BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ38


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

血まみれの政権と「飲酒運転者」:ワシントンDCを揺るがすIRFサミット

02/13/2024 MASSIMO INTROVIGNEA

今年最大の宗教の自由イベントは、中国とロシアの残虐行為に異議を唱えたが、日本のような民主主義国家が危険な飲酒運転者に見えることも指摘した。

マッシモ・イントロヴィニエ

IRFサミットのパネリスト達
RFサミット2024で日本について講演するマッシモ・イントロヴィニエ氏。左はスーザン・ジョンソン・クック氏。右はヤン・フィゲル氏とW・コール・ダラム氏。

敵もいれば、友達もいる。しかし、友達が酔って車を運転している場合、止めるよう説得するのが最善の友情だ。この説得力のある比喩は、USCIRF(米国国際宗教自由委員会)の委員長を二期務めたカトリーナ・ラントス・スウェット氏が、他の民主主義諸国が日本に対してとるべき態度を説明するために用いたものである。日本では、統一教会(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている)に対する誤った反対運動が、同教団の解散命令請求と、あらゆる宗教の自由を厳しく制限する法律や規制につながっている。

ラントス・スウェット氏は、ワシントンDCのワシントン・ヒルトン・ホテルで開催された「国際宗教自由(IRF)サミット2024」の全体会議で、安倍暗殺後の日本の危機について講演していた。そこでは私も話をしたが、元米国国際宗教自由特使のスーザン・ジョンソン・クック氏、ユタ州プロボのブリガム・ヤング大学の法と宗教研究国際センター所長のW・コール・ダラム氏、欧州連合以外の地域における宗教の自由を促進するための欧州委員会元特使のヤン・フィゲル氏もスピーチした。統一教会の信者たちは、ディプログラミング目的の拉致監禁、棄教強要をされた体験を話し、ここ数年日本で彼らを襲った差別について語った。

堀守子氏の証言は特に力強かった。彼女は、統一教会の指導者である韓鶴子総裁によって創設された組織である世界平和女性連合の会長を務めているが、その会員の大部分は統一教会の信者ではない。安倍晋三暗殺後、女性連合は日本の反カルト主義者やメディアから中傷され、同連合の女性たちは一貫して差別されてきた。そして今、日本はその攻撃の矛先をエホバの証人に拡大しており、その次が誰になるかは分からない。

堀守子
堀守子氏の証言

ラントス・スウェット氏は、もう一人の元米国国際宗教自由特使であるサム・ブラウンバック氏とともにIRFサミットの議長を務めている。IRF サミットは、数千人の参加者が集まり、ブースやワークショップを通して数カ国における数多くの異なる宗教が抱える問題を提示する、世界最大の宗教の自由の集まりとして台頭した。

サム・ブラウンバックとカトリーナ・ラントス・スウェット
サミットに出席したサム・ブラウンバック氏とカトリーナ・ラントス・スウェット氏

ヤン・フィゲル氏が指摘したように、2024年のIRFサミットは、2022年の安倍暗殺以降に進展があったことを示している。もともと米国では、アジアの重要な同盟国である日本を批判することに一定の抵抗があったが、今では、日本が民主主義世界で宗教の自由に対する最悪の危機を引き起こしたことに、ほぼ疑念の余地はないと考えられている。しかし、それだけではない。宗教の自由に関して言えば、日本は民主主義諸国の中で飲酒運転者のように見えることがあるが、他のドライバーも酔っぱらっていて、その中にはフランスも含まれる。フランスが既に悪法である2001年の反「カルト」法を、さらに悪化させるための改正案を出したことも言及された。

宗教の自由を擁護する世界の関係者のほぼ全員がサミットに出席し、その中にはチェコ共和国のロバート・レハク大使も含まれていた。彼は宗教の自由を支持する37か国の連合である国際宗教または信仰の自由同盟の会長を務めている。マイク・ペンス前米国副大統領、現職の宗教または信仰の自由に関する国連特別報告者であるナジラ・ガニア氏、英国の宗教または信仰の自由特使であるフィオナ・ブルース氏、現職の米国国際宗教自由特使であるラシャド・フセイン氏、現職の米国下院議長であるマイク・ジョンソン氏もいた。さらに、世界中から何百人もの国会議員、宗教指導者、ジャーナリスト、NGOの指導者、学者が集まった。

マイク・ペンス
サミットに出席したマイク・ペンス前米国副大統領

問題の半分は、民主主義国の飲酒運転者たちである。彼らの宗教的マイノリティに対する弾圧はそれほど血なまぐさいものではないが、それが民主主義社会において起こったという事実が、世界の他の国々にとって悪い手本となっている。宗教の自由の問題の残りの半分は、全体主義体制もしくは十分に民主的とは言えない政権である。日本やフランスには飲酒運転のドライバーがいるが、一方で戦車を運転し、その車輪で意識的に宗教の自由を押しつぶそうとする者たちもいる。これはロシアが不法占領したウクライナの領土における宗教の自由に対する残忍な抑圧を表すのに適切なたとえである。しかしそれは同時に、ロシア本土、中国、北朝鮮、ニカラグアで起きていることをも描写している。多くの証人が、宗教の自由において世界で最悪の国は中国であると指摘している。そうした証人の中には、ルシャン・アッバス氏のようなウイグル人、ベンジャミン・ロジャース氏のような香港の自由を求める活動家、チャイナ・エイドのボブ・フー氏のような迫害されているキリスト教家庭教会の擁護者、法輪功学習者、チベット仏教の信者たちが含まれている。パキスタンは今月の総選挙を心待ちにしているが、この国を完全な民主主義国家とみなすことはできない。なぜなら同国の法律では冒涜行為を死刑で処罰しているし、アフマディー教徒や他の少数派に対する暴力、誘拐、イスラム教への強制改宗が行われ、ヒンズー教やキリスト教徒の少女(多くは未成年)がイスラム教徒との結婚を強制されているにもかかわらず、警察は見て見ぬふりをしているからである。他の地域では、イスラム教徒が差別されたり、反ユダヤ主義がイスラエル政府に対する批判を利用して再び醜い頭をもたげたりしている。ナイジェリアではキリスト教徒が、イランではバハイ教徒が虐殺され続けている。

ルシャン・アッバス
ウイグル人権プロジェクトのブースに立つルシャン・アッバスさん

もちろん、IRFサミット2024で議論された宗教の自由の侵害のすべての事例について一つの記事で言及することは不可能だ。Bitter Winterはいくつかのセッションにおいて、宗教または信仰の自由を人権促進のグローバルな取り組みの中心という正しい位置に置こうとしている国際的な運動にとって、貴重な資源であると認められたことを誇りに思う。そして私たちは、全体主義者の戦車によるウイグル人とウクライナ人の犠牲者、そして飲酒運転者による日本人の犠牲者の声を胸に刻んで、ワシントンを離れる。

ルーク樋口
サミットで証言するルーク樋口氏。米国統一教会の日本人指導者である彼は、数か月間監禁された後、ディプログラマーたちから大胆に逃走した。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e8%a1%80%e3%81%be%e3%81%bf%e3%82%8c%e3%81%ae%e6%94%bf%e6%a8%a9%e3%81%a8%e3%80%8c%e9%a3%b2%e9%85%92%e9%81%8b%e8%bb%a2%e8%80%85%e3%80%8d%ef%bc%9a%e3%83%af%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%b3%ef%bd%84/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ37


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

日本は国家主導のディプログラミングを導入しようとしているのか?

02/06/2024 MASSIMO INTROVIGNEA

1月19日の閣議で、背教者である元メンバーの助けを借りて、統一教会の現役信者を「カルト」からの脱会に導くことを目的とした提案がなされた。

マッシモ・イントロヴィニエ

統一教会の背教者や反対者と会う日本の大臣や政治家
統一教会の背教者や反対者と会う日本の大臣や政治家の絵画的表現(AI生成アート)

すべては2022年7月8日の安倍晋三元首相暗殺事件から始まった。犯人の男は、安倍氏が統一教会(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている)のイベントにメッセージを送ったので、彼を成敗したかったと主張した。暗殺者は、同教団の信者である自分の母親が2002年に破産したのは、教団への過度な献金のせいであるとし、それゆえに自分は統一教会を憎んだと語った。

暗殺者を非難するのでもなく、あるいは彼の弱い心を刺激したかもしれない反カルトのプロパガンダを責めるのでもなく、メディアは全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)に煽られて、統一教会に反対するキャンペーンを開始した。全国弁連は1987年に左翼弁護士たちによって設立された反カルト組織であり、彼らによれば、その意図は日本の統一教会の関連団体による反共キャンペーンの成功に歯止めをかけることにあったという。

全国弁連とメディアが極めて悪意に満ちたキャンペーンを仕掛けた結果、2023年に岸田政権は家庭連合に対する宗教法人解散命令を裁判所に請求することを決定した。同時に政府と議会は、「カルト」全般および特に統一教会に対する新しい法律を制定し、指示や規則を出した。一つは、「論争のある」宗教団体への献金を、単に献金者が洗脳によって操られたと主張すれば簡単に取り戻せるようにした。洗脳は信憑性を失った理論だが、日本政府はこれを採用したようだ。

