2024年6月12~15日にかけて、フランス西部ボルドーで「新宗教研究センター」(CESNUR)の国際会議が開催された。6月13日に行われた、第8セッション「統一教会と日本・まさに起きていることは何か?」では、宗教法人・世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)が解散命令を請求されている日本の事案に焦点が当てられた。このシリーズでは、第8セッションの7つのプレゼンテーションの内容を紹介する。
第1回目の今回は、CESNURの創設者であり、専務理事であるマッシモ・イントロヴィニエ氏のスピーチである。
私がきょうお話することは、おそらく多くの方がすでに知っていることの概要ですが、中には初めて聞かれる方もいるかもしれません。日本の元首相である安倍晋三氏が2022年7月8日、奈良で山上徹也という男に殺害されたことは皆さんご存知だと思います。山上は警察に対し、安倍元首相が統一教会(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている)に友好的であったことを罰したかったと話しました。特に、安倍元首相は統一教会の創設者が設立したNGOであるUPF(天宙平和連合)の2021年のイベントにビデオで参加し、2022年のイベントにメッセージを送りました。
また、統一教会のボランティアが安倍元首相の選挙応援をしていました。山上は統一教会が嫌いな理由をこう説明しました。彼の母親は1998年に統一教会に入会し、現在も会員であり、統一教会への多額の献金が原因で2002年に自己破産したと言われています。
しかし、誰も質問しなかったのは、その時間的なギャップについてです。山上の母親は2002年に自己破産し、山上は2022年に安倍元首相を殺しました。20年後です。犯行前1カ月に犯人の山上に何が起こったかと言えば、反カルトのオンラインフォーラムに積極的に参加するようになりました。それが彼を行動に駆り立てたのかもしれません。
カナダ人の学者であるアダム・ライオンズ氏は、山上と反カルト活動家とのネット上の交流を再構築しました。そして山上は、日本の代表的な反カルト活動家に犯行声明のような文書を郵送し、自分が安倍元首相を、もしかすると文師の夫人をも殺害するつもりであることを伝えました。
この反カルト活動家は善良な市民で直ぐ警察に届けたのですが、残念なことに、警察に届けた時にはすでに安倍元首相は殺害され手遅れだったのです。つまり、教会は明らかに被害者だったのです。前述したように、山上は文師の夫人も殺害しようとしました。それなのに、反カルト団体は、事件の主犯は統一教会であると見せかけることに成功したのです。記者会見で日本の反カルト団体は、山上と彼の母親は100%被害者であり、カルトである統一教会が100%加害者であると言いました。しかし、山上の母親は自分が被害者であることを否定しています。
想定されたことですが、「背教者」である元信者が次々に名乗り出ました。ご存知のように「背教者」という言葉は侮辱ではなく、自分が離脱したグループに対して激しく反対する元信者を指しています。しかし、彼らは元信者の中では少数派にすぎません。
スクリーンに映っている女性は小川さゆり(仮名)といいますが、非常に有名になり、岸田首相にも会いました。彼女は二世ですが、自分は洗脳され特に母親からひどい虐待を受けたと主張しました。
しかし彼女にとって不幸だったのは、これは日本の主要メディアであまり報道されなかったのですが、福田ますみ氏が彼女のストーリーの嘘を暴いたことです。福田ますみ氏は受賞歴のあるジャーナリストで、社会学の学位も持っています。私は彼女にインタビューしました。彼女は無宗教で、安倍元首相暗殺の前までは統一教会にやや批判的な立場を取っていました。しかし、彼女は小川さゆりのストーリーを調査し、数十の資料を集め、日本の主要雑誌に記事を掲載し、彼女のストーリーが真実でないことを証明しました。
スクリーンに小川さゆりが映っています。彼女のツイッターの英語は酷いものです。彼女は日本にも「アブ・ピカール法」(フランスの反カルト法)のような法律があったらよいと言っています。つまり、彼女はフランスの法律を日本に輸入したいのです。このポスターは、日本政府が家庭連合に対して解散命令請求を出す前の段階で、日本の法律に基づき、家庭連合に対して質問権を行使した期間中に行われた巨大なキャンペーンの一環です。
