実況:キリスト教講座11


キリスト教について学ぶ意義(11)

 次に、キリスト教徒の信仰生活ということで少しお話をします。キリスト教には主なもので三つの祝祭日がありまして、これを祝うことが信仰生活の中心になってきます。クリスマス、イースター、ペンテコステです。

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 クリスマスは、いまは毎年12月25日に日付が固定されておりますが、この12月25日という日付の起源に関してもいろんな論争があります。新約聖書には、イエス様が誕生した日付に関しては一切記述がないからです。そもそも12月25日という日付はローマ人やゲルマン人の冬至の祭りの日付ですし、ミトラス教の「不敗の太陽神(Sol Invictus)」の誕生の日として祝われていたわけですから、異教に起源をもつ日付がキリスト教に取り入れられたのではないかとも言われています。

 実は、キリスト教の祝祭の中で最も重要なのはクリスマスではなくて、本当の信仰者にとってはイースター(復活祭)の方がさらに重要な祝祭になっています。復活祭の日付が毎年どのように決定されるかというと、「春分のすぐ後の満月後の最初の日曜日」という、ちょっと複雑なことになっています。ですから、何月何日と決まっているわけではなくて、毎年日付は変わります。

 新約聖書の記述によれば、ユダヤ暦の「ニサンの月の14日の金曜日」にキリストが処刑されたとあり、それに由来するわけですが、ユダヤ歴は月の満ち欠けに基づく太陰暦であったので、それを太陽暦に改めて数えると、春分のすぐ後の満月後の最初の金曜日にキリストは十字架にかけられ、日曜日に復活したということになります。これがイースターの日付を決める基準となり、通常は3月後半から4月初めになります。

 次にペンテコステ(聖霊降臨祭)ですが、これは復活祭から数えて50日目で、必ず日曜日になります。これは使徒たちに聖霊が下りた日であり、教会の成立記念日とされています。ペンテコステという名前は、「50番目の日」を意味するギリシア語に由来していて、日本語では「五旬節」とも呼ばれます。

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 キリスト教においては、こうした教会暦に従って信仰生活を行っています。

 カーニバル(謝肉祭)が、イースターの40日前に行われて、そこから受難節(レント)と呼ばれるものが始まります。これは四旬節、大斎節とも言われ、キリストの受難をしのぶための40日間ということになります。信仰熱心な人は、この期間は肉類や酒タバコを避けるなどの禁欲生活をします。

 皆さんは「カーニバル」というと、リオのカーニバルのようなどんちゃん騒ぎを連想するかもしれませんが、これはもともと「大斎節」という禁欲生活に入る直前の、肉に別れを告げる宴のことを指したわけです。つまり、これから禁欲生活に入るので、肉が食べられる最後の夜をどんちゃん騒ぎをして過ごしていたわけですが、いまはこれが完全に本末転倒になっていて、どんちゃん騒ぎそのものが目的になってしまっていますね。もともとは宗教的な起源をもつ行事でも、形骸化してしまうということです。

 そしていよいよイースターが近づきますと、「枝の主日」(Palm Sunday)の行事が行われます。この日はイースター直前の日曜日で、教会を枝で飾ったり、信者が枝を手に礼拝に参加したりします。この日から、イエスがエルサレムで過ごした「最後の一週間」を想起するための「聖週間」「受難週」が始まります。この週の木曜日は「洗足日」と呼ばれ、足を洗う儀式を行います。これは最後の晩餐を記念する行事で、イエス様が弟子たちの足を洗ったという聖書の記述に基いています。私もアメリカで神学校にいたときに、一般のキリスト教会を訪問して、このイースターの行事に参加したことがありますが、そういう場面を見ました。

 そして、聖金曜日がイエス様が十字架にかかった日であり、「受苦日」とも言われています。この日には、教会にあった十字架に白い布をかけていました。それを復活の日までかけておくわけです。そして復活の日曜日がイースターです。私はこの行事にも参加しましたが、キリストは朝復活したと聖書に記されているので、真っ暗な真夜中の頃から教会に集まってきて、ロウソクをともしてお祈りし、キリストの復活をお祝いするわけです。とても感動的でした。

 このように聖書の記述に基づき、イエス様が十字架にかかって亡くなられ、復活したこの一週間を中心として、そのために40日間準備をして、キリストの出来事を想起し、追体験していくという信仰生活があるわけです。クリスチャンの信仰生活は、このイースターの一週間をピークとしながら毎年回っているということになります。そういう意味で、教会においてはこうしたカレンダーが非常に重要なわけです。

 私たちには「神の日」「父母の日」「子女の日」「万物の日」などの記念日があり、私たちの教会カレンダーに従って信仰生活を行っています。それと同じように、クリスチャンたちも一年の中にこうした教会カレンダーがきちっとありまして、それを通してキリストの出来事を再体験していく信仰生活があります。

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 キリスト教の儀礼は、サクラメント、日本語では「秘蹟」と呼ばれていますが、その内容がカトリックとプロテスタントでは違います。カトリックにおきましては、①洗礼、②聖体、③堅信、④ゆるし、⑤病者の塗油、⑥結婚、⑦叙階、という7つのサクラメントがあります。この一つひとつの意味を説明する時間はありませんので、内容はこの表を読んでいただくとして、この7つのうち、プロテスタントは洗礼と聖体は認めるけれども、その他の5つは根拠がないとして、サクラメントとして認めておりません。すなわち、プロテスタントではサクラメントは2つしかないということです。

 洗礼というのは、キリスト教の入信儀礼であり、洗礼を受けることによって初めて正式にクリスチャンになります。具体的な洗礼のやり方としては、全身を水につける「浸礼」というやり方や、頭部に水をポタポタと少量注ぐ「滴礼」などがあります。新約聖書に、イエス様がヨルダン川で洗礼ヨハネから洗礼を受けたときには、水に浸かったという記述がありますから、あれは「浸礼」になりますね。洗礼をする時期にもいろいろと論争がありまして、幼児洗礼を行う教会もありますが、本人に信仰の自覚がないと洗礼は意味がないということで、幼児洗礼を認めず、成人するまで洗礼を行わない教会もあります。

浸礼

浸礼

滴礼

滴礼

 次に、聖体とか聖餐式と呼ばれるものがあります。これは何かというと、神父様や牧師様から、キリストの体を象徴するパンをいただく、キリストの血を象徴するぶどう酒をいただくということです。これは最後の晩餐となった過越祭の食事を再現しているわけです。私も神学校に行っていたころに、この聖体拝領とか聖餐式というのを受けたことがあります。このパンは、教会によって違います。本当においしいカステラのようなパンをくれる教会もありました。カトリックの場合には、パンというよりはビスケットかお煎餅のような感じです。口を開けると、それを舌の上にポンと乗せてくれるんですね。やり方にさまざま違いはあっても、この聖餐式にはキリストの血と肉をいただいて、それと一体になるという意味があるわけです。

聖体拝領の様子

聖体拝領の様子

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