もう一つの命令は、宗教団体が未成年者に「教えを吹き込む」ことを禁じている。その規定は明らかに統一教会だけでなく、エホバの証人や保守的なクリスチャングループをも標的にしたものだ。三番目の法律は「カルト」の「被害者」に対する支援を提供する。最近の運用基準案では、非常に広範な「被害者」の概念を提示しており、それには自分は被害者ではないと主張する人々も含まれてしまう。ここでも、その理由は「洗脳」である。実際の運用においては、家庭連合の信者はすべて、運動の中にいて完全に幸福だと言っている者も含めて、「被害者」になるのだ。

この日本の長編物語では、しばしば偏見、頑迷さ、宗教の自由に反する措置の蔓延が底をついたかと思うと、翌週または翌月には政府がさらに悪い新しい何かを提案しているのを発見するだけである、という印象を受ける。

洗脳のイメージ
1950年代に「洗脳」という概念がアメリカのプロパガンダによって導入され、なぜソ連や中国が戦争捕虜や反対者の「脳を変化させる」ことができたのかを説明した。(1950年代のプロパガンダポスターのAI生成による制作)。この疑似科学的な理論は後に「カルト」に適用された。

4000人以上の統一教会のメンバーが「ディプログラミング」と呼ばれる犯罪行為に遭った。すなわち、彼らは拉致され、監禁され、信仰を放棄し教団を去ることに同意するまで、身体的・心理的な暴力にさらされた。日本の最高裁は2015年に、この行為は違法であると宣言し(2014年の高裁判決を支持)、12年以上にわたり監禁されていた統一教会メンバーである後藤徹に対する莫大な賠償金の支払いを認めた。

その後もいくつかの事件が発生したが、一般的な法的コンセンサスは、ディプログラミングは日本で非合法化されたというものだった。これは、前世紀から犯罪であるとみなしていた世界のほとんどの民主主義国に比べると、やや遅れてのことであった。

しかし、現在、日本では国が主導するディプログラミングの再導入が検討されている。これは広範な「被害者」の概念が提示されていることと、日本政府が洗脳という疑似科学的な理論を支持していることから導かれる論理的な帰結である。もし日本の統一教会メンバーのすべてが「被害者」であり、彼らが「洗脳」の影響下にあるために自分たちが「被害者」であることに気付いていないとするならば、唯一の「救出」方法はディプログラミングである。

これは民主主義国では新しいことだが、中国やロシアではそうではない。“Bitter Winter”などの人権メディアは、中国で定期的に行われている国家主導のディプログラミング(もともとアメリカのディプログラマーたちはここで助言を受けた)や、ロシアでロシア正教会が政権と協力して運営している「カルト信者」の「リハビリテーション・センター」について報じている。

しかし、日本は「カルト」のメンバーに強制的「カウンセリング」、すなわちディプログラミングを受けさせる最初の民主主義国になるであろう。1月19日、「旧統一教会の被害者支援に関する関係閣僚会議」について計画する閣議が行われた。(「旧」とあるのは、現在は家庭連合と呼ばれるため)。日本の主要新聞の一つである「日経新聞」が議論の内容を報じ、その後、政府は自身のウェブサイトで草案の主要なポイントを発表した。

議事録の中で気になる点は3つある。まず、政府が「背教者」(すなわち敵対的な)元信者たち(おそらく「全国霊感商法対策弁護士連絡会」によって選ばれ、当局に紹介された者たち)と協力することが提案されている。その中には統一教会を離れた元二世信者も含まれる。「日経新聞」がまとめたように、彼らは「研修の講師として相談窓口の対応者に助言・指導する。・・・被害者への適切な支援に繋げる」。これらのいわゆる「被害者」は、家庭連合の現役信者である。さらに、「マインドコントロール下にある被害者は悩みに気づかない場合も多い。元信者らが相談員への講習で自身の経験を踏まえ知見を伝える。」と書かれている。

小川さゆり
「小川さゆり」(仮名:スクリーンショット)は、日本の統一教会の最も有名な元二世信者の「背教者」である。彼女の物語は、受賞歴のあるジャーナリスト福田ますみ氏によって否定された。

第二に、政府の支援のもとで背教者の元信者から訓練を受けたこれらの「カウンセラー」は、自分が「被害者」であるという自覚のない「被害者」に対して、「サポート」を提供するであろう。これはディプログラミングの洗練された隠喩にほかならない。彼らはまた、家庭連合に喜んで留まっている二世信者にも同じ「サポート」を提供し、彼らが通う学校に直接働きかけ、同じ「サポート」を受けさせるであろう。それは彼らが「洗脳されている」という主張のゆえである。

第三に、「収入が少なく住む場所に困っている」宗教二世らに、「シェルター」を造るという奇妙な提案がなされている。貧困のゆえにホームレスになっている家庭連合の二世信者の事例は報告されていないので、これは実在しない問題である。しかし、あからさまに語られたこの手段の真の目的は、二世信者を「親など信者から離れて」住まわせ、彼らが「カウンセリング」を受けて「生活の再建」をしやすくするためなのである。

これらの「シェルター」は、中国共産党が「カルト信者」とその子供たちをディプログラムする「愛の家」に非常によく似ている。彼らはここで「カルト」を否定し、「共産党を固く信じ、党を愛し、党に従う」ように教え込まれるのである。

この比較は驚くべきものではない。事実、日本共産党の公式ウェブサイトによれば、2023年10月16日に「盛山正仁文部科学大臣が日本共産党書記局長の小池晃氏の参議院事務所を訪れ、統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令を東京地裁に請求したことを報告した。小池氏は政府与党に対して、現役信者に対するケアに責任を持つよう求めた。」とある。この「ケア」が何を指しているかは容易に推測できる。おそらく小池氏は、中国の「愛の家」という良き見本を大臣に教えたのであろう。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E4%B8%BB%E5%B0%8E%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%92%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%81%97%E3%82%88/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ36


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

日本は「カルト」の「被害者」を人為的に増やす運用基準を提案している

2/5/2024 MASSIMO INTROVIGNEA

新しい草案のもとでは、もし反カルトの弁護士や政府が、彼女は被害を受けたと言うなら、本人が否定しても「被害者」にされる。

マッシモ・イントロヴィニエ

文部科学省
文部科学省 Credits.

2023年12月30日、日本で令和5年法律第89号が施行された。それは「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律」という長い名前が付いている。これは、2022年の安倍晋三元首相暗殺事件後に政府が行った、反統一教会(現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている)キャンペーンの一環である。暗殺犯の男は教団を嫌い、教団の取り組みに協力した政治家を成敗することを望んでいた。政府は現在、東京地方裁判所に対して家庭連合を宗教法人として解散させる請求を出しており、手続きは進行中である。

より過激な提案は拒否されたが、法律第 89 号は、解散を申し立てられた宗教法人に対し、不動産を処分する前に財産に関する定期報告書を提出し、行政機関に通知するよう命じている。 この法律はまた、特定の状況下で、これらの宗教法人の「被害者」がその団体の財産目録を閲覧して調査することを認めている。

法律第89号は「被害者」の概念が曖昧であると批判されており、文部科学省はこれに対する運用基準案を公表した。これもまた長いタイトルがついており、「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律に基づく指定宗教法人及び特別指定宗教法人の指定に関する運用の基準案」となっている。この運用基準案は最終版が成立する前に、パブリックコメントを募集している。

法律第89号によれば、解散請求が提出された宗教法人は、「指定宗教法人」と「特別指定宗教法人」の2種類に分類される。もしある団体に「相当多数」の「被害者」がいれば、「指定宗教団体」に指定されるであろう。もしその財産が散逸する恐れがあれば、その団体は「特別指定宗教法人」とみなされるであろう。「特別指定」のリストに入れられた団体は、財産に関してより厳格な監視の対象となり、その「被害者」(つまり彼らの弁護士)はその法人の所有する物件や口座により容易にアクセスできるようになる。

運用基準は「被害者」と「相当多数」の2つの概念を明確にすることが期待されるが、実際にはあまり明確になっておらず、むしろ文部科学省による主観的で恣意的な評価に広範な裁量権を持たせている。

「被害者」とは、解散請求の根拠となる「特定不法行為」によって被害を受けたとされる人々であると定義され、解散請求が提出される前であっても後であってもかまわない。これらは「特定不法行為に関し、法律上の権利(例えば損害賠償請求権など)を有し得る者」である。

問題は、特定の人物が「特定不法行為」に基づく「法的権利を有し得る」とみなされ、したがって「被害者」とみなされるかどうかを、どのように知るかである。この運用基準は参議院(日本の国会の上院に相当)の法務委員会が2023年12月12日に発表した意見を明示的に肯定して引用している。この意見によれば、「請求等を行う意向がいまだ明確でない者もこの被害者となり」、さらに「すでに賠償等を受けた者」も含まれるという。

参議院本会議場
参議院本会議場 Credits.

法務委員会に敬意をもって申し上げるが、これは無理筋である。このような定義の目的は、単に「被害者」の数を膨らませることであり、宗教団体を相手取った訴訟で勝訴した人々を遙かに超えている。(論理的に、客観的な基準を適用した者たちだけが「被害者」として数えられるべきである。)法務委員会と運用基準によれば、「被害者」には宗教法人と和解して賠償等を受けた人々も含まれるという。しかし、そもそも和解の目的は、争われていることの真実を確立することではなく、当事者間で相互に受け入れ可能な合意に達することによって、それ以上の高額な法廷手続きを回避することにほかならない。ある人が宗教法人との和解に至ったという事実は、その人が「被害者」であることの証明にはならない。

さらに奇妙なのは、宗教法人に対して請求を提起する意向がない人々への言及である。これらの人々は宗教団体に満足している現役信者か、特に恨みを抱いていない元メンバーかもしれない。にもかかわらず、統一教会や他の「カルト」に反対しているキャンペーンの背後にいる反カルト弁護士、メディア、または文部科学省は、たとえ彼らが宗教団体に不満を持っていなかったとしても、そうした不満を持っている「はずだ」と主張するかもしれない。持っていないとすれば、それはおそらく彼らが「洗脳されている」からであり、それゆえに「被害者」としてカウントされるのだ。

文科省が「被害者」としてカウントした人の地位に対して、宗教法人が異議を唱える手続きについては一切の言及がないことにも留意すべきだ。実際上は、しばしば反カルト弁護士から提供された情報に依存している文科省が「被害者」であると宣言すれば、「被害者」自身が「被害者」ではないと否定している場合であったとしても、「被害者」になってしまうのだ。

「相当多数」の「被害者」という概念については、運用基準は「『相当多数』の意味は個別具体的に判断する」と述べているが、「一般的な事案では、数十人程度の被害者があれば、『相当多数存在する』に該当することとなる」としている。大きな組織において「数十人」の苦情が「相当多数」を構成するかどうかについては議論の余地がある。例えば(正確な数字を確定することが私の目的ではなく、例示しているだけである)、文科省が検討した期間に日本の統一教会信者が60万人いたと仮定すると、48名の苦情申立人(「数十人」に相当する仮想的な数)は信者の0.01%未満に過ぎず、この割合では「相当多数」とは思えない。

白い顔の女性
公的な委員会で統一教会の「被害者」が証言する様子の絵画的表現

さらに悪いのは、提案されている数学的な処理だ。運用基準によれば、「個々の被害者を特定して、それらが相当多数存在することを示す必要はなく、相当多数存在する可能性があれば足りる」とされている。実際のカウントを行わない場合、「相当多数」の「被害者」がいるかどうかについて、運用基準が言うところの「相応の可能性」があることをどうやって知るというのであろうか? 運用基準は、「行政機関等に寄せられた相談やその他の情報」によって「確認」されるべきであると答えている。これはおそらく(そして過去の行動様式によれば)、文科省が「背教者」である元信者や反カルト組織と相談することを意味するのであろう。ここでも、標的となった宗教法人がこれらの非常に推測的な数値に異議を唱えるための手続きは存在せず、文科省に虚偽の情報や見積もりを提供する者に対する制裁も存在しない。

運用基準の目的が法律第89号における「被害者」と「相当多数」が意味するものの曖昧さを解消することであるとすれば、その目的達成の試みは壮大な失敗である。いやもしかしたら、明確な回答が示されているのかもしれない。「被害者」が誰であり、何人の「被害者」がいるかは、どちらも文科省に情報を提供する反カルト組織によって決定されるであろう。彼らが指定し評価したことは、たとえ「被害者」に指定された人が自分は全く「被害者」でないと主張したとしても、議論の余地のないものとされるであろう。

これはメディアに煽られた現在の日本の国民感情の副産物に過ぎず、それがどんなに不公正なものであったとしても、世論と議員たちが統一教会を標的としたいかなる形態の罰も支持する原因となっていると信じる者もいるであろう。しかし、ひとたび確立されれば、不人気な宗教団体の「被害者」を特定し数えるための基準は、メディアや反カルト組織が自己の目的のために「カルト」と指定したその他すべてのグループに容易に適用されるであろう。これは日本における信教の自由を葬り去るための、さらなる一歩に過ぎない。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E3%80%8C%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%A2%AB%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%80%8D%E3%82%92%E4%BA%BA%E7%82%BA%E7%9A%84%E3%81%AB%E5%A2%97%E3%82%84%E3%81%99/

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『世界思想』巻頭言シリーズ14:2024年2月号


 私がこれまでに平和大使協議会の機関誌『世界思想』に執筆した巻頭言をシリーズでアップしています。巻頭言は私の思想や世界観を表現するものであると同時に、そのときに関心を持っていた事柄が現れており、時代の息吹を感じさせるものでもあります。第14回の今回は、2024年2月号の巻頭言です。

日仏で強まる「反カルト」の動きに警戒を

 2001年に制定されたフランスの「反カルト法」がこのたび改正された。

 もともとこの法律は「カルトによる精神操作」を犯罪として取り締まることを目的に起草されたのだが、国際的な宗教学者や法律の専門家が「洗脳理論」は疑似科学であり、法案は特定宗教に対する差別になると批判したため、妥協の産物として「脆弱性の悪用」を禁止するという文言に修正されて成立した経緯がある。

 この法律は、アメリカを筆頭とする宗教の自由を尊重する西洋諸国からは「悪法」と批判されてきた。EUの中にあってもフランスの極端な反宗教政策は孤立している。それでもフランスには「セクト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部」(MIVILUDES)という政府機関があり、彼らが一度は失敗した「精神操作」の犯罪化に、再び挑戦する決断を昨年したのである。それは現行法では彼らが標的としていたエホバの証人やサイエントロジーを取り締まることができなかったからである。

 新法案の核心は「心理的服従」という新たな犯罪の創設にあった。被害者を「心理的服従」状態に置いた者は、懲役3年の刑に処せられ、被告人がこれらの手法を日常的に使用する「組織的な一団」、すなわち「カルト」の一員である場合には、懲役7年の刑に処せられることになっていた。

 ところが昨年12月に開かれたフランスの上院法務委員会は同法案を検討し、「心理的服従」という新たな犯罪の導入を規定した条文を削除したのである。その法案がそのまま上院の本会議に送られて可決された。これは最悪の事態が回避されたことを意味する。加えて、「医学界が承認した治療を拒否するよう誘導する」という新たな犯罪の導入も見送られた。

 この修正の背景には、米国国際宗教自由委員会(USCIRF)が、フランス政府が提案している「反カルト法」の修正案について、信教の自由にとってこれまで以上に危険なものとなるだろうとの懸念を表明したことがあると言われている。フランス国内のプロテスタント教会も反対の声を上げた。

 しかし、この度の法改正が「改悪」であることに変わりはない。具体的には「カルト」を相手取った訴訟に反カルト団体が民間機関として出席することが許されたり、検察官や裁判官が特定のグループを起訴したり、審判したりする際に、MIVILUDESの意見を求めることが奨励されたりするようになる。

 フランス政府の反宗教政策は国際的に孤立しているが、最近は日本政府が反カルト政策をとるようになり、それに勇気づけられている。すなわち、フランスと日本はお互いに励まし合い、正当化しあっているのだ。こうした相乗効果により、日本の反カルト政策がフランスのモデルに従って強化されていく恐れがある。それに対する警戒が必要である。

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緊急寄稿:鈴木エイト氏に対する「名誉毀損」訴訟の第1回口頭弁論が行われました


 UPF-Japanは2023年10月4日、鈴木エイト氏を東京地方裁判所に提訴しました。2021年9月、韓国・ソウルで開催した国際会議「シンクタンク2022」に安倍晋三元首相がビデオメッセージを寄せた際、UPFから安倍氏側に報酬5000万円が支払われたとする事実無根の情報を、同氏がメディアや公共の場で流布したことに対し、名誉毀損(慰謝料1100万円)で訴えたものです。

 同民事訴訟の第1回口頭弁論が2024年1月24日、東京地裁で開かれました。閉廷後、UPFでは都内の会場に関係者、報道機関を集めて報告会を行いました。その場でUPF-Japanが鈴木氏を提訴した趣旨について、私が読み上げた声明文を緊急寄稿として個人ブログにアップいたします。

 なおこの時の報告会の動画は、Youtubeにアップされており、以下のURLで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=LMz5iHYqkOQ&t=627s

「UPF-Japan」VS「鈴木エイト」の民事訴訟に関する声明
令和6年1月24日
UPF-Japan 事務総長 魚谷俊輔

 私は、UPF-Japan事務総長の魚谷俊輔と申します。昨年10月4日、UPF-Japanはジャーナリストの鈴木エイト氏を名誉棄損の不法行為をもって訴える損害賠償請求訴訟を提起いたしました。そこでこの裁判を提起するに至った経緯についてご説明させていただきます。
初めに、UPFとは何かについてお話しします。UPFは、国連経済社会理事会との総合協議資格を持つ国連NGOです。経済社会理事会の協議資格には、総合協議資格、特殊協議資格、ロスターの3種類があります。現在、国連NGOとして登録されている団体は5450ありますが、総合協議資格を持つのは140だけです。その意味でUPFは、きわめてランクの高い、国際的に公益性を認められた国連NGOということになります。  

 UPFは国際的な組織であり、UPF-Internationalという国際本部がニューヨークにあります。安倍元首相がビデオメッセージを送ったのは、このUPF-Internationalが主催する「希望前進大会」に対してでした。国際本部の日本支部としてUPF-Japanがあり、私はその事務総長をしています。

