たちの結婚と家庭に対する意識改革であり、そのための価値観教育なのです。そもそも、なぜ結婚や家庭が大切なのか、子供を産み育てることの意義とは何か、といったことを日本社会では若者たちにきちんと教育してきませんでした。こうした価値観教育をきちんとした土台の上で、雇用対策、出会いの場提供、出産・子育て支援の充実などの環境整備を行ってこそ、効果的な少子化対策となるでしょう。UPFは「人づくり・家庭づくり・国づくり国民運動」を通して、こうした価値観を教育する活動を全国で展開しています。

カテゴリー: 世界の諸問題と統一運動シリーズ

書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』155


 櫻井義秀氏と中西尋子氏の共著である『統一教会:日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)の書評の第155回目である。

「第Ⅲ部 韓国に渡った女性信者 第八章 韓国社会と統一教会」の続き

 中西氏は、第8章の「三 韓国農村の結婚難と統一教会」と題する節のなかに「3 韓国人の結婚観と統一教会」という項をもうけ、なぜ統一教会の推進する国際結婚が韓国内で受け入れらるのかを説明しようと試みている。

 初めに彼女は新聞に掲載される国際結婚関連の記事には統一教会が散見されることを取り上げ、韓国では国際結婚と統一教会が離れがたく結びついていることを指摘している。統一教会が国際結婚を推進していることは事実であり、それがマスコミで取り上げられることも事実なので、ここまでは何の問題もない。続いて中西氏は、「統一教会で相手を紹介してもらい、国際結婚になってでも結婚をする。日本ではまず考えられないことが韓国では成り立っている」(p.432)ことの理由を探ろうとする。「日本ではまず考えられないこと」という表現には、彼女の偏見を感じざるを得ない。

 この問いかけに対する彼女の答えは、①韓国では統一教会が反社会的宗教団体とまでは認識されておらず、ある程度受け入れられていること、②韓国では儒教倫理が家族規範としてあり、日本以上に「結婚はしなければならないもの」であるという、文化的要因である。韓国ではいまでも先祖祭祀が重要な儀礼として継続されており、長男にはそれを行う責任がある。祭祀の継承者である男子を絶やすことは「不幸中の不幸」とされ、家督を相続する男子を生むことが結婚の主たる目的であるとされる。日本では子供がいなければ養子を取って家を継がせるが、父系血統の存続が重要視される韓国では婿養子を取ったり、非血縁者を養子として迎えることはない。

 さらに、結婚は韓国人の来世観から見ても「しなければならないもの」となっている。人は死んだ後に子孫に祀られることによって祖先になるのであり、未婚で死んだ男の霊は「モンダル鬼神」になると信じられている。モンダル鬼神とは独身男性の幽霊のことで、結婚して子供を残さない状態で死んだために、祭祀をしてもらえないことを恨み、生きている人に害を及ぼすとされる。中西氏は触れていないが、モンダル鬼神の女性版が「処女鬼神」である。昔は、嫁に行けない女は男よりも恨みが強かったので、鬼神の中で一番邪悪でタチの悪いのが、処女鬼神だと言われている。処女鬼神が一番嫌うのが婚礼なので、婚礼を行う前は、処女鬼神の祭祀を行わなければならず、それを怠ると結婚式の直前に死ぬこともあるという信仰がある。韓国のシャーマニズムではこうした未婚の霊を慰めるため、未婚で死んだ者同士の霊魂結婚が行われ、それは現在まで残っているという。

 このように、結婚を何よりも重要視する韓国社会であればこそ、統一教会に紹介してもらってでも結婚相手を見つけてもらおうとするというのが、中西氏の指摘する文化的要因である。こうした中西氏の指摘は、統一教会の信仰を持っているわけではない韓国の農村男性が統一教会を通して配偶者を見つけようとする動機の一端を捉えていると評価することができる。問題は、その韓国の文化をどう評価するかだ。来世観の問題はさておき、「結婚はなんとしてでもしなければならないもの」と考える韓国の文化は、日本における結婚の現状と比較すると、私には非常に素晴らしいものに思えてくる。親や親戚が、配偶者に恵まれない男性のためになんとかお嫁さんを見つけようと必死になる姿から、日本社会は何か大切なことを学ばなければならないのではないだろうか。

