Moonism寄稿シリーズ03:2019年8-9月号


 前々回から、私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップし始めました。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第3回の今回は、2019年8-9月号に寄稿した文章です。

第3講:日本の発展とアジアの平和のための日韓トンネル

 少子化による人口減少の問題を抱えた日本が今後も持続的な経済発展をしていくためには、アジアとの連結が不可欠です。今回はそのための画期的なプロジェクトである日韓トンネルの意義について紹介します。

<日本の抱える課題:人口減少とアジア外交>
 日本の人口を長いスパンで見れば、江戸時代には約3000万人で一定していたのが明治期から一挙に生産性が高まって急上昇し、2010年の約1億2800万人をピークにそれ以降は減少期に入り、2053年には1億人を切ると言われています。さらに現在の日本のGDPは世界第3位ですが、2050年には8位に落ちると予想されています。要するに、これからの日本は一国だけの努力では衰退するしかないという状況なのです。

 一方、今後の世界の経済の中心となっていくのはアジアであるとされ、日本の経済発展にとってはアジア地域から対日投資を呼び込むことが不可欠となります。北東アジアの主要な構成国である日本、韓国、中国は、三カ国の人口総計が約15億3千万人(世界の20%強)、GDP総計が世界全体の22%、貿易額でも世界の20%を占めており、世界の成長センターであるアジアの中でも中核となる国々です。しかし、これら三カ国に北朝鮮を加えた北東アジア地域は、冷戦終焉後もイデオロギー的な対立に加えて複雑な「歴史問題」を抱えており、地域協力や共同体形成が最も遅れた地域になっています。イギリスとヨーロッパがユーロトンネルで結ばれ、EUが統一経済圏を形成している状況に比べれば、玄界灘と38度線によって分断された東アジアは、信頼性の高い効率的な域内輸送システムを欠いており、それが交易拡大の大きな制約となっています。

<日本の課題を解決する日韓トンネルプロジェクト>
 こうした問題を一気に解決する画期的なプロジェクトが、日韓海底トンネルの建設です。これからの日本の経済発展には、アジアの成長のダイナミズムを取り込んでいくことが肝要であり、そのためには東アジアとの円滑な関係が欠かせません。現在、日本と韓国の間では経済的な相互補完の関係が強まりつつありますが、その物流ルートは海運と航空輸送に頼らざるを得ませんでした。そこに陸運が加わることにより、日韓の経済交流が加速されると同時に、九州北部と韓国南部が一つの経済圏に発展していくことになります。さらに将来、中国の民主化が進み、日韓中の経済交流が拡大する時代を迎えれば、日韓トンネルはさらに大きな北東アジア経済圏を形成するための動脈となることでしょう。

 2011年1月に韓国交通研究院は日韓トンネルの建設は経済性に乏しいとする試算結果を発表していますが、これは南北分断という韓半島の現状を固定的にとらえて分析した結果にすぎません。将来、韓半島の平和的統一が実現すれば、半島北部の社会資本整備事業や鉱物資源、観光資源の開発が活性化し、ヒト、モノ、カネの流れが加速することが予想されます。さらにその流れが中国やロシアにまで連結されるとき、日韓トンネル建設事業は十分に採算の取れるものになると考えられます。

日韓トンネル標準断面図

日韓トンネル標準断面図


日韓トンネル建設のルート。唐津から壱岐、対馬、巨済島を経て釜山に至る。

日韓トンネル建設のルート。唐津から壱岐、対馬、巨済島を経て釜山に至る。

<日韓トンネルをアジアハイウェイ計画の一部に>
 パンアメリカン・ハイウェイやヨーロッパ・ハイウェイのような国際道路網をアジアにも構築しようというアイデアは、1950年代半ば頃から国連を中心に検討がなされ、1959年に国連アジア極東経済委員(ECAFE)総会でアジアハイウェイ計画が採択されました。その後、アジアハイウェイは国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の管轄となり、現在は日本を含むアジアの32カ国が同プロジェクトに参加しており、総延長約14万2千キロ国際道路網が形成されています。しかし、日本と韓国を結ぶルートに関しては、釜山と九州北部の間をフェリーで結ぶことになっています。この部分をトンネルに変えることが、国際的な環境造成の第一歩となります。

 日韓トンネルは、日韓両国の政府と国民が一致協力して取り組まなければ実現困難なプロジェクトです。そのためには、両国民の間に横たわる相互不信と敵対感情を克服しなければなりません。それは「近くて遠い国」と言われる両国の関係を「近くて近い国」に変えるための未来志向の事業なのです。それは単に両国の経済交流を拡大させるだけでなく、長期的な視点に立てば、北東アジアに広域経済圏を構築し、同地域に平和と安定をもたらす「平和のトンネル」となるでしょう。現在の日韓関係は「戦後最悪」とも言われていますが、こうした現状を打開するためにも、未来志向のプロジェクトが必要なのです。

 1994年にドーバー海峡の海底トンネルが完成し、ユーロスターでロンドンとパリが結ばれて、今年でちょうど25年になりました。ドーバー海峡トンネルができたのは、イギリスとフランスが仲が良かったからだという人がいますが、実は1986年に海峡トンネルの建設が決定したときには、両国には根強い反対がありました。それを抑えてこのプロジェクトを実現したのが、サッチャー首相とミッテラン大統領のリーダーシップでした。そしていまや、ドーバー海峡トンネルは両国を結ぶ大動脈となっており、これを不要だという人はいません。つまり、イギリスとフランスの関係が良かったからトンネルができたのではなくて、トンネルを創ったから、両国の距離が近くなり、一体化が進んだのです。

国際ハイウェイプロジェクト概念図

国際ハイウェイプロジェクト概念図

<日韓トンネル建設を提唱した文鮮明総裁>
 1981年11月、ソウルで開かれた「第10回国際科学統一会議」(ICUS)において、文鮮明総裁は日本と韓国を結ぶ海底トンネルの建設を提言しました。それを機に日本において日韓トンネル建設に向けた調査活動が始まり、1982年には国際ハイウェイ建設事業団(2009年には一般財団法人国際ハイウェイ財団に改組)が設立され、各候補地域のボーリング調査に着手しました。翌年5月には「日韓トンネル研究会」が発足し、韓国や日本のトンネルや土木専門家による地形や地質等の調査・研究活動を積極的にサポートするようになりました。

 日本の平和大使運動は、2010年より日韓トンネル推進運動を積極的に支援し、全国各地の平和大使たちが「日韓トンネル推進都道府県民会議」の結成に貢献してきました。そうした土台の上に、2017年11月28日、「日韓トンネル推進全国会議」が結成され、同プロジェクトを日本の政策として、また日韓国際プロジェクトとして押し上げていくための諸活動が本格的に指導しました。

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