ジェームズ・グレイス「統一運動における性と結婚」日本語訳58


第7章 分析と発見(1)

 これまでのところ、私は統一運動における性と結婚について、その神学における性の中心的役割、性倫理、男女の性的役割分担、マッチングの準備と参加、そして最後に祝福を受けたカップルの聖別期間と同居生活を中心として、記述的に説明してきた。筆者は定量的アプローチによって得られるような種類の客観性をまったく主張するものではないが、批判的な意見には脚注の地位を与え、分析的コメントをデータから分離することによって、運動内部の人々の視点から主題を理解するためにあらゆる努力がなされた。社会学的な視点から、統一運動の性と結婚に対するアプローチは、この終末論的共同体における献身の発達を強く促進することが論じられた。この最終章の主たる目的は、この基本的なテーゼを先行する社会学的調査の集成、とりわけ統一運動と類似するグループにおける献身の問題と関わりのある研究と理論に結び付けることにある。

 われわれは最初にデータの掘り下げた社会学的分析を提示するであろう。その際、まずは19世紀のユートピア的共同体における献身を構築し維持する機能を果たしていた識別可能な社会構造(「献身のメカニズム」)について調査した、ロザベス・モス・カンターの先駆的な研究を活用する。(注1)カンターのアプローチと同様に、この最初のレベルの分析は、その性と結婚に対する特異なアプローチを反映している統一運動の組織構造に焦点を当てるであろう。これらの制度上の枠組みは、カンターの結論の観点から、それらの献身を誘発する潜在力に関して評価されるであろう。

 第二のレベルの分析は本質的に現象学的であり、構造を見るのではなく、グループ内部における個人的な交流のプロセスを見るであろう。ピーター・バーガーとハンスフライド・ケルナーによる『結婚と現実の構築』(注2)に掲載されている非常に示唆的な論文から得られた洞察を用い、われわれはより大きなアメリカ社会と対比しながら、統一運動の性と結婚の習慣の「理念型分析」を行うであろう。

 組織構造と対人関係を結び付けるものとしての社会的役割は、第三のレベルの分析のための基礎を提供する。「世界の救済者」の役割は、統一運動の生活様式の事実上あらゆる側面に浸透し、それらを秩序立てているが、とりわけ性と結婚に対するアプローチにおいてそれは顕著である。われわれは兄弟姉妹や夫婦の役割が世界の救済者の志向性から派生したものであり、後者と同様に、神の啓示とカリスマ的リーダーシップによって正当化されているのを見るであろう。これらの役割は、言ってみれば、共同体の構造と規範の中に「組み込まれて」おり、メンバー同士の交流を形作るためのガイドラインを提供している。ブロムリーとシュウプと回心に関する役割理論を踏まえ、(注3)この第三のレベルは、統一運動の性と結婚に対するアプローチによって生じた献身は、還元主義的で心理学的な推論によってではなく、集約的で広範な宗教共同体におけるメンバーの役割という観点から最もよく説明できることを示すであろう。

 「宗教のいかなる社会学的研究においても、宗教組織を無視することは、あらゆる人間の行動に対する最も重要な一連の制約を考慮から除外することである。」(注4)イギリスの社会学者のこの判断は、統一運動のようなグループを正確に理解するために、社会構造が共同体の行動に影響を与える方法を考慮に入れることに対する関心が、多くの学者たちの間で高まっていることを示している。(注5)

 カンターの『献身と共同体』は、19世紀のアメリカにおいて成功したユートピア的共同体の設立にどのような社会的仕組みが必要であったかを解明する上で、本質的に構造上の志向性を取り上げている。ここでは「成功した」グループとは、16年以上継続したものであると定義されている。(注6)9つの成功した共同体を、成功しなかった21の団体と比較しながら、著者は「これら30のグループにおける成功度の違いは、彼らがどれほど強力な献身を生み出せたかにかかっている」(注7)と強く主張している。そしてさらに以下のように述べている。
「一つのユートピア的共同体が持ちこたえるための強さと結束を持つために対処しなければならない第一の問題は、その人間組織である。共同体がグループとして生き残るために必要とする仕事を、人々はどのように配置するのか、そして次にグループがいかに長い期間にわたってそのメンバーを満足させ、巻き込んでいくのか、ということである。」(注8)

 歴史記録の徹底的な分析に基づき、カンターはこれらの共同体の中のある特定の団体がなぜ成功を収めたのかに関する最高の社会学的説明は、メンバーの側における献身を確立し維持する機能を果たす構造的配置を実行することにあると論じている。ここでは「献身」は以下のように定義されている。
「ひとりの人が彼自身を完全にあるグループもしくはある関係性に投入し、それによって彼自身の内的存在を維持するためにはその社会秩序を支持するような行動が要求されるとき、その人はそのグループまたは関係性に献身している。献身的な人には忠誠心と関わりがある。彼は帰属意識を持っており、そのグループは彼自身の延長であり、また彼はグループの延長であるという感覚を持っている。献身によって、人とグループは分かち難く結びついている。」(注9)

 献身はあらゆる持続可能な共同体が持つ三つの基本的ニーズの観点から分析されている。すなわち、メンバーを抱えるニーズ、グループの結束を高めるニーズ、社会統制のニーズである。これらの三つのニーズに対応しているのが三つのタイプの献身である。「道具的」とは、人々がシステムの中に留まり、そこで働き、彼らの役割を継続しようとする意欲を意味する。「感情」とは、人々が「互いにくっつく」能力であり、「互いに引き付けあい、グループの存続に対する脅威に立ち向かうための総合力である」(注10)。そして「モラル」は、メンバーがシステムの命令に従い、その信条と価値観に忠実であろうとする意欲である。

(注1)彼女の二つの論文「献身と社会組織」『アメリカン・ソシオロジカル・レビュー』(第33巻、第4号、1968年8月)、pp. 499-517、および「千年王国運動の献身と内的組織」pp. 219-243、およびいまや彼女の古典的研究となった『献身と共同体』を参照のこと。
(注2)バーガーとケルナー『結婚と現実の構築』
(注3)ブロムリーとシュウプ『たった数年・・・』
(注4)ベックフォード『宗教組織の二つの対照的なタイプ』p. 83。
(注5)アンソン・デビッド・シュウプ・ジュニア「現代の宗教運動の構造的視点に向かって」『ソシオロジカル・フォーカス』(第6巻、夏、1973年)pp. 83-99。
(注6)カンター『献身と共同体』p. 64。
(注7)前掲書
(注8)前掲書
(注9)前掲書、p. 66。
(注10)前掲書、p. 67。

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