世界の諸問題と統一運動シリーズ04


急激に進む少子高齢化と家庭崩壊の危機に対処する

 現在の日本には、国家を根底から崩壊させかねない深刻な危機が進行しています。それは家庭が崩壊し、人と人との絆が希薄になっていく「無縁社会」の出現であり、「家庭が大切である」という価値観そのものの衰退です。それは具体的には、家庭そのものが縮小していく少子高齢化と人口減少の問題として表面化しています。第3回の今回は、日本が直面している家庭の危機を明らかにし、その処方箋を提示していきます。

<2053年には1億人を割る日本の人口>

 現在わが国では、急激に少子高齢化が進むとともに、次世代を生み育てる社会の基礎単位である家庭の崩壊が広く蔓延しています。この問題は日本が直面している最も深刻で本質的な危機と言えるでしょう。

50年後日本の人口はこうなる

 2017年4月10日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した日本の将来推計人口によると、2015年に1億2709万人だった総人口は、2053年に1億人を割り、2065年には8808万人に減少すると予想されています。そして単に人口が減るだけでなく、65歳以上の高齢者が占める割合は、2015年の26.6%から38.4%に上昇するなど、「超高齢社会化」の到来を予想しています。

 政府の子育て支援策が功を奏したのか、一人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は前回推計の1.35(2012年)から1.45(2015年)に上昇しました。これにより人口が1億人を割る予想時期は前回推計よりも5年遅くなったものの、厳しい人口減少と少子高齢化に歯止めがかかっていない現状が、改めて浮き彫りとなりました。そもそも、人口維持に必要な合計特殊出生率は2.07と言われており、多少数字が上向いてもこれに遠く及ばない以上、人口は減り続けるしかないのです。わが国のこの数字は、世界最低水準となっています。

<2040年までに地方自治体の半数が消滅の危機>

「日本創生会議」(元総務相の増田寛也氏が座長を務め、産業界の労使や学識者、元官僚らが立ち上げた民間団体)の「人口問題検討分科会」は、2014年5月に人口減少がもたらす日本の将来像について衝撃的なシナリオを公表しました。それは、2040年までに全国自治体(約1800市区町村)のうちおよそ半数(896)が消滅の危機にあるというものでした。この報告書の内容は『地方消滅』(中公新書)という本の中でも紹介されましたが、地方都市が消滅する原因は、少子化による「自然減」に加えて、若者たちの大都市圏への流出による「社会減」が大きく影響しています。特に若い女性の流出が深刻で、名指しで「消滅可能性都市」とされた自治体では、20歳から39歳の女性が半分以下になると予想されています。この年代の女性が子供を産むわけですが、その絶対数が半分以下に減ってしまえば、どんなに出生率を上げる努力をしても追いつかず、人口が急激に減少して自治体の維持が困難になるとされているのです。

 2014年7月15日に佐賀県唐津市で開催された全国知事会議では「少子化非常事態宣言」が採択されました。会議の冒頭で、山田啓二会長(京都府知事)は、「今、日本は死に至る病にかかっている」と、強い危機感を表明しました。同宣言では、「このままいけば近い将来、地方はその多くが消滅しかねない。少子化対策を『国家的課題』と位置づけて、国と地方が総力を挙げて抜本的に取り組み、日本の未来の姿を変えゆかなければならない」と指摘されました。

<少子高齢化の原因は若者の非婚化・晩婚化>

 それでは少子化の原因はいったいどこにあるのでしょうか。少子化というと、昔は子だくさんだった日本の家庭が少ししか子供を産まなくなったというイメージがありますが、実際には既婚夫婦が産む最終的な子供の平均数は1972年の2.20から2010年の1.96とさほど大きく変化しておらず、日本の夫婦はいまでも平均して約2人の子供を産んでいることになります。少子化が急激に進んでいるのは「若者の結婚離れ」、すなわち若者の非婚化と晩婚化が主な原因です。結婚しなければ子供は生まれませんし、結婚しても晩婚化・晩産化が進んでいるため、もう一人子供を生もうという気力も衰えがちになります。

 50歳までに結婚したことがない人の割合を「生涯未婚率」と言いますが、この数字が2015年の国勢調査で男性の23.4%、女性の14.1%となっています。しかも「生涯未婚率」は急上昇しており、2035年には男性の10人に3人(29.0%)、女性の5人に1人(19.2%)が生涯未婚と推計されています。

<若者たちの意識改革こそ少子高齢化の処方箋>

 若者の「結婚離れ」が急速に進んできた原因は何でしょうか。一つには「生活資金が足りない」などの経済的理由や、若者の不安定な雇用も大きな原因として挙げられます。しかし、内閣府「結婚・家族形成に関する意識調査」(2015年)によれば、20代30代の未婚男女の3人に1人が「結婚しなくてよい」と答えていることに見られるように、より根本的な原因は「結婚願望の欠如」、いつまでも自由で気ままでいたいという「個人中心のライフスタイル」の浸透にあるのです。

 したがって、日本における少子化対策に最も必要とされる処方箋は、若者たちの結婚と家庭に対する意識改革であり、そのための価値観教育なのです。そもそも、なぜ結婚や家庭が大切なのか、子供を産み育てることの意義とは何か、といったことを日本社会では若者たちにきちんと教育してきませんでした。こうした価値観教育をきちんとした土台の上で、雇用対策、出会いの場提供、出産・子育て支援の充実などの環境整備を行ってこそ、効果的な少子化対策となるでしょう。UPFは「人づくり・家庭づくり・国づくり国民運動」を通して、こうした価値観を教育する活動を全国で展開しています。

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