BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ10


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、私が日本語訳を担当したこともあり、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。昨年7月8日に起きた安倍晋三元首相暗殺事件以降の日本における家庭連合迫害の異常性を、海外の有識者がどのように見ているかを理解していただくうえで大変有益な内容であると思われたので、私の個人ブログでシリーズ化して紹介することにした。

国連:統一教会に対する人権侵害で被告席に着く日本

10/17/2022MASSIMO INTROVIGNEA

自由権規約人権委員会に対する追加提案がなされる

マッシモ・イントロヴィニエ

自由権規約人権委員会
開会中の自由権規約人権委員会。Twitterより。

国連自由権規約人権委員会は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)が締約国によって履行されているか否かを監視する機関である。2022年10月10日から11月4日にかけて、同委員会はジュネーブで第136回総会を開催している。この総会で自由権規約の遵守が審査される国の中に、日本がある。

国連経済社会理事会(ECOSOC)の協議資格を持つNGOによって提出され、総会において議論されているの文書の中に、CAP-LC(良心の自由のための団体と個人の連携)によって提出されたものがある。それは日本において安倍晋三元首相の暗殺以降、現在「世界平和統一家庭連合」として知られている、統一教会に対して行われた自由権規約の違反について論じている。このテーマについては一連のBitter Winterの記事で詳細に論じてきた。

安倍は統一教会の信者になったことがない男によって殺された。彼の母親は20年前に破産し、彼はそれが起きたのは母親が教会に対して行った過度の献金のせいであると非難した。彼は安倍元首相が統一教会の関連団体のイベントにビデオを通して参加し、別のイベントに書簡を送ったことを理由に、安倍を成敗しようと決意した。殺人犯はまた、統一教会のリーダーの殺害も計画した。安倍と同様に、統一教会は明らかに事件の被害者であった。

ところが、日本には統一教会に敵対する組織が存在し、彼らはこの宗教団体が殺人に対してなにがしかの責任があるという世論を形成することに成功した。その屁理屈は、もし彼の母親が統一教会に献金をして(2002年に)破産しなかったら、殺人犯は(2022年に)安倍を殺さなかったはずだ、というものだ。

CAP-LCが自由権規約人権委員会に最初の提案を行って以降も、日本における統一教会・家庭連合に対する人権侵害は継続してきた。CAP-LCはこのたび追加提案を行い、その中で「状況は悪化している」と述べた。

提案書の前半部分は、消費者担当大臣の河野太郎氏によって招集された、消費者庁のいわゆる専門家委員会に費やされている。それは既に活動を開始しているが、8名の委員の中に反統一教会の「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の主要メンバーの一人である紀藤正樹氏が入っている。CAP-LCは「弁護士の一人は過去に、統一教会の成人信徒を強制的に『棄教』させる目的で、拉致・監禁という違法行為に従事した『ディプログラマー』を弁護したことがある」と述べている。その一方で、委員会のメンバーには宗教学者は一人もいない。

ソウルでの抗議集会
日本における中傷と差別にソウルで抗議する統一教会の信者

CAP-LCは「必要なら最終的な取り締まりを国務大臣に任じることによって、反対勢力は統一教会問題の『最終解決』を促す手順として同委員会を利用しようとしている」と論じている。提案書はこの目的を達成するために用いられる三つの戦略について述べている。

第一に、「統一教会・家庭連合が団体としても、その全国レベルの指導者たちも何らかの罪に問われて有罪判決を受けたことがなかったとしても」、統一教会・家庭連合の解散を請求することである。

第二に、同委員会は「宗教団体への不当な献金」を制限できる法改正を提案する計画だ。委員の一人、菅野志桜里氏の説明によれば、「まともな宗教団体」と「まともでない宗教団体」を区別するために、献金に関する法改正が必要なのだという。提案書は以下のように説明する。「CAP-LCが数十年近く宗教や信条の自由を擁護してきた経験によれば、例外なく曖昧な言葉使いから差別が助長されていくことを学習してきた。日本の当局は一体、如何なる基準に則って宗教が 『まとも』か否かを決めようとしているのだろうか。宗教が『まとも』だとは、どういう意味なのか。そもそも行政当局に宗教の是非を判定する権限があるのだろうか。」

