アイリーン・バーカー『ムーニーの成り立ち』日本語訳34


第4章  ムーニーと出会う(4)

修練会に進む

ムーニーたちが修練会に参加するようゲストにかなりの圧力をかけることがあり得るのは疑いがないが、大部分の人が彼らの招待を受け入れないということもまた事実である。イギリスとカリフォルニアの双方で、センターに来た者のうちで修練会へ進むのは10人中約1人にすぎない(注12)。

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表2は、「なぜ修練会に参加するときまで接触を続けることに同意したのか?」という質問への回答を示している。後の議論を先取りして言えば、非入教者は最も「探求者」ではなさそうであり、離教者は最も「探求者」であることが明らかである。そして、非入教者(およびアメリカの神学生、彼らの多くはカリフォルニアで入教した)が他に何もすることがなかったと答える割合が最も高い。とりたてて驚くことではないが、非入教者と離教者は入教者に比べて、ムーニーの圧力によって修練会に参加するよう説得されたと主張する傾向が強かった。

何度も繰り返して指摘していることだが、統一教会の行動は時と場所によって異なっている。私には全てのケースをカバーすることは望めないが、第3章でより正統的で伝統的な原理の説明とオークランド流の解釈との類似点と相違点を示そうと試みたのと同じように、典型的なイギリスの修練会(ヨーロッパのその他の地域や大部分の北米の地域とさほど変わらない)と、キャンプKの週末を両方とも描写してみることが有益であろう。

イギリスの週末修練会

ゲストは金曜日の夜のうちに、快適な環境の中に立つ大きな家に到着する(最もよく利用される場所は、ロンドン南部、ウィルトシャー、スコットランドの南東海岸にある家と、およびスウインドンの近くにある運動の農場であった)。ゲストを最初に運動に紹介したムーニーが同伴することもよくあることだ。

特定の修練会に参加する人の数は、1人から20人あるいはそれ以上と幅がある。人数が多いのは、イースター休暇、夏期、あるいは「十字軍」の活動で「伝道」が強化されたときなどである。4人から12人のゲストが4人から8人のムーニーたちと一緒に参加するのが最も一般的である。そしてスタッフのムーニーがさらに4人程度加わるが、彼らは修練所の運営に責任を持ち、もちろん、講義も行う。性的な礼節の感覚がその週末には充満している。ゲストは2人かあるいはそれ以上のゲストまたはムーニーと同室になる。(最初は誰が誰だか分からないであろう)。「姉妹たち」の部屋は、家の中の「兄弟たち」の部屋がある場所とは違ったところにあり、恐らくトイレも別々である。手を握るなどといった身体的な接触があるとしても、それは同性の間でしかない。

1日目の夜については正式なスケジュールはない。早めに到着した者は、ちょっとした散歩に出たり、夕食の準備を手伝ったりする。夕食後には、ゲストとスタッフが互いに知り合うための一般的なやりとりがあり、何曲か歌を歌ったりもする。歌は実際、修練会全体の区切りの役割を果たしている。それぞれの食事や講義が始まる前に、3〜4曲の歌が歌われる。通常はギターで伴奏する人が少なくとも一人はいる(音楽の才能が豊かな会員もいる)。大部分のセンターには歌集があり、それにはよく知られた賛美歌や、一般のフォークソング、いくつかの韓国語の歌を含む特別な「ファミリーソング」などが載せられている。歌集がないときには、大きな紙に歌詞が書かれ、皆が読めるように貼り付けられる。(居心地は悪かったものの、私にとって興味深いインタビュ—の一つは、へんぴな土地にあるセンターで床にひざまずきながら、大きな使い古しのフェルトペンで歌の歌詞を写していたときに行った。)

ゲストはどの歌を選ぶか聞かれ、やがてムーニーの歌い方を知ることになる(それは信仰復興運動の集会に少し似ていて、力強く、体をゆらし、時には音楽のリズムに合わせて掌で太股をたたいたりする)。また食前の祈りや講義前の祈りにも特別なスタイルがある。これらは会員のアドリブであり、息の漏れるような声でなされる。時には「天のお父様、この素晴らしい・・・を感謝します」といった言葉を繰り返すこともある。後になって、ゲストは「天のお父様」とは神のことであり、「お父様」「お母様」あるいは「真の父母様」とは文とその夫人であることを悟るだろう。

