Web説教メシヤと私01


 今回から、「メシヤと私」と題するWeb説教を投稿します。この内容は、2019年1月27日の平和大使礼拝で語ったものですが、時局に関係なく普遍的な内容を中心とした説教であり、私自身の信仰の表現としても記録に残しておきたい内容であるため、シリーズでアップさせていただきます。

 むかし、「善行銀行」というドラマがありました。「善行」というのは、善い行いという意味の善行です。1980年代に作られた「世にも不思議な物語的」なショートドラマで、別に教訓を垂れるために作られた作品ではありません。しかし、宗教的な感性を持った人が見ると、なにか人生の大切なことを教えているように感じてしまうようなドラマでした。

 主人公は「花田キイチ」という名前の男子高校生です。それほど成績もよくなく、どちらかといえば冴えなくて自信のないタイプです。ある日、学校で担任の先生から、「お婆さんが亡くなったのですぐに帰るように」と言われます。

 そのお婆さんの葬儀には、近所からたくさんの人が参列しました。お婆さんは困っている人を放っておけない性分で、小さな親切を重ねながら、町内では人徳者として尊敬されていました。葬儀の日に、キイチはお婆さんから生前ある通帳を渡されていたことを思い出します。
「キイチ、お婆ちゃんはもう長くない。私が死んだときには、お前にいいものを残してあげるよ」と言うので、キイチが「お金?」と聞くと、お婆さんは「お金なんかよりも、もっといいものだよ」と答えたのでした。

 お婆ちゃんの葬式の後、キイチがその通帳を見ると、「善行銀行」と書いてあります。
 その通帳を開くと、「喧嘩の仲裁をする」「人に道を教える」「泣いている子をなだめる」「落し物を届ける」といった項目が書いてあり、それぞれにポイントが付いていました。キイチは意味が分からず、「なんだこれ?」と不思議がります。

 そこでキイチは翌日、近くの善行銀行の支店を訪ねます。椅子に座って待っている間、キイチがお婆ちゃんの通帳を開いてみていると、背後から60代くらいの紳士がそれを覗き込んで、「こりゃ、すごい。お若いのにずいぶんたくさん貯めましたね。」と話しかけます。キイチが「あ、これ僕のじゃなくて、死んだお婆ちゃんのです」
と答えると、その紳士は「そうですか、さぞ優しい方だったんでしょうね。私も、先日から一日一善を始めたんですよ。」と言いました。

 するとキイチは女性の銀行員から、「いらっしゃいませ」と声をかけられます。この銀行員は、若き日の竹下恵子さんが演じていました。キイチは彼女に「あのー、これ」と言って通帳を見せます。すると、女性行員は、「花田イネ様。花田様には生前、大変お世話になりました。キイチ様でいらっしゃいますか? お客様のこともうかがっております。こちらへどうぞ」と言います。彼女の説明によれば、その通帳に記載された数字は、お婆さんが貯めてきた善行のポイントだというのです。「当銀行では、皆様が日頃なさった善行を、点数にして貯めるシステムになっております」「花田イネ様は、とてもたくさんの善行を貯めて来られました。ご遺言によって、その全ポイントを、あなたに相続していただきます」と言うわけです。

 「善行の相続?」と信じられない様子のキイチなのですが、女性行員は、「他人に施した善行は、必ず良い報いとなって帰って来るものです。つまり、あなたに。」と言います。「僕に? バカバカしい」とキイチは信じられません。するとその女性行員は、「信じられないなら、払い戻しいたしましょうか? イネ様の貯めて来られた善行を、全額払い戻しいたします」と言います。「善行の払い戻し?」と、まだまだ信じられないキイチですが、女性行員は、「これがお客様の通帳です。素晴らしい幸運を、どうぞ。」と言って通帳を渡します。

 銀行の外に出たキイチを、先ほどの年老いた紳士が追いかけてきて、「学生さん、払い戻しされるんですって? 素晴らしい見返りが期待できますね?」と言います。「見返り? 善行の払い戻しなんて、本当にできるんですか?」と、まだキイチは信じられません。紳士は「もちろんですとも」と答えます。

 するとその近くの道端で、カップルがやくざ風の男に絡まれていました。その紳士は、「これはポイントが高い。見てごらんなさい。誰も止めようとしないでしょう。ああいう風に、状況が悪いほどポイントが高いんですよ」と言って、そのやくざ風の男のところへ行き、「やめろ! 私を殴って気が済むんなら、どうぞ私を存分に殴ってください」と申しでます。紳士は男に蹴飛ばされ、靴で踏みつけられて痛めつけられながらも、キイチの方を見て「ポイント」とつぶやきながらニコニコしています。

 翌日、キイチが学校に行くと、ビッグニュースが舞い込んできます。実力では到底合格できないレベルの城南大学が、キイチを推薦入学で欲しいと申し出てきたというのです。実はキイチが密かに思いを寄せていたクラスメートのヒロミちゃんも城南大学を目指していて、合格すれば一緒の大学に行けることになります。突然、幸運が舞い込んできたわけです。

 キイチは「まさか」と思って、「善行銀行」の通帳を広げると、「推薦入学決定」の項目が書き加えられていて、ポイントがマイナスされていました。良いことは続き、あこがれのヒロミちゃんが学校帰りに声をかけてきて、「今度の日曜日に映画見に行かない?」と誘われて、そこから交際がスタートします。また通帳を確認すると、「恋愛成就」の項目が書きくわえられていて、さらにポイントがマイナスされています。その後も良いことは続き、恋愛は順調、テストで100点を取り、宝くじに当たりますが、その度にポイントがマイナスされていきました。

 しかしある日、キイチは担任の先生から呼び出されて、城南大学が突然、推薦入学を取り消したいと言ってきたと告げられます。ヒロミちゃんと一緒に帰ろうとしても断られてしまいます。

 突然ツキが無くなったキイチは、慌てて善行銀行の窓口に駆け込みます。そして、「この前、ここに来てからツキまくってたのが、急にどっか行っちゃったんだ。何とかしてくれ!」と懇願します。

 女性行員に通帳を見せると、「ハハハハハ・・・。残高ゼロになっていますね。これでめでたく、全額払い戻しました。」と言われます。

 キイチは「何とかしてくれ。このままじゃ破滅だ!」と言いますが、銀行員は「困りましたね~。あちらの方のように、毎日ちょっとずつでも貯めておいて頂ければ、こんなことにはならないのに。」と言って視線を送った先にいたのは、例の年配の紳士でした。キイチが「これから気を付けるから、頼む!」と懇願すると、銀行員は「それじゃ、ご融資しましょう。ローンを組みますか?」と聞いてきます。

 その名も、「人生サクセスローン。一日三善となっていますが、よろしいでしょうか?」と聞かれると、「一日三回いいことすればいいんだな。分かった。必ず約束する」とキイチは答えます。すると再び通帳にポイントが加算されました。(次回に続く)

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