アイリーン・バーカー『ムーニーの成り立ち』日本語訳69


第9章 感受性(1)

第8章で、私は、ムーニーになる者たちが同年代の人々よりも実質的に無能であるとか哀れであるということを示す証拠はあまりないが、このことは、彼らの中に統一教会の選択肢を受け入れやすくするような性格や体験を見いだすことが出来ないということを意味するのではないと論じた。この章で、私は典型的なムーニーのプロフィールを、主に社会的経歴の面から描こうと思う。そうした感受性を形成する上で、その経歴が寄与する限りにおいてであるが。表4(138ページ)に描いたモデルに戻れば、私はここで最後の二つの状況、すなわち「無意識の適応」と「意識的な決定」のどちらかに寄与すると思われる性格の証拠について検討している。

一見すると、私がこれから述べようとする性格の一部は、「受動的」被暗示性(あるいは説得のテクニックに対する感受性)、特に愛の爆撃に対するそれらに分類された方がよいように思えるかもしれない。私がそのような性格の描写を前章ではなくこの章に含める理由は、ムーニーに「ならない」人にとっては、それらの性格が深刻な障害または無能性であるとは通常は考えられない傾向にあるからであり、またそれらの性格は、誰かが統一教会の選択肢を(受動的に受け入れるのではなくて)選ぶことに対する極めて合理的な説明を提供し得るからである。言い換えれば、これらの性格は新入会員が統一教会の選択肢を試してみようと決断する上で活用あるいは利用することのできる、以前から存在していた傾向や経験なのである。ただし本人はそのような性格の影響を意識のレベルでは気付いていないかもしれないが。

ムーニーと非ムーニー
さて、読者はすでに私が幾度か強調してきたことをここで心に留めておいてもらいたい。すなわち、統一教会の内部には実に多様な人々、信仰、実践を見出すことができるということだ。全く同じ経験をした人は二人といないだろうし、誰かがムーニーになるために必要あるいは十分な一連の性格というものは存在しない。むしろ、ある経験、姿勢、願望が束を作っており、それらがより多く(少なくではなく)存在するときに、その人は運動に加入しやすくなるのである。そして同様に重要なことだが、統一教会の選択肢に引きつけられるのを「妨げる」ような性格の束も一方で存在するのである。私がこれからやろうとしているのは、これら二束の性格を大まかに区別することである。より統計的な説明を望む人々のために、私はムーニーと非ムーニーとの間に見られる性格の違いの詳細について別稿を出版している(注1)。

年齢、性別、および階級(注2)
新宗教運動の会員の特徴について最もよく知られていることの一つは、その大部分が中産階級の若者たちによって構成される傾向があるということである。統一教会もまた例外ではない。会員は確かに若い。ただし時折考えられているほど若くはない。18歳以下で会員になる者はほとんどいない(注3)。もちろん、両親が入教しているのならば話は別である。入教する年齢の平均は、ほぼ一定して23歳に保たれている(注4)。1976年の時点で英国の会員の80%近くが19歳から30歳の間だった。1978年には、英国と米国のフルタイムのムーニーの平均年齢は26歳だった(注5)。1982年の初めまでには、英国の会員の平均年齢は28歳だった。当然、平均年齢はそれ以来上昇しているが、12ヶ月で1歳近く上昇するわけではない。それは離脱率が高いからであり(注6)、新しい会員は20代初めであり続けるからである。もちろん、二世のムーニーを加えるなら、平均年齢はかなり低下するだろう。だが、この本でわれわれが関心を持っているのは、(ムーニーの家庭に生まれたのではなく)勧誘されて運動に入った人々なので、彼らは私の計算から除外されている。

(注1)例えば以下を参照せよ。アイリーン・バーカー「誰がムーニーになるのか? 英国において統一教会に入会する人々の比較研究」、B・R・ウイルソン(編)『新宗教運動の社会的影響』ニューヨーク、ローズ・オブ・シャロン・プレス、1981年に収録;アイーリン・バーカー「逃げた者たち:統一教会の修練会に参加してもムーニーにならない人々」R・スターク(編)『宗教運動;創世記、出エジプト記、民数記』ニューヨーク、ローズ・オブ・シャロン・プレス、近刊予定、およびアイーリン・バーカー(編)「神々と人間について:西洋における新宗教運動」、ジョージア州アトランタ、マーサー大学出版、1984年。
(注2)年齢、性別、階級の変数のみに注目することによって、英国のムーニーの統計的な密度を40倍に増やすことができる。1980年の状況を見ると、英国の全人口の約10万人に1人(または0.001%)がムーニーであっただろう。しかし、中流および上流の中産階級の21歳から26歳までの男性では、約2500人に1人(または0.04%)がムーニーであっただろう。これは、ムーニーのうち半数が21歳から26歳であるのに対して、全人口においてはこの年齢層は約7%に過ぎないからであり、またムーニーの半数が中流および上流の中産階級の出身者であるのに対して、全人口においてはこの階級の出身者は約13%に過ぎないからである。さらにムーニーの3分の2が男性であるのに対して、(その年齢層の)全人口においてはほぼ半数が男性であるからだ。こうした統計は統一教会員についての一般的な視点を提示してくれるものの、われわれが知るべきことはまだまだ多い。ムーニーの80%は、「男性であり、かつ21~26歳であり、かつ中流または上流の中産階級」ではないのである。そしてもちろん、その範疇に属する人のうち2500人中2499人はムーニーではないのである。
その当時(1980年)、「英国ファミリー」のメンバーは588人いたが、この数を大きく上回ったことはいまだにない。奇妙なことに、アメリカの人口の中で統一教会のフルタイム・メンバーが占める割合は、ほとんど同じ値(すなわち約0.001%)である。
(注3)英国の会員の1%以下。
(注4)これは英国においては疑いない事実であるが、アメリカにおいても見られるパターンであると思われる。それは、スティルソン・ジュダがオークランド・ファミリーの会員50人から収集したデータを私が分析した結果から、また1976年6月にある統一教会員が1000人以上のフルタイム・メンバーをサンプルに行った調査から判断できる。ノーラ・スパージン「統一教会会員の横顔」私的に配布された論文、ニューヨーク、世界基督教統一神霊協会、1977年。
(注5)アメリカのデータについては、スパージン「統一教会会員の横顔」p.1を参照せよ。
(注6)英国の会員の過半数は入教後2年以内に離脱し、その後も数名が離脱する。なかには8年、9年、10年間運動にいた後に離れる者もいる。「マッチング」(このときに彼らの結婚相手が文によって推薦される)の後にも相当数が離脱した。他の国での離脱率については確かなことは言えないが、手元にある証拠はすべて、英国と同様であることを示唆している。

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