Moonism寄稿シリーズ05:2020年1-2月号


 私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップする「Moonism寄稿シリーズ」の第5回目です。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。今回は、2020年1-2月号に寄稿した文章です。

第5講:科学者の知恵を集めて地球環境問題に取り組むICUS

 科学技術の発展は人類に多大な恩恵をもたらすと同時に、環境問題に代表される深刻な脅威も生み出しました。今回は環境問題解決に取り組むために2017年に再開された「科学の統一に関する国際会議(ICUS)」のビジョンを紹介します。

<科学技術の発展がもたらした光と闇>
 近代以降の科学技術の発展は、人類に多大な恩恵をもたらしました。農業と工業の分野において生産性が飛躍的に向上し、生活のあらゆる面が豊かになりました。交通と通信の発達により、人間も物資も情報もかつてない速度で世界中を行き交うようになりました。しかし科学技術の発展が人類にもたらしたものは、肯定的なものばかりではありません。公害や環境破壊、核兵器や生物化学兵器に代表される大量破壊兵器の開発など、人類がかつて経験したことのない脅威も同時に生み出しました。

 今日のわれわれはインターネットを通じて遠方にいる相手と瞬時に通信することができるようになりましたが、同時にそれは不正取引、児童買春、ポルノグラフィーの温床にもなっています。テロリストたちもインターネットを活用して自分たちの主張を拡散させ、憎しみや暴力を増幅させています。科学技術の発展は偉大なことですが、その使い方によっては善にも悪にもなるのです。

 イギリスの歴史家アーノルド・トインビー(1889-1975)は著書『試練に立つ文明』の中で、「われわれの物質的な力が大きくなればなるほど、その力を、悪のためでなく善のために使用するために、われわれには優れた見識や徳性が必要になってくる。… われわれは、これまで物質的な力を取り扱うのに十分な道徳性を備えたことはなかったし、今日、その道徳的ギャップは、過去のいかなる時代にもまして大きくなっている。」と述べています。彼がこれを書いたのは1948年のことですが、これは現在の状況にも当てはまります。

 近代科学技術文明は、宇宙を精密な機械と見る機械論的世界観、唯物的な世界観に立脚しています。それは科学的実証や技術的実践に価値の中心が置かれた文明であり、極めて大きな力と普遍性を持っていたために世界を席巻しました。しかし、そのバックボーンとなっていたキリスト教精神の衰退にともなって物質主義の色彩が強くなり、個人主義は徐々に利己的個人主義へと変質しました。そのことが「文明病」と言われる、現代の社会病理の原因ともなっています。

<科学の統一に関する国際会議の創設>
 こうした課題を解決するため、文鮮明師御夫妻は1972年に「科学の統一に関する国際会議(ICUS)」を創設しました。ICUSは既存の科学が狭い専門領域に細分化されていく傾向を憂慮し、全体論的視野から科学を再統合するという壮大なビジョンを掲げました。創設者の包括的ビジョンに基づき、ICUSは自然科学、社会科学、人文科学などのさまざまな分野から科学者たちを集め、真理を探求し公的な善を追求する「絶対価値(Absolute Value)」に基づく「科学の統一」を主要なテーマに行われました。

 「科学の道徳的指向性」をテーマに1972年にニューヨークで開催された第1回のICUSは、8カ国から20名を集めた小さな会議でした。1973年に東京で行われた第2回ICUSは、「近代科学と精神的価値」をテーマとし、参加者の数は3倍に増えました。その後、ロンドン、ボストン、サンフランシスコ、ソウルなど世界の主要都市で毎年会議が行われ、参加者の数と質は回を追うごとに上昇していきました。1972年の第1回から2000年の第22回までの合計で2000名以上の科学者が参加し、その中にはノーベル賞受賞者が30名以上含まれていました。会議ごとの議事録が出版され、テーマごとにまとめられた書籍も16冊発行されました。ICUSは広範な分野を扱ったにもかかわらず、絶対価値によって導かれる科学の統一を目指すという点で一貫性を持っていました。

第24回ICUSでメッセージを語られる韓総裁

第24回ICUSでメッセージを語られる韓総裁

<ICUSの中断と韓鶴子総裁による再開>
 2000年になり、専門分野を超えた学際的な研究が世の中でも一般的になると、創設者は他の緊急課題に目を向けるようになり、以来17年間にわたってICUSは開催されませんでした。しかし、地球環境の破壊という脅威を深刻に受け止めた韓鶴子総裁は、環境問題をに対する科学的な解決法の開発を全世界に呼びかけるために、2017年にICUSを17年ぶりに復活させました。

 この「第2次ICUS」にはHIVウィルスの発見で2008年にノーベル医学賞受賞を受賞したルック・モンタニエ博士をはじめとする、著名な科学者たちが参加しました。2017年から2019年にかけて行われたICUSは、環境問題に焦点を当てることで一貫していました。2017年のテーマは「地球環境の危機と科学の役割」、2018年のテーマは「地球環境危機に対する科学的解決策」でした。2019年のテーマは「環境の保全と人間生活の質」で、都市環境、循環経済、農業と土壌の健全性、気候変動、食糧生産、真水の供給、海洋の健全性などのテーマが扱われました。

第24回ICUSでメッセージを語られる韓総裁

第24回ICUS(2018年)

<「神科学」を提唱した韓鶴子総裁>
 2019年のICUSでの創設者講演(五女の文善進氏が代読)で韓鶴子総裁は次のように訴え、神を中心とした科学である「神科学」を提唱しました。
「年を追うごとに、地球環境の悪化が拡大しています。気候変動、極端な気象状態、空気の質の悪化、海洋汚染はいまや日常会話の主題となっています。巨大な大災害が迫っているという懸念が広まっています。環境保全こそが、今日の人類が直面する最も差し迫った深刻な課題であると言っても過言ではありません。多くの対策と政策が提案され実施されてきましたが、効果を上げていません。根本的な解決がなければ、人類の未来を保証しえない段階に私たちは到達しようとしています。」
「人類は、科学と宗教の間の壁を克服すべき時に向かっています。加えて、科学は神を直接知ることが可能となるところにまで発達してきました。この視点から、私は伝統的な科学が新たに神を中心として理解し、その歴史を神を中心とする科学の歴史として新たに整理する機会があることを切に望んでいます。そうすることで、神が創造した万物の本然の位相と価値が正しく復帰されるでしょう。したがって、私はこの会議が『神科学会議』、すなわち神を中心とした科学の会議となることを提案いたします。」

カテゴリー: Moonism寄稿シリーズ パーマリンク