 周知のとおり、現在日本が直面している「国難」の一つが急激に進む少子高齢化と人口減少である。そしてこの少子高齢化の主たる原因は若者の未婚化・晩婚化にある。少子化というと、昔は子だくさんだった日本の家庭が少ししか子供を産まなくなったというイメージがあるが、実際には既婚夫婦が産む最終的な子供の平均数は1972年の2.20から2010年の1.96とさほど大きく変化しておらず、日本の夫婦はいまでも平均して約2人の子供を産んでいることになる。少子化が急激に進んでいるのは「若者の結婚離れ」が主な原因である。

 2015年に行われた国勢調査のデータによれば、30~34歳の未婚率は男性で47.1%、女性で34.6%となっている。1960年にはこの数字が男女ともに10%以下だったことを思えば、現在の30代前半の若者がいかに結婚していないかが分かるであろう。50歳まで一度も結婚をしたことがない人の割合を示す「生涯未婚率」は男性で23.4%、女性で14.1%にのぼった。前回の2010年の結果と比べて急上昇し、過去最高を更新している。最近は生涯結婚しない人も増えていることから、「非婚化」という言葉も使われている。

 若者たちが結婚しない理由については、内閣府が発表した『平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書』で実施した20~30代の未婚者に対するアンケート調査が参考になる。選択肢を複数回答できる調査で若者たちが多く選んだ理由は、①適当な相手にめぐり合わない(54.3%)、②自由や気楽さを失いたくない(27.2%)、③結婚後の生活資金が足りない(26.9%)、④趣味や娯楽を楽しみたい(23.7%)などだった。一番大きな理由は出会いに関するものだが、②と④は価値観やライフスタイルに関する問題で合計すれば事実上の二番となり、経済的な問題が三番目に来ることが分かる。

 若者たちが結婚ついて不安に感じることとしては、「生活スタイルが保てるか?」「余暇や自由時間があるか?」「お金を自由に使えるか?」などが上位に上がるが、これは若者たちの間に個人主義的な価値観が蔓延していることを物語っている。結婚すれば多少はこうしたことを犠牲にしなければならないわけだが、それ以上に結婚で得られる「一緒にいる幸せ」や「分かち合う喜び」に対する魅力を強く感じれば結婚するはずだ。しかし、今の若者はそこまでの強い動機を持てないでいるのである。

 それでは「出会い」の問題はどうだろうか? 国立社会保障・人口問題研究所の主任研究官らの調査によると、1970年代以降底なしに進む未婚化の原因を夫婦の出会い方の側面から分析すれば、初婚率低下の最大の原因は見合い結婚の減少にあるという結果が出ている。ここでの「初婚率」は1000名の未婚女性に対して年間何件の結婚があるかを計算した数値だが、1960年代前半には恋愛結婚が35件、見合い結婚が29件という数字であった。これが2000年以降には恋愛結婚が38件、見合い結婚が3件となっている。つまり、恋愛結婚の数は微増であるのに対して、見合い結婚が激減したために、全体としての初婚率を大きく押し下げているということなのである。

 実は、恋愛結婚の件数は1970年代前半に一度56件まで上昇しているが、その後徐々に下降している。この間に恋愛結婚が減った主な要因は、職場で出会って結婚する「職縁結婚」の減少にあると分析されている。高度成長期の企業は社員を家族のように扱う「日本的経営」が特徴だったが、その頃の女性従業員は労働力というよりは男性従業員の配偶者候補として雇用されていた側面があった。つまり、当時の職縁結婚は当事者の意識においては恋愛結婚なのだが、企業が事実上のマッチ・メイカーとして機能していたということだ。しかし、女性の雇用形態と企業文化の変化により、いまでは企業がこうした役割を果たすことはなくなった。