報告によれば、同委員会は「信者の精神的な恐怖感に訴えて献金を督促したり、個人が合理的な意思決定のできない状態で献金を要求する」ことを禁止する計画であるという。CAP-LCは「『合理的な意思決定』という概念は曖昧なものだ。知的能力に障害がある個人からの献金は、日本の法律でも無効とされる。もし献金した者に知的能力があれば、その個人の意思決定を「不合理なもの」と決めつけることは、すでに信用を失い疑似科学とまで呼ばれた洗脳理論によるか、『まともでない』宗教へのあらゆる献金は当然不合理だと含意することとなり、循環論法に陥る」とコメントしている。

「信者の精神的な恐怖」については、CAP-LCは「永遠の救いを失うかもしれない畏怖感は、一神教の構成要件」であり、他の宗教にも見出すことができると記している。「これは統一教会に特殊なものなどではない。精神的な畏怖が有する健全な意義を説く人々を法律で規制したら、ほとんどの宗教を法律で規制することになるはずだ。」

CAP-LCはさらに、「あまり問われてこなかった疑問の一つは、献金が如何なる目的で使われているかだ。この疑念は無意味なものではない。メディアおよび反対勢力は、統一教会への献金は指導者を富ませているだけだ、という長年の反宗教論争に必ず持ち出される決まり文句を持ち出そうとしている。実際には、統一教会が日本で集めたお金は様々な慈善目的に広く活用されており、その中には、東京にある病院の建設・装備・保守や、日本で起きた津波・地震などの救援活動、さらにはアフリカのいくつかの診療所、その他の慈善事業に活用されてきた。」と述べている。

統一教会攻撃の三つ目のツールは、「両親が教会への信仰を二世の子供たちに教育することは『児童虐待』に当たる、との主張だ。」CAP-LCは、「その証拠として例えば、両親とも教会活動で忙しく子供をほったらかしにしていた事例や、統一教会に両親が関与していたために子供が鬱病を発症した事例が挙げられた。統一教会に所属する別の両親は、娘や息子の恋愛生活に干渉したことで非難された。」と報告している。

CAP-LCは、「『児童虐待』とは身体的または性的暴力を指した、極めて特定された法的用語だ。親が仕事その他の事情で忙し過ぎたとか、子供の恋愛関係を制限しようとするのは、明らかに子女が両親に向って頻繁に発する苦情で、それらが事実だとしても『児童虐待』には当たらない。統一教会について含意されているのは、子供たちを『まともでない』宗教に付き合わせることが自動的に『児童虐待』に相当する、という主張だ。明確なのは、この種の議論はあらゆる不人気な宗教的マイノリティに対しも利用可能だということだ。」と反論している。

実際、CAP-LCは「他の宗教もこのことを認識しつつあり、日本が宗教の自由に関する自由権規約の義務を無視しかねないことを懸念している。」と記している。「日本の統一教会に向けられた差別について我々が自由権規約人権委員会に提出した最初の提言が、ローマ教皇庁外国宣教協会の公式通信社「AsiaNews」を通じて読者に提供されたが、これは非常に重要だと考える。」

AsiaNews
CAP-ILCが自由権規約人権委員会に提出した提言を報道するAsiaNews

新しい提案書の後半部分は、市民がいわゆる「霊感商法」や統一教会によるその他の好ましくない行為に対して苦情を述べることができる、消費者庁が立ち上げた電話相談について言及している。この電話相談は9月30日まで機能する予定であったが、その業務は無期限に延長された。

CAP-LCは、この電話相談の差別的性格を証明するような消費者庁ならびに法務省のデータを引用している。

提案書の説明によると、初めの一連のデータは「2012年から2021年までに消費者省が受け付けた、いわゆる『霊感商法』に関する苦情だが、一般的なものと、統一教会・家庭連合を名指ししたものが併記されている。」これらのデータが示しているのは、「同庁が受けた『霊感商法』への苦情のほんの一部が統一教会関連であったことで、2021年にその割合は1.87%に過ぎなかった。・・・統一教会・家庭連合以外への苦情が全体の98%以上を占めている」。