 UPF-Japanのビジョンは、“One Family under God”、すなわち神の下の人類一家族世界を目指しております。これはUPFがFaith Based Organization、すなわち信仰基盤組織であることを意味します。UPFは世俗的なNGOではなく、宗教的な理念に基づいて社会貢献することを目的としたNGOです。近年、とくに西洋社会においては、信仰基盤組織はFBOと呼ばれ、公共の福祉に貢献する貴重な社会資本として認知されています。国連には「宗教的NGO委員会」があり、UPF,はそのメンバーとして登録されています。

 UPFも世界平和統一家庭連合も、文鮮明総裁・韓鶴子総裁が創設された組織であり、両者は友好関係にあります。しかし、この二つの組織は目的が異なります。家庭連合の目的は布教・伝道と信徒の教化・育成にありますが、UPFの目的は社会貢献にあり、平和な世界を実現するために活動をしています。それゆえ、UPFは家庭連合の布教・伝道活動に関わることはありません。

 UPFの国際的な活動として、世界平和のために数多くの国際会議を開催してきました。こうした活動の集大成の一つが、2020年2月に行われたワールドサミット2020でした。ここには世界171カ国から、150名の国家元首級の指導者を含む、約5000名が参加し、非常に大きな規模の国際会議となりました。ここには潘基文国連前事務総長、カンボジアのフンセン首相をはじめとして、世界の首脳級の指導者たちが数多く集まって、平和構築のための議論が行われました。

 新型コロナのパンデミックの時代になると、世界平和のための活動を継続するため、韓国を拠点にオンラインで全世界を結んで「希望前進大会」がシリーズで開催されるようになりました。この希望前進大会にも、各国の国家元首級の指導者たちがオンラインで参加しました。

 この希望前進大会の第7回目が、トランプ前大統領と安倍元首相がビデオメッセージを送った2021年9月12日のイベントだったのです。このように世界のそうそうたる指導者たちがスピーチする、国連NGOのイベントに対して、安倍元首相がメッセージを送ったのだということをご理解いただきたいと思います。安倍元首相は世界平和をテーマとした国際イベントにメッセージを送ったのであり、宗教行事に祝辞を送ったのではありません。しかし、このビデオメッセージに山上被告が反応して、安倍氏の殺害を決意したという情報がリークされたために、事実が歪められています。メディアの偏向報道により、「安倍元首相が韓鶴子総裁を讃美する発言をした」ということだけが切り取られて拡散されているのです。 そもそも安倍氏はなぜビデオメッセージを送ったのか? そして何を語ったのか? そのことが正確に伝えられていないのです。

 それでは、約5分のスピーチの中で、安倍元首相はいったい何を語ったのでしょうか? まず、東京オリンピック・パラリンピック大会の成功に対する感謝の意を表明したうえで、コロナ禍に覆われる世界で全体主義・覇権主義国家が台頭していることに警鐘を鳴らし、「自由で開かれたインド太平洋」のためには「台湾海峡の平和と安定」の維持が必須要件であると語っています。そして日本、米国、台湾、韓国の自由民主主義国家の結束が必要であると強調されました。
また、安倍元首相は、家庭の価値を強調するUPFのビジョンを高く評価するとしたうえで、偏った価値観を社会革命運動として展開する動きに警戒しましょうと語っています。この言葉は、同性婚を合法化しようとしたり、LGBTの権利擁護のために男女の区別そのものをなくしてしまおうとするような過激な運動に、安倍元首相が警戒感を持っていたことを示しています。そして、自民党の中にもこうしたリベラルな思想が浸透してきていることを安倍元首相は憂いておられました。
つまり、ここで語られた内容は、安倍元首相の政治的信念そのものといえます。そしてその多くは、UPFと考え方を共有しています。このようにお互いに相通じるものがあったがゆえに、安倍元首相はUPFのイベントにビデオメッセージを送ってくださったのです。

 にもかかわらず、鈴木エイト氏は、安倍氏がビデオメッセージを送ったのはお金の為だったと主張しています。彼は高知での講演やXへの投稿で、UPFから安倍氏に5000万円が支払われたという「確たる情報がある」と言っているのです。これは真っ赤な嘘です。かつてUPFは、安倍元首相に対して一切報酬を支払ったことがありません。安倍元首相の政治資金収支報告書にはUPFからの入金記録は一切ありません。 

 現在、自民党の国会議員が政治資金規正法違反の問題で追及されていますが、もし5000万円もの大金をUPFから受け取っておいて、それをどこにも記載しなかったのであれば、明確な違法行為になります。したがって鈴木エイト氏の発言は、UPFと安倍元首相との間に不法なお金のやり取りがあったということを意味し、安倍元首相はもとより、UPFの名誉を著しく毀損するものです。そこでUPF-Japanは、鈴木エイト氏を名誉棄損で訴えました。

 この裁判の争点は、非常にシンプルです。それは、UPFから安倍元首相に5000万円が支払われたという鈴木エイト氏の発言が、真実であるか否かということです。これが真実であることを立証する責任が鈴木エイト氏にあります。それができなければ、彼は敗訴することになります。そういう裁判です。実際にお金は支払われていないわけですから、立証することは不可能です。のみならず鈴木エイト氏は、これを真実だと信じることを正当化する相当な根拠、すなわち、特段の調査を行ったわけでもないのです。   

 マスメディアの報道に携わる記者の皆様方におかれましては、この点をしっかりと精査していただき、この裁判の審理の中で、立ち現れてくる真実の行方を注意深く見守っていただきますようお願い申し上げます。

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ35


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

米国国際宗教自由委員会がフランスの新たな反カルト法案に対して警告

12/19/2023 MASSIMO INTROVIGNEA

米国国際宗教自由委員会は、現状でも悪法であるフランスの「反カルト法」の修正案がもたらす憂慮すべき影響について明言した。

マッシモ・イントロヴィニエ

USCIRFの公式X
USCIRFの公式X(旧Twitter)アカウントに投稿された2つの声明

米国国際宗教自由委員会(USCIRF)は、フランスが提案している現行の反カルト法の修正案について、宗教もしくは信条の自由にとってこれまで以上に危険なものとなるだろうとの懸念を表明した。

USCIRFは、1998年の国際宗教自由法(IRFA)によって設立された独立した超党派の米国連邦政府委員会である。その委員は大統領および両党の議会指導者によって任命される。その主たる目的は、世界の宗教の自由の状況を監視することである。このため、USCIRFは、その信頼すべき評価により、宗教または信条の自由に対する深刻な危機的状況について報告している。

ヨーロッパの反カルト統括組織であるFECRIS(セクト主義に関する調査情報センターの欧州連合)と関係している、時に滑稽だが特に聡明というわけでもない反カルト主義者たちが、USCIRFは「Bitter Winter」から不当に影響を受けたキリスト教の右翼過激派集団であるというばかばかしい主張を展開しているが、USCIRFは実際には世界で最も権威ある宗教の自由の監視機関の一つであると広くみなされている。現在の議長は、有名なユダヤ教のラビであり人権活動家であるエイブラハム・クーパーである。

ラビ・クーパーはUSCIRFの公式X(Twitter)アカウントを通じて声明を発表し、「物議を醸す2001年のアブ・ピカール法(反カルト法)に対するこれらの法改正により、エホバの証人やサイエントロジストのような宗教的マイノリティーを標的にしてきたことで知られている政府機関が、カルト関連の刑事手続きに参加することが許されるようになる」との懸念を表明した。彼は、同法改正案が検察官と裁判官の双方に対し、「カルト」関連の訴訟において、問題が取りざたされている政府の反カルト組織MIVILUDESと協議することを推奨し、さらに大きく問題が取りざたされる民間の反カルト団体が、民事の当事者として訴訟参加することを許可するだろうという事実に言及した。

以前にUSCIRFがXで発表した声明
以前にUSCIRFがXで発表した声明。フランスで何が起こっているのかをよりよく理解するために USCIRF の2023年7月の報告書を読むことを提案している。

実際USCIRFは、以前にXで発表した声明の中で、フランスにおけるこれらの法改正の議論にも言及し、「政府が『カルト』視するグループに対する国家主導の差別等の、フランスにおける宗教の自由に対する侵害について詳しく知るために、欧州連合における宗教の自由に関する懸念についてのUSCIRFの報告書を読んでください」と呼びかけている。

このUSCIRFの報告書は2023年7月に発行され、以下のように指摘している。「EUのいくつかの政府は、特定の宗教団体に関する有害な情報の拡散を支援または促進してきた。例えばフランス政府は、1994年に設立されたフランスの非営利団体である『セクト主義に関する調査情報センターの欧州連合』(FECRIS)に資金を提供しており、FECRISは一部の宗教団体に『セクト』や『カルト』という軽蔑的なレッテルを貼っている。同様に、フランス内務省傘下の公的機関である『セクト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部』(MIVILUDES)は、エホバの証人やサイエントロジー教会を含む諸団体を定期的に非難する年次報告書を発表している。この組織は、政府機関、宗教団体、市民団体と提携して、いわゆる『カルト』について情報を提供しており、フランスのメディアからはおおむね好意的な反応を引き出している。その結果、MIVILUDESがセクトやカルトとしてレッテルを貼った宗教団体と関係のある人々の社会的名誉に対して悪影響を及ぼしている。MIVILUDESはまた、有害な「セクト」であるとみなされた宗教団体を標的とするさまざまなNGOに資金提供している。その中には、『セクトの被害を受けた個人と家族を守る協会の全国連合』(UNADFI)や『精神操作反対センター』(CCMM)が含まれている。」