エミリー・B・バランが「最後の手段(the nuclear option)」と言った解散命令の請求が、1年ほどで東京地裁に提出されることとなりました。そうこうしている間に、反カルト団体は政府を説得し、物議を醸した2つの法令を可決成立させました。1つは物議を醸している団体への献金を制限する法律で、もう1つは児童の教育に関するものです。
私たちは最近、『Bitter Winter』誌に記事を掲載しましたが、エホバの証人は情報公開法のような法律を用いて、日本政府から文書を入手し、児童の教育に関するガイドラインは反カルト団体が起草したものであることを証明しました。
政府はそれを成立させただけで、それは民間の反カルト団体が作ったガイドラインそのままだったのです。おそらく献金の制限に関する法律も同様であったと思います。献金への対策は、明らかに霊感商法をターゲットにしています。霊感商法は、統一教会が仏塔などの開運商品を法外な値段で販売したことを非難するために1987年に反カルト団体が生み出した言葉です。
さて、仏陀はもちろんのこと、仏塔は統一教会の神学の一部ではありません。この事業は実際に存在しましたが、それは統一教会のメンバー個人による事業であり、教会そのものが所有するものではありませんでした。おそらく教会員は多くの利益を出し、利益を自分たちの教会に献金したのですが、その教会がたまたま統一教会であったと言われています。
しかし、非常に重要な点は日本の法律が改正されたことに対応して、韓国の統一教会がその事業を中止すべきだと言い、2009年に日本の統一教会は新たな法律を遵守するというコンプライアンス宣言を行いました。
発表者の一人である弁護士からおそらく話があると思いますが、2009年以降、いわゆる霊感商法のケースは、ほんの一握りしかありませんでした。つまり、安倍元首相が暗殺されたときには、すでに霊感商法の問題は解決されていたのです。
政府が取り上げた2つ目の問題は、児童に対する宗教的虐待と呼ばれるもので、その規制はあまりに広範で悪質であったため、フィナンシャルタイムズをはじめとする主要メディアによって批判されました。
児童に関するガイドラインについて詳しく述べる時間はありませんが、そのガイドラインには統一教会ではなく、エホバの証人をターゲットにした内容があります。例えば、誕生日を祝わないのは虐待の証拠であるとされました。
これは統一教会とは関係ありませんが、エホバの証人とは大いに関係があります。さて、日本での論争には重要な政治的要素が含まれています。先ほど挙げたジャーナリストの福田ますみ氏は、この政治的論争に気づき、日本の反カルト運動の起源に関する文書を探り当てました。
日本の主要な反カルト団体が、社会党の事務所で開かれた会合で設立されたことを福田氏は文書で証明しました。会合には共産党の著名なメンバーも参加していたのです。
なぜ彼らがカルトに関心を持ったかというと、統一教会のボランティアが自民党の議員に対する選挙応援を行ったからで、それが地方自治体の選挙に大きな影響を与えたからです。特に京都府知事選では、選挙前の数日間に統一教会のボランティアが数百人動員され、選挙結果を大きく変えたことがありました。
選挙に負けた側は当然屈辱を味わいました。彼らはフランスに行ったそうです。興味深いことに、反カルト団体を組織する方法を学ぶためにフランスに行ったというのです。
彼らは、より確かな反カルト団体を組織して、保守的な宗教を排除しようと言いました。ここで保守的な宗教とは、主に統一教会を意味するのですが、エホバの証人など他にも保守的な団体があると言うのです。
スクリーンに映っているのは、本日の発表者の一人である堀守子氏の画像です。これが意味しているのは、当然のことではありますが、ヘイトクライムや差別の急増が起こっているのは、統一教会に対してだけではなく、文鮮明師夫妻によって設立された団体、たとえばUPFや世界平和女性連合などに対しても起きているということです。これらの団体の指導者が統一教会の信者であることは事実ですが、その会員のほとんどは統一教会員ではありません。もちろん、『Bitter Winter』誌はこの問題を何度も記事にして掲載し、エホバの証人に対する身体的暴力に関する記事も掲載してきました。
以上です。私は、日本の裁判所が下す結論について楽観視していません。なぜなら過去の記録を見れば、裁判所は90%以上政府に有利な判断をしてきたからです。したがって、我々の行くべき道はこの問題を国際化し、国際的な場に持ち込むことだと考えています。今日のこの会議はそのための一つの貢献に過ぎないのです。
このスピーチの英語のオリジナル動画日本語字幕付きは、以下のサイトで見ることができます:
https://www.youtube.com/watch?v=_3qem6hZI48