世界の諸問題と統一運動シリーズ03


日米韓を基軸とするアジア太平洋地域の平和構築

 UPFは現在われわれが直面している問題の一つとして、アジアと日本の安全保障の危機を挙げ、その具体的な解決策として、「日米韓を基軸としてアジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献する」というゴールを掲げています。第3回の今回は、アジア太平洋地域の安全保障が直面している危機を明らかにし、それを克服するための運動の方向性と成果について解説します。

<米国の衰退と中国の台頭による日本の安全保障の危機>

 現在、東アジア地域に大きな「パワーシフト」が起ころうとしていますが、その主要な原因は米国の衰退と中国の台頭です。戦後、日本の安全保障は「日米安全保障条約」に基づき、アメリカの圧倒的な軍事力によって守ってもらうという大前提のもとに成り立ってきました。しかし、2008年のリーマンショック以後のアメリカは深刻な財政赤字に直面し、国防費を大きく削減するようになりました。またアフガン戦争やイラク戦争の影響で米国民の間に厭戦気分が広がり、国民世論は内向きになりました。こうした状況下で、「遠く離れた極東の島国を守るために、どうしてアメリカ人の税金が使われなければならないのか?」と多くのアメリカ人が考えたとしても不思議ではありません。
「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と最初に発言したのはオバマ前大統領でしたが、現在のトランプ大統領も選挙キャンペーン中には同じく「アメリカは世界の警察官ではない」と発言し、「私たちの計画はアメリカ第一だ。グローバリズムではなく、アメリカニズムを信条とする」と宣言しました。このようにアメリカが孤立主義への道を歩むようになれば、いざというとき本当に日本を守ってくれるのかという疑念が生じます。

 一方で中国は、毎年二桁という飛躍的な伸び率で国防費を増大させつつ、あからさまな対外膨張政策を顕在化させています。日本においては東シナ海の尖閣諸島を中国が虎視眈々と狙っていることが国民の注目を集めていますが、現在中国が最も力を入れてプレゼンスを拡大しているのは南シナ海です。2015年の初頭から、中国海軍が南シナ海の岩礁を埋め立てて人工島を造成し、3000メートル級の滑走路を含む軍事的施設を建造していることが世界の注目を集めることとなりました。南シナ海の制海権を中国が完全に支配するようになれば、そこから潜水艦によって米国本土を攻撃する能力を持つこととなり、アメリカの安全保障にとって重大な脅威となります。

<「100年マラソン」の衝撃>

 2015年2月、それまで米国の代表的親中派として知られていたマイケル・ピルズベリー氏(ハドソン研究所・中国戦略センター所長、国防総省顧問)が『100年マラソン』という本を出版しました。彼はニクソン政権時代からオバマ政権時代に至るまで中国の軍事動向分析に携わった「権威」ですが、彼によれば1960年代後半頃から米国は「中国は世界的な権力を持つことを望んでおらず、やがては民主主義の静かな大国になる」と考えて、中国を支援してきました。ピルズベリー氏自身も、米国が中国と関わり続ければ、中国は欧米型の国になるだろうと信じていました。しかしその彼が『100年マラソン』では認識を一変させ、「米国は中国に騙されていた」と述べたのです。中国は、建国100年の2049年までに、米国に取って代わる世界覇権国家を目指していることがようやく分かったというのです。『100年マラソンン』の衝撃は全米に静かに広がり、トランプ政権の中国観も基本的にはこの路線に立っています。

<日米韓の連携によるアジア太平洋地域の平和構築>

 アジア太平洋地域に平和を構築するうえで最大の障害が、共産主義を信奉する中国の世界制覇戦略です。また北朝鮮の金正恩政権による核兵器とミサイルの開発も、この地域の緊張を高めています。こうした脅威からアジア太平洋地域を守るためには、新たな安全保障体制の整備が不可欠です。それは、戦争をするためではなく、戦争を抑止するための体制整備であり、日本と米国と韓国が結束することが必須要件です。日米韓が結束していれば、中国や北朝鮮につけ入る隙を与えませんが、結束が乱れるときには、彼らは「チャンスあり」とみて軍事的冒険主義に走る危険が生じます。したがって、日米韓がガッチリとスクラムを組んでアジア太平洋地域の安全を守るという強い姿勢を見せなければならないのです。

「守れ!アジアと日本の平和と安全・紀の川市大会」(2014年9月21日)で講演する筆者

「守れ!アジアと日本の平和と安全・紀の川市大会」(2014年9月21日)で講演する筆者

<安全保障問題に正面から取り組んだ平和大使運動>

 日本の平和大使運動は2010年から本格的に安全保障問題に関わるようになり、「①緊急事態基本法を制定しよう、②我が国の防衛力を増強しよう、③集団的自衛権に正面から取り組もう、④日米安保体制強化・日韓防衛協力を推進しよう、⑤スパイ防止法を制定しよう」という5つのスローガンを掲げて運動を展開してきました。当時はまだ民主党政権の時代であり、これらのスローガンの実現は極めて困難なことに感じられましたが、自民党の安倍政権が誕生して以降、その一つ一つが次々と実現の方向に動き出しました。

 安倍政権は2015年9月に、集団的自衛権の限定行使容認を含む「平和安全法制整備法」と「国際支援協力法」を成立させました。この法案は国論を二分し、偏向したマスコミ報道によって激しく攻撃されましたが、平和大使運動はぶれることなく法案に賛成し続け、その意義を訴える大会やセミナーを開催・支援してきました。また、2013年には特定秘密保護法が成立し、2016年には日本と韓国の間に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が締結されるなど、目に見える成果が次々と現れてきています。こうした安保運動を継続していくことが、日本の国益と東アジアの平和と安定に資することになるのです。

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