またXにおいて、USCIRFはモハメド・マジド委員の署名付きで、「USCIRFは、既存のカルト関連規制を強化し、違反に対する罰則を強化しようとしているフランスの修正案が、宗教の自由に与える影響を懸念している」と付け加えた。

修正案は、「精神的服従」または「洗脳」という架空の技術によって「被害者」を抑圧する「カルト」を犯罪者扱いすることを容易にするものであるが、それらが存在し、新宗教運動によって用いられているとの主張は数カ国の法廷ならびに新宗教運動を研究する学者の圧倒的多数によって否定されている。 USCIRFはまた、「カルト」が洗脳や精神操作を用いているという理論について、それはフランスやロシアを含む一部の政府の支援を受けてFECRISが広めた疑似科学的な反カルト・イデオロギーの一部であると繰り返し述べている。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%AE%97%E6%95%99%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%81%8C%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E5%8F%8D%E3%82%AB/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ34


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

フランスが悪法をさらに悪化させる計画

12/11/2023 MASSIMO INTROVIGNEA

反カルトの「アブ・ピカール法」は実際の虐待に対して効果はなく、信教の自由に対する脅威である。政府はそれをさらに危険なものにしたいと思っている。

マッシモ・イントロヴィニエ

パリの内務省事務所
新法を推進しているパリの内務省事務所の入り口。 Credits.

フランスが2001年に物議を醸した反カルトの「アブ・ピカール法」を導入したとき、第1次草案では「精神操作」を罰しようとした。 フランスと海外の学者、および一流の法律専門家たちは、これは疑似科学であり、不人気な宗教を差別する手段であることが学者たちや数カ国の法廷によって暴露された疑わしい「洗脳」理論の同義語にすぎないと抗議した。

「精神操作」を禁止する法律が憲法上の問題に突き当たることを恐れた反カルト政治家たちは手を引いて、代わりに「脆弱性の悪用(abus de faiblesse)」を導入した。これは、「洗脳」を犯罪化するという彼らの意図を隠した、もう一つの表面的で意味論的なゲームだった。 しかし、存在しないなにかが具体的な害をもたらしたという証拠を見つけるのは困難であることが証明された。カナダの学者スーザン・パーマーが2011年にオックスフォード大学出版局から出版した高評価の著書『フランスの新しい異端』で立証したように、「アブ・ピカール法」は弱者には強く、強者には弱い。ある宗教運動に優秀な弁護士や専門家を雇うための資金が不足していれば、その指導者は架空の「脆弱性の悪用」で有罪判決を受け、刑務所行きになる可能性がある。膨大な資金を操るグループは、疑似科学の疑いをかけられた法律に異議を唱える方法を簡単に見つけるであろう。実際、本当に虐待(存在しない「洗脳」とは区別される)の罪を犯したグループでさえ、法律の曖昧な文言に乗じて罪を免れるかもしれない。

このことに気づいたのは学者だけではない。反カルト主義者や「カルト的逸脱」と闘うフランスの政府機関であるMIVILUDESもこの問題に気付いている。彼らは数年前から、MIVILUDES自体が主なターゲットであると指摘しているより大きな新宗教を「洗脳」罪で(どんな名前であれ)告発できるようにするための法改正を政府に求めてきた。

11月15日、政府は「カルト的逸脱との戦いを強化する」ための法案を提出した。「カルト」に対する新たな取り締まりの理由として、MIVILUDESが受け取る「通報」(フランス語で“saisines”)の数が増加していることがあげられる。「Bitter Winter」が立証したように、「通報」は実際の事件の報告ではなく、MIVILUDES に送られた簡単な質問が含まれており、間違っていたり操作されていたりする可能性が高い。

また、新型コロナウイルス感染症の期間中に「カルト」が成長し、一部が反ワクチンの考えを広めたとも言われている。したがって、「必要な治療を放棄させるか受けさせないための挑発」という、懲役1年と罰金が科せられる新たな犯罪が創設される。明らかに、これが引き起こす影響は新型コロナウイルスやワクチンをはるかに超えている。国務院が法案を検討した際、言論の自由と「科学的議論の自由」に対する脅威であるとして、この条項を削除するよう勧告したことに留意すべきだ。しかし、政府は国務院の勧告を拒否し、この条項を草案に残した。

パリの国務院
スティーヴン・パリの国務院、パレ・ロワイヤル Credits.

反カルトの手段も強化される。反カルト団体が「カルト」を相手取った訴訟に民間機関として出席することが許されたり、裁判官や検察官は、彼らが審判対象とし、あるいは起訴しているグループに関してMIVILUDESの意見を求めることが奨励されたりするようになるのだ。

新しい法案の核心は、「心理的服従」という新たな犯罪の創設である。「重大な、ないし、反復継続する圧迫、または、人の判断を変更可能な技術の使用」によって被害者を「心理的服従」状態に置いた者は懲役3年の刑に処せられる。またもし、被告人がこれらの手法を日常的に使用する「組織的な一団」、すなわち「カルト」の一員である場合には、懲役7年の刑に処せられる。この犯罪が行われるのは、「心理的服従」技術の使用が「その人の身体的または精神的健康状態に重大な悪化を引き起こすか、あるいは、本人にとって極めて不利益な一定の作為・不作為に導いた」ときである。「心理的服従」は、事態をさらに悪化させる状況として、既存の犯罪にも影響を与えるであろう。

これが「脆弱性の悪用」に関する既存の規定とどのように異なり、なぜ政府が新たな犯罪によって現行法では捉えられていない「カルト的逸脱」を犯罪化できると信じているのかを理解することが重要である。「脆弱性の悪用」は現在、被害者が「脆弱な状況」にあり、心理テクニックによって、たとえば多額の献金をしたり、「カルト」リーダーに性的に身を委ねたりするなどの、自己加害行為に誘導された(と申し立てられた)場合に処罰される。新法案の序論的コメントの中で政府は、「アブ・ピカール法の現行の条文では、被害者を加害者の支配下に置くことを目的とした作用や技術によって決定される心理的または身体的服従状態を、直接的に有罪とすることは認められていない」と主張している。

新しい犯罪は2つの点で「脆弱性の悪用」とは異なる。第一に、被害者が「脆弱」な状況にある必要はない。誰もが「心理的服従」の被害者になる可能性があるのだ。第二に、被害者の精神的健康状態の悪化と、「洗脳」技術が被操作者を自己加害に導く虞があるという事実とを、「かつ」ではなく「または」で結びつけていることは極めて重大である。同じ紹介報告書が説明しているように、この「または」により、被害者が自己加害行為に誘導されたことが証明できない場合でも、「心理的服従」を処罰することが可能になるのである。「精神的健康の悪化」が起こったと主張するだけで十分であろう。

報告書はほぼ当然のこととして、心理的服従の状況は通常「被害者の精神的健康の悪化」を引き起こすと明記している。したがって、被害者が自傷的であると分類できる特定の行為を何も行っていなかったとしても、謎めいた「心理的征服状況を作り出す技術」を使用すれば処罰されることになる。結局のところ、反カルト主義者たちは、「カルト」への加入やそこに留まり続けること自体が精神的健康にとって危険であると主張しているのである。そして覚えておいてほしいのは、この理論を推し進めるために反カルト団体が裁判に参加することになり、疑問がある場合には検察官と裁判官はMIVILUDESの意見を求めるよう助言されるということだ。

ブリナ・アグレスティ=ルバシュ氏
市民権・都市開発担当大臣のサブリナ・アグレスティ=ルバシュ氏もMIVILUDESを監督しており、メディアに新法を紹介した。Credits.

どうやらフランスは2000年に戻り、2001年にアブ・ピカール法の起草者らが憲法上の懸念により断念せざるを得なかった「精神操作」という犯罪を再導入するつもりのようだ。ときにはフランスの国務院が緩和効果をもたらすこともある。この事案では、国務院は11月9日に法案について検討し、すでに述べた予備的見解を述べた。「洗脳」という新たな犯罪については、国務院は宗教の自由の侵害が問題となる可能性に留意している。しかし政府がやったことは、元の単語である「assujettissement」(征服)を「sujetion」(服従)に変更するよう提言しただけであり、そして、この犯罪は被告が被害者に対して行う一対一の操作に関するものであり、インターネットによるものを含む、複数の潜在的な被害者に向けられた操作的な言説一般ではないことを明記している。

これだけでは、宗教または信仰の自由に対する重大な侵害を回避するには十分ではない。新宗教運動の研究者のほとんどは、「洗脳」は存在せず、それを有罪とすることは基本的に虚偽であるという点で一致している。宗教的説得の通常のプロセスが、権力が「通常」であるとみなす信仰の対象と実践を持っている場合には「洗脳」はないと主張される。信念や実践が非伝統的であったり不人気であったりする場合には、これは「洗脳された」被害者だけに採用される証拠として提出される。なぜなら、彼らは「心理的征服」(または「服従」)の状態に置かれているからである。

フランス政府は、この新法によって信仰が犯罪化されるのではなく、特定の信念を奨励する技術のみが犯罪化されるのであると厳粛に宣言する。しかし実際には、ある信仰が「違法な」技術によって教え込まれたのだとされる証拠は、反カルト主義者、MIVILUDES、社会の大多数、あるいはメディアがそれを「カルト的逸脱」とみなしているということなのである。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%8C%E6%82%AA%E6%B3%95%E3%82%92%E3%81%95%E3%82%89%E3%81%AB%E6%82%AA%E5%8C%96%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E8%A8%88%E7%94%BB/

カテゴリー: BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ

BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ33


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

背教者は信頼できるか? 5.なぜ背教者になる人がいるのか

11/24/2023 MASSIMO INTROVIGNEA

背教者となった元信徒は、反カルト運動から自らの役割を「学ぶ」ことが多い。

マッシモ・イントロヴィニエ

5本の記事の5本目 1本目2本目3本目4本目を読む

反カルトデモ
反カルトデモ Credits.