 こうした事実から分かることは、若者たちの未婚率がここまで上昇したのは若者たちだけの責任ではなく、彼らを取り巻く大人社会にも原因があるということだ。伝統的な日本の社会には、若者たちの結婚をサポートする共同体意識が存在していた。例えば「結婚してこそ一人前だ」「早く身を固めたらどうだ」と語る説教おじさんや、出会った若者にどんどん縁談を勧めるマッチングおばさんのような人がいて、若者たちの結婚を後押ししてきたのである。

 しかし、現代日本においてはこうした文化が失われてしまったため、若者たちは結婚に対して誰にも背中を押してもらえず、助けてもらえない状況に陥っている。統一教会のマッチングと祝福は言ってみれば「神を中心とするお見合い」のようなものである。そして信仰共同体としての統一教会は若者たちに結婚と家庭の意義を教育するだけでなく、具体的に相手を探して結婚まで導いていくマッチ・メイカーとしての役割を果たしている。もし日本社会が受け入れるならば、統一教会こそは若者たちの結婚を強力に推進する貴重な存在と言えるのである。それは、いま日本が直面している「国難」を解決する処方箋になる可能性がある。

 結婚を重要視する韓国社会は、統一教会の祝福を農村青年の結婚難を解決する手段として受け入れた。日本社会はそれを「日本ではまず考えられないこと」というような偏見を持って非難するのではなく、自分たちの抱える深刻な課題を解決する方法として受け入れていくことを考えるべきではないだろうか。

カテゴリー: 書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』

世界の諸問題と統一運動シリーズ03


日米韓を基軸とするアジア太平洋地域の平和構築

 UPFは現在われわれが直面している問題の一つとして、アジアと日本の安全保障の危機を挙げ、その具体的な解決策として、「日米韓を基軸としてアジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献する」というゴールを掲げています。第3回の今回は、アジア太平洋地域の安全保障が直面している危機を明らかにし、それを克服するための運動の方向性と成果について解説します。

<米国の衰退と中国の台頭による日本の安全保障の危機>

 現在、東アジア地域に大きな「パワーシフト」が起ころうとしていますが、その主要な原因は米国の衰退と中国の台頭です。戦後、日本の安全保障は「日米安全保障条約」に基づき、アメリカの圧倒的な軍事力によって守ってもらうという大前提のもとに成り立ってきました。しかし、2008年のリーマンショック以後のアメリカは深刻な財政赤字に直面し、国防費を大きく削減するようになりました。またアフガン戦争やイラク戦争の影響で米国民の間に厭戦気分が広がり、国民世論は内向きになりました。こうした状況下で、「遠く離れた極東の島国を守るために、どうしてアメリカ人の税金が使われなければならないのか?」と多くのアメリカ人が考えたとしても不思議ではありません。
「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と最初に発言したのはオバマ前大統領でしたが、現在のトランプ大統領も選挙キャンペーン中には同じく「アメリカは世界の警察官ではない」と発言し、「私たちの計画はアメリカ第一だ。グローバリズムではなく、アメリカニズムを信条とする」と宣言しました。このようにアメリカが孤立主義への道を歩むようになれば、いざというとき本当に日本を守ってくれるのかという疑念が生じます。

 一方で中国は、毎年二桁という飛躍的な伸び率で国防費を増大させつつ、あからさまな対外膨張政策を顕在化させています。日本においては東シナ海の尖閣諸島を中国が虎視眈々と狙っていることが国民の注目を集めていますが、現在中国が最も力を入れてプレゼンスを拡大しているのは南シナ海です。2015年の初頭から、中国海軍が南シナ海の岩礁を埋め立てて人工島を造成し、3000メートル級の滑走路を含む軍事的施設を建造していることが世界の注目を集めることとなりました。南シナ海の制海権を中国が完全に支配するようになれば、そこから潜水艦によって米国本土を攻撃する能力を持つこととなり、アメリカの安全保障にとって重大な脅威となります。

<「100年マラソン」の衝撃>

 2015年2月、それまで米国の代表的親中派として知られていたマイケル・ピルズベリー氏(ハドソン研究所・中国戦略センター所長、国防総省顧問)が『100年マラソン』という本を出版しました。彼はニクソン政権時代からオバマ政権時代に至るまで中国の軍事動向分析に携わった「権威」ですが、彼によれば1960年代後半頃から米国は「中国は世界的な権力を持つことを望んでおらず、やがては民主主義の静かな大国になる」と考えて、中国を支援してきました。ピルズベリー氏自身も、米国が中国と関わり続ければ、中国は欧米型の国になるだろうと信じていました。しかしその彼が『100年マラソン』では認識を一変させ、「米国は中国に騙されていた」と述べたのです。中国は、建国100年の2049年までに、米国に取って代わる世界覇権国家を目指していることがようやく分かったというのです。『100年マラソンン』の衝撃は全米に静かに広がり、トランプ政権の中国観も基本的にはこの路線に立っています。

<日米韓の連携によるアジア太平洋地域の平和構築>

 アジア太平洋地域に平和を構築するうえで最大の障害が、共産主義を信奉する中国の世界制覇戦略です。また北朝鮮の金正恩政権による核兵器とミサイルの開発も、この地域の緊張を高めています。こうした脅威からアジア太平洋地域を守るためには、新たな安全保障体制の整備が不可欠です。それは、戦争をするためではなく、戦争を抑止するための体制整備であり、日本と米国と韓国が結束することが必須要件です。日米韓が結束していれば、中国や北朝鮮につけ入る隙を与えませんが、結束が乱れるときには、彼らは「チャンスあり」とみて軍事的冒険主義に走る危険が生じます。したがって、日米韓がガッチリとスクラムを組んでアジア太平洋地域の安全を守るという強い姿勢を見せなければならないのです。

「守れ!アジアと日本の平和と安全・紀の川市大会」(2014年9月21日)で講演する筆者

「守れ!アジアと日本の平和と安全・紀の川市大会」(2014年9月21日)で講演する筆者

<安全保障問題に正面から取り組んだ平和大使運動>

 日本の平和大使運動は2010年から本格的に安全保障問題に関わるようになり、「①緊急事態基本法を制定しよう、②我が国の防衛力を増強しよう、③集団的自衛権に正面から取り組もう、④日米安保体制強化・日韓防衛協力を推進しよう、⑤スパイ防止法を制定しよう」という5つのスローガンを掲げて運動を展開してきました。当時はまだ民主党政権の時代であり、これらのスローガンの実現は極めて困難なことに感じられましたが、自民党の安倍政権が誕生して以降、その一つ一つが次々と実現の方向に動き出しました。

 安倍政権は2015年9月に、集団的自衛権の限定行使容認を含む「平和安全法制整備法」と「国際支援協力法」を成立させました。この法案は国論を二分し、偏向したマスコミ報道によって激しく攻撃されましたが、平和大使運動はぶれることなく法案に賛成し続け、その意義を訴える大会やセミナーを開催・支援してきました。また、2013年には特定秘密保護法が成立し、2016年には日本と韓国の間に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が締結されるなど、目に見える成果が次々と現れてきています。こうした安保運動を継続していくことが、日本の国益と東アジアの平和と安定に資することになるのです。

カテゴリー: 世界の諸問題と統一運動シリーズ

書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』154


 櫻井義秀氏と中西尋子氏の共著である『統一教会:日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)の書評の第154回目である。

