新シリーズ「霊感商法とは何だったのか?」のお知らせ


2015年6月6日をもって、毎週土曜日にアップしてきた「日本人の死生観と統一原理」シリーズ(5回)と「宗教と万物献祭」シリーズ(7回)が終了した。そもそも、この2つをテーマとして扱う動機となったのは、統一教会に対する代表的な批判の一つである「霊感商法」について、どのように説明するかという問いかけであった。

「霊感商法」という現象を理解するための問いかけとして、①宗教なのか商売なのか? ②宗教団体が、神、霊界、サタン、罪、地獄、蕩減、因縁などの教えを説くのは違法か? ③宗教団体が信者から献金を募るのは違法か? ④宗教団体の信者が罪や霊界について語って献金を勧める行為は違法か? ——といったポイントをあげ、これらを総合すると、「霊感商法」の問題は要するに「あの世や死後の世界」の問題と「献金やお布施」の問題に集約されることが分かった。そこで、これまで2つのシリーズに分けてこの問題を詳細に扱い、以下のような結論導き出した。

「日本人の死生観と統一原理」のシリーズでは、日本人の死生観に影響を与えた思想としての古代インドの思想と古代中国の思想、日本固有の死生観、そしてキリスト教の死生観について概観し、それぞれ主張する内容に違いはあるものの、人間の生命は肉体の寿命が尽きるとともに完全になくなって無に帰してしまうのではなく、何らかの形で死後も生命が継続すると考えている点では同じであることを明らかにした。したがって、霊魂や死後の世界の存在を信じることは、日本の宗教伝統に反するものではなく、むしろ伝統的な日本人の死生観に含まれていると言える。統一原理の死生観はこうした伝統的な日本の死生観と連続性があるだけでなく、それらの抱える矛盾や限界を克服した、現代人に対しても説得力のある理論体系であったために、多くの人々が感動して統一教会の信者になったのであり、決して「洗脳」や「マインド・コントロール」の結果として霊界を信じるようになったのではない。

「宗教と万物献祭」シリーズでは、宗教における供え物、献金、布施、喜捨などを一括して「万物献祭」と呼び、こうした行為が伝統宗教と新宗教を含む宗教一般において広く行われており、信仰者の義務あるいは美徳として高く評価されてきたことを明らかにした。万物を献祭することによって救済を得るという考え方は一つの「宗教的真理」であり、その原理原則は普遍であり不変であると言える。宗教的動機でお金を捧げること自体は伝統的に行われてきたことであり、決して「洗脳」や「マインド・コントロール」の結果としてお金を騙し取られたということではない。一方で、どのような方法で献金を集め、どのように教団を運営するかは外的・形状的問題であり、教団ごとに多様性があると同時に、同じ教団でも時代によって変化する。これは人間の責任分担に属する問題であり、この部分で失敗して反省し、やり方を修正したり、新しいやり方を開発したりすることは十分あり得ることであり、固定されたやり方があるわけではない。

こうした前提に立ち、これから始まる新シリーズ「霊感商法とは何だったのか?」においては、「霊感商法」という現象そのものに切り込み、その本質を明らかにし、そこから得られる教訓を探っていくことを目的としている。「霊感商法」は1980年代を中心に起こった現象であるが、社会問題化した後に、その流れを引き継いだのが「霊石愛好会」と「天地正教」であった。そこでこのシリーズでは、分析を「霊感商法」だけで終えるのではなく、「霊石愛好会」と「天地正教」も視野に入れて論じることにする。

このシリーズの内容は、もともと1999年に出版された拙著『統一教会の検証』(光言社)の一部となるべく書かれたものである。しかし当時の状況においては、この内容を書籍として発表することは困難だったため、最終的には同書の中には含まれなかった。このブログで述べていることは一貫して、統一教会の公式見解ではなく、私の個人的見解である。したがって今でも教会関係の出版社からこの内容を書籍として出すことは困難であろう。しかし、『統一教会の検証』が書かれた時代とは違って、現在は私見をブログで述べることはかなり一般的になって来た。そこで、1999年に書いた論文の内容に一部加筆し、アップデートしたものをこれから公開していこうと思う。

私が「霊感商法」という現象を分析するに当たってキーワードとしているのが、キリスト教の「土着化」と「シンクレティズム」である。私の主張したいテーゼを端的に表現すれば、「霊感商法とはシンクレティズムであった」というものだが、この主張を理解するには、そもそも「土着化」とは何であり、「シンクレティズム」とは何であるかを理解しなければならない。そこでこのシリーズは、日本におけるキリスト教の土着化と、シンクレティズムとは何かという問題からスタートし、その上で「霊感商法」の分析に入っていくことにする。関心のある方は、しばらくの間、お付き合い願いたい。

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