ジェームズ・グレイス「統一運動における性と結婚」日本語訳34


第5章 祝福:準備とマッチング(3)

 これらの必要条件は、一つの絶対的な「内的」基準と、やや融通の利く「外的」基準からなっている。内的必要条件は、完成への階梯においてアダムとエバが罪を犯した地点である「長成期完成級」まで個人が霊的に成長することである。したがって、人は個性完成(即ち、第一祝福)を成し遂げる必要はなく、むしろ、既に示したように、最低限の希望は個人が神に対する確固たる信仰を確立し、彼自身もしくは彼女自身が成熟して統合された人格を持ち、地上に神の国を築くことに対して全面的に献身しているという自覚を持つことなのである。この「全面的献身」は、もちろん、統一運動のライフスタイルや目標に対して忠実であることと同義である。

 内的必要条件の一部として明示されているわけではないが、メンバーは彼らが結婚に対する準備ができているかどうかを、しばしば人間関係において神を中心とする視点を取ることができるかどうかによって評価する。私自身のインタビュー・データの要約ともいえることを、アイリーン・バーカーが以下のように報告している。
「他者を理解しようとするときには、あなたは彼らの中に自分が良いとか悪いとか思うものを見るだけでなく、神の視点から見ようと努力するのだ。神は万人を愛しており、一人一人に価値を置いている。したがって、あなたは他者の中の何を神が価値視しているのかを発見しようと努めるのだ。」(注13)

 神を中心として他者を愛することが、個人の結婚に対する準備のカギを握るという考えは、私が行ったほとんどのインタビューの中に出現した。人は、彼または彼女がどんな人でも愛することができるか、あるいはほぼそれができるときに、内的に準備ができているのである。この高貴な理想は、マッチング・祝福のときに多くのメンバーが全く見知らぬ人を愛し結婚するよう求められるであろうという点において、運動にとって重要な道具的価値を有している。

 マッチングと祝福を受ける前に個性完成を実現している必要はないため、それはメンバーが結婚した後に本当の意味で完成することを前提とした「条件的」なものである。あるメンバーの言葉によれば、
「統一教会における結婚は『条件的』なものだ。原理講論によれば、人が完成するために通過しなければならない三段階の成長期間があり、アダムとエバは長成期完成級で堕落した。したがって、我々は長成期完成級で祝福を受け、そして結婚の祝福によって堕落を元返すが、それでもまだ完成期を成長して行かなければならない。これは結婚した人は完璧なのではなく、祝福は条件的であることを意味している。なぜなら、祝福後に個人が果たすべき責任分担が残されているからである。」(注14)

 条件性の概念は、それがメンバーに対して祝福を受けた後にも自身の霊的成長を奨励することと、それが統一運動への奉仕と不可分であるという点において、社会組織としての統一運動にとって重用である。

 内的必要条件に加えて三つの「外的」必要条件またはガイドラインがあるが、それはある年と次の年では異なっていることもあり得るし、すべての候補者に対して厳密かつ公平に適用されるわけではない。あるメンバーが言ったように、「三つの必要条件を満たしていない人々も祝福を受けたことがあったし、条件を満たしていても祝福を受けられなかった人もいた。それらは本質的に助言的なものに過ぎない。」(注15)この三つの必要条件は以下のものである:(1)3名の「霊の子女」を立てること、(2)運動における3年間の禁欲生活、および(3)最低限の実年齢。三番目はメンバーによって一番重要性が低いとみなされているが、ある人がマッチングを受けるか受けないかに対しては興味深いかかわりがある。年齢の必要条件は、一部には個人の成熟のレベルと彼もしくは彼女の実年齢との間には、通常いくらかの相関関係があるという仮定に基づいている。さらに、最近のマッチングにおいては、特定された年齢が通常は男性よりも女性の方が2、3年若いのである。例えば、1979年のマッチングでは男性は26歳になっていなければならなかったが、女性は24歳になっていればよかった。この違いは疑いなく、アメリカにおいては男性のメンバーの方が女性よりもはるかに数が多いという事実によって必要になったのであるが、ほとんどのメンバーは、それに加えて摂理的な神の与えた理由がその違いにはあるのだとすぐに言及した。(注16)

 霊の子女を立てるという必要条件は、個々のメンバーが3名の改宗者を運動にもたらし、彼らが霊的に成長できるように育てることを意味する。このことが組織の成長にとって重用なのは明らかである。この必要条件はまた、親族関係のネットワークにおける義務を明確に規定することによって、グループの団結を促進する。すなわち、先輩の兄弟姉妹は特定の後輩の兄弟姉妹と特別な関係を持ち、彼らに対して責任を持つのである。そして最後に、霊の子を育てることは先輩のメンバー自身の霊的成長を促し、とりわけ生物学的な親になるための準備としての意味があるとみなされている。「初めに私は霊の子を育てることを学ぶことによってより成熟し、その後で自分の実の子供を育てるのだ。」(注17)ときにはこの必要条件を満たしていないメンバーが、彼らは近い将来それを満たすだろうという理解のもとにマッチングを許されることがあり、それは祝福が条件的であることの具体的な例となっている。

 グループの中で最低三年間の禁欲生活をすることが第三の条件である。このことが統一運動とってどのような社会学的意義を持つかについては既に論じた。ここでは、3名の霊の子女の条件と同様に、これがすべてのマッチングに厳密に適用されるわけではないことを明記するだけで十分である。1978年の秋にイギリスでマッチングが行われた。その時に明言された必要条件は4年間の独身生活であったが、4年以下の兄弟たちもマッチングに「呼ばれた」のに対して、同じ期間の姉妹たちは呼ばれなかった。この例においては、資格のある姉妹たちの相対者となるべき十分な数の兄弟たちがいなかったのである。

(注13)バーカー「統一原理を生きる」p. 89。
(注14)ブライアント「祝福に関する神学者の会議、1978年4月11日」p. 28。
(注15)インタビュー:アンダーソン氏。
(注16)若いメンバーたちは特に、文師によってなされた決定には実際的な理由と共に宗教的な理由があるという確信を抱いていた。年齢制限の実際的な性格は、とくに1979年5月と1980年12月のマッチング・セレモニーの期間中に明らかであった。そのとき、女性の最低年齢がマッチング・セレモニーの最中に引き下げられたのである。これによって、より多くのカップルのマッチングが可能になった。私が推察するには、文師は統一運動の千年紀のタイムテーブルにおいては非常に重要な年である1981年の壮大な合同結婚式を準備するために、できるだけ多くのマッチングされたカップルを作りたかったのであろう。
(注17)インタビュー:ショー夫妻

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