世界の諸問題と統一運動シリーズ01


平和大使運動のビジョンとゴール

 今日の世界は「不確実性の時代」と言われ、世界秩序を構築する方向性が見いだせないままに混迷の一途をたどっています。そこで今回よりシリーズで、世界で起きている具体的な諸問題の背後に潜む本質的課題を分析しつつ、統一運動がその解決のためにどのように取り組んでいるのかを紹介していきたいと思います。具体的には、日本を取り巻く国際的な諸問題と重要な国内問題を事象やテーマごとに取り上げながら、それに対応する統一運動の具体的な活動を紹介していくという形になります。

 第1回の今回は、問題の全体像を把握したうえでビジョンとゴールの提示を行います。私は天宙平和連合(UPF)の日本事務総長として、日頃から全国各地を回って「平和大使セミナー」の講師を務め、平和大使の皆様にUPFのビジョンと活動について語っています。その際、現在の世界と日本が直面している諸問題として、以下の三つに焦点を当てて取り組んでいることを説明しています。

①世界的な宗教・民族対立の激化

 世界平和について論じるときに、それを脅かす原因は時代と共に変化します。冷戦時代には、世界平和の問題と言えばイデオロギーの問題でした。「自由主義陣営」対「共産主義陣営」、アメリカ対ソ連の戦いが主要なテーマでした。しかし、ポスト冷戦時代においては宗教間・民族間の争いが世界平和を脅かす主要な原因となっていきます。2001年9月11日に起きた米国同時多発テロは宗教的動機に基づいて行われたテロ行為でしたし、欧米や中東、アフリカなどで続発しているテロ事件の多くは「イスラム国」(IS)や「アルカイダ」など、イスラム過激派と呼ばれる勢力が関わっています。また、冷戦後は国家間の本格的な戦争が数の上で減っていく一方で、より小規模な民族間・部族間の争いは増加しています。冷戦後の時代においては、世界平和を語る上で宗教の問題を避けて通ることはできなくなりました。

②アジアと日本の安全保障の危機

 かつて、「日本人は水と安全はタダだと思っている」と言われたことがありましたが、さすがに最近は多くの日本人がそうではないと気付くほどに、日本周辺の軍事的緊張は高まっています。中国は毎年二桁の伸びを示す勢いで国防費を増加させつつ、南シナ海に露骨な軍事的拡張を進めていますし、東シナ海も虎視眈々と狙っています。一方で北朝鮮は核・ミサイル開発を推し進め、トランプ政権と「完全な非核化」を約束したにもかかわらず、具体的な進展が見られない状況にあります。全般的に見て、東アジア地域の緊張はかつてないほどに高まっていると言ってよいでしょう。

 さらに、大統領自らが「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と発言(オバマ前大統領の発言。ただし、トランプ大統領も選挙期間中に同様の発言をしている)するなど、米国の衰退による抑止力の不在も懸念されています。政府与党が2015年に安全保障法制を整備したのも、こうした深刻な事態に対応するためであり、日本人も自国の安全保障について真剣に考えなければならない時代を迎えたと言ってよいでしょう。

③家庭崩壊と無縁社会の出現

 国内に目を転じれば、日本という国を根底から崩壊させかねない深刻な危機が進行しています。それは家庭が崩壊し、人と人との絆が希薄になっていく「無縁社会」の出現です。天然資源に乏しい日本という国が世界の一等国家になることができたのは、その人的資源によるところが大きく、日本民族が優秀であったためです。その優秀な日本民族を生み出してきたのがまさに日本の家庭であり、日本の家族文化は世界に誇れるものでした。

 しかし近年の日本は、離婚の増加、児童虐待の深刻化、単身世帯の増加、若者たちの非婚化、少子高齢化と人口減少など、家庭そのものが機能不全に陥っている兆候が如実に表れてきています。いかなる危機も、それを解決しようとする意志と能力のある人間がいれば道は開けますが、家庭の崩壊は、そうした人間を生み出す基盤そのものを破壊してしまうという意味で、最も根本的な危機であると言えるでしょう。

平和大使運動のビジョンとゴール

 国連NGOであるUPFは、専門性と徳望をもって平和世界実現に貢献している各界各分野の指導者を「平和大使」に任命し、全世界で平和促進のための活動を展開しています。平和大使運動のビジョンは”One Family under God”(神の下の人類一家族)であり、そのような世界を実現するために、日本の平和大使運動は以下の三つのゴールを設定しました。①「平和国連」のモデルを形成する、②日米韓を基軸としてアジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献する、③平和理想家庭の価値と為に生きる「奉仕の文化」を定着させる。これらは、既に述べた日本と世界が直面する三つの問題の解決策として提示されています。

 次回からは、これら三つのゴールが世界と日本を取り巻く諸問題とどのように関わっており、その背後に潜む本質的課題を解決しようとしているかを具体的に説明していきます。

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