前回の記事では、元信者と背教者という2つの異なる概念を混同すべきではないことを確認した。ほとんどの元信者は、離れた組織に対して攻撃的な感情を持っていない。過激な敵対者となるのはごくわずかだ。しかし、なぜなのか? 背教者になる人にはどのような目立った特徴があるのだろうか。

学者たちが考慮した要因は2つある。1つ目は宗教組織に関することで、2つ目は離脱のプロセスに関することだ。通常、物議を醸す宗教団体であるほど、背教者の数が増えるだろうとみなされている。ブロムリーは、どの宗教にも背教者は存在するが、そのほとんどは反対派が「破壊的」であるというレッテル貼りに成功したグループの元信者の中にいると主張した。逆に、非常に尊敬されている組織はより多くの離脱者を生み出すが、背教者は少ない。

その比較は、その人が生まれながらに所属する教派間、教会間ではなく、個人が自由に加入する志願制の団体間で行うことが好ましい。しかし、主流派の教会の中にも修道会や信徒運動など、いくつかの志願制の団体が存在するし、ローマ・カトリック教会の司祭職でさえも一般的にはそうなのである。カトリックの司祭や修道女を辞めた人々の中には極めて声高に発言する背教者もいるが、司祭職や修道会を辞めた人々の多くは、むしろ教会の基準を満たしていない自分を責める傾向にある。したがって、彼らはしばしばタイプ I (脱落者) の物語を用いて自分の経験を再構築する。ブロムリーらによれば、こうしたことが起こるのは、ローマ・カトリック教会が強力な(もちろん、挑戦不可能というわけではないが)組織であるからだという。したがって、大抵の場合は、離脱しようとするメンバーとの間で物語のダメージコントロール交渉をすることが可能なのである。それとは対照的に、ほとんどの新宗教運動を含め、破壊的であると認識されている組織は通常、離脱しようとするメンバーとの間で物語のダメージコントロール交渉をすることができず、結果としてより多くの背教者を生み出すのである。

この理論的な予想は、表面的には非常に合理的であるように見えるが、実証的研究によって完全に確認されているわけではない。新宗教運動は通常、破壊的であると認識されており、非常に声高な背教者を生み出す傾向にある。しかし、これまで見てきたように、可能な限りの調査が示唆しているのは、最も物議を醸している新宗教運動であったとしても、背教者は元信者の中でもごく一部の少数派を代弁しているに過ぎないだろうということだ。元信者の大多数は普通の離教者に分類でき、中には脱落者もいる。

ここで、目立つ元信者と目立たない元信者の区別が確立されるであろう。ほとんどの元信者は、以前の所属について物議を醸す気がない限り人目に付くことはない。実際、多くの場合その存在自体が、団体の会員記録にアクセス可能な定量的調査によってのみ発見が可能なのである。それらが質的な社会学的研究のために入手される可能性はさらに低い。目立つ元信者は主に背教者であり、彼らが反対派連合に加入すると、反対派連合は彼らの知名度を確保するためにあらゆる努力を傾ける。

実際、脱会のプロセスには決定的要素が関わっている。拉致されて成功裏に「ディプログラム」された者たち、すなわち「カルト」を離脱するよう激しい心理的圧力を受けた者たちは、背教者になる可能性がはるかに高いことを全ての研究が示している。「ディプログラム」の成功によって脱会した者たちは、「カルト」とレッテルを貼られた運動からの脱会者らの中では少数派であるが、それは背教者も同様である。

ディプログラムによるのでなかったとしても、宗教団体を離脱する人の一部は、脱会前、脱会中、脱会後に反カルト運動に遭遇する。なぜなら、反カルト組織と接触した親族によって脱会プロセスが開始するからである。あるいは脱会を検討している人は、自分の属する宗教に対する批判に好奇心を持っていたり、純粋に興味を持っているからである。

私は前回の記事で、フランスのニュー・アクロポリスと呼ばれる秘教グループの元メンバーについて自身が行った定量的研究について述べた。 私のサンプルの8.3% は、反カルト組織との接触が自身の脱会プロセスにおいて役割を果たしたと報告した。 背教者の70%は反カルト組織と接触していた。そのような接触を持つ人々の90%は、ニュー・アクロポリスを「カルト」だと考えているのに対し、その他の人々は10.3%であり、80%が自分は「洗脳」されていたと信じているのに対し、その他の人々は6.7%だった。もちろん、一部の元信者にとって背教は心理的に好都合である。その理由は、元信者から見れば、今となっては間違っていたり愚かにさえ思える行動や信念に対していかなる非難を受けても、彼らを「洗脳」あるいは「奴隷化」した「邪悪な」運動に責任転嫁できるからである。

スティーヴン・ハッサン
スティーヴン・ハッサン:背教を専門職にした者たちの一人。(X)より

反カルト運動が背教者を生み出す上で中心的な役割を果たしているとすれば、ブロムリーが書いたように、今度は「背教者の証言が、反カルト運動が主催するあらゆる範囲の社会統制活動の中心となる。」その目的は、新宗教運動を差別し、可能であれば抑圧することにある。背教者の一部には、(統一教会からの背教者であるスティーヴン・ハッサンのように)ディプログラマーとなり、専門的および学術的な資格を取得した者さえいた。その他多くの者たちは反カルト運動との接触を維持し、ブロムリーの言葉を借りれば、自分たちが離脱した組織の「道徳的地位の低下」のために活動を続け、その結果「その団体に満足している信徒は洗脳されているのだと片づけられ、市民プロジェクトは人目を引くためのPR活動とみなされ、組織の関連団体は『フロント団体』とレッテル貼りをされてあざけられ」、背教者の説明を疑う学者には「カルト擁護者」というレッテルを貼ってあざけるようになるのである。

ブロムリーはまた、さまざまな種類の「背教者の職業」についても説明している。元の宗教に反対する本や講演で生計を立てたり、収入のかなりの部分を得ている者もいる。他の元信者を勧誘して背教者に変えようとする者もいる。そして、反カルト運動は背教者を利用して、彼らが「カルト」とレッテルを貼る宗教に対する攻撃の中で、「申し立てのあった違反行為は非常に根本的かつ大規模なものであり、(カルト側の)無実を訴える抗議などは即座に拒否されるほどだ」と主張する。背教者の物語を広めることによって「(カルトに)敵対的な世論の風潮が作り出される」と、「調査公聴会」や裁判、政府による差別を通じて「社会統制」と公的「制裁」が発動される。(ブロムリー著「争われた退会者の役割の社会的構造」42-3)

結論として、背教者は新宗教運動の元信者の中では比較的小規模な少数派でありながら、最も目立つ存在である。それは反カルト運動に動員されるのは彼らだけであり、メディアが利用しやすく、元の組織に対する訴訟で証言する準備ができているからである。

このシリーズに目を通してきた者なら、それが2つの結論に至ることはお分かりであろう。1つは、背教者は大多数の元信者の代表ではないということ、もう1つは背教者の物語は、反カルト運動及びそのイデオロギーとの出会いによって決定的に形成されるということである。

もちろん、背教者がする報告がすべて虚偽だということではない。実際、背教者の説明がすべて嘘だという新宗教運動の研究者はいないであろう。また反対派が広めた風刺画とは対照的に、反カルト運動に批判的な学者たちは、背教者の文献を無視することはないであろう。それどころか、彼らはそれを収集し、かなり詳細で完全な参考文献のリストを出版することがよくある。彼らはまた、背教者が学者のさらなる研究に役立つ質問を組み立てるのを手伝ったり、場合によっては当局が確認できる実際の違法行為について注意を喚起する内部告発者として機能したりする可能性があることを認めているのである。

他のケースでは、虚偽の告発が法執行機関を誤導し、不必要な苦しみを生み出した。 例えば、ロシアと中央アジアでは、宗教というよりも微生物学(同氏はこの分野でも非常に物議を醸している)を専門とする学者ジェリー・バーグマンが作成したエホバの証人を非難する長々としたリストによって、国際機関やNGOが同教団に対するあからさまな迫害であると広く評してきたことが支持されてきた。バーグマンは1999年に初期のエホバの証人に関する有用な文献リストを編纂したが、中立的な学者としてではなく、エホバの証人を離れた怒れる元信者として書いている。ロシア語に翻訳され、インターネットで容易に入手できる彼の非難は、かつてソ連の一部であった国々の信教の自由と人権の大義を著しく侵害した。

