2024年6月12~15日にかけて、フランス西部ボルドーで「新宗教研究センター」(CESNUR)の国際会議が開催された。6月13日に行われた、第8セッション「統一教会と日本・まさに起きていることは何か?」では、宗教法人・世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)が解散命令を請求されている日本の事案に焦点が当てられた。このシリーズでは、第8セッションの7つのプレゼンテーションの内容を紹介する。第2回目の今回は、世界平和統一家庭連合の田中富廣会長のビデオメッセージである。
尊敬するマッシモ・イントロヴィニェ博士、アイリーン・バーカー博士、発表者の皆様、そしてCESNUR会議にご参加の皆様、日本世界平和統一家庭連合を代表して皆様にご挨拶できることを心から嬉しく思います。ヨーロッパの人々が国際人権規約で保障された宗教の自由を獲得するために、多くの犠牲を払って闘ってきた歴史に対して、私は深い尊敬と感謝の気持ちを持っております。それらを獲得する道は、とても長く険しい道でした。皆様がその努力を現在も継続していることに心から敬意を表します。
さて、このCESNUR会議で、私は、日本の宗教の自由が侵害されている状況、すなわち、家庭連合に対する常軌を逸した社会的、政治的、法的攻撃に関してお話しせざるを得ないことを残念に思います。ご存知のとおり、私たちの教会は韓半島に生まれた世界的宗教指導者 文鮮明師・韓鶴子夫人によって創設されました。以前の名称は、1954年に創立された世界基督教統一神霊協会として知られています。これは、文鮮明師ご夫妻の新しい聖書理解を基盤にした信仰運動ですが、我々の信仰や活動の中に韓国の文化や伝統が溶け込んでいることも、この運動をとてもユニークなものにしています。
第二次大戦後の混乱期に、文鮮明師が日本に宣教師を送ったのは、1958年のことでありました。そして日本での最初の礼拝は、参加者が2名でしたが、2024年現在の会員数は60万人を数えるまでに発展いたしました。しかし、韓国生まれの宗教団体が歴史的に複雑な関係を有する日本で拡大することは簡単なことではありませんでした。特に私たちが共産主義から国を守るための勝共運動を始めてからは、共産主義勢力の激しい攻撃を受けるようになりました。
やがて、キリスト教牧師や共産主義者、左翼弁護士、そして職業的改宗屋によって、会員への非合法的な拉致監禁・強制改宗問題が起こり、そして被害者は現在までに4,300人を超えます。世界的に話題となった合同結婚式や韓国生まれの宗教であること、そして熱心な若者による宣教活動は多くの日本人の親を心配させたことも事実です。しかし、文鮮明・韓鶴子ご夫妻は、決して敵を恨まず、日本が母の愛で世界を愛せよと激励してくださいました。そして多くの日本人宣教師、特に女性の皆様が世界の国々に出発して行きました。私は彼らの活動が世界中での宣教基盤をつくることに貢献したことに深く感謝しております。
教会のすべての人々にとって、安倍晋三元首相の殺害事件は衝撃的事件でした。犯人の動機が、母親が所属する家庭連合に対する強い恨みであったことが報道されたからでした。家庭連合に反対する勢力と結託した日本のメディアは、私たちへの激しい攻撃を開始しました。それはまるでヨーロッパ中世の魔女狩りのようでもありました。申し上げておきますが、安倍晋三元首相は我々の教会の会員ではありません。したがって、彼が我々のゆえに殺害される理由はまったくありません。犯人が逮捕されてからまもなく2年になりますが、殺害の動機や手製拳銃の製造方法などは開示されず、今なお裁判の審理さえ始まっていません。
しかし、事件発生以来、日本家庭連合の会員が受けた内外の圧迫は言語を絶するものでした。教会に対する器物破損や、会員であることがわかれば、アパートを借りることも就職することもできないという報告を私は数多く受けて来ました。メディアの攻撃は、家庭連合の友好団体、例えばUPFや、世界平和女性連合、そして青年学生連合にも及び、甚大な被害を出しました。やがて勝共活動に賛同する保守派政治家への攻撃が開始され、家庭連合問題は、社会問題から政治問題へとなりました。日本共産党委員長は「これが勝共連合との最後の戦い」とまで発言するようになりました。
このような状況の中で、2022年10月19日、岸田首相は宗教法人の解散命令請求の原因に関する法解釈の変更を強行し、家庭連合への政府による法的攻撃を加速させました。自由民主党幹事長は、党所属のすべての国会議員が私たちや関連団体との関係を断絶するよう指示しながら、各議員の思想・信条の検査を行いました。
そして、岸田首相によって家庭連合の解散命令を求める請求が、2023年10月に裁判所になされ、裁判所での審問が今年2月22日から始まりました。この詳細は、中山弁護士がお話しされると思います。解散命令は宗教法人への死刑宣告であり、団体としての死を意味します。解散命令が出されれば、すべての法人資産は法人解散後に国家に没収されることになるでしょう。解散命令により、日本の信仰の自由は大きく後退いたします。宗教活動への国家の管理と圧力が強まることとなります。
さらに、解散命令はどの宗教法人に対しても、政府が恣意的に運用することができることになります。なぜなら、どの宗教団体も何らかの民事的トラブルを抱えているからです。最近は、これらに気づいたいくつかの宗教団体が家庭連合への解散命令反対を表明するようになりました。
皆さんが良くご存知の1984年にイギリス統一教会が政府に勝訴した事件を私は忘れられません。この裁判は、ヨーロッパの理性の勝利であり、優れたバランス感覚の結果であります。残念ながら、日本では、裁判所がこのようなバランスの取れた判断をする保証がありません。日本では信仰の自由を勝ち取った歴史がないからです。私は、使徒行伝第5章にあるパリサイ派の指導者ガマリエルの言葉が好きです。初期のキリスト者に対する裁判で、彼らの信仰が真に神様から出たものであれば、それに反対する者は神の敵になるというものです。
ご参加の皆様、信仰の自由の喪失は、不寛容で攻撃的な社会を生み出すと思います。私は日本のみならず、世界中がそのようになることを大変心配しております。様々な花々がそれぞれの美しさを表現するように、多様性のある社会、相互の尊敬と理解で共に生きる社会、異なった信仰を尊重する優しさの溢れる日本と世界となることを願っております。会議の成功をお祈りいたします。ご清聴ありがとうございました。
このスピーチの動画は、日本語、英語、韓国語のキャプション付きで以下のサイトで見ることができます: