Moonism寄稿シリーズ09:2020年9-10月号


 私がこれまでに「UPFのビジョンと平和運動」と題してWorld CARP-Japanの機関誌『Moonism』に寄稿した文章をアップする「Moonism寄稿シリーズ」の第9回目です。World CARP-Japanは、私自身もかつて所属していた大学生の組織です。私が未来を担う大学生たちに伝えたい内容が表現されていると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。今回は、2020年9-10月号に寄稿した文章です。

第9講:人種問題を解決する交叉祝福

 人種差別は近代の世界が抱えていた大問題の一つであり、20世紀後半になってようやく本格的な解決への取り組みが始まりました。しかし、今年5月に黒人男性ジョージ・フロイド氏が警察官の不適切な拘束方法によって死亡させられた事件をきっかけに、米国で人種問題が深刻化しています。いまだに世界各地に根強く残っているこの問題の根本解決のために、文鮮明師御夫妻が推進する「交叉祝福」を紹介します。

<全米に広がる「ブラック・ライヴズ・マター」>
 2020年5月25日に米国のミネアポリス近郊で、アフリカ系アメリカ人の黒人男性ジョージ・フロイド氏が警察官の不適切な拘束方法によって死亡しました。フロイド氏が「呼吸ができない、助けてくれ」と懇願していたにも関わらず、白人警官は8分以上にわたって彼の頸部を膝で強く押さえつけ、フロイド氏を死亡させたのです。

 フロイド氏の死後、26日に行われたミネアポリス・セントポール地域でのデモ活動は当初平穏なものでした。しかし28日になると一部の参加者が暴徒化し、警察官への投石、店舗に対する放火や略奪を行うようになりました。これに対しトランプ大統領は「暴徒化した一部の抗議活動をANTIFAという極左組織が扇動している」として、軍の投入をほのめかすという事態になりました。

 ブラック・ライヴズ・マター運動はこの事件をきっかけに国際的な注目を集めると同時に、米国内での抗議行動に推定1500万人から2600万人を動員し、米国史上最大級の運動となりました。いまや人種問題は11月の米国大統領選の争点として急浮上しています。UPFでも6月5日に人種間の葛藤をテーマにしてオンラインセミナーを開催しました。

「ブラック・ライヴズ・マター」の集会

「ブラック・ライヴズ・マター」の集会

<人種差別の起源>
 人種差別の起源は、ヨーロッパ諸国による「新大陸の発見」であると言われています。スペイン、ポルトガル、イギリス、フランス、オランダなどの国々は、アフリカの中央部西海岸で黒人奴隷を買い取り、彼らを南北アメリカ大陸に送り出して植民地を建設しました。これに伴い、アフリカ系の人々の血を受け継ぐ者をすべて黒人として、黒人と白人に人種を分離する二元的な人種システムが生まれました。そして黒人はしばしば野獣に等しい野蛮人だとされ、人間性のかけらもないと考えられたのです。

 やがて世界の人類を人種によって分類する思想が生まれ、文明化したヨーロッパ人、堕落した文明人のアジア人、自然に近いアメリカ人、野蛮なアフリカ人というように、身体的特徴だけでなく、気質や習慣などの文化的特徴でも分類する価値観が生まれます。ヨーロッパ人こそが理性によって完成に近づいた人間であると前提され、その完成度の差異によって人種が分類されるようになったのです。

 アメリカ合衆国の建国にあたっては、「誰を国民とするのか」という国民の枠組みの決定が大きな課題となりました。その結果、米国は白人と非白人の人種差別を認めて制度化した最初の国となったのです。アメリカの黒人には選挙権が与えられなかっただけでなく、南部諸州では異人種間の婚姻が非合法化され、白人と黒人を公的な空間(交通機関、学校、公園、競技施設、宿泊施設、プール、トイレ、墓場など)で分離しようとしたのです。

<人種差別がピークに達した20世紀前半>
 差別に遭ったのは、なにも黒人だけではありません。「黄禍論」は、アジア人を脅威だとする主張です。これは労働力として大量に押し寄せた中国人に対する恐怖心から始まったのですが、やがて日本人やインド人などの他のアジア人の移民をも規制し、その権利を制限する方向に向かいます。「白豪主義」は、オーストリアが白人国家を作るために、有色人種の移民を制限した政策のことで、1901年から1970年代の初めまで続きました。同じようなことがアメリカ合衆国、カナダ、ニュージーランドでも起こりました。ヨーロッパでは、「ジプシー」と呼ばれた集団やユダヤ人が人種的・民族的差別の対象となりました。南アフリカのアパルトヘイト体制も、人種差別を国家の政策として正当化したものです。このように人類が大きく進歩した時代であると考えられている20世紀に、最も甚だしい人種差別が行われていたのです。

 しかし、第二次大戦後にその状況は世界的に大きく変化しました。人種差別撤廃の大きな原動力になった運動の一つが、キング牧師の“I have a dream.”という言葉で有名なアメリカの公民権運動です。このころになってようやく、人種差別が当然であった時代が終わり、人種差別が社会的に認められない時代が来ました。そして人種に基づく差別的な制度が撤廃されていったのです。

<生物学的には意味のない「人種」>
 そもそも「人種」とは、身体的特徴で分類した人類の下位の区分のことであり、このような人類の体系的分類は18世紀に誕生しました。人類という種に複数の亜種が設けられ、白人、黒人、アジア人、アメリカ先住民に対応する人種が、人類の亜種と考えられたのです。しかし現在では、人類は1種1亜種で、複数の亜種は存在しないと考えられています。すなわち、生物学的な分類としての「人種」は存在せず、むしろそれは社会的・文化的な分類であると言えます。したがって「人種主義」は科学的・客観的根拠なしに、身体的特徴を指標として人を差別する「思想」なのです。

<人種問題に関する文鮮明師の観点>
 文鮮明師は、人種問題の本質とその解決法について以下のように語っておられます。
「神様の目には、皮膚の色の違いはありません。神様の目には、国境も存在しません。神様の目には、宗教と文化の壁が見えません。このすべては、数万年間人類の偽りの父母として君臨してきた悪魔サタンの術策にすぎません。」
「白人と黒人が、東洋と西洋が、ユダヤ教とイスラーム(イスラム教)が、さらには五色人種が一つの家族になって生きることができる道は、交叉結婚の道以外にほかの方法があるでしょうか?」(2005年 9月12日「神様の理想家庭と平和世界のモデル」より)

 「人種」に科学的根拠がなく、その差別が偏った思想に基づいた幻想にすぎないのであれば、それを解消するための根本的な解決法は、異人種間の結婚を推進し、真の愛によって人種の壁をなくしてしまうことです。文鮮明師御夫妻の推進する「交叉祝福」によって生まれてきた子供たちは、異人種間のハイブリッドであり、人種問題を超越した真の愛の結実として生まれてきた、「新しい人類」なのです。

異人種間の「交叉祝福」を受ける家庭連合の若者たち

異人種間の「交叉祝福」を受ける家庭連合の若者たち

異人種間の「交叉祝福」を受ける家庭連合の若者たち

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