Moonism & Pausキリスト教講座シリーズ06:2022年2月号


 私がこれまでに「キリスト教講座」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』および『Paus』(連載途中で雑誌名が変更)に寄稿した文章をアップするシリーズの第6回目です。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。未来を担う大学生たちに対して、キリスト教の基礎知識を伝えると同時に、キリスト教と比較してみて初めて分かる「統一原理」の素晴らしさを伝えたいという思いが表現されています。今回は、2022年2月号に寄稿した文章です。

第6講:キリスト教と日本人④

 「キリスト教講座」の第6回目です。「キリスト教と日本人」の最終回で、第二次世界大戦の終了から現代にいたるまでの日本基督教史を扱います。

 1945年に終戦を迎えると日本の国内事情は一変し、信教の自由が広く認められるようになります。1946年には日本国憲法が公布され、その第20条で信教の自由が保障されると同時に、政教分離の原則が規定されました。そして1951年には「宗教法人法」が制定されます。この法律は、戦前の「宗教団体法」が宗教を規制しすぎたことに対する反省に立ち、宗教活動をしやすくするために宗教団体に法人格を与えることを目的とした法律とされています。

 戦後の日本は、キリスト教の拡大にとっては歴史上かつてないほどの恵まれた環境であり、それが実に76年間にわたって長く続いてきました。本来ならばキリスト教が爆発的に伸びてもおかしくないわけですが、実際にはどうだったのでしょうか。戦後GHQはキリスト教の伝道を全面的に支援し、多くの宣教師が来日しました。その結果、1950年代には信者数が大きな伸びを示したのですが、1960年代以降はふたたび停滞し始め、いまだに人口の1%を超えていないというのがキリスト教の現状です。戦後日本のキリスト教人口は、総人口の0.7%になるまでは順調に伸びたのですが、それ以降は0.8%程度で伸び悩むようになります。そして2008年以降は数の上でも、人口比の上でも減少局面に入ってしまいました。

戦後日本のキリスト教人口の推移

 現在日本のキリスト教の中で最も大きな団体は、約40万人の信徒を抱えるカトリック教会です。プロテスタント諸派を全部集めても50万人程度であり、その中で最も大きな団体である日本基督教団の信徒数は11万人程度にすぎません。日本ハリストス正教会はもともと小さかったのですが、1万人を切っています。

 これらは「正統」と呼ばれるキリスト教会の数値ですが、実は文化庁が発行している『宗教年鑑』の中で、信徒数の多いプロテスタント教会は末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)であり、12万人を超えています。一方で「エホバの証人」の信者は日本に21万人いると言われています。日本においては「正統」を自認する日本基督教団が、自分よりも大きなモルモン教やエホバの証人を「異端」と呼んでいるという状況なのです。

 それではなぜ戦後日本のキリスト教は伸びなかったのでしょうか。戦後の日本のキリスト教の問題点を第一にあげるとすれば、戦前に権力に屈したことに対する反省から、急速に反権力、反天皇主義に傾斜していったことです。この反権力や反天皇と非常に思想的に相性が良いのが左翼です。ですから、共産党や旧社会党などと結び付いて反靖国運動などを展開し、キリスト教が左傾化していくということが起こりました。

赤岩栄著作

赤岩栄牧師の著書『キリスト教と共産主義』

 左傾化する日本キリスト教界を象徴する事件が、1949年に起きた赤岩栄牧師の「共産党入党宣言」でした。彼は、理論的にも実践的にもキリスト教と共産主義とが両立しうると主張して、日本基督教団の牧師のままで共産党入党宣言を行ったのです。最終的には教団幹部の説得により入党を思いとどまりましたが、「信仰はキリスト教、実践は共産主義」を主張して、教団を分裂させることになります。

 1960年代・70年代の安保闘争は、日本基督教団の神学校である東京神学大学にも影響を及ぼすようになり、1970年には「反万博闘争」と呼ばれる学内紛争が起こります。これに対し、東神大教授会は機動隊を投入して社会派の学生を排除しました。これが「社会派」と「教会派」という日本基督教団内の紛争に発展し、特に1971年5月の東京教区総会は、乱闘、流血の事態になりました。その後、社会派のキリスト教は、反靖国運動、天皇制反対運動、部落差別反対運動、反核運動など、左翼勢力の好む社会的テーマを追求することにより、完全に共産主義に乗っ取られてしまう形になります。

 共産主義や社会主義はもともと唯物論ですから、そういうものと結びついてしまうとキリスト教が持っている本来の霊性が失われてしまいます。しかも、日本基督教団を挙げて反統一教会活動に取り組むことを1988年に決議するなど、日本のキリスト教会は完全に神の御旨に反する方向に向かってしまいました。環境が恵まれているにもかかわらず信徒が増えないということは、キリスト教自体が失敗したと考えるほかありません。基本的には、共産主義にやられてしまったということが、大きな失敗であるわけです。

 日本のキリスト教が伸びなかったもう一つの理由として、「土着化」に失敗したことがあげられます。西洋からやってきた宗教であるキリスト教が文化的な壁を越えて、日本人が受け入れられるようなキリスト教になることを「土着化」といいますが、この努力を十分にしてこなかったということです。

 キリスト教はエリート主義で、日本文化との融合を嫌い、先祖供養に代表されるような日本の土着の文化を否定してきたのです。日本人にとって先祖を敬い供養するということは宗教の中心です。しかし、キリスト教は先祖供養に対して神学的意味を何も見いだしませんでした。ですから先祖を大切にする日本人にとって、キリスト教は大変受け入れがたいものだったわけです。

 家庭連合は、東洋に土着化したキリスト教であると言えます。韓国という東洋の同じような文化圏の国で生まれたキリスト教なので、日本で成功する余地があったのです。たとえば陽陰の思想、家庭を大切にする思想、再臨復活を通して先祖が救われるという教えは、既存のキリスト教にはないとても東洋的な部分です。

 日本のキリスト教が失敗してきた内容を蕩減復帰する使命が家庭連合にはあります。したがって、キリスト教が左翼にやられてしまった失敗を蕩減復帰するために、家庭連合は共産主義と闘うキリスト教でなければなりません。次に土着化に失敗したことを蕩減復帰するために、日本文化とキリスト教を融合させるということも、家庭連合の大きなテーマになるのです。

カテゴリー: Moonism & Pausキリスト教講座シリーズ パーマリンク