世界の諸問題と統一運動シリーズ24


平和大使運動のビジョンと基本理念

 このシリーズでは、日本と世界の重要な諸問題を事象やテーマごとに取り上げながら、その根本的な解決策を提示してきました。最終回となる今回は、平和大使運動がこれらの問題に取り組むうえで大切にしている基本理念とビジョンについて詳しく説明します。

<平和大使運動の基本理念>

 平和大使は、専門性と徳望をもって平和世界実現に貢献している各界の指導者の中から任命され、UPFのビジョンと基本理念に基づいて活動しています。国家元首クラスのリーダーから草の根レベルの活動家に至るまで、平和大使は以下のような基本理念に基づいて活動を行っています。

①人間は精神的・道徳的存在である
 人間は単に物質的・経済的存在ではありません。もちろん人間にはそのような側面もあり、その重要性は認めますが、人間はそれらを超えた精神的・道徳的次元を持っており、そちらの方が主体であり、大切であるという人間観を持っています。

②家庭は「愛と平和の学校」である
 社会を構成している基本単位は個人であるという考え方を「個人主義」と言いますが、平和大使の基本理念は個人主義ではなく、社会を構成する基本単位は家庭であると考えます。家庭こそが個人の人格を形成し、平和に至る道を学ぶ場なのです。

③他者の為に生きる生活が平和への道である
 平和を作り出す具体的な方法が奉仕です。利己的な生き方をしていては平和を作り出すことはできず、「他者の為に生きる」精神が平和への道であると考えています。

④人種・宗教・国境の壁を越えた協力が平和をもたらす
 平和大使運動は愛国的な運動でありますが、ナショナリズムや国粋主義とも異なります。日本一国だけが栄えればよいと考えるのではなく、世界の為に生きる日本を目指します。人種、宗教、国境などの人類を隔てているあらゆる壁を越えて、世界主義を標榜するのが平和大使運動です。

<平和大使運動のビジョン>

 日本の平和大使協議会の会長であり、筑波大学名誉教授の鈴木博雄先生は、「歴史的に見て、日本復興の原動力は家族の再生にかかっています。危機を克服するキーワードは、第一に神様であり、第二に神様の愛が実現している家族の愛です」と語っていますが、この言葉は平和大使運動のビジョンである“One Family under God”(神の下の人類一家族)の本質を端的に表現します。
「平和を作り出すためにどうして神を持ち出す必要があるのか?」と思う方もいるかもしれませんので、私たちが神について考えなければならない理由を、二つの例え話で説明したいと思います。神について考えるということは、「日常的な視点から鳥瞰的視点へと転換することだ」ということを理解する手助けになればと思います。

<迷路の例え>

 一つ目が「迷路の例え」です。私たちが人生において迷うときや、一つの社会や国家が閉塞時状態に陥っているときは、ちょうど迷路の中にいるような状態であると言えます。一口に「迷路」と言っても、二種類の迷路があります。それは紙に描かれた迷路と、実際に人間が入る迷路です。この二つの迷路の構造が同じであったとすると、迷路から出てくるのはどちらがより難しいでしょうか?

迷路

 幼いころに紙の迷路で遊んだ経験のある方は多いと思いますが、簡単な構造の迷路ならすぐに解けてしまいます。ところがそれと同じ迷路を等身大で作ってそこから出てこようと思えば、はるかに難しいことが分かります。それでは紙の迷路と実際の迷路のどこが違うのかと言えば、「視点」が違うのです。紙の迷路は全体像が見えている状態で解くので簡単なのですが、実際の迷路では自分がどこからきて(始点)、いまどこにいて(現在地)、どこに行けばよいのか(終着点)が見えないので解けないのです。ところが視点を変えて、鳥のように飛び上がって全体像を見ることができれば、簡単に解くことができます。そのような視点のことを「鳥瞰的視点」と言います。

<宇宙飛行士の体験>

 もう一つの例えが宇宙飛行士の体験です。立花隆が1983年に出した『宇宙からの帰還』という本は、米国の航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士たちの体験をインタビューしてっ書かれた本ですが、その中には宇宙での神秘的な体験の話が出てきます。一番共通している体験は、宇宙空間から見た地球の美しさに感動したというものです。そして、生命が存在する地球はまさに「宇宙の奇跡」であり、このようなものを作れる存在は神以外にあり得ないと実感して、引退後にキリスト教の伝道師になった人もいるくらいです。

宇宙からの帰還

 ウォーリー・シラーという宇宙飛行士は、宇宙空間からベトナム戦争の戦火を目撃し、「この地球以外、我々はどこにも住む所がないんだ。それなのに、この地球の上でお互いに戦争しあっている。これはほんとに悲しいことだ」という言葉を残しています。宇宙飛行士は鳥の目を超えて、神のような視点で地球を見つめた数少ない人々です。全人類が彼らのような視点を持つことができれば、地球はもっと平和な星になることでしょう。しかい、私たちの視野があまりに狭いために、互いに争ってしまうのです。

<One Family under God>

 平和大使運動は、単なる世俗的な平和運動ではありません。旧約聖書の箴言に「主を畏れることは知恵の初め。聖なる方を知ることは分別の初め」(9:10)とあるように、神を知ることを出発点とした平和運動なのです。

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