ジェームズ・グレイス「統一運動における性と結婚」日本語訳31


第4章 性的役割分担(8)

 第二に、祝福を受けるにふさわしい女性を十分に提供できないという問題がある。結婚は救いにとって絶対不可欠であり、一妻多夫や同性愛の結合は信条に反するため、この運動はそのランクにまで伝道された女性メンバーの数を増やさねばらないという、なにがしかのプレッシャーを受けているのである。結婚適齢期の女性の不足を補うため、グループは二つのことをしてきた:第一に、それは女性に対する結婚の年齢制限を男性よりも低くすることにより、より多くの女性が祝福を受けられるようにした。第二に、それは非常に多数のアメリカ人の男性とその他の国々の女性、とくに女性のメンバーがおそらくもっと多数いると思われる極東の国々の女性との結婚をアレンジした。(注54)

 女性メンバーに対する組織のニーズに照らせば、この運動が近い将来により厳格に規定された性的役割分担の方向へ移行していくとは思われない。実際、「主体」の役割に女性がいることは、「当面の間は女性が州の代表やセンターの所長になることができます」(注55)と語ったカリスマ的創設者によって「終末論的正当化」をされているのである。(インタビューにおいて数名の独身男性によって示唆された)この発言の意味は、世界史の現時点における運動の使命が緊急であることを考慮すると、通常において、そして理想的には男性のものである指導者の役割を、いまは女性たちが引き受けることができる、というものだ。(注56)語られざる前提は、もちろん、もし神の国が実現されたならば、そのときには女性たちはその性質によりふさわしいライフスタイルを取るようになるだろうということである。それはすなわち家庭内での役割である。この理想世界が実現されない限り、女性たちは妻や母としての役割に加えて、運動内のさまざまな「主体」の位置で機能し続けるであろうと仮定することができる。

 性的役割分担にまもなく影響を与える可能性のあるもう一つの要因は、既婚のカップルが共同体生活から個々の世帯へと移行していくと予想されることだ。いくつかのカップルは既に一軒の家に住んでおり、組織の将来計画は多くの祝福家庭に対して同様の生活形態を思い描いている。同様の変化が「キリスト共同組織」に起きたときには、夫が自身の世帯の家長となることにより、彼の支配的な役割を強化する傾向にあった。(注57)もしかしたら、カップルが「定着」したら、性的役割分担に関する同じような変化が統一運動の結婚に起こるかもしれないが、「キリスト共同組織」とは状況を異にしているこの運動に関しては、少なくとも二つの考慮されるべき要因がある。第一に、個々の世帯を構えるようになった統一運動のカップルの中に、夫がより支配的になったという兆候はない。第二に、「キリスト共同組織」の女性たちは、結婚の前にも後にも、厳格に定められた服従的な役割に縛られることを要求されているが、統一運動の女性たちは自身のライフスタイルを形成する上でより多くの自由と、組織の中での自律性を経験しており、個別の家族の住居に引っ越したからといって、彼女たちはそれを放棄しないであろう。実際、もし統一運動の中で家族主義が集産主義に取って代わったなら、性的役割分担のパターンは、ヒエラルキーと関連した男性の存在論的な見解から受ける影響がより少なくなり、現代アメリカ社会のそれに近いものになるということはあり得る。(注58)家庭中心の構造に向かう流れが、現在の形の統一運動の生き残りにどのような意義があるかについては、第8章で吟味されるであろう。

 したがって、この運動における性的役割分担の多様性は、以下の四つの変数によって説明可能である:背景と価値観とそのメンバーおよびリーダーの態度;非公式的な(だからといって力が弱いとは限らない)リーダーシップを発揮している女性たち(注59)と女性メンバーの影響力ある貢献;組織がその機能上女性を必要としていること;性的役割分担に対する存在論的アプローチと実存主義的アプローチの両方を正当化するような神学の解釈の可能性。

 男性メンバー(主に未婚の)は、彼らが運動における自らの役割とみなすものに対して満足感を表明したが、女性たちは、性的役割分担の決定に対するグループの「開かれた」アプローチであると彼女たちが理解したものを熱烈に支持した。彼女たちは統一神学の女性的次元を高く評価し、彼女たち自身の女性としての経験の視点からそれを解釈することができた。彼女たちはまた、女性はグループの霊的、宣教的、財政的目標の達成に対して重要な貢献ができるし、またそれをしてきたことを知っていた。そして最後に、彼女たちは統一運動の中で結婚し、同時にキャリアを持つ機会を得た。それは達成の困難な目標ではあったが、組織の支援を得ることできた。

 結論として筆者は、一部の統一教会信者たちが表明した、自分たちのグループはまだ性的役割分担に対する実行可能なアプローチを解明するプロセスの中にあるという考えに同意する。将来どのような解決法が出現するにせよ、それは運動の中で結婚と家庭生活が例外よりも規範となっていくにしたがって、その脈絡の中から生まれてくるであろう。

(注54)私は統一運動における「国際結婚」の合計数を手に入れることはできなかったが、私が知っているそのような結婚のうちで、アメリカの女性と東洋の男性の結婚はごく少数に過ぎなかった。
(注55)文鮮明師「トレーニング計画に関する無題の演説」、p.3。
(注56)「女性の平等に関する危機理論」の議論に関しては、E・ボールディング『女性のための国会への道』、女性が公職に就くことに関する国際セミナー(未発行の原稿:ローマ、1966年)を参照のこと。ボールディングが軍事的・政治的危機の時代であった第二次世界大戦中の性的役割分担の変化について記述していることは、今日の世界を終末論的危機とみる運動の認識と似ている。
(注57)リチャードソン、スチュワート、シモンズ、「組織化された奇跡」、p.145。
(注58)これと同じ方向に導くかもしれないもう一つの要因は、モーゼ・ダースト博士が最近アメリカ教会の会長に就任したことである。ダーストは、妻の「オンニ」と共に、長年にわたってオークランド・センターを指導し、女性たちのリーダーシップを育成した。彼はまた、あまり教義的・神学的ではなく、より人間的な指向性の持ち主である。最後に、現在60代になる文師が死んだときのグループの性的役割分担に対する影響を考慮する必要がある。
(注59)自発的組織における権力に関しては、「メンバーの関与を維持することがそうした組織にとっては極めて重要である。ほとんどの証拠から明らかなことは、権力の形やその他の留意事項に関わらず、このことがなんらかの形の権力を組織の参加者に分配することを含んでいるということだ。」(リチャード・T・ホール『組織:構造と過程』第二版[エングルウッド・クリフス、ニュージャージー:プレティンス・ホール、1977年]、p.227。)

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