憲法改正について01


 今回から新しいシリーズで「憲法改正について」をアップします。これはこの問題に関する私の私見を披露するものであって、私が役職を有する組織の公式見解ではないことをお断りしておきます。
初めに憲法改正に必要な手続きについて説明します。

昨年から動き始めた憲法審査会

憲法改正について図①

 憲法改正はどうやったらできるのでしょうか? 憲法を改正するには、具体的にどの条文をどのように改正するのかという改正案が必要です。これをどこで審議してまとめるかというと、「憲法審査会」というところになります。これは衆議院と参議院の両方に設置されていますが、そこで改正案をまとめなければなりません。その上で、その改正案が衆議院と参議院のそれぞれの本会議に提出され、3分の2以上の賛成で可決されます。順番としては、衆議院から始めても参議院から始めても良いのですが、両方で3分の2以上の賛成が必要となります。その後に国民投票にかけられて、過半数の賛成で承認されて初めて憲法が改正されるということになります。これはかなり高いハードルであると言えるでしょう。

 ですから、憲法が改正されるためにはまず憲法審査会が機能していなければならないのですが、実はこの憲法審査会は昨年からようやく機能し始めたのです。憲法審査会は2011年10月20日に活動を開始したのですが、それから10年以上にわたってほとんど機能していませんでした。理由は、立憲民主党や共産党が憲法改正に強固に反対し、そもそも議論に入れなかったためです。言ってみれば、憲法審査会が政争の具となっていたのです。

 しかし、昨年2月の第1回憲法審査会以来、緊急時における「リモート国会」の是非について議論を重ね、意見をまとめることができた等、実績が出てきました。昨年は衆参両院の憲法審査会がほぼ毎週開かれ、憲法改正に絡む討議が例年にないほど行われていたのです。開催を主導していたのは自民党で、日本維新の会や国民民主党の賛同も得て議論の実績を積み上げていました。その意味では憲法改正の機運がかなり盛り上がっていたのです。

 そうした中で、夏の参院選で自民党が勝てば、その後には大型国政選挙のない「黄金の3年」を迎えるはずでした。その間に憲法改正をやろうというのが岸田政権のもともとのプランだったのです。しかし、安倍元首相暗殺事件とそれに続く政局の混乱、岸田政権の支持率低下により、憲法改正は暗礁に乗り上げてしまいました。「黄金の3年間」はどこかに吹っ飛んでしまい、いまは憲法改正に向かう動きはほとんど進んでいません。これが現住所になります。

そもそもなぜ憲法改正が必要なのか?

 では、そもそもなぜ憲法改正は必要なのでしょうか? さまざまな議論があるでしょうが、私は以下の7つの観点から論じてみたいと思います。

憲法改正について図②

1.憲法は施行以来76年間一度も改正されていない

 日本国憲法は、1947年5月3日に施行されてから、76年間、一度も改正されていません。成文化された憲法の中では、日本国憲法は14番目に古いものです。世界の憲法が頻繁に改正される中で、いままで一度も改正されていないということは、「化石憲法」と言ってよい状態になっています。

 1947年当時の日本と現代の日本では、状況が大きく変わっています。憲法も「時代の子」であり、時代に合わせて改正していくことは当然です。憲法を「不磨の大典」視することは意味がありません。

 そして憲法では「戦力を保持しない」と言っているのに、実際には自衛隊が存在するなど、憲法と現実の間に大きな矛盾が生じてしまっています。こうした齟齬を解消しなければなりません。

 さらに近年、諸国の憲法に明記されている「環境の権利・保護」「プライバシーの権利」「知る権利」などの比較的新しい概念が、日本国憲法には明記されていません。これは日本国憲法が古いからですが、こうしたアップデートも必要なのではないかということです。

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