信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、私が日本語訳を担当したこともあり、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。昨年7月8日に起きた安倍晋三元首相暗殺事件以降の日本における家庭連合迫害の異常性を、海外の有識者がどのように見ているかを理解していただくうえで大変有益な内容であると思われたので、私の個人ブログでシリーズ化して紹介することにした。
日本と統一教会:国連自由権規約人権委員会に対する提訴
09/24/2022
安倍暗殺後の統一教会に対する攻撃は、市民的及び政治的権利に関する国際規約の複数の条項に抵触する。
マッシモ・イントロヴィニエ
国連自由権規約人権委員会は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)が締約国によって履行されているか否かを監視する機関である。2022年10月10日から11月4日にかけて、同委員会はジュネーブで第136回総会を開催する。この総会で自由権規約の遵守が審査される国の中に、日本がある。
国連経済社会理事会(ECOSOC)の協議資格を持つNGOによって提出され、総会において議論される予定の文書の中に、CAP-LC(良心の自由のための団体と個人の連携)によって提出されたものがある。
それは日本において統一教会に対して行われた自由権規約の違反について論じている。CAP-LCはメディアにおいて最も多く使われているという理由で「統一教会」という名称を用いてきたが、同教会は現在「世界平和統一家庭連合」として知られている。安倍晋三元首相の暗殺以降、統一教会・家庭連合の法人としての権利と、その会員ならびに関連団体のイベントに参加した者たちの個人としての権利の両方が、日本において侵害されてきた。
Bitter Winterのシリーズ記事で論じてきたように、安倍は統一教会の信者になったことがない男によって殺された。彼の母親は20年前に破産し、彼はそれが起きたのは母親が教会に対して行った過度の献金のせいであると非難した。彼は安倍元首相が統一教会の関連団体のイベントにビデオを通して参加し、別のイベントに書簡を送ったことを理由に、安倍を成敗しようと決意した。殺人犯はまた、統一教会のリーダーの殺害も計画した。安倍と同様に、統一教会は明らかに事件の被害者であった。
ところが、日本には統一教会に敵対する組織が存在し、彼らはこの宗教団体が殺人に対してなにがしかの責任があるという世論を形成することに成功した。その屁理屈は、もし彼の母親が統一教会に献金をして(2002年に)破産しなかったら、殺人犯は(2022年に)安倍を殺さなかったはずだ、というものだ。
「カルト」というレッテルを貼られた団体に対するものであればほとんどすべての中傷を信じる傾向にあるメディアの状況下では、この間違った議論が真剣に受け止められ、自由権規約の下で保障された統一教会ならびにそのメンバーの権利に対する深刻な侵害が起きたのである。
CAP-LCはまず、プライバシー、名誉、信用を保護する自由権規約第17条および第19条3aの違反を非難する。CAP-LCは、統一教会は「全国霊感商法対策弁護士連絡会」によって最も多く中傷されたと指摘している。それは統一教会と闘うという特定の目的で作られた組織である。そこに所属する弁護士の中には、以前に「ディプログラマー」の弁護に関わった者たちがいる。「ディプログラマー」とは、両親によって拉致され違法に監禁された統一教会の成人信者を「棄教」させようとした、「信仰破壊者」のことである。日本の法廷は、最終的には西洋の法廷と同様にディプログラミングは違法であると判断した。しかし連絡会の弁護士らは、彼らが「霊感商法」と呼ぶものによって統一教会が不正に献金を集めていると訴え、法的措置によって統一教会を中傷・攻撃し続けているのである。
CAP-LCは、いわゆる「霊感商法」のストーリは、弁護士連絡会によって中傷と偏向に満ちた語られ方をしていると指摘する。より詳細に調べれば、献金に関する統一教会の実践は、その他多くの宗教とそれほど異なってはいないのである。
弁護士連絡会は民間団体であるが、CAP-LCは以下のように指摘する。「大きな懸念をもたらすのは、あきらかに偏見のない組織でも宗教の自由に友好的な組織でもない連絡会の弁護士が現在、消費者庁と担当大臣によって招集されたものを含む、当局の『専門家委員会』に参加していることだ。それは統一教会に対するさらなる対策を示唆している。」
宗教の自由に敵対的な団体と提携することにより、日本政府は自由権規約の義務に違反しているとCAP-LCは論じている。「私たちは、すでに制限的である2000年の法律を、寄付金の募集も同じように禁止するために改正すべきだという日本国内の提案が真剣に検討されているという事実と共に、統一教会への寄付を阻止する狙いを明確に表明する声が聞かれる前述の公式委員会に深い懸念を抱いている。これは明らかに多くの自由権規約の条項に違反することになる。それらは宗教または信条の自由(第18章)、差別の禁止(第26条)、そして結社の自由とその運営に必要な資源を入手する権利の不合理な制限(第22条)を含む。特定の宗教への寄付は、この宗教が『サイキック・マーケティング』と呼ばれるものを実践しているという考えに基づいて、他の宗教への寄付とは異なった扱いを受けることになるだろう。それは国際的な宗教学者には知られていない、『洗脳』という信用を失った疑似科学的な考えを隠した奇妙なレッテルである。」
