ジェームズ・グレイス「統一運動における性と結婚」日本語訳42


第5章 祝福:準備とマッチング(11)

 より一般的な霊的変化の経験以外には、非常に個人的な性格の経験がある。われわれはこれを特別な個人的経験と呼ぶことにする。これらはすべてマッチングの儀式の直前もしくは最中に起きた。それらはメンバーたちの意識的な期待とは相反するものであるという意味において特別である。中身においては、それらは偶然の一致から奇跡(であると信じられているもの)にいたるまで実に幅広い。それは、何が経験されたかに関しては尋常ではないものの、それらが起こる頻度は高かった。

 特別な個人的経験は、天啓、先祖に関わるもの、肯定的なものに分類することができる。天啓の経験は主として、その人がマッチングされるであろう人物の性格やタイプに関する「知識」が伝えられることに関連するものである。ある年配の女性メンバーは、以下のようなマッチング前の経験について語った:
「そのとき、私はカンザスシティで働いており、在米韓国人宣教師のキム博士が私の所に訪ねてくるというのです。私は彼女が祝福のことを話すつもりだと知っていましたが、私の心に何が去来したかあなたは想像できないでしょう。私は本当にこれに対して私の心を準備しなければなりませんでした。・・・ですから私はそれについて祈り、二人の名前が心に去来したのです。それは私の知っている二人で、心地よく感じていた人達でした」(注61)

 その後、彼女に名前が啓示された男性の一人は、文師によって彼女の夫となるよう推薦されたが、最近運動を去ったことをその女性は知ったのである。彼女は二人目の男性の名前をキム博士に告げ、その選択は文師によって承認されたのであった。(注62)別のメンバーは、天啓の経験がいかに彼の結婚相手に関する好みを変えたかについて語った。人種関係に関心のある白人アメリカ人として、彼は黒人の女性と結婚することを望んでいた。マッチングの儀式の前の夜、彼は夜遅くまで彼自身および彼の親族の人種差別的な態度を悔い改める祈りをした。祈祷を通じて、彼に対する神の意思は、黒人ではなく東洋人の女性と結婚することであると彼は悟ったのである。(注63)ときにはこの種の啓示は他のメンバーの経験を通じてくることもある。スマート夫妻の場合には、お互いの友達が彼らが文師によってマッチングされる夢を見たのである。(注64)

 二つ目のタイプの特別な経験は、霊界における自身の先祖との接触に関わるものだ。運動の信仰によれば、先祖の霊たちは地上の子孫たちの行いを通してのみ、完成に向かって進歩することができるのである。したがって、これらの霊は彼らの子孫の霊的成長に対して「既得権」を持っており、前者は後者の人生における決定的な出来事において自らの存在を知らせることができるし、また実際にそうするのである。まさにマッチングされる直前に起きた、先祖との接触に関する特に分かりやすい報告は、アダムズ氏によって提供された。彼は儀式が始まったとき、以下のような感情に守られて非常に心穏やかであったと言った:
「・・・お父様は正しい人を選んでくださるだろう。そして私がマッチングされる直前、私は非常に強い感情を抱いた。お父様が私を選んだその瞬間、そうだ・・・だから私がマッチングされた人と組み合わされたのは、単なる偶然じゃないんだ。それは単なる無作為の選択ではなかった。霊的に何かが起こっていたのだ。」(注65)

 インタビューを行った者は「非常に強い感情」を、アダムズの信仰を弱らせようというサタンの試みを意味するものであると誤って解釈した。アダムズは、サタンは何か悪いことをしたり、することを考えたりするときにのみ攻撃することができるので、この場合はそうではないと説明した。その瞬間の彼の「心情は正しかった」ので、サタンは介入する「基台」がなかったのである。むしろ、その強烈な感情は彼の先祖の霊の臨在によって引き起こされたのであった。
「私たちの先祖の霊人は、過去に生きた人々であった。・・・彼らは本当に実在して、あなたに、あなたの心に影響を与えることができる。そうだ、なぜなら彼らはそこにいて、何が起こっているのかに非常に強い関心を持っているからだ。だから、あなたが突然何かに引かれたり反発したりする非常に強い感情を感じるときには、何か先祖に関わること、何か霊的なことが起こっているのだ。」(注66)

 三番目のタイプの特別な体験は肯定的なものである。ここで個人は霊的・直感的に「お父様」の推薦してくれた人は、彼または彼女にとって「正しい」または「完璧な」結婚相手であることを理解する。それは瞬間的な洞察であり、文師の知恵を即座に肯定する。あるメンバーは、文師が彼に現在の妻となっている女性を推薦したとき、それは文字通り「一目惚れ」の状態であったと報告した。彼はそれ以前に彼女を見たこともなかったが、彼は霊的に(すなわち、絶対的に)彼女は彼に相応しく、またその逆も真であると確信していたのである。もう一人のメンバーも似たような経験を語った:
「それは、私の所にやってきて、まるで『オーケー、これだよ』とでも言っているかのような、霊的な愛の感情だった。そして、それはある種の神秘的な経験だった。それは私が関わることのできる他のどんなものとも違っていて、まるで神が『私はこの女性を愛している。だからいま彼女をあなたにあげよう。これからはあなたが彼女を愛するのだ・・・』と言っているようだった」(注67)

 これらの特別な個人的経験は、もちろん、「事後に」語られたものであり、したがって、それ自体はメンバーのその後の運動との関わりを反映している。特に天啓型は、啓示された知識が実際に正確なものであったという事実に照らして評価される必要がある。メンバーはマッチングの時に確認されなかった啓示を覚えていたり語ったりすることはなさそうである。にもかかわらず、これらの体験が運動の結束にとって、そして特にその結婚に対するアプローチにとって重要であることは、少なくとも二つの点で明らかである。第一に、そのような経験をすることは、個々のメンバーに対して、彼または彼女が最も重要な信仰の出来事に対して神を中心とする態度を取っていることを実証するのである。言い換えれば、統一運動における生活が、彼または彼女が結婚というより大きな責任のために準備する上で成功であったということだ。第二に、これらの経験はマッチングのプロセス、そしてとりわけ「お父様」のマッチ・メイカーとしての役割を正当化する機能を果たしている。宗教的な表現をすれば、神(または霊界)がその代身者である文師によってなされた決定を、個人に対して直接的に裏付けているのである。

(注61)ブライアント「祝福に関する神学者の会議」p.22。
(注62)これはこの国の統一運動が比較的小さかった1970年のマッチングプロセスにおいては典型的であった。当時は資格ある結婚相手の数が限られていたので、部外者から見ればこの状況はなんら特別なものではないだろう。しかし信仰的で祈りに満ちたメンバーにとっては、それには深い霊的な意味があるのである。
(注63)インタビュー:スミス氏。
(注64)インタビュー:スマート夫妻。
(注65)インタビュー:アダムズ氏。
(注66)同上。著者が「非常に強い感情」について誤解した理由は、アダムズ氏がそれをその前の静寂な状態を邪魔するような何かとして認識したからである。心理学的には、特定の精神状態を先祖の霊が臨在しているためであるとすることは、そのような状態は無意識の心が意識的に表れたものであるという、より伝統的な心理学的見解に対する興味深い代案を提供するものである。別のレベルでは、われわれは統一神学の世界観の中に統合されている韓国の先祖崇拝の再解釈をここにみる。
(67)インタビュー:スマート夫妻。

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