第6章 祝福:聖別期間と同居生活(13)
7.「結婚後の別居」は、繁殖のためだけのセックスを奨励することはさておき、夫と妻の間の個人的な交流の機会を制限するように機能している。ダースト博士が彼の結婚を「ハリウッド・ロマンス」になぞらえることができた主な理由は、彼とダースト夫人が一緒にいる時間がそれほど少なかったからである。統一教会の信者たちはいまは彼らの結婚が「幸福」だと語ることはできるし、実際に将来もそうであり続けるかもしれない。しかし、統一運動の結婚の本当の「厳密な審査」は、カップルが「定着」して日常生活の中でお互いに顔を突き合わせなければらなくなったときに訪れるであろう。(注88)しかしながら当分の間は、別居がもたらす必然的な結果として、夫婦の役割は、統一運動のより大きな関心事に役立つ世界の救世者の役割に従属することになるであろう。
メンバーの献身とグループの結束を強化する働きをするこれらの力に加えて、求心的な傾向に背き、統一運動の結婚に対するアプローチに将来悲惨な結末をもたらすこともあり得る三つの現象も存在している。私は以下の三つに言及する。(1)マッチングを受けたカップルの間の葛藤に関連した問題、(2)理想の結婚(夫と妻の一体化)と運動の千年王国主義的な志向性(夫と妻の別居)の間の矛盾、(3)東洋とアメリカのリーダーシップの間の極めて本質的な隔たり。
1.婚約したカップルは、マッチングを無効にするためには運動を離れる以外に道がないと思い込むよう導かれてきた。彼らがカップルとして直面している問題に関わらず、彼らが共に暮らすことに対する強力なグループの圧力が存在し、これらの圧力は文師の優れた能力と聖酒式の神学的な意味によって是認されている。マッチングを受けるメンバーの数が増え、配偶者の選択を文師に完全に委ねることがより強く奨励されるようになるに伴い、婚約したカップルは相性の合わない相手を受け入れるか、運動を完全に離れてしまうかの二者択一により一層直面するようになることが予想される。マッチングを受けた者たちの個人的なニ-ズを考慮し、マッチングを受けたカップルに婚約を解消する真の自由(単に理論的なものではない)を与える手段が開発されない限り、おそらく「約婚・聖別期間」中の離教はより一般的なものになるであろう。
2.夫と妻の一体化という理想と「結婚後の別居」の間の矛盾は、祝福家庭が近い将来に定着しない限り、統一運動から大量の離脱者が出るだろうという状況になっている。既にこの一年間で、二組の非常に活動的なアメリカ人のカップルが、統一運動は組織的に核家族の統合性を弱体化させているという理由でグループを離れることを選択した。一方でいまだグループに留まっている多くのカップルは、近い将来に「結婚後の別居」が終わることに対する強い願望を表明している。文師はこうした状況に対して敏感であり、カップルの「定着」を約束したが、若干の形ばかりの努力を除いて、その種のプログラムはなにも実行されていない。
3.最後に、過去5年間を通じて権力を相当強めてきた特定の東洋人とアメリカのメンバーの間には隔たりがある。この行き詰まりの結果は運動の多くのレベルにおいて見られるが、それは性と結婚の問題になると特に顕著であった。これら日本人と韓国人のリーダーたちが夫婦間の性交は繁殖のためにだけあると信じているのは、彼らが伝統的なアメリカの結婚を低く見ていることの一つの表れに過ぎない。アメリカ人のリーダーたちは一般的にこの問題に直接的に対峙しようとしないが、その理由はグループの結束を思ってのことだったり、自分の地位や立場を失うかもしれないという恐れであったりする。そのカリスマによってこれらの相反する力をまとめている文師がいなければ、今日の統一運動には疑いなく大きな分裂があったことであろう。
結論として、統一運動の婚約と結婚に対するアプローチはグループの結束と献身を強化するような形で機能していることが議論されてきた。「約婚・聖別期間」「結婚後の別居」「東洋との繋がり」において、潜在的に破壊的な現象が兆候として現れているが、これらはまだ大きな困難を作り出してはいない。
(注88)統一教会の信者は、世俗の世界の離婚率が33%であるのと比較して、彼らのグループでは1-2%であることに誇りを持っている。しかしながら、社会学的にはこの種の比較はまったく妥当ではない。カップルが離婚するのは、彼らが結婚したからではなく、夫と妻の継続的関係の中で生じた葛藤によるものであることは自明である。