信教の自由と人権のための雑誌「BITTER WINTER」がインターネット上で発表した家庭連合関係の記事を紹介する連載。このサイトの運営者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏はイタリアの宗教社会学者で、1988年にヨーロッパの宗教学者たちによって構成される「新宗教研究センター(CESNUR)」を設立し、その代表理事を務めている。マッシモ・イントロヴィニエ氏から特別に許可をいただいて、私の個人ブログに日本語訳を転載させていただいている。
日本の最高裁と統一教会「宗教虐殺」の許可証? その1
03/26/2025
最高裁決定は、数十年の判例を覆して宗教団体の解散への道を開くかもしれない。
弁護士 中山達樹
2本の記事の1本目
日本の最高裁判所 出所
2025年3月3日、日本の最高裁判所は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中会長に対し、政府からの質問に十分に回答をしなかったとの理由で過料に処するという最終決定を下した。
この決定において最高裁判所は、統一教会の不法行為が宗教法人法81条に定める宗教法人の解散事由「法令に違反」に該当するかという争点につき、肯定的な判断を下した。この決定は、日本政府が東京地裁に申し立てている統一教会の解散命令請求に関連する。
歴史的に見て、この決定は、民事上の不法行為を解散事由から除外してきた判例の大きな変更である。国際的に見ても、宗教団体の解散にこれほど広い門戸を開いた民主主義国は、私の知る限り他に存在しない。
この最高裁決定は、安倍元首相暗殺後、反カルト団体全国霊感商法被害対策弁護士会や鈴木エイトなどのジャーナリストが家庭連合を非難する全国的なキャンペーンと軌を一にする。安倍元首相は、家庭連合と懇意にしているため罰せられるべきと思い込む男に暗殺された。
全国霊感商法被害対策弁護士会の主要メンバーである紀藤正樹弁護士(左)、ジャーナリストの鈴木エイト(右)。出所:X
この最高裁決定を精査すると、家庭連合の解散に向けた「広い道」を開いたようにも見受けられる。3つの不吉な兆候に注目する。
まず、宗教法人法81条によると、宗教法人は以下の場合に解散させられる。
(1) 著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした
(2) 法令に違反する
今回の最高裁は、上記(2)の「法令」の解釈についてのみ判断し、上記(1)の家庭連合の行為が公共の福祉を害するか否かについては判断しなかった。(1)の公共の福祉違反については、別途東京地裁(鈴木謙也裁判長)に係属する解散命令請求訴訟で判断される。
今回の最高裁決定は、信教の自由の尊重という見地から大きく後退した。宗教法人解散後、その法人の存否にかかわらず個人は信仰を続けることができる。そのため、宗教法人の解散は、法律上及び形式的には、個々の信者の信教の自由に間接的に影響するにすぎない。
とはいえ、法人の解散に伴い法人の財産は全て奪われるため、事実上、個々の信者の信教の自由は大きな制約を受ける。実際、過去の2つの先例はこの点に細心の注意を払っていた。しかしながら、今回の2025年3月3日付け最高裁決定は、その注意を払わなかった。
まず、29人を殺害したオウム真理教は、1996年に最高裁判所で解散された。ただ、当時の最高裁は信者の信教の自由に対し十分かつ親身な注意を払った。最高裁は、オウム真理教の解散後には礼拝施設等の教会の資産が処分されるため、「信者が宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る」と指摘した。
結局、最高裁は、「憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような制限(註:解散)を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。」と判示した。
1995年3月20日のオウム真理教テロ事件後、サリンに汚染された東京地下鉄車の除染を行う自衛隊員 出所
次に、2024年3月26日、家庭連合田中会長に対する過料訴訟の第一審において、東京地裁は1996年オウム真理教最高裁決定をほぼ文字通り踏襲した。
この東京地裁決定は、「憲法が保障する信教の自由の重要性にも鑑みて、当該宗教法人に対して解散命令がされることが、当該宗教法人のした行為に対処するために必要でやむを得ないものであるかという観点からも、法81条1項1号を含む同項所定の解散命令事由の該当性は、慎重かつ厳格に判断されるべきものといえる。」と判示した。
このように、2つの先例は信者の信教の自由を十分に考慮した。しかし、2025年3月3日の最高裁決定は考慮せず、「解散命令は、宗教法人の法人格を失わせる効力を有するにとどまり、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わない。」と判示した。
2024年7月、信教の自由を求めて三重で抗議する家庭連合信者。
これは残念であり、不気味だ。日本の判例は、憲法が保障する信教の自由の重要性を宗教法人の解散の文脈で明確に尊重してきた。しかし、3月の最高裁は、信者の信教の自由に全く注意を払わなかったのである。ここから、東京地裁の鈴木謙也裁判長に対して家庭連合を解散させるという最高裁の意思を読み取ることもできる。