憲法改正について11


4.各政党の憲法改正に対する主張はどうなっているか?(続き)

 現在の国政政党がそれぞれ、憲法改正に対してどのような主張をしているかについての説明の続きです。

憲法改正について図⑱

 日本維新の会は、教育無償化など、4項目の憲法改正案を提示しています。①教育の無償化、②地域主権、③憲法裁判所の設置、④9条への自衛隊規定、を柱として憲法改正に賛成しています。

憲法改正について図⑲

 国民民主党は、9条は現実と乖離しているので解決策を提示すべきだと主張し、自衛権の明記を提案しています。4つの柱として、①人権保障のアップデート、②地方自治の発展・強化、③統治のあり方の再構築、④国家目標の設定、を挙げています。

憲法改正について図⑳

 立憲民主党は、憲法を改正しようとまでは言っておらず、憲法について積極的に議論するという意味での「論憲」を掲げています。したがって、具体的な憲法改正案はまとめていません。しかし憲法に関して主張している内容を見る限りでは、どちらかというとリベラルな方向に憲法を改正しようとしているように見えます。

憲法改正について図21

 日本共産党は、憲法のすべての条項を守ると宣言しており、完全な「護憲」の立場です。「自衛隊明記」と「緊急事態条項」は、日本の平和と民主主義にとって危険であると主張しています。ジェンダー平等社会など、憲法の精神を生かした新しい日本をつくることが重要なのであって、憲法改正は必要ないというのが共産党の立場です。

憲法改正について図22

 社会民主党は「護憲平和」「改憲阻止」が党の一丁目一番地であると言っているように、「護憲」の立場をとっています。

憲法改正について図23

 れいわ新選組は、「いま憲法を変える必要はない」と言っています。必要なのは、憲法が守られていない社会状況を変えることであり、自民党の憲法改正案には反対だと言っています。

憲法改正について図24

 国政に参加している政党の改憲に関する立場を一枚の図にして、賛成と反対という軸でマッピングするとこのようになります。改憲に賛成で、具体的な改憲案を持っているのは自民党、日本維新の会、国民民主党です。中間には改憲案はないけど議論しましょうというグループがあり、それが公明党、立憲民主党、NHK党です。改憲に反対しているのが共産党、社民党、れいわ新選組ということになります。これが改憲を巡るいまの政治地図です。そこで自民党は日本維新の会、国民民主党、さらには公明党の協力も取りつけて賛成の方向に持って行こうとしているのです。

憲法改正について図25

 さて、2022年5月23日に「新しい憲法を制定する推進大会」が開催されました。この大会には公明党、日本維新の会、国民民主党の代表が参加し、憲法審査会で議論に参加している各党の代表が挨拶をしました。国民民主党は玉木代表が挨拶をしました。このように昨年5月の時点では、複数の政党が協力して、憲法改正の機運が盛り上がっている雰囲気だったのです。

憲法改正について図26

 この大会で、当時存命であった安倍元首相が以下のように講演をされました。
「憲法審査会でも9条について議論がなされ、コロナ禍を経験し、緊急事態条項の必要性についても国民的な理解が高まってきました。改憲の発議をするために衆参両院で必要な3分の2を形成する状況は整いつつあります。しっかり国会で議論して国民の審判を受けるべきときがやってきました」

 憲法改正は安倍首相の悲願でした。ですからあの事件がなければ、そのまま憲法改正に向かって進んでいた可能性が高いのです。

憲法改正について図27

 そして2022年の夏の参院選で自民党が単独過半数を獲得します。この選挙の結果により、衆参両院で自民、公明、維新、国民を合わせた「改憲勢力」が3分の2を越えることになったのです。これにより、衆参両院で改憲発議に必要な3分の2ラインを突破することができたのです。このように数的基盤は整ったのですが、あの事件によってまったくそのような機運はなくなってしまい、「黄金の三年間」はどこかに吹っ飛んでしまったのです。その意味で、あの事件は憲法改正に対しても大きな影響を与えたと言えます。

結論(私見)

 最後にあくまで私見ということで、結論を述べたいと思います。
・日本の憲法は、日本国民の手により、自主的に制定すべき。
・憲法は時代に合わせてアップデートすべき。
・憲法は「国のかたち」を表す。前文は書き変えるべき。
・平和主義を維持しつつ自衛権を認め、自衛隊を明記すべき。
・緊急事態条項を設けるべき。
・家族の尊重・保護の規定を設けるべき。

憲法改正について図28

 最後に参考文献を紹介します。西修先生の『”ざんねんな”日本国憲法』はこのプレゼンの主要なソースとなっております。西修先生とはかなり立場が違いますが、小林節先生の『白熱講義!憲法改正』も、ある部分においては参考になりました。『池上彰の憲法入門』も読みましたが、これはあまり得るものはなかったというのが私の感想です。

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