実況:キリスト教講座24


キリスト教と日本人(12)

 そうした中で、1945年に終戦を迎えます。終戦を迎えると世の中はガラッと一変し、信教の自由が広く認められるようになります。1946年には日本国憲法が公布されます。そして、カトリック教会と日本ハリストス正教会はほぼもとの形に復興します。教会も元通りになったということです。そうすると、政府の圧力によって無理やり合同させられた日本基督教団はどうするのかということになったわけです。一部の教団は、旧教派の伝統を守るために離脱します。こうして戦後独立したのが、日本聖公会、日本基督教会(長老派)、日本福音ルーテル教会、日本バプテスト連盟、日本ナザレン教会(メソジスト系)、救世軍などです。そして一部の教団は、統合されたままの日本基督教団に残って、それがいまの日本基督教団になっているという状況です。

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 いま世界のプロテスタントの組織としては「世界教会協議会」(WCC)がありまして、そのもとに「日本基督教協議会」(NCC-J)があります。そのもとに、日本基督教団、日本聖公会、日本バプテスト連盟、日本福音ル-テル教会、日本バプテスト同盟、在日大韓基督教会などが所属しています。いまでも、この日本基督教団はいわゆる正統的なキリスト教会の中では最も信者数の多い教団です。

 さて、戦後GHQはキリスト教の伝道を全面的に支援し、多くの宣教師が来日しました。そして1951年に宗教法人法が制定されます。この宗教法人法の目的は、「宗教活動をしやすくするなど、信教の自由を尊重する目的で、宗教団体に法人格を与えることに関する法律」とされておりまして、基本的には戦前あまりにも宗教を弾圧しすぎたので、今度は信教の自由を尊重しようということで、戦後の法律が作られたということになります。ですから、1945年以降の戦後の日本というのは、キリスト教の拡大にとっては歴史上かつてないほどの恵まれた環境であって、それが実に70年にわたって長く続いているわけです。

 ということはもし本当ならば、戦後キリスト教が爆発的に伸びてもおかしくないような恵まれた環境が非常に長い間続いたことになります。では実際にどうだったかというと、1950年代にはさすがに信者数も大きな伸びを示したんですが、1960年代以降はふたたび停滞し始めて、いまだに人口の1%を超えていないというのがキリスト教の現状です。

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 これが戦後日本のキリスト教人口の推移を表したグラフです。カトリック、プロテスタント、オーソドックスのすべてを合わせた数です。1948年には30数万人で人口の0.42%でした。1950年代には伸びました。0.7%になるまでは順調に伸びたのですが、それ以降、0.8%程度で伸び悩むようになります。2008年まではそれでも微増と言えたのですが、それ以降は数の上でも、人口比の上でも減少局面に入ってしまいました。2008年からは日本の人口自体が減っていますので、数が減るのはいたし方ないとしても、割合まで減っているというのは深刻です。つまり、戦後の日本のキリスト教は、伸びるかなと思ったら伸びなかった、という結論になるのです。

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 より最近の細かい数値を示すとこのようになります。これは「キリスト教年鑑」から取ったデータですが、プロテスタントは2011年をピークに明らかに減少しています。カトリックも最近6年間は減少しています。オーソドックスはもともと少ないですが、やはり減少しています。これら三つを合わせた信徒数合計は2011年をピークにやはり減少しています。人口比も同様に、2011年をピークに減少しています。

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 実は、キリスト教人口を表示している資料には大きく分けて二つあり、この数字が大きく異なっていることがあるのでややこしいのです。一つは『宗教年鑑』で、これは文化庁文化部宗務課が発行しているものです。政府が発行するものですから、キリスト教の「正統」と「異端」を区別せず、自己申告した情報を掲載しています。もう一つは『キリスト教年鑑』で、キリスト新聞社が発行しているものです。これはキリスト教自身が発行するものですから、自分たちが正統と認めた教会のみを掲載しています。ですから「異端」を数に入れないのでキリスト教人口は少なくなります。こうした数え方によれば、キリスト教の人口は最も多いときで約110万人、人口の0.9%にわずかに満たないということになります。

 ところが、平成26年版『宗教年鑑』が平成25年12月31日現在のデータとして示している日本の宗教人口の大まかな割合は、以下のようになるのです。

神道系:9126万人(48.0%)
仏教系:8690万人(45.7%)
キリスト教系:295万人(1.6%)
諸教:907万人(4.8%)
総数:1億9018万人

 この統計ではキリスト教系が295万人もいて、人口の1.6%を占めるという、先ほどの『キリスト教年鑑』の数値のほぼ倍の勢力としてカウントされていることになります。しかし、このデータを見てすぐにおかしいと感じるのは、宗教人口の総数が1億9018万人となっていて、2倍とまでは行かないにしても、日本の総人口を遥かに超えていることです。この理由は明らかで、神道と仏教の大部分が「ダブルカウント」になっているためです。日本人は伝統的に地域社会では特定の神社の氏子となり、「家の宗教」として特定の仏教寺院の檀家となるという風習があるので、両方に属することになります。このデータは個人に「あなたの宗教は何ですか?」と聞いたものではなく、各宗教団体に信者数を聞いて合計したものなので、このような「ダブルカウント」が発生するということです。

 しかし、キリスト教人口が仏教や神道とダブルカウントされるということはあまり考えられませんし、『キリスト教年鑑』の統計も基本的には各教団の統計に基づいているわけですから、その数が2倍にもなるのはかなり不自然といえます。ちなみに、295万人という数字を平成25年の日本の総人口1億2730万人で割ると、キリスト教の人口比は2.3%という数字になります。果たしてこれほど多くのクリスチャンが日本にいるのでしょうか? その謎を解くカギは、このキリスト教人口の「内訳」にありそうです。

 文化庁が発行している『宗教年鑑』には、日本のキリスト教の各教派の信徒数もデータとして掲載されています。それを分類すると以下のようになります。

カトリック教会:444,719
日本ハリストス正教:9,863
プロテスタント諸派:511,193
都道府県所轄のキリスト教:3,430
その他のキリスト教:9,103
単立法人のキリスト教系:1,969,457
合計:2,947,765

 すなわち、最も多くのクリスチャン人口は、カトリックでもプロテスタント諸派の合計でもなく、「単立法人のキリスト教系」に属しており、その数は全体の3分の2を占めているのです。これはいわゆるメジャーな教団に属さないキリスト教徒ということになりますが、その中にはどこにも属さない田舎の小さなキリスト教会も、エホバの証人や統一教会のような巨大教団も入っているのです。どうやらこの辺に、日本のキリスト教の特殊性がありそうです。

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