10時半頃、温かい飲み物がもう一度出され、ゲストは寝室に向かい始める。翌朝は7時45分頃に起床し、9時に朝食をとる前に体操や散歩をする。最初の講義は10時15分からで、コーヒーブレイクの後に2コマ目の講義、そして1時過ぎの昼食となる。午後はゲームの時間で、バレーボールや「ラウンダーズ」(訳注:アイルランドで行われる球技で、ソフトボールに似たルールで行われる)をし、または散歩に出かけたり、農場の作業を手伝ったりする。3コマ目の講義は、5時から6時半の間に行われ、続いて7時の夕食となる。土曜日の夕方には通常エンターテイメントが催される。スタッフは素朴な寸劇を披露し、ゲストは得意の出し物をやってみないかと誘われるが、強制ではない。ここでもまた、たくさんの歌を歌う。再び温かい飲み物が出されて、12時頃に就寝になる。

ムーニーたちが日曜日の朝早く5時に起きて、「誓い」を唱和していることに、ゲストたちは気付かないであろう(注13)。ゲストにとっては日曜日も土曜日と同様に始まる。ただし、一コマ目の講義の代わりに礼拝がある。聖歌を何曲か歌い、祈り、聖書から数か所の拝読、そしてメンバーの一人による短い演説か説教が行われる。午後の短い散歩の後に、ゲストは最後の講義を受け、その中にはメシアがいま地上に生きているかもしれないという「結論」が含まれている。またゲストは、文が『原理講論』に記された啓示を受けた人物だと知らされ、彼の若い頃の話やアメリカでの業績などについて聞くこともある。文自身や、運動の活動のいくつかの側面、例えば科学者会議、ワシントン・モニュメント大会、あるいは合同結婚式の一つなどについて描写した映像を上映することもある。必ずではないが、普通は、ゲストは修練会の主催者たちが文を長く待ち望まれた再臨主であるとみなしていることを悟るようになる。質問したときに往々にして返ってくる答えは、証拠を見て彼が誰であるのかを自分で判断しなければならない、というものである。さらに突っ込んで聞くと、イギリスのムーニーの大部分は、自分個人としては、文がメシアの役割を果たすことができると信じていると答えるだろう。午後5時頃、最終講義の後の議論を終えると、修練会は終了して、帰宅となる。

講義が修練会の主要な部分を構成している。少なくとも講義は5回あり、それぞれが通常は1時間あまり続く。内容は基本的に出版された『原理講論』のパターンに従って行われる。講師はノートを参照することは滅多になく、通常は黒板を存分に利用する。聖書の言葉を20か所も引用して自分の発言を裏付けようとする極めてフォーマルな講師がいるかと思えば、芸術的才能に恵まれた講師もいて、漫画を描いたり、イタリアの巨匠たちに対する自分の理解を通して霊的な体験について説明したりする。また受講者に絶えず質問し、彼らの答えを引き出したり修正したりしながら、それを講義の一部にしていくという技法を用いる講師もいる。

<写真キャプション>

ケントにおける修練会中の、講義の間の休憩(4章108ページ上)

ケントにおける修練会中の、講義の間の休憩(4章108ページ上)

バレーボールのゲーム(4章108ページ下)

バレーボールのゲーム(4章108ページ下)

 

 

暖かい飲み物を飲みながら歌を歌う(4章109ページ上)

暖かい飲み物を飲みながら歌を歌う(4章109ページ上)

クリスマスのエンターテインメント(4章109ページ下)

クリスマスのエンターテインメント(4章109ページ下)

 

 

 

 

 

 

 

堕落論についての講義(4章110ページ上)

堕落論についての講義(4章110ページ上)

修練会中の礼拝(4章110ページ下)

修練会中の礼拝(4章110ページ下)

 

 

 

 

 

 

(注12)第5章、注64を参照
(注13)「誓い」は短い礼拝であり、会員たちは神と文への献身を誓う。「誓い」は全世界で週、月、年の最初の日および「祝日」の午前5時(現地時間)に行われる。(訳注:この行事は韓国では「敬拝式」、日本では「敬礼式」と呼ばれているが、英語圏では”Pledge Service”と呼ばれており、敬礼は同様に行うが、行事の名前は「誓い」が中心になっている。この時代は「家庭盟誓」の前の「私の誓い」が唱えられていた時代である。また英語圏で“Holiday”(祝日)または“Church Holiday”と呼ばれている統一教会特有の記念日は、韓国と日本では「名節」と呼ばれている。)

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