実況:キリスト教講座09


キリスト教について学ぶ意義(9)

 それでは、キリスト教の基礎知識ということで、極めて基本的な、これだけはぜひ知っておいてくださいというようなことを話します。これはまあ、キリスト教の常識ということで抑えておいていただきたいと思います。

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 たとえばキリスト教の人口はどのぐらいで、教派にはどんなものがあって、何を信じているのか。そしてどんな神学論争があるのか。どんな信仰生活と宗教儀礼があるのか、カトリックとプロテスタントの違いとは何なのか。終末論は、「世の終わり」とか「ハルマゲドン」と言われることがあるが、それはいったい何なのか。そしてエキュメニズム運動とは何なのか。この辺が基本的な知識として、キリスト教に関する一般的な常識として知っておくべき内容です。

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 まず、キリスト教について最初に知らなければならないのは、いま世界の人口の約3分の1を占める、世界最大の宗教であるという事実です。2007年のブリタニカ国際年鑑のデータによれば、世界のキリスト教徒の人口を合計すると21億7318万3400人ということで、圧倒的にナンバーワンの宗教だということです。

 大陸・地域別にキリスト教徒のパーセンテージを見ますと、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、オセアニアは、ほぼキリスト教社会と言ってくらい、マジョリティをキリスト教徒が占めています。アフリカにもクリスチャンはたくさんいますが、アフリカ全体で46.7%なのは、アフリカの北部はほとんどイスラム教圏だからですね。中東地域はほとんどイスラム教であります。アジアにおいて、最もキリスト教は広まっていないことになります。9.0%しかありません。そういう地域性を持った宗教だということになります。

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 次に、世界人口に占める各宗教の人口の割合を比較して見てみましょう。キリスト教が21.7億であるのに対して、イスラム教は13.2億です。次に多いのは実はヒンドゥー教なんですね。それに続くのが、儒教、道教、中国の民間宗教、そして仏教となります。むかし、「世界がもし100人の村だったら」という本がありましたが、もし世界の人口が100人だったら、33人がキリスト教徒で、20人がイスラム教徒、13人がヒンドゥー教徒、6人が仏教徒という割合になります。ですから、キリスト教は世界の人口の約3分の1を占める大宗教であり、その次がイスラム教ということになります。

 しかし、人口的にはイスラム教圏では人口爆発が起こっておりまして、人口はどんどん増えています。キリスト教圏は先進国が多いので、少子高齢化しておりまして、そんなに人口は伸びないだろうということからすると、近い将来、キリスト教徒とイスラム教徒の数が同じぐらいになる日も来るんではないかと思われますが、目下のところはキリスト教は世界最大の宗教です。

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 キリスト教の教派はどのように分かれているのかというと、「原始キリスト教会」というのは一つの宗教だったわけですが、やがてそれが「東方正教会」の伝統と、「ローマ・カトリック」の伝統に、大きく二つに分かれていきます。5大教区というものがあったときに、コンスタンティノープル、エルサレム、アンティオケア、アレクサンドリアは後の東方教会に、ローマは後の西方教会になります。なぜこのように分裂したのかというと、まずは文化圏が違ったということと、ローマ帝国が西ローマと東ローマの二つに分裂したという政治的な理由、さらには神学的な違いも含めて、複合的な理由で分かれたということができます。

 この東方正教会というのは、基本的にはギリシャ語を中心とする世界なんですね。ですからもともと「ギリシャ正教」という形で存在していましたし、ローマを中心とする西方教会はラテン語を中心とする世界でした。もともとギリシャ語文化圏とラテン語文化圏ということで違ったのですが、ローマ帝国が東西に分裂することによって政治的にも分かれ、その中にある教会も分かれていったということです。

 この東方正教会というのは、キリスト教の中でも最も古い流れの一つでありまして、いまのロシア正教会、ブルガリア正教会、ルーマニア正教会などを生み出しました。こうした「正教会」というのは、英語では Orthodox Church と言いまして、一つのグループを形成しています。