「第Ⅲ部 韓国に渡った女性信者 第八章 韓国社会と統一教会」の続き

 中西氏は、第8章に「三 韓国農村の結婚難と統一教会」とする節をもうけ、その中の「1 韓国における男性の結婚難」という項で、統一教会の数多くの日本人女性が韓国人と結婚するようになった背景として、韓国の農村男性の結婚難について解説している。この部分は統一教会に対する直接的な分析ではなく、彼女の専門領域でもあるため、適切な記述であると評価することができる。重要な部分をピックアップしてみよう。
「韓国は朴正煕政権下(一九六三~七九年)において『漢江の奇跡』といわれるほどの急速な経済成長を遂げ、都市部では所得が増加し、生活水準の向上が見られた。その一方で地方は経済発展から取り残され、都市と地方で経済格差が生まれ、生活水準にも大きな開きが出る結果になった。」(p.427)
「特に一九七五年以後、農村部から都市部への人口流出が進んだ。なかでも若い女性の流出が著しく、『結婚適齢期男性』の数に対して『結婚適齢期女性』が少なくなって、農村男性の結婚難の第一の要因になった。第二の要因は都市と農村の生活水準の格差である。一世帯あたりの所得は農村が都市よりも低く、経済面、文化面での格差を生み出し、これが農村の女性に『農漁村定着忌避』の傾向を生んだとされる。」(p.428)
「筆者の調査地であるA郡でも未婚男性に対して未婚女性の数が少ない。A郡の二五~二九歳の未婚率(二〇〇〇年統計)は、男性七一パーセント、女性二八パーセントである。韓国全体では男性七一パーセント、女性四〇パーセントである。日本の場合、二〇〇〇年の統計では二五~二九歳の男性の未婚率は六九・五パーセント、女性は五四パーセントであった。(総務省統計局、平成一二年度国勢調査)。韓国は日本以上に未婚の男女比に開きがあり、A郡ではさらにその傾向が著しい。」(p.428)

 これは韓国の地方における問題だが、読んでいて他人事とは思えない。日本においても農村男性の結婚難は昔から語られていることであり、地方から大都市圏への女性の流出も同じような形で続いている。韓国においては「農村男性の結婚難」という切り口で語られているが、日本においては近年この問題は少子化と人口減少の問題として語られた。地方に女性がいなくなり、男性が結婚できなければ当然子供も生まれないので人口減少につながる。地方における男性の結婚難と人口減少は、切り口の違いだけで本質的には同じ問題であると言える。

 日本においては、民間の有識者による「日本創成会議」(座長:増田寛也東京大学大学院客員教授、元総務相)の人口減少問題検討分科会が2014年5月に「全国1800市区町村別・2040年人口推計結果」を公表した。それによると、地方からの人口流出が続く前提で、2040年にまでに若年女性(20~39歳)の人口が50%以上減少し、消滅する可能性がある市区町村は全国に896あり、なかでも人口が1万人未満で消滅の可能性が高い市町村は532にのぼるという結果となった。子供を生む年齢層の女性の数が半数以下に減れば、たとえ現在より出生率が上がっても追いつかず、急激な人口の減少が起きて、こうした地方自治体は存続出来なくなる。日本全体のほぼ半数の市町村がこうした消滅の危機に瀕しているという驚くべき推計は多くの波紋を呼び、これらの市町村は「消滅可能性自治体」などと表現された。要するに日本も韓国も同じ問題を抱えているということだ。

 中西氏によれば、韓国の農村男性の結婚難を解決するために民間団体と行政が協力してさまざまな取り組みが行われたが(その中は統一教会と関係のない「合同結婚式」も含まれていたという)、それでも解決に至らなかったので、2000年代に入って韓国では国際結婚が増加したという。特に農山漁村部の男性と外国人女性の国際結婚の増加が著しく、2001年から2006年の間に三倍に増加している。韓国の男性と結婚した外国人女性の主な国籍は、中国、ベトナム、フィリピン、モンゴル、カンボジアなどである。

 しかし、こうした国際結婚の急増に伴ってさまざまな問題も浮上しており、「2 急増する国際結婚と発生する諸問題」という項で中西氏は『朝鮮日報』日本語サイトを引用する形でその問題を扱っている。
「急増する国際結婚の中には、『結婚相手を探し夫婦関係を結ぶ過程から「売買婚」方式がまん延し、結婚後にも人種差別と人格べっ視・虐待により破綻になるケースが少なくない』ものもある(二〇〇五年三月二二日)。電話相談機関が『韓国人男性と結婚した外国人女性を対象にアンケート調査を実施した結果では、三二%が夫から暴力を受けた経験がある』と答え、別の機関が外国人妻一〇〇人にアンケート調査を行った結果では、一〇人中八人が『二度と韓国人男性と結婚したくない』と答えているという(二〇〇五年一一月二三日)。」(p.429-30)