CAP-LCは続けてもう一つの懸念の理由を表明する。「私たちはまた、2022年9月5日に政府が運営する『電話相談サービス』が開始されることにも懸念を抱いている。このサービスを通して担当者は、統一教会との『トラブルを経験している』人々を、『法的な支援を提供する人々を含む専門的な相談機関』に誘導する。おそらく、それは反統一教会の弁護士を意味している。このサービスが統一教会に関してのみ提供され、やはりそのメンバーが『トラブルを経験している』かもしれない無数の他の宗教的(そして非宗教的)グループには提供されないという事実は、自由権規約によって禁止されている差別の明確な事例である。
自由権規約第25条は、性別、民族、宗教に関わらず、すべての市民に対して政治に参与する権利を保障している。日本においては、政党が選挙のボランティアに統一教会の信者を入れることを防ぐべきであるとか、同協会と関連のある団体のイベントに政治家が参加することを禁止すべきだとの提案がなされることにより、この条項にも違反している。CAP-LCはまた、「メディアのキャンペーンに怯えて、構成員にUPF(安倍がビデオとメッセージを送った統一教会に関連のある組織)あるいは統一教会と協力しないように求める政党の行動もまた、自由権規約第25条に違反している。民主主義体制においては、政党もまた、彼らの活動や声明において自由権規約を尊重すべきである。」と述べている。
CAP-LCは続けて以下のように述べている。統一教会の個々の日本人信者は、「個人の安全(自由権規約第9条)や職場、学校、そのほかの教育施設において彼らの信条を理由として差別されない(自由権規約第18条3)彼らの権利の侵害を経験している。」これは大量に拡散された彼らに対するヘイトスピーチの結果であり、状況は日増しに悪化している。CAP-LCは、「安倍の暗殺から8月20日までの間に、日本統一教会は教会、組織、個人に対する400件以上の嫌がらせがあったことを記録した。しかし、それはいまも継続中であり、おそらくその数はもっと多いであろう。なぜなら、地方で起こるすべての事件が必ずしも本部に報告されるわけではないからだ。」と報告している。
統一教会の礼拝場所に対する攻撃に加え、個人もまた被害を被っている。CAP-LCは以下のような例を挙げている。「7月18日に群馬県の女性信者は彼女の息子から暴行を受け、肋骨が折れたと病院に通報した。7月23日には愛知で、夫が統一教会の敷地内に侵入し、そこで妻を殴打した。8月16日には長野で女性信者が統一教会を離れることを拒んだために夫からひどく殴打された。いくつかのケースでは、信者たちは教会信者ではない配偶者から離婚すると脅された。中には離婚手続きが実際に開始されたケースもある。息子と嫁と同居していた群馬県のカップルは、彼らが統一教会を去ることを拒んだために、7月15日に家から追い出された。多くの信者たちが彼らの配偶者あるいは他の親族が統一教会の文献を破ったり、なかには携帯電話まで破壊して、教会との通信を妨害しようとした者もいたと報告した。」
この迫害のより広い背景は、統一教会のような「カルト」は本物の「宗教」ではなく、信教の自由を享受する資格がないとの主張によって日本に蔓延している、宗教もしくは信条の自由を謳った自由権規約第18条に対する違反である。フランスにおいて広く非難を浴びた2001年の反セクト法(About-Picard law)に似た反カルト法を日本が導入し、フランスがしたように、「カルト」に対する献金は贈与ではなく収益として課税すべきだとの提案がある。このような提案をする者たちは、フランスは「カルト」に対する献金に課税しようとした訴訟において、欧州人権裁判所で敗訴し続けてきたことを無視している。フランスは三つの異なる運動に対して、彼らがすでに支払った税金に利息と訴訟費用をプラスして返金しなければならなかった。
CAP-LCの結論は、こうしたことはすべて自由権規約によって許されておらず、日本は自由権規約に署名した際に表明したコミットメントが、世論という変わりやすい風の人質になってはならないことを思い出すべきだ、というものだ。表現の自由を尊重しつつ、日本はヘイトスピーチならびに少数派の宗教に対するメディアの差別に関する国連およびその他の国際機構からの文書を考慮して、そのメディアをも規制すべきだ。
CAP-LCは「日本における統一教会・家庭連合の信徒たちの継続する苦しみを考慮して、これらの問題が自由権規約人権委員会によって緊急に取り上げられることを希望する」と表明した。
以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。
https://bitterwinter.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A8%E7%B5%B1%E4%B8%80%E6%95%99%E4%BC%9A%EF%BC%9A%E5%9B%BD%E9%80%A3%E8%87%AA%E7%94%B1%E6%A8%A9%E8%A6%8F%E7%B4%84%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%81%AB%E5%AF%BE/