データはまた、「統一教会が信者たちに現行法規をしっかり理解・遵守させるために採った措置は著しく効果があり、反対派が主張するように単なる表面的なものではなかったこと」を裏付けている。「統一教会に関する苦情は2012年の229件から2015年以降の100件未満に、そして2021年には30件未満にと、一貫して減少していた。」

予想通り、安倍暗殺と全メディアによる反統一教会キャンペーンの後の2022年9月には、電話相談により多くの苦情が寄せられた。9月5日から22日までに受信された1,952件の苦情のうち、1,317件が統一教会に関するものであった。政府によると、70%は「金銭トラブル」に関するもので、「霊感商法」も入っていた。

CAP-LCは、「もし大学生たちが電話サービスで利用されたような手法で調査を実施したら、当然のことながら、彼らの担当教師に嘲笑されるだろう。同サービスはそもそも一方的に質問サンプルを作成しているだけでなく、統一教会の敵対者に容易に操作されやすい。さらに、電話をかけてきた人が名乗る通りの人かどうか、その苦情が真実か、誇張されたものか、捏造されたものなのかを確かめる手段がない。」とコメントしている。

それでも、政府の報告によれば、「電話をかけた人の7.5%が宗教運動内の批判的な信者だと主張し、24%はその運動の元信者であると言い、そして残り、すなわち電話してきた人の大半は親戚や友人、または懸念している一市民だと名乗った。また苦情を申し立てた人の65%は、10年以上前のことか、日付を特定できない事例について報告していた。」

CAP-LCの結論は以下のようなものだ。「電話相談サービスにかけられた電話は何も証明しておらず、証明しているのは統一教会に対する魔女狩り状態が日本で進行していることだ。しかも統一教会は専門委員会が進められている間、自らを守る手立てを何ら与えられていない。そして同省のデータが示すように『霊感商法』への苦情は、統一教会以外の団体に関するものが圧倒的であった事実、そして統一教会が長年にわたり、苦情を受ける件数を大幅に減少させるのに効果的な措置を講じていたという事実などは無視されているのだ。」

抗議の別の画像
ソウルにおける統一教会による抗議の別の画像

追加の提案書には、統一教会・家庭連合のメンバーに対する暴力や差別に関する新しい事例が加えられており、その中には統一教会・家庭連合の指導者である韓鶴子女史によって創設された、国連経済社会理事会の総合協議資格を持つ世界平和女性連合(WFWP)のメンバーも含まれている。CAP-LCは「これらの事件はジェンダーの要素も入り込み、女性の国際的地位を引き上げようとする業績が国連に再三評価されている団体を差別しているので、特に憂慮すべきだ。」とコメントしている。

「我々がインタビューした証言者たちは、日本政府が彼女たちの権利を実効的に保護していないと強く感じていた。ソーシャルメディア上で誹謗中傷をしていた一人は、消費者庁の専門委員会のメンバーで弁護士の紀藤正樹その人だ。WFWPに関わっていたとして虐待された経験を持つある女性によれば、政府の態度は被害者に対してよりも、誹謗中傷や差別行為を犯している人々への共感が強いように見えたという。」とCAP-LCは報告している。

「まことに残念なことだが、日本での状況は日々悪化している。統一教会・家庭連合をめぐるヒステリー状態は、日本における人権・宗教・信仰の自由を守るために設定された自由権規約の防護壁を破りかねない。」とCAP-LCは結論している。

自由権規約の締約国として、いまこそ日本は国際社会の厳しい監視に直面すべきだ。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。
https://bitterwinter.org/%e5%9b%bd%e9%80%a3%ef%bc%9a%e7%b5%b1%e4%b8%80%e6%95%99%e4%bc%9a%e3%81%ab%e5%af%be%e3%81%99%e3%82%8b%e4%ba%ba%e6%a8%a9%e4%be%b5%e5%ae%b3%e3%81%a7%e8%a2%ab%e5%91%8a%e5%b8%ad%e3%81%ab%e7%9d%80%e3%81%8f/

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