Moonism寄稿シリーズ02:2019年6-7月号


 前回から、私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップし始めました。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第2回の今回は、2019年6-7月号に寄稿した文章です。

第2講:性モラルの崩壊から青少年を救う純潔運動

 現代社会の最も深刻な問題の一つに青少年の性モラルの崩壊があります。今回はこの問題を根本的に解決するための「純潔運動」について解説します。

<米国の「性革命」から始まった性モラルの崩壊>
 今日世界的な現象となっている性モラルの崩壊の震源地となった出来事が、1960~70年代にかけて米国で起きた「性革命」でした。1950年代までの米国はキリスト教文化が支配しており、結婚は神の祝福とみなされ、若い男女には結婚するまで純潔を守ることが美徳であると教えられてきました。しかし、「性革命」によって婚前交渉や婚外交渉を容認する「フリーセックス」の文化が広がり、伝統的価値観は衰退しました。

 その結果、米国では1960~90年の30年間で、①未婚の十代の出産率がほぼ3倍、②十代の自殺率が3倍以上、③非嫡出子が5倍以上、④片親家庭の全家庭に占める割合が3倍以上、⑤犯罪が4倍以上に増加するという事態に陥りました。現在でも米国人の出産の40%がシングルマザーによるものであり、そのための社会保障費が財政を圧迫しています。また、非行化する青少年の圧倒的多数は崩壊家庭または父親不在の家庭出身であり、片親家庭の占める割合が30%に達すると社会は崩壊し始め、犯罪が急増すると言われています。性モラルの崩壊は、社会全体の崩壊を引き起こす重大問題なのです。

<コンドーム教育の限界と自己抑制教育の登場>
 望まない妊娠と性感染症の増加に対して米国で長年にわたって取られてきた対策が、若者たちに避妊の知識を教え、コンドームを配布するという方法でした。性をタブー視せず、正確で科学的な情報を提供することを謳った「包括的性教育」と呼ばれるアプローチは、価値観や倫理観といった本質的課題を棚上げにしたリベラルな性教育であり、「包括的」とは名ばかりで、実際には「コンドーム教育」と言っていい内容でした。

 性感染症のリスクから身を守るためにコンドームの使用を奨励することを「セーフセックス」と言いますが、実際にはコンドーム使用によっては望まない妊娠や性感染症を完全に防ぐことはできないばかりか、逆に10代の若者たちの性行動を活発にしたことが批判されるようになりました。

 これに対して、結婚するまでは純潔を守ることを若者たちに教えるべきだという「ノーセックス」の立場を主張して登場したのが、「自己抑制教育」や「純潔教育」と呼ばれるアプローチです。米国では1990年代から福音主義のキリスト教団体が活動母体となって自己抑制教育が熱心に行われるようになりました。従来のコンドーム教育によってもシングルマザーの増加を防げなかったことが認識され、1996年の「福祉改革法」によって自己抑制教育プログラムに対する政府の財政支援が行われるようになりました。

<純潔運動を主導した統一運動>
 統一運動は、こうした1990年代の純潔運動において主導的な役割を果たしました。Pure Love Alliance(PLA)は95年に米国ニューヨークで発足し、性風俗産業への反対や過激な性教育の弊害を訴えるとともに、それに代わる「純潔と家庭」を重視した人格教育プログラムを提唱しました。97年6月から8月には「ピュア・ラブ」を訴える全米26カ都市ツアーを実施し、数多くのマスコミで報道されました。

 韓国でも、社会団体・韓国青少年純潔運動本部(97年発足)が推進する純潔運動が全国を席巻しました。婚前婚後の純潔と貞節を誓う「純潔誓約式」が学校行事として小中高等学校で行われ、全国各地の教育機関や父兄たちの支持を受け、マスコミにも大きく取り上げられました。98年4月に始まり、夏休みまでのわずか3か月という短い間に、韓国の90%以上の小中高等学校の児童生徒が純潔を誓ったというのですから、その影響力の大きさが分かります。

<アメリカにおける論争と開発途上国への浸透>
 しかし、米国ではその後「包括的性教育」を推進する米国性情報・教育評議会(SIECUS)に代表されるリベラルな圧力団体が、自己抑制教育への政府支援を阻止しようと批判キャンペーンを開始しました。彼らは長い間、政府から多額の資金を受けてきましたが、自己抑制教育プログラムにも政府支援が行われるようになり、資金が目減りしたためにそれを取り戻そうとして、「結婚するまで性交渉を持たないよう教えるプログラムは科学的根拠がなく、効果は実証されていない」「自己抑制教育は偏った思想が生み出した非科学的産物だ」という主張を繰り返したのです。米国ではこの戦いは宗教、イデオロギー、政治的信条などがからんだ終わりなき論争の様相を呈しています。

孝情人格教育プログラムのテキスト“Four Family Love”

孝情人格教育プログラムのテキスト“Four Family Love”


ロバート・キッテルYSP会長

人格教育を紹介するロバート・キッテルYSP世界会長

 現在、統一運動の純潔教育は「孝情人格教育プログラム」の中に受け継がれ、“Four Family Loves”というテキストブックにその内容がまとめられています。孝情人格教育プログラムは青少年に単に純潔の美徳を説くだけでなく、そもそも何のために純潔を守らなければならないのかを教えています。結婚するまで純潔を守る目的は、良き人格を形成するためであり、真の家庭をつくるためであることをはっきりと教えているのです。家庭の中で形成される四大愛について教えることがその本質になります。こうした純潔教育では価値観の教育が必要であり、その背後には宗教があります。孝情人格教育プログラムは結婚の価値に対する超宗教的なアプローチをとっており、あらゆる宗教的伝統に共通する家庭の価値を教えています。さらに、結婚と家庭が社会にもたらす恩恵について、実証的なデータに基づいて解説しています。

 このプログラムは現在、アジアやアフリカなどの開発途上国に浸透しています。2017年6月にバンコクで行われた世界平和青年学生連合(YSP)の大会では、それまで21年間にわたってタイの学校で実施されてきた純潔教育が高く評価されました。また、2018年1月にセネガルで行われたUPF主催のワールドサミット・アフリカでは人格教育が紹介され、アフリカ各国の政府関係者およびNGOとの間に約80件の了解覚書(MOU)が締結されました。西アフリカの島国サントメ・プリンシペのエバリスト・カルバリョ大統領は孝情人格教育の内容に感銘を受け、2019年3月から教育省とYSPの共催で、教師を対象とする人格教育プログラムセミナーが始まりました。純潔運動が望まない妊娠や性感染症から青少年を救うことは、これらの国々での実績によって証明されていくことでしょう。

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