書評:大学のカルト対策(8)<全国カルト対策大学ネットワークについて②>


川島堅二氏による第一部の2番目の記事「2.全国カルト対策大学ネットワークについて」に関する紹介と分析の二回目です。先回紹介した「カルト活動情報」の内容分析では、大学からの投稿で頻繁に団体名の挙がる教団は、統一教会、摂理、ヨハン教会、親鸞会であり、統一教会は割合としては18%で、摂理(20%)に次いで二位でした。これは、大学キャンパスにおける各教団の活動の活発さを測る、一つのバロメーターであると言って良いでしょう。ところが、「カルト対策情報」の分類となると、その割合は以下に示すグラフのように一変します。

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なんと、カルト対策情報として投稿されたもののおよそ半数(47%)が統一教会に関するものだったのです。「対策」という観点からは、統一教会がダントツで話題になっていることが分かります。これは「カルト対策情報」の中の割合ですが、有意な投稿375件の中に占める割合でも、29%にのぼります。これはメーリングリストに投稿される意味ある投稿のうち、約10本に3本が、「統一教会(またはCARP)の問題にどう対処したらよいか?」という内容だということなのです。これはものすごいインパクトです。これはどうしてなのでしょうか? その理由は、以下のように説明されています。

「投稿を見ていると、この団体が全国の複数の大学で組織的に動いていることがわかります。すなわち、この団体のダミーサークルが、全国の複数の大学で同じ時期に公認サークル化を要求してきたり、大学のカルト対策について質問や抗議文書を出してきたりしているからです。

こうした要求に対しては、大学のカルト対策の法的根拠を明示することで対応すべきであるという助言が、発起人の弁護士から繰り返し与えられました。」(p.43)

この記述から、各大学の原研代表の方々の活動が非常に大きな社会的インパクトを持っていたことが検証されました。原研代表の方々にとっては、非常に励みになる内容ではないかと思います。

さて、この「2.全国カルト対策大学ネットワークについて」の内容には、私たちにとって非常に有益と思われる情報が掲載されています。まず、2012年3月29日に札幌地裁で下された「第二次青春を返せ裁判」の判決が、今後のカルト対策にとって画期的なものであるという弁護士の投稿があったことが紹介されています。その根拠は、これまでの判決では、布教活動を違法とする最大の理由は正体隠しの勧誘であったが、この判決では、「特異な宗教実践」を事前に開示ししなければ不法行為と認定されたことであるというのです。これで、「射程距離がずっと広くなった」「今後、この判決を根拠にこのダミーサークルの大学内での活動を認めないとすることができる」(p.44)などと述べられています。この判決を画期的なものとして最大限利用しようとする反カルト勢力の戦略が読み取れます。その他の有益な情報に関しては、次回にまとめて紹介します。

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