「詐欺的で間接的な説得と支配の方法」(DIMPAC)に対する米国心理学会(APA)の評価


アメリカにおける「洗脳理論」、あるいは「マインド・コントロール理論」の代表的な理論家に故マーガレット・シンガー博士がいる。彼女は、「詐欺的で間接的な説得と支配の方法」(DIMPAC)に関する報告書を提出している。これはもともと、1983年に米国心理学会(APA)の委嘱で研究を開始したものである。しかし、1987年に米国心理学会は、「彼女の理論は科学的裏付けを欠く」として、報告書を否定したことは、既にこのブログの中で何回か紹介してきた。今回は、筆者のこの発言の根拠となる文書を紹介したい。原文は英語で、新宗教研究センター(CESNUR)のウェブサイトに掲載されている。オリジナルを読みたい方は、以下のURLをクリックするとよい。

 

http://www.cesnur.org/testi/APA.htm

 

以下は、その日本語訳である。これを読めば、米国心理学会(APA)がマーガレット・シンガーの「洗脳理論」を科学的な理論として認めていないことは明白である。

 

CESNUR 新宗教研究センター

[編集者註:この文書は、洗脳およびそれに関連する論争についての文献集の一部である。これらの論争の歴史、この文献に関連した議論については、マッシモ・イントロヴィニエの論文“Liar, Liar”: Brainwashing, CESNUR and APA を参照。このメモランダムには五つの段落と同封書類が含まれており、後者にはDIMPAC報告書(マーガレット・シンガー博士の率いる特別専門員会によって提出された、“カルト”などによって用いられていると主張されているマインド・コントロール技術に関する報告書の草稿)に対する、BSERPの二人のメンバーおよび外部の二人のメンバーによる評価が含まれている。APA−BSERPメモランダムの現在の版は、複数の訴訟に提出され、広く配布されたため、シンガー博士自身によれば、“公的に配布された”と認められるものである(マーガレット・シンガーとリチャード・オフシェが1994年1月31日にカリフォルニア州アメラダ郡の上級裁判所で米国心理学会その他を訴えた裁判の召喚状)。この版には二人の外部者による評価が含まれている。二つの内部者による評価は“公的に配布された”文書の一部ではないが、その内の一つであるキャサリン・グレイディ博士によるものは、後に法廷で引用された。われわれはここに“公的に配布された”版を再現する。]

米国心理学会
1987年5月11日

メモランダム

TO:詐欺的で間接的な説得と支配の方法(DIMPAC)に関する特別専門委員会のメンバー
FROM:心理学の社会的・倫理的責任理事会(BSERP)
SUBJECT:特別専門委員会の最終報告

BSERP(心理学の社会的・倫理的責任理事会)は、詐欺的で間接的な説得と支配の方法に関する特別専門委員会の尽力に対して感謝するが、同委員会の報告書を受け入れることはできない。全般的に、同報告書はAPA(米国心理学会)の承認を受けるために必要な、科学的な精密さと公平な批判的アプローチを欠いている。
同報告書は外部の専門家二人と、理事会のメンバー二人によって慎重に評価された。彼らの独自の見解は、同報告書には重要な欠陥があるという点で一致した。その評価は、あなた方に情報を提供するために同封されている。
当理事会は、特別専門委員会のメンバーがBSERPあるいはAPAが同報告書において唱えられている立場を支持または承認しているかのようにほのめかすために、彼らが過去において任命を受けたことを利用することに対して警告する。BSERPは、特別委員会のメンバーに対して、同報告書が理事会によって承認されなかったことを表示せずに同報告書を配布したり出版したりしないよう要求する。
最後に、熟慮の末の結論として、われわれがこの問題に関して一つの立場を取るよう導くに十分な情報を持っているとはBSERPは信じていない。
当理事会は、この複雑で論争の多い分野において一つの報告書を生み出す難しさを認め、再度、特別専門委員会のメンバーの努力に感謝する。

同封物

1200 Seventeenth St. N.W.
Washington D.C. 20036
(202) 955-7600

(以下省略)

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