書評:大学のカルト対策(7)<全国カルト対策大学ネットワークについて①>


櫻井義秀、大畑昇編著の「大学のカルト対策」の書評の7回目です。この本の第一部の2番目の記事は、「2.全国カルト対策大学ネットワークについて」というタイトルで、川島堅二氏が担当しています。今回から、この記事に関する紹介と分析を行います。

この記事の内容は、2009年3月に設立された「全国カルト対策大学ネットワーク」の現状報告です。川島氏がこの組織を設立した動機は、「カルトの情報をたくさん持っている人たち(元信者、家族、カウンセラー、聖職者、弁護士など)と、その情報を必要としている人たち(大学教育の現場担当者)を結ぶ仕組みが必要」(p.34)だという認識にあったことを最初に説明しています。この組織は結成されて4年目を迎え、152大学(全国の国公私立大学の約2割)の関係者が登録しているとのことです。

この組織は基本的にはメーリングリストによるネットワークですので、e-mailによる投稿によって情報交換するわけですが、これまでの投稿総数は600件以上あり、その中から「カルトの活動情報および対策情報という観点から有意な投稿」を375件選んで、その内容を分析して要約したのがこの記事ということになります。これまでこのネットワークでどんなことが話し合われているかは部外者には分からず、謎のベールに包まれていました。この著作では、その内容を自ら開示してくださったわけで、大変ありがたく思っております。川島氏の透明性と誠実さに感謝したいと思います。

川島氏は、このネットワークで提供される情報を以下の三つに大きく分類しています。

①   カルト対策講座・講演、マスコミ報道等の情報

これはネットワークの発起人から提供される情報で、主に大学のカルト対策担当者の啓発を目的とした情報です。具体的には、年一回開催される日本脱カルト協会主催の公開講座の案内や、全国霊感商法対策弁護士連絡会の集会の案内、さらには大学が主催するカルト問題をテーマにした講座・講演、シンポジウムなどの案内が送られています。つまり、反カルト団体の宣伝ツールとして機能しているということです。

②   カルト活動情報

これはネットワークに参加している大学の現場から寄せられるさまざまなカルトの活動情報です。

③   カルト対策情報

これは大学の現場でカルトと対峙するときのノウハウを話し合ったり、ときには協同して問題に立ち向かうための情報交換です。こうした相談が寄せられると、発起人である複数の弁護士たちからの助言がなされ、それが大きな力になっているとのことです。この機能は、「このネットワークが最も力を発揮する」場として紹介されており、投稿内容としては件数が一番多いとのことです。要するに、現場の大学職員・教員らが、カルト対策をする際の法的問題や、具体的な手段の是非などを相談してアドバイスを得る場としてこのネットワークが活用されているということでしょう。

原著にはこうした分類に基づく投稿件数をパーセンテージで表示しているのですが、グラフにはなっていません。そこで私は分かりやすいように、円グラフ化してみました。

スライド1

グラフから、「カルト対策情報」が62%で最も多いことがわかります。

次に、「カルト活動情報」の内容分析ですが、頻繁に団体名の挙がる教団は4つあり、その割合は以下のようになっています。スライド2

この情報は、大学キャンパスにおいて各教団がどのくらい活発に活動しているかを測る、一つのバロメーターであると言って良いでしょう。我が統一教会は、「摂理」についで惜しくも2位になっています。全国のCARPの諸君、もっと頑張れ!

これは同時に、大学当局がどの団体をカルト視しているかを知る上でも手がかりになります。ここでの統一教会に対する評価ですが、「全国の大学から情報が寄せられる要注意団体の中でも組織力、資金力の面で群を抜いており、慎重な対応が求められる団体です」(p.36)という、大変高い評価を頂いております。

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