ジェリー・バーグマン氏
ジェリー・バーグマン氏 ツイッター(X)より

メディアと法廷は以下のことを心に留めておくとよいであろう。背教者は新宗教運動の元信者という、より大きな領域を代表するものではなく、その中にあって背教者は少数派なのである。また当然のことながら、彼らは新宗教運動の中での生活についての唯一の証人でも、最も信頼できる証人でもない。確かに、彼らはそこにいた。しかし背教者にならなかった多くの会員や元信者もそこにいたのである。背教者は反カルト共同体の一員としてそのイデオロギーを共有し、元の宗教運動に対して過激な反対をする者と定義されるのだが、それ自体が歪みと偏見の強力な要因なのである。背教者たちが報告していることが新宗教運動に関する「真実」であると認めることは、怒れる元配偶者の証言に基づいて離婚した夫(ないし妻)の道徳的性格を評価したり、不満を抱いた元司祭たちの証言にのみ基づいてカトリック教会とは何なのかについて評価したりするのに似ているであろう。

背教者の説明は無視されるべきではない。しかし、中立性と客観性は三角測量法を前提としている。そこでは背教者の報告が、現役信者や背教者にならなかった元信者による説明と比較され、また、関連内部文献や記録文書の研究、インタビュー、及び参与観察を行った学者の報告と比較されるのである。真に三角測量法を用いるということは、告発されたグループが背教者の告発を調査し、それに反論することが許されなければならないということを意味する。これらすべての情報源を三角測量して考慮したメディア報道は、質の高いジャーナリズムを生み出す。唯一またはほとんどの情報源として背教者に依存するメディア報道は、誹謗中傷と差別の道具を生み出す。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e8%83%8c%e6%95%99%e8%80%85%e3%81%af%e4%bf%a1%e9%a0%bc%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%8b%ef%bc%9f%e3%80%80%ef%bc%95%ef%bc%8e%e3%81%aa%e3%81%9c%e8%83%8c%e6%95%99%e8%80%85%e3%81%ab%e3%81%aa%e3%82%8b/

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ32


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

背教者は信頼できるか? 4.元信者全員が背教者というわけではない

11/23/2023 MASSIMO INTROVIGNEA

残念なことに、メディアは宗教団体の元信者と背教者というまったく異なる二つのカテゴリーを混同することがよくある。元信者のほとんどは背教者ではない。

マッシモ・イントロヴィニエ

5本の記事の4本目  1本目2本目3本目を読む

背教の政治学
『背教の政治学』(1998)は、(とりわけ)元信者のさまざまなカテゴリーの区別に関する重要な本であった。

脱会に関する現代の研究の重要な部分は、元信者が果たす役割が周囲との関りによってどのように形成されるかに関するものだ。背教に関する学術的研究の第一人者であるデビッド・ブロムリー氏によって開発された初期の方法論に端を発して、学者たちは新宗教運動の元信者を3つの異なる種類に分類した。すなわち、脱落者、普通の離教者、および背教者である。

同じ組織の脱会者であっても、異なる役割が共存する可能性がある(ブロムリー氏もその可能性について言及している)。これらのタイプは、脱会者の個人史におけるある特定の時点における経験を明らかにし(普通の離教者が最終的に背教者になることを決意する可能性もあり、その逆もある)、周囲との関係によって形成される役割と対応している。脱会者の物語は、ある組織及び環境から離れる人の心理的経験と社会的経験の間のダイナミックな相互作用によって生じる。

後者(社会的経験)は、元信者が置かれている社会的状況であり、それによって彼らは(多かれ少なかれ圧力を受けて)以前の所属について説明するよう求められる。脱会者が果たす役割の形成に関する社会心理学的な説明がこれまでに試みられてきたが、脱会のプロセスに関する「純粋な」あるいは「非常に写実的な」物語は存在しない。そうした物語はすべて社会的に構築され、文化的に条件付けされ、政治的に交渉された結果である。脱会の物語には少なくとも3つの異なるタイプがある。

タイプⅠの物語は、脱会プロセスを脱落として描く。ブロムリーによれば、「脱落者の役割は、ある組織の参加者が脱会について主に組織の権力者と交渉し、彼らが役割の放棄に対する許可を与え、脱会プロセスを管理し、役割の移行を促進するものとして定義されるであろう。」

共同で構築された物語は、役割遂行上の問題に対する主たる道徳的責任を、脱会しようとしているメンバーに割り当て、組織が脱会を許可することは類まれなる道徳基準と社会的信頼の維持に対する献身であると解釈する。(「争われた脱会者の役割の社会的構造:脱落者、内部告発者、背教者」D.G.ブロムリー編「背教の政治学:宗教運動の変化における背教者の役割」、コネチカット州ウェストポート:プレーガー出版社、1998年、19-48[28])。

タイプⅠの場合には、組織を離脱する最終的な責任は、脱会しようとするメンバーにのみ帰せられる。組織は、単に彼らが組織の要求する基準に適合できなかったことを受け入れるのである。脱会しようとするメンバーは組織に溶け込もうとしたが、個人的問題により失敗したのである。組織と元メンバーは、双方のダメージを最小限に抑えることを目的とした脱会プロセスについて交渉する。元メンバーは、いまでも慈悲深くて道徳的基準が高いとみなしている組織に留まれなかったことについて、ある程度の後悔を表明することが期待されているのである。

タイプⅡの物語 (普通の離教) は、最も一般的であると同時に、最も議論されることが少ない。実際、毎日さまざまな組織から参加者たちが脱会しているのだが、何らかの方法で異議を唱えられない限り、実際の脱会プロセスについて聞かれることはほとんどない。争いのない脱会プロセスでは、脱会しようとしているメンバーと、彼らが離れようとしている組織と、環境や社会全体の間で最小限の交渉が行われる。

実際、現代社会は、ある人が一つの社会的「居場所」から別の分野のもう一つの「居場所」に移動する通常のプロセスにおいて、どのように古い体験に対する興味、忠誠心、献身を失って新しいものに進んでいくかに関する、即利用可能な物語を提供する。この意味で、典型的なタイプIIの物語は、普通の脱会者が過去の経験に関して強い感情を抱いていないことを示唆している。

組織に対する忠誠心が低下し、最終的に組織を離脱したときから、離教者の物語には組織のより否定的な特徴や欠点についてのコメントが含まれるようになるのが普通である。しかし普通の離教者は、その経験には何か肯定的な要素があったと認識するかもしれない。実際、普通の離教者は特別な正当化が必要であるとは通常見なされておらず、脱会プロセスの背後にある原因や責任について深掘りするような厳密な調査も存在しないであろう。

タイプⅢの物語は背教者の役割を規定する。この場合、元信者は忠誠心を劇的に逆転させ、自らが離脱した組織に対する「職業的反対者」となる。ブロムリーの言葉を借りれば、「その物語は、背教者が以前に所属していた組織の極めて邪悪な本質を、捕獲されてから最終的な脱出・救出に至るまでの背教者の個人的な経験を通して記録したものである。」(「争われた退会者の役割の社会的構造」、36)

背教者が以前に所属した組織は、彼らに裏切り者のレッテルを貼ることが簡単にできた。しかし、背教者は、特にその組織と戦う反対派連合に参加した後は、自由意思によらずに入会した「被害者」または「囚人」としての物語を用いることがよくある。もちろんこれは、その組織自体が異常な悪の権化であったことを示唆している。反カルト運動によって反対派連合の一員とされた背教者は、なぜその組織が悪であり、信徒の自由意思を奪うことができるのかを詳細に説明するのに役立つ多くの理論的ツール(強力な洗脳比喩を含む)が準備されていることに気づくのである。

このシリーズを理解するうえでまさに重要なポイント、そして新宗教運動や少数派宗教を扱うメディアが心に留めておくべきことは、背教者は元信者のごく一部にすぎないということだ。ほとんどの元信者は、自分が離れたグループに対する攻撃的な反対者になることはないし、それを異常な悪であるとは考えていない。彼らは主流の社会に戻って喜んでいるだけであり、尋ねられれば、以前の宗教には良い点も悪い点も両方あったと答えるであろう。

ニュー・アクロポリス
フランスのニュー・アクロポリスでの講演 ツイッターより

これが事実であるという経験的証拠がある。1999年に私はフランスの秘教運動ニュー・アクロポリスの元メンバーを対象に調査を実施した。ニュー・アクロポリスは自分達を宗教団体だとしていなかったおかげで、プライバシーの懸念が払拭され、元会員リストの提供を受けることができた。これは匿名のアンケートを送るためにのみ使用した。120件の回答を集めたところ、サンプルの16.7%が脱落者、71.6%が普通の離教者がであったのに対して、背教者は11.7%であったことが分かった。

私の研究結果を新宗教運動に関する学術研究の一流誌である「ノヴァ・レリジオ」で発表した際、私は自分の研究結果が、他の学者たちが「カルト」のレッテルを貼られたグループの元信者に関する同様の研究結果に似ていると指摘した。

エホバの証人のような大規模な組織の場合、調査はさらに困難である。なぜなら、その会員数は数百万人であり、通常の宗教団体からの脱会率からすると、元会員が数万人規模になることを意味するからだ。しかし、エホバの証人であっても、脱会者の大多数は普通の離教者であり、背教者は少数派であると結論付ける方法がある。

