BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ16


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、私が日本語訳を担当したこともあり、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。昨年7月8日に起きた安倍晋三元首相暗殺事件以降の日本における家庭連合迫害の異常性を、海外の有識者がどのように見ているかを理解していただくうえで大変有益な内容であると思われたので、私の個人ブログでシリーズ化して紹介することにした。

日本における反統一教会キャンペーン:共産党の影

12/19/2022MASSIMO INTROVIGNEA

ある雑誌のルポが、反共の宗教団体に対する憎悪を煽る上で日本の共産主義者が重要な役割を果たしたことを暴露した。

マッシモ・イントロヴィニエ

反共グループUNITEのデモンストレーション
反共グループUNITEのデモンストレーション。UNITEは統一教会・家庭連合と関りがある。出典:UNITE。

2022年7月8日、日本の安倍晋三元首相は、統一教会(メディアはいまだに旧称の「統一教会」を用いているが、現在は世界平和統一家族連合と呼ばれている)の関連団体に協力したことを成敗したいと主張する男によって暗殺された。殺人者の母親は何十年にもわたる統一教会のメンバーである。彼女は2002年に破産したが、息子によれば、それは彼女が宗教団体に捧げた過度な献金が理由であったという。

明らかに、安倍と統一教会は犯罪の被害者であり、犯人は故文鮮明師によって創設された運動を憎んでおり、反カルトの敵対者たちとソーシャルメディアで交流していた。ところが、真実と公平さの両方を完全にひっくり返して、統一教会がこの犯罪に対して何らかの責任があるかのように説明されたのである。もし殺人犯の母親が統一教会に多額の献金をしなければ、その息子は安倍に対する怨みを抱くことも、彼を殺すこともなかっただろう、という歪んだ議論が用いられた。続いて国家的なキャンペーンが行われ、殺人犯のことはほとんど忘れられ、メディアと政府のキャンペーンはターゲットを統一教会に絞り、ついには宗教法人の解散を目的とした法的手続きにつながる可能性のある、政府による質問権の行使が行われたのである。

安倍暗殺の後、これらのキャンペーンはほぼ一夜にして始まった。陰謀論者によらずとも、これらがかなり以前から準備されたものであり、発射の好機をうかがっていたことは明らかである。

現在、福田ますみというジャーナリストが「HANADA」という雑誌にシリーズ記事を執筆している。その第二弾までが既に出版されており、この問題に光を投げかけている。「HANADA」は保守系の雑誌だが、極右ではない。事実、安倍自身も殺害される数か月前に「HANADA」とのインタビュー記事を用いて首相を辞任した後の自身の政治的見解を知らせている。

HANADA
「HANADA」2022年12月号

福田の記事に入る前に、日本人以外の読者にとっては驚くべき内容について語っておかなければならない。日本には共産党が存在し、それは民主主義国家においては最も強力な共産党の一つなのである。それは25万名の党員を擁し、選挙の際に上がったり下がったりするものの、最盛期には1949年に衆議院に35議席、1972年に38議席、1979年に39議席を確保していた。1951年にはスターリンの指示に従い、同党は「51年綱領」を採択して武装闘争を呼び掛け、警察を襲撃したり山村工作隊を組織したりした。日本社会からの強い拒否反応を受け、1955年に共産党は「51年綱領」を撤回し、非暴力的手段によって共産主義を追求すると約束した。当然のことだが、多くの日本人が1950年代初頭の赤い暴力を忘れてはいない。

1996年まで、日本には社会党も存在した。それは共産党よりは穏健であったものの、公然とマルクス主義を掲げ、共産主義者と協力する左派も含まれていた。社会主義者の二つの派閥は分裂と合同を繰り返した。

日本の共産主義と社会主義の歴史において二つの重要な問題が、1978年の京都府知事選挙と、その翌年に始まったレフチェンコ事件であった。京都は左翼の知事が28年間にわたって務めてきた左翼の牙城であり、1978年の府知事選挙は熾烈な争いとなった。最終的に自由民主党が指名した候補者が勝利したことが、日本の共産主義者にとって大打撃となった。統一教会の創始者である文師によって1968年に創設された国際勝共連合は、数千人のボランティアを動員し、京都府知事選において重要な役割を果たした。このことが共産党の指導者である宮本顕治の知るところとなり、党機関紙の『しんぶん赤旗』1978年6月9日付は党員に対して「国際勝共連合退治は聖なる戦い」であると呼びかけた。

宮本顕治
1978年当時の宮本顕治(1908-2007)

1979年にソ連のKGBエージェントで日本におけるトップスパイのスタニスラフ・レフチェンコが米国に亡命した。彼は共産党と社会党の両方と関係していた著名な日本の政治家が、報酬をもらって働くソ連のエージェントであったと証言した。レフチェンコの暴露は、後にソビエト連邦の崩壊後にロシアの公文書の中から発見された文書によって事実であったことが確認されているが、1983年に社会党はこれに対し、統一教会の関連団体である勝共連合がCIAを通して画策した陰謀であると非難することで応酬した。勝共連合は社会党を訴えた。この訴訟は後に社会党が勝共連合に対して200万円の解決金を支払うことで和解した。

レフチェンコ事件は日本においてすさまじいセンセーションを巻き起こし、スパイ防止法制定運動を後押しした。勝共連合はスパイ防止法を支持する主要勢力であった。既にレフチェンコ事件が始まる前から、勝共連合は1978年に「スパイ防止法制定三千万人署名国民運動」を立ち上げ、1979年には「スパイ防止法制定促進国民会議」の創設に加わった。

