現在、日本の大学においては「カルト対策」と称するあからさまな宗教迫害が行われています。これは特定大学において単発的に起こっている問題ではなく、全国的に網をかけるようにして行われている現象であると言えます。それは、文部科学省の所轄する独立行政法人である日本学生支援機構が、反カルト団体である「日本脱カルト協会」などの後押しを受けて、大学における「カルト対策」を積極的に推進する立場に立っているからです。
日本学生支援機構は、主に奨学金の貸与を業務とする組織で、文部科学省が所轄する公的な組織です。ですから、ここがやることは国がやることとほぼ同じという意味を持ちます。その日本学生支援機構が『大学と学生』という雑誌を発行していた(2011年3月号をもって廃刊)のですが、2010年の9月号に、大学における「カルト問題」「カルト対策」を扱った論文が3本も掲載されました。
文部科学省所轄の独立行政法人が発行する雑誌に論文が3本も載ったということは、全国的なネットワークを作って網をかけ、全大学に普遍的な問題として対策を展開しようとする意図の表れです。
2006年12月に全国霊感商法対策弁護士連絡会は、国立大学協会をはじめとする4つの団体に対して、「反社会的宗教団体に学生が関わることによる被害を防止するため」に、さまざまな対策を行うことを求めた要望書を提出しており、その頃から大学当局による「カルト対策」が全国的に増えています。
また、「全国カルト対策大学ネットワーク」という組織が、各大学の教員や職員が連絡を取り合うシステムとして機能していて、「カルト対策」のあり方に関して大学を超えた情報交換が行われています。現在、このネットワークには146の大学が参加しています。その結果、全国的な規模で、原理研究会(CARP)をはじめとする宗教系のサークルに対して大学当局からの迫害が行われるという構図になっているのです。
基本的に大学側は、「カルト対策」を宗教迫害だとは思っていません。文部科学省の指導の下、日本学生支援機構の提示した方策に基づいて、大学生たちがトラブルに巻き込まれることなく、安全な学生生活を送れるように、「安全配慮義務」に基づく「学生支援」を行っているという自覚のもとに動いているのです。しかし、学生支援はあくまで学生を助けるためにあるものです。信教の自由や人権を侵害しないように、一定のルールのもとに行われなければならないし、学生支援が却って学生を苦しめるようなものであってはならないはずです。ですから、こうした「カルト対策」が本当に学生のためになってるのかが問われなければなりません。
そもそも「カルト」や「マインド・コントロール」といった概念は、学術的にも法的にも根拠のない「レッテル」に過ぎないものであるにもかかわらず、各大学が行っている対策では、これらの言葉が特定宗教を非難中傷するために安易に使用されています。そこでこれから、「カルト」概念の多義性と、「マインド・コントロール理論」の非科学性についてご説明します。