 中西氏は、2000年以降になって急増した韓国の国際結婚は統一教会とは無関係の国際結婚であり、引用した『朝鮮日報』の新聞記事のようなことが韓日祝福家庭に起こっているわけではないとしつつも、統一教会の日本人妻であれ、中国、ベトナム、フィリピンなどの女性であれ、韓国の農村男性の結婚難を解決するための国際結婚であった点については同じであり、そこに嫁いだ女性たちの苦労には共通点があると指摘する。

 しかし、国際結婚をした女性たちの悲惨な体験だけを強調するのはフェアでないと私は考える。外国に嫁げば言葉や文化などの問題で苦労することはある程度予想できたはずであり、「二度と韓国人男性と結婚したくない」と思う外国人女性がいたとしても、それは一方当事者の言い分に過ぎず、韓国の農村男性の人格がとりわけ酷いという証拠にはならないであろう。たとえそういう事例があったとしても、こうした国際結婚は韓国の農村における嫁不足に対する一定の解決策になっているのである。

 実は、地方で農業を営む男性が配偶者に恵まれないという事情は日本でも同じであり、外国人の女性を嫁に迎えるという問題解決の仕方も、同じように日本に存在する。嫁不足が深刻な農村では、かなり以前から農家の跡取り息子をターゲットにした「外国人花嫁ビジネス」が存在してきた。日本で外国人花嫁ビジネスが盛んになったのは、1985年に山形県で行政が主導する形でフィリピン人女性を迎え入れたことがきっかけだったと言われており、民間業者による紹介サービスがそれに続いて広がっていった。民間の業者の中には営利目的に走ったり、詐欺まがいのものも含まれていたこともあり、こうした結婚ビジネスのあり方は「メールオーダーブライド」と呼ばれ、フィリピン当局から批判されたこともあった。

 このように日韓の地方が同じ課題に直面していることを背景として考えると、多くの日本人女性が統一教会の祝福によって韓国の農村に嫁いだことに対して日本社会が批判的な理由が透けて見えてくる。2010年の「週刊ポスト」(6月4日号)に掲載された記事の見出しに「韓国農民にあてがわれた統一教会・合同結婚式日本人妻」という表現がなされていたのは、この問題に対する日本人の感情を象徴的に表している。

 もし統一教会の合同結婚式で、配偶者に恵まれない日本の農村男性に花嫁が紹介され、農家に後継ぎが生まれたというストーリーであったならば、それは日本社会に貢献していることになるので、批判的にとらえる人は少ないであろう。たとえ花嫁がフィリピンやタイなどの開発途上国の女性であったとしても、農村の窮状を救う方法として理解されるであろう。しかし現実はその逆であり、韓国の農村の花嫁不足を解決するために、日本の女性が紹介されたという話だから受け入れられないのである。要するに、「日本の農村でも花嫁が不足しているのに、貴重な日本の女性をどうして韓国の農村の花嫁不足を解決するために差し出すのか?」と感じてしまうのだ。

 中西氏が指摘するように、日本人の女性が韓国の農村に嫁ぐことは「上昇婚」ではなく「下降婚」である。フィリピンやタイなどの開発途上国の女性が韓国に嫁ぐことは「上昇婚」なのであり得るが、先進国である日本の女性がわざわざ韓国の田舎に嫁ぐことはないだろうと考えるのが一般的な日本人の感覚であろう。そこには、日本民族をアジアの他の民族よりも上位に置く一種の「エスノセントリズム」が潜んでいるのだが、そのことを自覚して冷静に考えられる日本人は少ないのではないだろうか。韓国の田舎に嫁いだ統一教会の日本人女性たちは、こうした「エスノセントリズム」を超越した宗教的信念を持っていたのだが、日本の一般社会はそれを肯定的に受け入れられなかったということだ。

カテゴリー: 書評:櫻井義秀・中西尋子著『統一教会』