アイリーン・バーカー『ムーニーの成り立ち』日本語訳70


第9章 感受性(2)

英国と米国(注7)における男女比は、2対1で男性が多い。(しかし、これは必ずしもヨーロッパの全ての国で見られるパターンではない)。男女比と年齢分布は既成の教会とは著しく異なっている。既成教会では、英国においても米国においても、女性の方が礼拝の出席率は高いし、20代前半は礼拝出席率が下がる時期である。(注8)。統一教会が年長者をフルタイム・メンバーとして教会に引きつけそうもない理由を理解することは、彼らの生活の忙しさや、期待されている責任の重さという理由を考えただけでも、比較的簡単である。なぜ女性よりも男性の方がフルタイム・メンバーになりやすいのかについては、明確な説明はできない。一つの可能性としては、女性は男性よりも早く結婚する傾向にあり、既婚者であることは入会することを妨げる最も大きな要因の一つだからである。(必ずしもすべてではないが、修練会に参加するところまで行く以前に、婚姻区分による「選択」がいくぶんか起こっているように思われる。なぜなら、非入会者は入会者よりも既婚率が高いが、対照群よりも既婚率が低いからである。)私の心に浮かんだもう一つの可能な説明は、女性解放という現代的な考え方に対して統一教会が全く共感していないからであるというものだった。(とはいえ、メンバーの中には若干のフェミニストがおり、彼女たちが運動のセクシズムであるとみなすものに対しては、声高に反対している。)しかし、妥当な説明としては、この考え方は捨てなければならなかった。というのも、2日間の修練会に参加した千枚あまりの参加申込用紙に目を通すと、これら(および21日修練会の参加申込書)のうち女性は3分の1しかいないことが分かったからである。そして会員の候補者がこの段階で運動の女性に対する態度を多く知っているとは思えなかった。男女差がなぜ生じるかについて、私はその他にも可能な説明(例えば、両性の間に存在する「キャリア構造」の相違)を思いついたのだが、残念ながらそれらは推測の域を出ていない。運動に参加する理由については、以下の点を除いては、男女間に明らかな相違を見いだすことは出来なかった。女性は(私にとってやや驚きではあったが)神学的な理由(とくに「結論」の部分)を挙げたり、目的意識を与えられたと言う傾向があるのに対して、男性は愛の魅力に言及したり、共同生活の意義をより高く評価する傾向があった。入教を決意するときに犠牲にした最大のものは何かという質問に対しては、男性は自由や職業を挙げる傾向がやや強かったのに対して、女性は家族あるいはボーイフレンドを挙げる傾向が強かった。しかし、そのような相違は小さなものであり、深読みすべきではない。

table10 英国のムーニー、非入教者、および英国の全人口の出身階級は表10に示されている。しかし、年齢、性別、階級などの変数それ自体は、ある人がなぜムーニーになるのかを「理解する」うえでは役に立たない。それらは、ムーニーの人口分布を作るときの最初の段階で役に立つに過ぎない。新会員候補者に最も影響を与えてきたに違いない社会機構をもっと詳細に見る必要がある。そしてこれらは、ムーニーの年齢層を考えると、家庭であり、教育制度であり、そしておそらく既成宗教であると思われる。それはわれわれが一つの宗教運動について理解しようとしているからである。次に私は、社会の将来についての質問に対する全般的な反応の一部を報告し、さらにムーニーが運動と出会う前にどの程度積極的な「探求者」であったかを考察して、この章を終えたい思う。しかし、最初に私はホームチャーチ会員について触れたい。彼らの特徴は、教会に通う一般大衆全般の持つ特徴とかなり似通っている。

 

ホームチャーチ会員
ホームチャーチ会員(または準会員)は、統一教会のセンターには移り住まずに自宅に留まって仕事を続けている回心者のことである。それでも、彼らは教会のセンターをかなり頻繁に訪れ、ファンドレージングなどの活動に参加する。言い換えると、彼らは統一教会の生活様式に完全には「献身」することができないか、あるいはする意思がない人々なのであるが、それにも関わらず、統一教会の信仰に「回心した」と宣言する覚悟はあるのである(注9)。

 

「ホームチャーチ大会。デニス・オームが写真の右側に立っており、ドリス・オームは右から4番目である。前にはゴー・ワールド・ブラス・バンドのメンバーがいる。」(9章208ページ)

「ホームチャーチ大会。デニス・オームが写真の右側に立っており、ドリス・オームは右から4番目である。前にはゴー・ワールド・ブラス・バンドのメンバーがいる。」(9章208ページ)

「バーミンガムでのホームチャーチ集会」(9章209ページ)

「バーミンガムでのホームチャーチ集会」(9章209ページ)

1980年5月までに、英国には140人のホームチャーチ会員がいた。その大部分は、それ以前の一年半の間に入会した人たちであった。地理的に見ると、彼らは活動的なセンターのある地域に集まっている。3分の1がロンドンとサウスイースト、そして約4の1がサウスウエールズに住んでいる。ホームチャーチ会員の教育水準は、フルタイムのムーニーほどには印象的なものではない。14%が学位を持っているけれども、半数近くが中学校より上の教育を受けていない。これは部分的には、フルタイムのムーニーの80%が30歳以下であるのに、ホームチャーチ会員の80%は30歳以上であり、半数が40歳以上であるという事実と関連している。ただし、彼らが40代のときに入会したということはあまりなさそうである。

(注7)スパージン「統一教会会員の横顔」p.6
(注8)英国のデータについては、P・ブリアリー(編)「80年代の見通し」ロンドン、バイブルソサイエティ、1980年、p.23を参照せよ。アメリカのデータについては、G・ギャラップ「アメリカの宗教、1981年」プリンストン宗教調査センター、1981年を参照せよ。
(注9)準会員は以下のように定義された統一教会の目的を支持することを表明する用紙に署名する:
統一教会は、文鮮明師を創設者とし精神的な指導者とするキリスト教会であり、以下のの目的を持っている。
1.神の愛を中心とした善なる社会を築くこと。あらゆる分野の人々が、そのような社会を築く責任を引き受けるのを助けることによって、「みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように」と言われたイエスの祈りを成就すること。
2.あらゆる年齢の人々の道徳的、精神的な教育を促進し、彼らに神を愛し、非利己的にお互いと被造物を愛し、さらにすべての人間の問題ーー社会的、文化的、科学的なーーに神をもたらす方法を教えること。
3.道徳的で健全な社会の基盤としての神を中心とした家庭を造り、神を中心として、人種と国家を超越した人類一家族を造ること。
4.宗教を核とした解決方法ーーそして純粋に世俗的なものではないものーーが、世界の間違いを正すための最も実践的で最も道徳的な方法であると人々に確信させることにより、無神論的唯物論の拡散の結果として生じたイデオロギーや道徳の混乱を解決すること。
5.キリスト教やその他の宗教を強化し、すべての宗教的な人々が協力して、精神的だけではなくて社会的・物質的にも、世界の問題を解決する上で先頭に立つよう働きかけること。

カテゴリー: 「ムーニ―の成り立ち」日本語訳 パーマリンク