世界の諸問題と統一運動シリーズ21


中国の脅威に対峙する統一運動

 世界覇権国家を目指す中国は21世紀最大の脅威である、という認識が米国を中心に広まっています。今回は米国の対中政策の大きな転換を解説した上で、中国の脅威を早くから指摘してきた統一運動の実績を紹介します。

<米国の対中認識が方向転換>

 米中国交正常化を実現したニクソン政権以降、米国の対中政策は「関与(エンゲージメント)政策」を基本としてきました。これは中国が共産主義の独裁国家であるという事実にあえて目をつぶり、関わり続けることによって、彼らが変わるのを待とうという考え方です。その背後には「中国の経済発展を積極的に支援すれば、いずれ政治的自由と民主主義がもたらされるはずだ。中国の自由化は不可避だ」という仮定がありました。

 これは合理的な政策判断というよりは希望的観測に過ぎなかったのですが、その誤りに米国が気付き始めたのはトランプ政権が誕生する少し前のことでした。その嚆矢となったのが、マイケル・ピルズベリー氏(ハドソン研究所・中国戦略センター所長、国防総省顧問)が2015年に発表した『100年マラソン』(邦訳名:『China 2049』)でした。ビルズベリー氏はもともと米国の代表的親中派の一人だったのですが、その彼が「米国は中国に騙されていた」と述べ、「中国が、建国100年の2049年までに、米国に取って代わる世界覇権国家を目指していることがようやく分かった」と警告したのです。

<トランプ政権の対中戦略>

 2016年にトランプ政権が誕生すると、歴代米政権の対中政策とは明らかに異なる方針が打ち出されました。これまでは安全保障の問題と経済の問題を分けて考えてきたのですが、トランプ大統領はこの二つを結び付け、中国に対して貿易戦争を仕掛けて経済的圧力をかけたのです。

 2017年12月にホワイトハウスが発表した国家安全保障戦略、2018年1月に国防総省が出した国家防衛戦略は、中国は米国の安全保障と繁栄に対する深刻な脅威であり、自らの独裁主義的なモデルにしたがって世界を造り変えようとしている、と指摘しました。

 さらに、マイク・ペンス副大統領が2018年10月4日に行った「トランプ政権の対中政策」という演説は世界に衝撃を与えました。彼は中国が米国内で情報操作を継続し、「かつてないほど積極的に、我が国の国内政策や政治活動に干渉している」と非難したのです。さらに、「中国は米国を西太平洋から追い出し、米国が同盟国に手を差し伸べるのを阻止しようとしているが、彼らは失敗する」と宣言しました。これは歴代政権の中で最も厳しい中国批判の演説といっていい内容でした。

 現在、米国政府は中国のためにスパイ行為を行った米国政府職員を逮捕・起訴し、中国の経済スパイによるハッキングを告訴し、その背後で中国政府が働いていたことを公表しています。

<覇権的独裁国家の道を突き進む中国>

 かつて米国のクリントン大統領は、「中国をインターネットにつないでしまえば、自然と民主化される」と言いました。しかしこの予想は外れ、中国政府は見事にインターネットをコントロールしています。グーグルやアップルなどの米国のハイテク企業は、中国政府がインターネット検索に検閲をかけるのに協力しているありさまです。

 いまや中国は「ハイテク全体主義国家」となり、完全な監視社会になってます。膨大な数の監視カメラが設置され、顔や歩き方で個人を特定できるようになっています。また人々の生活の事実上すべての面を支配することを目的とした「社会信用スコア」が導入され、政権に対して批判的な人々は飛行機や列車のチケットが買えなくなり、自由に旅行することもできなくなっているのです。

 中国の通信機器大手「華為(ファーウェイ)技術」は中国共産党と人民解放軍との関係が深く、同社の製品には秘密のソフトウェアが埋め込まれており、世界中から情報を集めるスパイ活動の手段となっていると指摘されています。中国はこうした電子戦争、サイバー戦争の次元から、いまや米国の衛星を無力化することを目標とした宇宙戦争の次元に進もうとしているのです。

<中国の脅威に警鐘を鳴らし続けた統一運動>

 米国においても日本においても、中国に対して率直にものを言うことが憚られる状況の中で一貫して中国の脅威を訴え続けてきたのが統一運動でした。1971年に国連で台湾に代わって中共が承認された際に、最後まで反対のための断食集会を行ったのは日本の勝共運動でした。米国の日刊紙ワシントン・タイムズの有名なコラムニストであるビル・ガーツ氏は、既に2000年の時点で『中国の脅威』(The China Threat)を出版し、いち早くこの問題を世に問いました。

「国際指導者会議で講演するビル・ガーツ氏と著書『The China Threat』

「国際指導者会議で講演するビル・ガーツ氏と著書『The China Threat』

 中国の脅威に対峙するためには、まずは中国の戦略を正しく知らなければなりません。2018年12月、日本のUPFは東京で行われた国際指導者会議の講師にビル・ガーツ氏を招待し、「米中“新冷戦”と米国の外交・安全保障戦略」をテーマに、日本の有識者たちとのディスカッションを行いました。今後は日本が米国の政策転換に足並みを揃えることができるように、日本国内での啓蒙教育活動を展開していくことでしょう。

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