勝共連合のイベント
勝共連合のイベント「日本共産党糾弾大会」(1972)。出典:勝共連合

1985年、自由民主党はスパイ防止法案を国会に上程した。それは左翼野党と多くの日本のメディアからの激しい反対を引き起こした。日本のメディアも左傾化しており、同法案が言論の自由を制限するのではないかと懸念した。結局、法案は通過せず、それに続く試みも失敗に終わったが、2013年に安倍政権が提案した国家秘密法は国会で承認された。2013年の法律は、勝共連合とスパイ防止法の支持者たちが提起した懸念の一部(すべてではない)に対処している。

1970年代から、勝共連合は日本の左翼にとって棘であった。福田の調査記事は、左翼の勝共連合に対するいら立ちと、統一教会の信者らによる「霊感商法」(開運や霊的恩恵をもたらすとされている物品を、その物質的価値よりも高額で販売する商法)反対キャンペーンを結び付けている。この概念は後に同教会への献金にも拡大され、それはまことに奇妙なことに、「商品を伴わない霊感商法」であると定義された。

1981年に社会党の肝煎りで社会文化法律センターが設立された。福田は、それが共産党によって設立された弁護士団体や、親北朝鮮ロビーとも緊密な協力関係にあることを証明している。1986年に社会文化法律センターは他の組織とともにスパイ防止法に反対している。1987年1月31日、同センターの機関紙「センターニュース」は、「霊感商法」を非難しながら以下のように主張する山口広弁護士の記事を掲載している。「そこで得た金は、統一協会や勝共連合の国家秘密法制定[即ち、スパイ防止法]制定の策動の資金に流れている。さて、この度霊感商法問題に取り組んできた社文の会員も参加し、『霊感商法被害救済弁護連絡会』(仮称)が結成されることになったので、この場を借りて以下のとおり、会員の皆さんの参加を呼び掛ける次第である。」

山口広弁護士
山口広弁護士。Twitterより

山口は勝共連合がレフチェンコ事件に関連する名誉棄損で社会党を訴えた裁判で社会党を代理し敗残を嘗めた弁護士であった。福田によって発見された彼の重要な記事は、1987年1月31日に発行された。二週間後の2月13日、山口は同僚弁護士である伊藤和夫、東澤靖と共に司法記者クラブで記者会見を行い、「霊感商法被害救済担当弁護士連絡会」の発足を発表した。この組織は、現在の反統一教会キャンペーンの背後で働く原動力である「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の前身である。東澤靖弁護士もまた社会文化法律センターのメンバーであった。彼は以前に暴力活動で訴追された左翼過激派や親北朝鮮ロビイストの代理人を務めている。

1987年3月19日、山口はマスコミの取材に応じて、弁護士グループは「被害者を助けたかっただけです」と語っているが、一部の弁護士は最初の段階では彼らに連絡してきた被害者はごくわずかしかおらず、被害者を「発掘」しなければならなかったことを認めている。しかしそれ以前の2月20日、山口は社会党の機関紙「社会新報」で、弁護士連絡会の最終的な目標は統一教会の「宗教法人認可を取り消すよう文部省に要求」することにあると語っている。2022年に起きていることは、既に1987年に山口の頭の中にあったということだ。

Bitter Winterが以前に説明したように、霊感商法に関するプロパガンダのほとんどは嘘である。そして統一教会信者による商品の販売は、「霊感」によるものであるか否かに関わらず、福田が強調するように、勝共連合を支援したことはなかった。一方で、統一教会信者の拉致監禁・強制改宗という違法行為は、強制改宗された元信者が自分の所属していた教会を相手に訴訟を起こし、同じ弁護士が代理人を務めることにより、弁護士連絡会を支援したかもしれない。

福田の連載で興味深いのは、彼女が「ミッシング・リンク」を提供していることだ。福田は統一教会に反対している者たちがすべて共産主義者や社会主義者だと主張しているわけではない(もちろん私もだ)。反カルト主義は一つ以上のルーツを持っている。

日本における共産党のプロパガンダ
日本における共産党のプロパガンダ。アニメ風のキャラクターが「We Are共産党、政府をノックアウト。」と歌っている。スクリーンショット

しかし彼女が証明しているのは、反統一教会の弁護士連絡会は共産党と関りのある社会主義者の組織の中で創設され、霊感商法の議論を用いて母体組織である統一教会を破壊することにより、勝共連合およびその反共活動と闘うことを明示的な目的として創設されたということだ。山口と社会文化法律センターの同僚たちは、勝共連合と統一教会が破壊されなければならないと説くが、それは、その反共キャンペーンが奏功し、彼らが支持する政党に多大な損害を及ぼしたからである。

おそらく、福田の記事がなくともこの結論に到達することは可能であろう。2022年11月6日、「サンデー毎日」誌上で、共産党の志位和夫委員長はジャーナリストの田原総一朗と統一教会・家庭連合問題について対談している。

志位和夫・共産党委員長
志位和夫・共産党委員長

田原が「共産党からすれば統一教会との最終戦争だ」と言うと、志位委員長は、「長い闘いだった。彼らが反共の先兵として最初に牙を剥いたのは、革新府政を7期28年務めた蜷川虎三京都府知事の後任を選ぶ1978年の知事選だった」と答え、「今度は決着つけるまでとことんやりますよ」と述べた。

西洋のジャーナリストの一部も含め、反統一教会の弁護士たちの言葉をオウム返しのように真似している者たちは、いったい誰の「最終戦争」に加担しているのか理解しているのであろうか?

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e5%8f%8d%e7%b5%b1%e4%b8%80%e6%95%99%e4%bc%9a%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%b3%e3%83%9a%e3%83%bc%e3%83%b3%ef%bc%9a%e5%85%b1%e7%94%a3%e5%85%9a%e3%81%ae/

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