エホバの証人を批判する人々は、毎年平均して約7万人の会員が排斥されるか脱会していると主張している。学者(反カルト主義者だけではない)は、背教した元エホバの証人が姿を現して組織を攻撃する敵対的な書籍や記事、メディア番組、反カルトイベントの文献目録を編さんしている。ある年に現れる新たな背教者は数百名に上り、世界中で活動する背教者はおそらく数千名に上る。

背教の力学は通常は悪口を公にすることを意味するが、たとえ背教者の中には家族や友人の間だけでエホバの証人の悪口を内密に言うだけの者もいると仮定したとしても、我々は元エホバの証人のうち背教者となるのは比較的少数であるという結論に達する。その他の人々は脱落者であり、彼らは組織と良好な関係を保っている(こうした者たちの中には、公開捜査や裁判でエホバの証人に有利な証言を喜んで行う者もいる)。そして我々は、大多数の者たちの声を聴くことはない。それは彼らが普通の離教者であることを意味する。

背教者が元信者の中の小さな割合に過ぎないのだとすれば、彼らは人生の中で、ある宗教団体に所属したことのある者たちの中で、すなわちすべての元信者だけでなく、一生離れない人も含めた全体の中では、さらに小さな割合であることに留意することも重要である。しかし、後者の物語はメディアによってニュース価値が低いとみなされたり、プロパガンダとして無視されたりするのである。

メディアは、背教者が信頼できるかどうか、そして背教者の経験がある宗教団体の信者において典型的なものであるかどうかを自問する以前に、背教者の話は元信者の典型的な経験でも代表的な経験でもないことを心に留めておくべきである。元会員のほとんどは普通の離教者であり、エホバの証人等の元いたグループに対して抱く思いは様々であり、背教者たちが広める残虐な話や監禁物語に同意しないのである。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

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BITTER WINTER家庭連合関連記事シリーズ31


信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。これらの記事を書いたマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。これらの記事の著作権はマッシモ・イントロヴィニエ氏にあるが、特別に許可をいただいて私の個人ブログに日本語訳を転載させていただくことなった。

背教者は信頼できるか? 3.棄教と監禁の物語

11/16/2023MASSIMO INTROVIGNEA

棄教に関しては、学術的研究と、反カルトが語る物語との間には、かなりの違いがある。後者は、ネイティブ・アメリカンに拉致された白人の乙女についての昔話に似ている

マッシモ・イントロヴィニエ

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デビッド・G・ブロムリー
社会学者のデビッド・G・ブロムリーは、棄教と背教に関する影響力の大きい著作の著者だった。Twitterより

以前の記事で述べたように、背教者の記述に関する社会学的研究は1970年代まではほとんど存在しなかった。その後、反カルト運動の出版物における背教者の重要性と、「カルト」を相手取った訴訟に動かされて、研究が活発になった。

初期の研究は、棄教という現象を一般的に研究した。信者はなぜ、どのようにして宗教団体を離れるのか? このシリーズの以前の記事で私が引用した研究の中で、スチュアート・ライトは棄教という現象を説明する上で、役割理論モデル、原因過程モデル、および組織モデルの三つの学術モデルがあり、これらはいずれか一つを選択して用いることもあるし、相互補完的に用いることもあるとしている。

役割理論は、デビッド・ブロムリーやアンソン・D・シュウプ(1948-2015)などの新宗教運動に関する一流の学者たちが論じたように、反カルト主義者が使用する「エキゾチックな」モデルや疑わしい科学を思い起こす必要もなく、入教と棄教を説明する。我々は皆、人生において役割を果たしているが、実際には同時にさまざまな役割(配偶者、親、専門家、納税者、スポーツのファンなど)を果たしていて、我々が宗教に入会するときには、我々はある特定の役割を果たすことを学ぶのである。その役割の遂行が全面的な献身を伴うものではなく、一つの実験のつもりであることもあり得る。

宗教の役割は要求が厳しく、役割相互間で葛藤を引き起こす可能性がある。たとえば、配偶者がもう一方の配偶者の宗教に賛成しない場合、後者は配偶者としての役割と宗教の信奉者としての役割の間で葛藤を経験するであろう。役割の一つが結果として放棄され、離婚または棄教に至るかもしれない。あるいは、その人の「道徳的キャリア」においてほとんどの役割は一時的なものとして認識され、宗教的な役割は自然に過ぎ去っていくだけなのかもしれない。

原因過程モデルは、棄教の段階を時間の経過によって再構築しようとする。宗教的帰属の危機はさまざまな要因によって決定される可能性があるが、それらの要因はイデオロギー的なものではなく、現実的なものが多い。例えば現場のリーダーと喧嘩したとか、その宗教に敵対的な人物と恋愛関係になったとかいうことだ。研究によると、イデオロギー的な動機(「それがカルトだと気づいた」、「聖書を勉強して神学が誤りだという結論に至った」)は事後的に付け加えられることが多いと証明されている。危機は、それが解決されない場合には、脱会と認知的移行を引き起こし、それに続いて認知的再編成が起きる。その段階で元信者は別の宗教の信者として、あるいは我々の住む概して非宗教的な社会の一員としてアイデンティティを再編成するのである。

組織モデルは、棄教者から宗教へと焦点を移す。宗教の側が組織の危機を経験したり、一部のメンバーが好まない改革を行ったりすることがあり得るのだ。例えば、ローマ・カトリック教会が第二バチカン公会議の改革を実施したとき、かなりの数の「伝統主義者の」カトリック教徒が混乱と不満を感じ、最終的に教会を離れた者もいた。

これらすべての学術モデルは棄教というものを、それを行う人によって主導される能動的なプロセスであるとみなしている。反カルト主義者は、背教者(当時は信者)が「カルト」に「監禁」されている「被害者」であり、外部からの「救出」によってのみ棄教できるという受動的モデルを好む傾向があり、ときには極端なディプログラミングの形をとることもある。(その際、「カルト信者」は親族が金を払って雇ったプロの「ディプログラマー」によって拉致され、説得に屈して宗教から離れることを受け入れるまで、強烈でときには暴力的な教え込みを受ける。)英国の社会学者アイリーン・バーカーらは、この理論が統計的に誤りであることを立証した。

アイリーン・バーカー
英国の社会学者アイリーン・バーカーは、統一教会からの棄教が頻繁かつ自発的に行われたことを立証した。写真提供:マッシモ・イントロヴィニエ

バーカーは、最も頻繁に「カルト」というレッテルを貼られる団体の一つである韓国人の文鮮明師(1920-2012)が設立した統一教会において、ほとんどのメンバーは誰からも「救出」されたりディプログラミングされたりすることなく、5年以内に自発的に静かに棄教することを証明した。反カルト主義者たちが描く架空の刑務所とは異なり、現実の新宗教運動では回転ドアのように人が出入りしているのである。

ブロムリーは、反カルト主義者が描いた棄教の「救出」モデルを、ネイティブ・アメリカンに拉致されたとされるアメリカの白人入植者の「監禁物語」と比較した。19世紀には、特に若い白人女性がどのように拉致され、ネイティブ・アメリカンと結婚して彼らと同じように生きることを強制されたかを描いた本が人気を博した。ネイティブ・アメリカンの性的慣習だとされる刺激的な内容が詳細に描かれ、これらの本の売り上げに貢献した。しかし、その記述のほとんどはフィクションであった。文化史家のデビッド・L・ミンター(1935-2017)が指摘したように、これらの物語は、プロテスタントの少女たちが修道女に誘拐され、カトリックの修道院で性的虐待を受けたという、同じように虚偽の記述(このシリーズの前の記事で論じた)と相互に影響を及ぼし合った。さらに悪いことに、こうした物語はネイティブ・アメリカンの虐殺を正当化するプロパガンダとなったのである。

インディアンによるダニエル・ブーンの娘の拉致
インディアンによるダニエル・ブーンの娘の拉致。カール・フェルディナンド・ウィマール(1828?1862)作。Credits

何人かの学者は、監禁物語のモデルが反カルト主義者に利用され、「カルト信者」が「拉致」され、彼らが「救出」されるまで「カルト」によって「監禁」されていたという物語を構築したと認めている。これらの物語のプロパガンダ機能は同じである。

反カルトのプロパガンダとは異なり、学者たちが採用したモデルは、棄教は緩やかなプロセスであり、「突然の」棄教は、使徒パウロがダマスカスに向かう道中で瞬時にキリスト教徒になったというモデルに基づく突然の即刻回心と同じくらいにまれであると仮定している。

棄教のプロセスは、なぜ棄教した元信者の全員が背教者にならないのかを研究する出発点である。すなわち、彼らの全員が離れた宗教団体に対する攻撃的な反対者になるわけではなく、実は大多数はそうならないのである。次の記事で再びこのポイントに戻ることにする。

以上の記事のオリジナルは以下のURLで見ることができる。

https://bitterwinter.org/%e8%83%8c%e6%95%99%e8%80%85%e3%81%af%e4%bf%a1%e9%a0%bc%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%8b%ef%bc%9f%e3%80%80%ef%bc%93%ef%bc%8e%e6%a3%84%e6%95%99%e3%81%a8%e7%9b%a3%e7%a6%81%e3%81%ae%e7%89%a9%e8%aa%9e/

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