世界の諸問題と統一運動シリーズ07


地球の温暖化問題に焦点を当てた鮮鶴平和賞

 人類が直面する大きな課題の一つが地球環境問題ですが、その中でも深刻なのが地球温暖化であると言われています。今回はこの問題に関する信頼できる最新のデータを紹介したうえで、統一運動がどのように取り組んでいるかを紹介します。

<地球の温暖化と海面上昇は「疑う余地がない」>

 地球の平均気温は1880年から2012年の期間に0.85 ℃上昇しており、長期的に上昇傾向にあることは「疑う余地が無い」と評価されています。地球温暖化は、人間の産業活動に伴って排出された温室効果ガスが主因となって引き起こされているとする説が主流です。『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)によって発行されたIPCC第5次評価報告書(2014年)は、人間の影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性は「95%以上」であるとしています。

 地球温暖化によって引き起こされる代表的な環境問題の一つが海面の上昇です。温度が高くなれば、海水は熱膨張によって体積を増し、また大陸氷床が融解することによって海面が上昇します。IPCC第5次評価報告書によれば、今世紀末の世界平均気温は、現在よりも0.3~4.8℃の範囲で上昇し、平均海面水位は0.26~0.82mの範囲で上昇する可能性が高いとされています。海面の上昇により、ツバルやキリバスなどの太平洋上の島国は水没の危機に瀕しています。

<気候変動枠組条約の取り組みと課題>

 地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約が「気候変動枠組条約」で、1992年に作成され1994年に発効しています。この条約に基づく交渉の代表的なものが毎年開かれている「締約国会議」(COP)です。その中で有名なのが1997年に京都で開かれたCOP3で、このときに温室効果ガスの削減目標を定める「京都議定書」が採択されました。

 京都議定書が、先進国に拘束力を持つ排出削減義務を負わせたことは、温暖化対策の第一歩として非常に大きな意義があったと言えます。しかし京都議定書は、中国などの新興国に義務を課さなかったこと、米国が最終的に批准しなかったこと、目標設定の公平性が確保できなかったこと、などの課題を残しました。

 京都議定書の採択から20年が経ったいま、世界経済の牽引役は先進国から新興国に代わり、国際政治の構造も様変わりしたため、新しい仕組みが必要とされています。2015年12月にパリで開かれた「COP21」では、「パリ協定」が採択されました。これは、発展途上国も含む世界の196の国と地域すべてが温暖化対策に取り組む初めての国際的な枠組みであるという点で評価できますが、以下のような課題も指摘されています:①各国の合意を優先し、京都議定書のように温室効果ガスの削減目標の達成を義務づけなかった。②従って、温暖化対策が実施されるかどうかは各国の取り組み次第である。

 気候変動に対する国際的な取り組みが今のままでは、実質的解決は困難であると指摘されており、解決を妨げている最大の問題は、国家エゴと経済至上主義だと言われています。アメリカのトランプ政権は2017年6月1日、国内の化石燃料産業を振興させるために、パリ協定からの脱退を表明しました。

<地球環境問題に取り組んだ人物を表彰した鮮鶴平和賞>

 こうした人間による地球環境破壊に対して、文鮮明総裁は以下のように語っています。
「自然を破壊するのは人間の利己心です。…地球の環境が破壊されたのは、人より少しでも大きく、早く成功しようとする人間の貪欲さのためです。…自然は神様の創造物であり、人類のためにくださった贈り物です。自然を大切にして愛することは、神様を愛することと同じです。神様がつくられたすべての存在を愛の対象として感じなければなりません」(『平和を愛する世界人として』p.315)

アノテ・トン

韓鶴子総裁から鮮鶴平和賞のメダルを授与されるアノテ・トン氏

 こうした文総裁の遺志を受け継ぎ、韓鶴子総裁は世界平和の実現に貢献した個人または団体の功績を表彰する「鮮鶴平和賞」を創設し、その第1回受賞者に地球環境問題に貢献した人物を選ぶように提言しました。2015年8月28日に韓国ソウル市内のホテルで行われた「鮮鶴平和賞」第1回授賞式では、受賞者の一人に南太平洋の島嶼国キリバスの大統領として気候変動に伴う危機を国際社会に訴えてきたアノテ・トン氏が選ばれました。

 彼は低平な太平洋の小島嶼国家が海面上昇によって直面している危機について積極的に伝え、国際社会がこの問題に積極的に取り組むように導いてきました。国連を含む主要な国際機関に対して、国際社会がこの問題の解決に着手するための包括的な諮問機関を創設するよう呼びかける上で、アノテ・トン氏は重要な役割を果たしました。

 鮮鶴平和賞の授賞式でトン氏は、「もし全世界が、和解と共存と協力を促進する文鮮明・韓鶴子総裁ご夫妻のビジョンを受け入れれば、より良い平和な世界になることでしょう」と述べた上で、「気候変動はさまざまな程度で私たち全員に影響を与えますが、我が国民はこの世界的な災難の最前線に立っているのです」と、水没の危機に瀕している自国の現状を訴えました。今後もUPFをはじめとする統一運動は、地球環境問題に継続的に取り組んでいきます。

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