『世界思想』巻頭言シリーズ12:2023年2月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第11回の今回は、2023年2月号の巻頭言です。

民主主義の根幹を揺るがす「関係断絶」決議と闘う

 昨年12月23日、一般社団法人UPF大阪が、富田林市と大阪市を相手取って民事訴訟を提起した。これは昨年9月に富田林市議会が「旧統一教会と富田林市議会との関係を根絶する決議」を可決し、11月に大阪市会が「旧統一教会等の反社会的団体の活動とは一線を画する決議」を可決したことに対して、これらの決議の取り消しを求め、損害賠償を請求する訴訟である。

 提訴の理由は、これらの決議が日本国憲法が保障する請願権、思想良心の自由及び信教の自由を侵害し、法の下の平等に違背するというものだ。「根絶」という言葉は通常、病原菌に対して使われる言葉であり、それを宗教団体に対して使うのは論外であり、人権感覚のかけらも感じられない。また、これまでに国が旧統一教会を「反社会的団体」と規定したことは一度もないにもかかわらず、一地方議会がこのような断定的な言い方をするばかりか、「一線を画する」という表現で、事実上の関係断絶を宣言するのは、理不尽としか言いようがない。

 宗教法人である世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とUPFは創設者が同じであり、互いに友好団体である。しかしUPFの目的は布教伝道ではなく社会活動である。UPFは刑事事件を起こしたこともなければ、民事訴訟で敗訴したこともない。しかし、友好団体である家庭連合に関わるトラブルが問題とされ、UPFは家庭連合の「関連団体」として一括りにされて批判され、排除されているのである。

 UPF大阪は訴訟に先立ち、大阪市会と富田林市議会の両方の全議員に対して、請願の依頼を文書で送ったが、誰一人としてこれに答えた者はおらず、決議によって事実上請願権が侵害されていることが明らかになった。
 民主主義は、さまざまな個人や団体の社会参画を通じて、議決で物事を決めていく制度である。そして地方議会は、地方公共団体が設置する議決機関である。そこが特定の団体との関係を持たないと宣言するのは、憲法上の問題があり、民主主義の根幹を揺るがす大問題である。

 そもそもこれら二つの決議の原因は、昨年7月8日に起きた安倍元総理暗殺事件にあると言える。事件発生から何か月経っても、事件そのものの真相解明が全く進まない中で、マスコミは家庭連合とその関連団体の糾弾に明け暮れ、それに政治が動かされるという異常事態が続いていた。日本社会全体がおかしな方向に向かっており、その中で家庭連合およびその友好団体に関わる人々は、深刻な差別と人権侵害にあってきたのである。

 その中には復興支援やバザー売上金の寄付の返還、行事への後援取り消し、団体登録や公認の取り消し、会場使用の拒否、ボランティア活動への表彰取り消しなど、行政による法的根拠に基づかない差別や排除も含まれる。地方議会の議決はその最たるものだ。

 元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、昨年12月25日付の産経新聞で、現在の社会的雰囲気あるいは風潮に自由主義社会とは相容れないものを感じ取り、「全体主義が微笑んでいる」と警鐘を鳴らした。UPFは今後、こうした全体主義的傾向に抗い、請願権、思想良心の自由、信教の自由、法の下の平等を守るために闘っていく。

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