世界の諸問題と統一運動シリーズ18


共産主義と闘う統一運動

 共産主義は20世紀後半の人類が直面した最大の脅威であり、その残滓は中国や北朝鮮などの政治体制の中に、また自由主義国家の中にも「変形共産主義」として存在しています。今回は統一運動がどのように共産主義と闘ってきたかを紹介します。

<共産主義の何が問題なのか>

 はじめに、共産主義がなぜ間違っており人類にとっての脅威であるかを列挙すれば、①神と宗教を否定する無神論思想である、②国民の自由を奪い私有財産を否定する、③暴力革命を肯定し対外侵略を行う、④人権を否定し国民を虐殺する、⑤家庭の解体を目指す、⑥その国の経済発展を阻害する、などを挙げることができるでしょう。

共産主義黒書

 共産主義は、「反革命分子(資本家階級、知識階級など)」に対する組織的弾圧を徹底して行ったため、多くの犠牲者を出しました。その数は約1億人(『共産主義黒書』、1997年、ステファヌ・クルトアなど)とも、約1億5000万人(仏紙「ル・フィガロ」、1978年11月18日付)とも言われています。人類史上他に類例を見ないジェノサイドと言われるホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)でさえ、その数は600万人と言われていますので、共産主義の犠牲者の数が桁違いであることが理解できるでしょう。

<共産主義国家の誕生とその拡大>

 1917年にレーニンがロシア革命を成功させると、共産主義政党による国際組織であるコミンテルンは中国と日本に共産党を誕生させました。第二次世界大戦後は、ソ連の支配圏は東ヨーロッパに拡大し、北朝鮮と中国でも共産主義国家が誕生しました。さらにベトナム、カンボジア、アフリカ諸国、中南米諸国へと共産主義は拡散し、1980年代には陸地面積の3分の2、総人口の半数を支配下に置くまで勢力を拡大しました。

 日本に共産主義思想が浸透し、着実に勢力を伸ばしていったのは1960年代から1980年代にかけてでした。大学には左翼学生による学生運動の嵐が吹き荒れ、多くの革新自治体も誕生しました。特に日米安保反対闘争、ベトナム反戦闘争では日本国内の共産勢力は数十万人のデモを組織し、「革命前夜」の様相が広がりました。

<勝共運動の始動と躍進>

 こうした状況からアジアを守るため、文鮮明師は1968年1月に韓国で、さらに同年4月には日本でも国際勝共連合を創設し、共産主義勢力との理論闘争を開始しました。文師の「勝共思想」は、特定の民族主義に基づいた感情的な反共主義ではなく、共産主義の根幹をなしている哲学的な部分を合理的かつ徹底的に批判した総合的な理論体系です。その内容は、マルクスの人間疎外論、共産主義唯物論、唯物弁証法、唯物史観、認識論、経済学などの思想的欠陥を逐一指摘し、その代案を提示するものであり、世界各国における共産主義との理論闘争において大きな成果をあげました。

 日本の勝共連合は1970年の世界反共連盟(WACL)大会、全国各地で行った公開講義などを通じて社会的影響力を拡大させたため、日本共産党は危機感を募らせるようになります。勝共運動をさらに躍進させたのは、スパイ防止法制定運動でした。1970年代、世界的な「東西デタント(緊張緩和)」の流れの中で、民主主義勢力と共産主義勢力の攻防は、それまでのあからさまな軍事力による対立から、スパイ工作活動が主流になっていきました。しかし、日本には外国からのスパイを取り締まる法律がなかったので、スパイが自由に活動できる「スパイ天国」の状態にあったのです。そこで、勝共連合はスパイ防止法制定運動を展開し、国民運動として大きく飛躍することになったのです。

 文師は1980年に中南米諸国を共産革命の危機から救うためのカウサ・インターナショナルを設立し、1982年には左傾化する米国のマスコミを正気に戻すために保守系日刊紙ワシントン・タイムズを創設するなど、アジアのみならず世界的な規模で共産主義と闘う運動を展開し、それが最終的に冷戦の終結へと結びついていきます。

<冷戦終了後の勝共運動>

 ベルリンの壁崩壊(1989年)とソ連崩壊(1991年)によって、世界的な次元での冷戦は終結しました。しかし、これで共産主義との戦いが終わったわけではありません。東欧の共産主義国家は次々と民主化されていきましたが、中国と北朝鮮は依然として共産主義体制を維持しています。中国は南シナ海での人工島造成・軍事基地化を本格化させるなど、海洋権益を拡大する覇権主義的な膨張政策を露骨に推進しており、いまや中国と米国の関係は「新冷戦」の様相を呈しています。北朝鮮は核とミサイルの開発によって東アジアの安全保障を脅かしています。

 一方で、共産党を組織して国家権力を掌握することを目標とした「体制共産主義」に代わって、性解放理論や過激なフェミニズムによって伝統的家庭観や倫理観に挑戦しつつ、その国の文化を根底から変えてしまおうとする「変形共産主義(文化共産主義)」が、自由主義陣営の国々に浸透しつつあります。

 こうした内外の脅威から日本の平和と安全を守るために、勝共運動は必要なのです。国際勝共連合は2018年に創設50周年を迎えました。先人たちの努力と伝統を継承したうえで、新たな課題に取り組むために、勝共運動はさらなる発展を遂げていくことでしょう。

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