私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップする「Moonism寄稿シリーズ」の第8回目です。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。今回は、2020年7-8月号に寄稿した文章です。
第8講:アフター・コロナの世界とUPFのビジョン
中国の武漢に端を発して全世界に拡散した新型コロナウイルスは、いまや第二次世界大戦以降に人類が直面した最大の試練であると言われています。ウイルスとの闘いは長期戦になることが広く認識されるようになる一方で、経済に対する深刻なダメージが懸念されています。今回は、アフター・コロナの世界におけるUPFの役割について解説します。
今年2月3日~5日にかけて韓国ソウルで行われたUPF主催の「ワールドサミット2020」は参加者の量と質の両面において過去最高の国際会議となりました。ちょうど新型コロナウイルスが中国から各国に拡大し始めた時期と重なり、サミットの開催自体が危ぶまれましたが、奇跡的に感染者を一人も出すことなく歴史的なビッグ・イベントは大成功を収めました。
このサミットの大きな特徴は、今後UPFが世界平和実現のために活動を展開していく6つの構成要素が明確に示され、それぞれが分科会で戦略的行動計画を立てる作業に入ったことにあります。以下、6つの構成要素について簡単に解説します。
世界平和頂上連合(ISCP)は、ワールドサミット2019で韓鶴子総裁が創設を提唱し、このたびのサミットで正式に発足した、国家元首・政府首脳の集まりです。韓総裁は2018年から世界を巡回し、その国の最高指導者が参加する国際会議を何度も開催してきましたが、その集大成がISCPの創設です。サミットにはカンボジアのフン・セン首相とニジェールのラフィニ首相を筆頭に、多数の現職・元職の政府首脳が参加し、まさに世界の「頂上」が一堂に会する中でISCPの創設が宣言されました。この組織は今後、首脳級の指導者たちがその知恵と経験を集めて世界の諸問題を解決するためのプロジェクトを推進する母体となるでしょう。
世界平和議員連合(IAPP)と平和と開発のための宗教者協議会(IAPD)は、6つの構成要素の中でも先駆けて設立され、実績を積んできた組織です。人間に心と体があるように、平和を構築する運動にも政治家と宗教家の両方が参加しなければなりません。
国際平和言論人協会(IMAP)は世界各国の良心的な言論人が集まり、世界平和に貢献するためのネットワークです。文鮮明総裁は、メディアの自由と責任を擁護するために世界言論人協会を設立し、日本の世界日報、米国のワシントン・タイムズ、韓国のセゲイルボなどの言論機関を設立した実績があります。IMAPはそれらを基盤とするUPFの言論部門のプロジェクトとして立ち上げられました。
国際平和学術協会(IAAP)は、世界平和に貢献する学者たちの集まりです。文総裁はこれまで世界平和教授アカデミー、科学の統一に関する国際会議などの学術部門に力を入れてきましたが、IAAPは時勢に流されずに真理と普遍的価値を探求する学者たちによる平和運動を推進する母体となるでしょう。
国際平和経済開発協会(IAED)は、平和と開発のために貢献するビジネス・リーダーたちの集まりです。経済活動の目的は私利の追求にあるのではなく、真の愛による富の公平な分配と人類全体の福祉のためにあるという思想に基づき、経済人による平和のプロジェクトを推進していく組織です。
世界平和は特定分野の指導者のみによってなされるものではありません。ワールドサミット2020を通してUPFが示したビジョンは、「共生・共栄・共義」という価値観のもと、これら6つの分野の指導者が力を合わせ、人類共通の課題に取り組んでいくことにあります。
ちょうどこのサミットが終了すると同時に、全世界は新型コロナウイルスの恐怖に飲み込まれていきました。いまは感染拡大をどのように阻止するかという議論と共に、アフター・コロナの世界がどのようになるのかに関する議論も活発に行われています。もし中国の権威主義が勝利し、欧米の自由民主主義が敗者になるとすれば、それは最悪のシナリオです。中国の官製メディアは、欧米諸国で新型コロナウイルスの感染拡大が中国以上に深刻な状況となったことを、共産党独裁体制の正当化に最大限利用しています。
一方の民主主義陣営で危惧されるのは、ナショナリズムやポピュリズムの台頭です。欧州ではウイルスの感染拡大を防ぐため、パスポートなしで自由に行き来できるシェンゲン協定国の多くが国境を閉じて管理を強化しました。「欧州は一つ」という理念は遠のき、「自国第一主義」すなわち国民国家が復権しています。
感染症を防ぐために人と人との間に「社会的距離」を取ることが要請され、国同士を結ぶ交通手段が寸断されると同時に、相互に入国制限をせざるを得ません。人々は感染を恐れて互いに疑心暗鬼となり、各国政府は自国民の生命と健康を守ることしか考えられなくなります。ある意味で、これほど人と人、国と国との関係性を破壊し、互いに孤立させるものはありません。ウイルスは人々の肉体的健康だけでなく、精神的健康をも蝕んでいき、政治や社会のあり方まで極めて自己中心的なものに変えてしまう恐れがあります。
しかし、これほどのパンデミックの状況下では、自国内において感染を防止するだけでは意味をなさず、世界全体がウイルスとの闘いに勝たなければ、自国の安全もまた保障されません。互いに責任を転嫁して非難しあったり、医療資源を奪い合っている場合ではないのです。ウイルスの危機によって生じた恐怖や怒りを政治的なプロパガンダに利用するような行為は、人類全体にとって破壊的な結果をもたらします。
UPFインターナショナルは、今年4月8日に「光の環:コロナウイルスの危機を乗り越える」と題する声明文を発表しました。そもそもコロナウイルスの名称は、外観がコロナ(太陽の光冠)に似ていることに由来します。それにちなんで、暗闇の中にあって「光の環」となるべく、共に働こうという趣旨で出されたものです。
現在の危機を乗り超えていくためには、結束、協力、対話、思いやりの精神が必要です。われわれは人類一家族の一員です。この危機を特定の国家的、政治的、宗教的、民族的、文化的な分裂を助長するために利用すべきではありません。暗闇の中の「光の環」となるべく、UPFはサミット・シリーズで強調された「共生・共栄・共義」の理念によって、この人類的危機を乗り越えていこうとしています。