 もう一つの流れが、イタリアのローマを中心とする教会体制が出来まして、これがローマ・カトリックとしていまに至るまで存在しているわけです。ところが、このローマ・カトリックの中から、16世紀の宗教改革でもって、プロテスタントというものが分かれて出るわけです。このプロテスタントを起こしたのはルターであるわけですから、このルター派というものがいまに至るまで続いております。これを「ルーテル教会」と言います。

 それからカルヴァンが登場しますが、彼の流れをくむものは「カルヴァン派」と呼ばれています。この「英国教会」とは何かというと、実はイギリスの王室がローマ・カトリックと喧嘩して分かれたことによってできた、ということになります。イギリスの王室が自国の宗教をカトリックにするかプロテスタントにするかということで、ヘンリー8世とか、「ブラディ・メアリー」とかが現れてさまざまな抗争があったわけでありますが、いまの英国国教会は、「聖公会」とも呼ばれ、これは基本的にはローマ・カトリックとプロテスタントを折衷したような形の宗教です。

 ところがそれに満足できずに、カルヴァン派の影響を受けて英国国教会を改革しようとした人たちがいて、それがピューリタン(清教徒)と呼ばれる人たちです。それからさらにオランダを中心として「再洗礼派」といって、ルター派やカルヴァン派とも違う流れが出てくるわけです。いわば、プロテスタントというものが出現してから、分裂に分裂を繰り返していった、ということになります。その中でこの図に出てくるようなさまざまな教派が出てきたということです。

 ローマ・カトリックはいまでも一つですね。ですから、キリスト教会を大きく三つに分けるとすると、東方正教会の流れ、ローマ・カトリックの流れ、そしてプロテスタントの流れになります。そしてプロテスタントの中に、それこそ数えきれないほどの多くの教派がある。これが大枠になります。

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 それでは世界的に見て人口比はどうなっているかといいますと、カトリックが最大でありまして11億3600万ということで、全キリスト教人口の52%を占めています。プロテスタント系が4億6700万、オーソドックス系が2億1900万、その他が3億5400万ということになります。世界的に見ると、カトリックの人口が非常に多いことが分かります。南米には人口のほとんどがカトリックという国もあります。

 その他に、「キリスト教系新宗教」と呼ばれているものがあります。これは正統的なキリスト教の仲間とは認められていない、「異端」と呼ばれているキリスト教のことです。その中でも代表的なものが「エホバの証人」です。この「エホバの証人」というのは通称でありまして、「ものみの塔聖書冊子協会」というのが正式名称です。これは1881年にチャールズ・テイズ・ラッセルという人が創設した宗教で、公称信者数は世界に640万人、日本にも日本21万人いると言われています。ですから、皆さんも伝道しているエホバの証人の人に出会ったことがあるんじゃないでしょうか。たいへん、宣教に熱心な教団であります。特徴としては、聖書無謬説と言いまして、聖書には一切の間違いがない、完全無欠の真理であると信じています。そして、千年王国がやってくるということで、いわゆる天変地異が起こって、エホバの統治する世の中が来るので、この世の栄光栄華は全部滅びていくということを信じております。また、輸血を拒否するとか、いろんなことで話題になる宗教ですね。

 それから、モルモン教も既成のキリスト教会からは正統として認められておりません。正式名称は「末日聖徒イエス・キリスト教会」といって、1830年にジョセフ・スミスという人が創設したものです。世界に公称1250万人の信者がいる、というのが本当だとしたらすごい宗教ですね。聖書のほかに、ジョセフ・スミスに与えられた新しい神の啓示である『モルモン経』を聖典に位置付けています。酒、タバコ、コーヒーを禁止しています。モルモン教は過去において、一夫多妻制を実践していたということで大きな論争をアメリカで巻き起こしました。

 それから、クリスチャン・サイエンスなどもキリスト教系新宗教と言われています。一般的には、統一教会もこの「キリスト教系新宗教」の仲間に入れるのが、客観的な理解ということになるだろうと思います。

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